相続時精算課税制度は生前贈与が2,500万円まで非課税！節税効果はあるの？

相続時精算課税制度は、相続税ではなく贈与税に関する制度です。

ただし、相続時精算課税制度を利用すると、その後の相続税の計算は大きく変わります。

そのため、相続時精算課税制度を利用する方がいいのか利用しない方がいいのか、よく考えておく必要があります。

相続時精算課税制度を利用して節税ができたケースを知り、相続時精算課税制度を利用かどうか検討しましょう。

相続時精算課税制度は生前贈与が2,500万円まで非課税

相続時精算課税制度は、贈与税を計算する方法の1つです。

60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子供や孫に財産を贈与する際に選択することができます。

一般的な贈与は暦年贈与と呼ばれ、年間110万円まで非課税で贈与をすることができます。

その一方で、贈与する人と贈与を受ける人に関する制約はありません。

これに対して、相続時精算課税制度を選択した場合は、通算2,500万円までの生前贈与が非課税となります。

一度相続時精算課税制度を選択すると、その後暦年贈与を選択することはできなくなります。

相続時精算課税制度のメリット・デメリット

相続時精算課税制度は、通常の贈与にあたる暦年贈与とは大きく異なる制度です。

相続時精算課税制度を暦年贈与と比較した時に、どのようなメリットとデメリットがあるでしょうか。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度を利用する最大のメリットは、多額の生前贈与を行っても、その時には税負担がないことです。

最大2,500万円まで贈与を行っても、贈与税は発生しません。

また、この非課税枠は初めて相続時精算課税制度を利用した年以降に繰り越されていきます。

そのため、いきなり2,500万円の財産を贈与しなくても、翌年以降も贈与に対する税額が発生しないことになります。

多額の財産を生前に贈与できるため、そのメリットを様々な形で享受することができます。

たとえば、親が保有する財産を子供に生前贈与すれば、その財産の相続をめぐり遺産分割協議を行う必要はありません。

そのため、遺産分割時に相続人である子供同士の争いを避けることができます。

特に同族会社の株式や、自宅の土地・建物などは誰が相続してもいいというわけではありません。

ただ、遺言書を作成したとしても、必ずそのとおりに遺産分割が行われる保証はありません。

そこで、財産を相続させたい人に、確実に引き継いでもらうことができる生前贈与を行うことで、争いを防ぐことができます。

また、生前贈与により収益を生み出す財産を子供に贈与すれば、それ以後に発生する収益も子供が受け取ることとなります。

生前贈与を行わなかった場合、その収益物件が相続財産になるだけでなく、収益自体も預金などとして相続財産に含まれます。

また、親世代が他にも多額の所得を得ている場合は、所得税の税率も高くなり、税負担が大きくなってしまいます。

そこで、収益物件を子供や孫世代に贈与し、収益を子供や孫が得られるようにします。

こうすれば、将来的に発生する相続税の納税資金も、子供や孫が貯めることが可能となることが見込めます。

相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、贈与した人が亡くなった時に、相続財産に含めることとされています。

ただ、贈与した財産は、贈与した時の評価額を使って相続税の計算を行うこととされています。

そこで、将来値上がり確実な財産がある場合には、相続時精算課税制度により贈与すると、相続税の金額が少なくなることが期待できます。

ただ、必ず値上がりする財産はないため、このメリットは逆にデメリットとなってしまう可能性もあります。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度を利用するデメリットは、生前贈与した財産が将来的に相続財産となり、相続税の課税対象となることです。

