この記事でわかること
- 相続に影響する逆縁について理解できる
- 2つの事例から具体的な逆縁リスクがわかる
- 逆縁と代襲相続の関係がわかる
- 逆縁リスクに対処できる遺言の作成方法がわかる
厚生労働省の統計情報によると、2019年現在の平均寿命は女性が87.45歳、男性81.41歳であり、過去最高を更新しています。
ちなみに1990年のデータは女性81.9歳、男性75.92歳ですから、約30年で平均寿命は5歳以上延びたことになります。
医療や介護技術は日々進歩しており、国民の健康マインドも高まっているため、人生100年時代の到来といっても夢物語ではないでしょう。
一方では長寿社会のリスクも指摘されており、逆縁(ぎゃくえん)状態で発生する相続も問題視されています。
逆縁とは一般的に親より先に死ぬことを指しており、相続の前提である「親から子への財産承継」の考え方が根底から崩れてしまいます。
財産承継者の予定だった子どもが亡くなった場合、せっかくの相続税対策も無駄になるケースがあり、場合によっては一族の財産が流出する可能性もあります。
今回は逆縁によって発生するリスクについて、具体的な事例や対処法を解説します。
目次
人生100年時代。皮肉にも高まった相続の逆縁リスクとは?
現在、首相官邸のウェブサイトには人生100年時代構想会議のページが設置され、過去の議事録などが掲載されています。
寿命100歳に対応する社会基盤の整備など課題は多くありますが、身近な問題には逆縁もあり、長寿化が進むほど子が先に死亡する可能性も高くなります。
相続税対策には生前贈与や節税に繋がる遺言など様々な方法がありますが、いずれも相続人である子どもの生存を前提としています。
万全な対策も実行できなければ意味がなく、当初の目論見とは違った結果になるでしょう。
では逆縁によって起こるリスクにはどのようなものがあるか、事例を挙げて解説します。
逆縁で起こる相続リスクを事例で解説
相続税対策には生前贈与が有効であり、基礎控除内に収まる年間110万円までの贈与や、教育資金の一括贈与など、様々な方法で次世代へ非課税贈与できます。
相続財産を減少させ、次世代の生活も支援できるため、年月をかけて子どもへ財産を移転させるケースもありますが、逆縁が起きると状況が一変する場合もあります。
では、逆縁により生前贈与が水の泡になった事例、会社存続の危機に陥った事例の2つを紹介しますので、相続税対策を検討しておられる方は参考にしてください。
生前贈与した財産が血族以外に流出するケース
以下の図は、2億円の財産を持っている父が時間をかけて生前贈与し、息子へ財産のほとんどを移転しようとした例です。
相続開始前に1億5千万円を贈与できましたが、逆縁が発生したため、生前贈与した財産は妻のものになっています。
ここで妻が死別再婚を選択し、別の男性と結婚したらどうなるでしょうか?
「元妻」は、義父が息子のためにと贈与した財産を持ったまま再婚するため、直系に引き継ぐ予定だった財産はすべて他人のものになってしまいます。
長寿化と逆縁にはこのようなリスクもあり、相続税対策が水の泡になるどころか、一族財産のほとんどが流出してしまう可能性もあります。
自社株の生前贈与が会社存続の危機に陥ったケース
先ほどの例と財産の流れは同じですが、次に紹介するのは、父親が経営する会社の株式60%を息子に贈与していたケースです。
息子は父親よりも先に死亡したため逆縁となり、株式はそのまま妻へ相続されました。
その後妻は別の男性と再婚したため、一族以外の人が大株主になってしまいます。
元妻が議決権を行使すれば、取締役の解任や選任も可能になるため、事実上、元妻の会社になってしまいます。
定款の整備や株式の買い戻しで対応はできますが、逆縁を想定していなかったため発生したリスクともいえるでしょう。
逆縁がおこったら、孫は代襲相続できるか?