通常の贈与により贈与された財産は、亡くなる前3年以内に贈与されたなど一部の例外を除き、相続財産には含めません。

110万円の基礎控除内の贈与であれば、贈与税も相続税も一切の負担なく、子供や孫に贈与することができます。

しかし、相続時精算課税制度を選択すると結果的に相続財産に含めるため、受贈者に負担が生まれます。

2,500万円まで非課税となるのは贈与税だけの話であり、相続税の負担は発生することになります。

一度相続時精算課税制度を利用すると、通常の暦年贈与を選択することはできなくなります。

暦年贈与の非課税枠は、毎年発生する基礎控除110万円となります。

金額は相続時精算課税制度の非課税枠2,500万円より少ないですが、毎年110万円の基礎控除を使うことができます。

そのため、暦年贈与を20年行えば非課税枠の合計は2,200万円、30年であれば3,300万円となります。

暦年贈与により贈与した財産は相続財産にならないということも考えると、暦年贈与の方が、税負担が軽減されることが多いといえるでしょう。

また、相続時精算課税制度により贈与された財産について相続税を計算する場合、その財産の評価額は贈与時の評価額で計算します。

たとえば贈与してから30年後に相続が発生した場合など、財産の価値が下落していても、相続税は大きくなることもあり得ます。

この場合、生前贈与した財産に小規模宅地等の特例を適用できず、相続税の税負担を軽減することができません。

そのため、どのような財産を贈与するかによって、相続税の負担感が大きく変わる点に注意が必要です。

相続時精算課税制度で節税できた事例

相続時精算課税制度には、多くのメリットとデメリットがあるので、節税になる場合とならない場合とがあります。

実際に、どのような財産をこの制度で贈与すると節税になったのか、その具体例をご紹介します。

値上がり確実な財産を贈与した

土地や株式などは、贈与した日や相続が発生した日の評価額をそれぞれ計算しなければなりません。

相続時精算課税制度を利用した場合、贈与した日の評価額が、相続が発生した日の評価額より低ければ節税になります。

ただし地価や株価は日々変動しており、その評価額は常に上がり下がりしています。

時間が経過するほど価格が上がるわけではないため、相続時精算課税制度を利用すれば節税になるとは限りません。

ただし、明らかにその価値が変わる場合があります。

たとえば農地が宅地になる場合、その評価方法がまったく異なるため、同じ土地でも何倍もの評価額になることがあります。

そこで、農地のうちに相続時精算課税制度を利用して贈与しておけば、相続発生時に宅地となっても評価額は低いままとなります。

必ず値上がりすることがわかっている場合には、その値上がり前に贈与しておくと節税になります。

収益物件を贈与した

収益物件を亡くなるまで持ち続けていると、その土地や建物だけでなく、毎月発生する家賃収入も相続財産となります。

そのため、相続税の計算対象に含まれる財産が多くなり、相続人の負担が増える結果となるでしょう。

そこで、収益物件を子供や孫に相続時精算課税制度を利用して贈与する方法で節税を行います。

家賃収入を生む土地や建物を贈与すると、その日以後に発生する家賃収入は贈与された人のものとなります。

その結果、親世代、祖父母世代の相続財産がこれ以上大きく増えることはなくなります。

また、相続税の納税資金を家賃収入から確保することもできるようになります。

相続時精算課税制度の手続き・必要書類

相続時精算課税制度を利用するためには、相続税の申告書を税務署に提出する必要があります。

財産の贈与を受けた人が、相続時精算課税制度を利用して贈与税の計算を行った申告書を作成し、申告すれば適用を受けられます。

また、初めて相続時精算課税制度を利用する申告書を提出する際には、以下の事項を証明する必要があります。

・受贈者の氏名や生年月日
・受贈者が贈与者の推定相続人である子または孫である

そのため、受贈者の戸籍謄本または戸籍抄本を添付することとされています。

相続時精算課税制度を利用するときの注意点

前述したように、相続時精算課税制度を利用することで、デメリットを受けてしまう場合もあります。

また、税額が発生しなくても贈与税の申告が必要となるため、以下のような注意点を覚えておきましょう。

2回目以降も相続時精算課税制度の申告書を提出する

相続時精算課税制度を利用すると、通算して2,500万円までの贈与は非課税となります。

初めて相続時精算課税制度の申告をする際は忘れることはないのですが、2回目以降の申告を忘れてしまう場合があります。

特に、2回目以降が少額の贈与である場合には忘れがちです。

しかし2回目以降の贈与が行われた場合、税額がゼロとなった場合でも申告しなければなりません。

110万円以内の基礎控除は適用されない

暦年贈与を行っている場合、年間110万円までの贈与は非課税とされていました。

しかし、相続時精算課税制度は暦年贈与とは別の制度となっているため、110万円の基礎控除は適用されません。

そのため、たとえ10万円でも5万円でも、贈与を受けた場合には申告しなければなりません。

必ず節税になるわけではない

相続時精算課税制度のメリットやデメリットをご紹介したとおり、贈与された財産は相続税の計算対象となります。

そのため、相続時精算課税制度を利用すれば必ず節税になるとは限りません。

むしろ、相続時精算課税制度を利用することで、かえって税負担が増えてしまうこともあり得ます。

前述した事例を参考に、少しでも節税できる贈与方法を検討しましょう。

まとめ

相続時精算課税制度は、通常の贈与である暦年課税制度とは別の贈与の制度として定められています。

贈与税の計算方法や相続発生時の考え方など、まったく別のものとなっているため、注意しましょう。

その中でも、相続時精算課税制度を利用することで節税効果が得られる財産はあります。

将来的な相続税の負担まで考慮したうえで、相続時精算課税制度を利用するようにしましょう。

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