被相続人の子がすでに死亡している場合、その子(孫)へ相続権が移行し、代襲相続が発生します。
しかし遺言書に「○○(子)に不動産のすべてを譲る」などと書かれていた場合は、代襲相続の対象とならず、遺言を失効とする判例も出ています。
最高裁判所では、受益相続人(遺言で財産取得する人)が逆縁となったケースについて、以下のように判決を出しています。
「受益相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である」
遺言が失効になれば遺産分割協議へ移行するため、子はもちろん孫にも、目論見どおりの財産を承継できない可能性が生じるでしょう。
逆縁リスクへの備え「予備的遺言書」
遺産分割協議は円満に決着しないケースも多いため、逆縁への備えとして、予備的遺言の作成をおすすめします。
推定相続人の逆縁などを想定した遺言が予備的遺言であり、「○○(子)が私より先に死亡した場合は、○○(孫)へ財産を譲る」といった文面で作成します。
遺言内容の実行は、被相続人の死亡から一定期間を経過している場合が多いため、その間に子が死亡するケースなども想定しておくとよいでしょう。
特定の子だけに財産を多めに取得させたい場合、その子が死亡すると代襲相続を期待した孫とその他の相続人の間で、取り分を巡ったトラブル勃発も考えられます。
せっかくの遺言が仇になってしまわないよう、内容はじっくり検討しておきたいですね。
逆縁の相続対策をするなら税理士に相談しよう
逆縁が起きてしまうかどうかは予測できません。
ただし事前に対策をしておくことで、逆縁が起きた場合の相続リスクを抑えられます。
逆縁の相続対策をするなら、税理士への相談がおすすめです。
ここからは、税理士に相談するメリットを紹介します。
適切な対策方法を教えてくれる
相続の経験が豊富な税理士に相談すれば、適切な対策方法を教えてくれます。
相続で損をしないためには、生前贈与も含めて考えなければいけません。
税理士であれば相続や逆縁が発生したときに、損をしないような方法を教えてくれます。
「一族から財産を流出させたくない」という思いがあるなら、財産が流出しないような対策を考えてくれます。
相続や生前贈与の手続きは、1回進めてしまうと撤回が難しいため、自分たちで手続きを進めてしまう前に相談するのがいいでしょう。
有効な遺言書を作成できる
逆縁の相続対策として、遺言書で逆縁が起きた場合の財産処分について指定しておくのが有効です。
ただし、遺言書は作成すればいいというわけではありません。
遺言書の書式が決まっており、間違って作成していると、遺言書としての効力を発揮できません。
せっかく遺言書を作って逆縁の相続対策をしたとしても、意味のないものになる危険性もあります。
そこで税理士に依頼して遺言書を作成してもらうことで、法的に効力を持った遺言書を作成できます。
また遺言書の効力をより強くしたいなら、公正役場に行って公正証書として認可を受ける方法もあります。
手続きがややこしいため、専門家に相談しながら、進めるのが確実でしょう。
相続トラブルを未然に防ぐ
相続では財産を巡ってトラブルが起きる可能性があります。
相続人だけで話し合うと、内容がまとまらない可能性が高いです。
お互いに感情的になってしまうと、着地点を見つめられないかもしれません。
「親族とトラブルになりたくない」という人は、専門家への依頼がおすすめです。
第三者が介入することで、冷静に話し合いを進めることができます。
起きてしまった相続トラブルを解決するよりも、相続トラブルを未然に防ぐことが重要です。
早い段階で専門家に相談することで、冷静な話し合いが実現できるしょう。
初回の無料相談から利用しよう
「税理士に依頼したいけど、費用が気になる」という人もいるでしょう。
費用が気になる人は、初回の無料相談がおすすめです。
相続サポートセンターでは、初回の相談を無料で受け付けています。
まずは無料相談を利用して、困っていること・疑問に思っていることを聞いてみましょう。
無料の範囲内では費用も発生しないため、相談の答え・実際に依頼した場合の費用などを確認したうえで、依頼するかどうか判断できます。
無料相談でキャンセルしても費用はかからないため、無料相談の利用がおすすめです。
まとめ
「逆縁」の本来の意味は、仏の教えを信じずに逆らうことや、救済できない人を指しているようです。
仏教用語のため聞きなれない言葉かもしれませんが、人生100年時代が到来すると、相続用語として定着するかもしれません。
逆縁によって相続トラブルが発生した場合、両親のどちらかが存命であれば不満の火消し役になるため、争いのレベルも最小限にとどまるかもしれません。
しかし火消し役がいなくなる二次相続では、各相続人が権利を最大限主張するため、収拾がつかなくなる場合もあるでしょう。
逆縁リスクを想定した相続税対策や遺言の作成は複雑になるので、将来の相続に不安がある場合は、まず相続の専門家へ相談してください。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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