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最終更新日:2023/7/28

【具体例付き】相続時精算課税制度で贈与者が亡くなった時の相続税計算方法

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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【具体例付き】相続時精算課税制度で贈与者が亡くなった時の相続税計算方法

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この記事でわかること

  • 相続時精算課税制度を利用した場合の相続税の計算方法がわかる
  • 相続時精算課税制度で贈与者が亡くなった時の相続税の計算方法がわかる
  • 相続時精算課税制度を利用した年に相続人が亡くなった場合の対処法がわかる

相続対策として、相続時精算課税制度を利用することができます。

ただ、相続時精算課税制度を利用すると、相続が発生した時の相続税の計算にその財産を含める必要があります。

どのような計算を行うのか、実際の計算例を用いて解説していきます。

また、相続時精算課税制度により贈与した人が、その年に亡くなった場合の対処法についてもご紹介します。

相続時精算課税制度は贈与者が亡くなった時に相続税を計算する

相続時精算課税制度は、子どもや孫に対して贈与を行い、贈与した財産の額が2,500万円まで贈与税がかからなくなる制度です。

もし2,500万円を超える贈与を行った場合には、一律20%の贈与税を納税しなければなりません。

この制度を適用すると、贈与した時に発生する贈与税に、多額の非課税枠を設けています。

一方で贈与者が亡くなった時には、相続時精算課税制度により贈与された財産も相続財産に含めて相続税を計算します。

贈与税を納付している場合には、その納付税額を相続税額から控除して、差額を納付することとなります。

また、贈与税の方が相続税より大きくなる場合には、納め過ぎとなった税額を還付してもらうことができます。

贈与した財産の額が大きくなると、相続時精算課税制度を利用しても贈与税は発生します。

ただ、最終的な税額は、贈与者が亡くなって相続税を計算する時に決定することとなります。

相続時精算課税制度で贈与者が亡くなった時の相続税計算方法

実際に、相続時精算課税制度を利用して贈与税の計算を行い、その後相続税の計算をする方法をご紹介します。

具体的な事例にあてはめて、贈与税と相続税の計算の流れを確認していきましょう。

事例

ここでご紹介する事例は、以下のとおりです。

  • 贈与者 父親A(70歳)
  • 受贈者 長男C(40歳)
  • その他の家族 Aの配偶者B(65歳)、次男D(37歳)
  • 贈与した財産 土地(贈与した時の評価額4,000万円、Aが亡くなった時の評価額5,000万円)
  • 相続財産 預金6,800万円、有価証券3,000万円

相続時精算課税制度で贈与者が亡くなった時の相続税計算の事例

生前贈与を行った際には、相続時精算課税制度を利用して申告・納税を行います。

また、相続の際には、有価証券を配偶者Bがすべて相続し、預金を長男と次男が1/2ずつ分けるものとします。

贈与税の計算

まずは、父親Aから長男Cに贈与された土地について、相続時精算課税制度による贈与税の計算を行います。

相続時精算課税制度を利用すると、通算して2,500万円までの財産については非課税で贈与できる一方で、2,500万円を超える部分の金額に対しては一律20%の税率で贈与税が課されます。

そのため、贈与された土地に対する贈与税の金額は、以下のようになります。

 

計算例

(4,000万円-2,500万円)×20%=300万円

相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与された翌年の2月1日から3月15日までに申告・納税しなければなりません。

もしこの間に申告・納税を行わなかった場合、相続時精算課税制度は利用できなくなります。

その結果、さらに多額の贈与税を納付しなければならなくなることに注意しましょう。

相続税の計算

相続時精算課税制度により贈与を行った父親Aが亡くなると、Aが保有していた財産にもとづいて相続税の計算を行います。

相続税の計算は、亡くなった時に保有していたすべての相続財産の評価額をもとに行います。

ただし、相続時精算課税制度により贈与された財産がある場合は注意しなければなりません。

相続時精算課税制度により贈与された財産についても、その贈与された時の評価額を相続財産に含める必要があるからです。

そこで、この事例に沿って順番に相続税額を計算していきます。

①すべての相続財産を確認する

まずは、どのような相続財産があるのかを確認していきます。

亡くなった時に被相続人が保有している財産の他、亡くなる前3年以内に贈与された財産も相続財産に含めます

また、相続時精算課税制度により贈与された財産は、その贈与の時期に関係なく、すべて相続財産に含めなければなりません。

この事例では、相続財産とその金額は以下のとおりです。

  • 預金 6,800万円
  • 有価証券 3,000万円
  • 贈与された土地 4,000万円
  • 合計 1億3,800万円

相続時精算課税制度により贈与された財産の評価額は、相続時の評価額ではなく贈与時の評価額を用いることに注意しましょう。

②法定相続人を確定する

法定相続人となる人は、民法によって定められています。

配偶者は常に法定相続人となりますが、それ以外には子ども、直系尊属、兄弟姉妹の順に該当する人がいるかを確認していきます

そして、該当する人がいれば、それ以後の人は法定相続人にはなれません。

今回の事例では、配偶者Bの他に長男C及び次男Dの3人が法定相続人となります。

③基礎控除額の計算を行う

法定相続人の人数が確定したら、この人数にもとづいて基礎控除額を計算します。

基礎控除額の計算式は、以下のとおりです。

基礎控除額の計算式

3,000万円+600万円×法定相続人の数

今回の事例では法定相続人が3人となったため、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

なお、養子が法定相続人となる場合は、人数のカウントに注意しなければなりません。

もし養子の他に実子がいる場合は、養子は1人までしか含めることができません。

また、実子がいない場合には、養子は2人まで含めることができます。

④相続税の課税遺産総額を計算する

相続財産の合計額から基礎控除額を差し引いて、相続税の課税対象となる金額を求めます。

この事例では、相続財産の金額は1億3,800万円、基礎控除額は4,800万円のため、課税遺産総額は9,000万円となります。

なお、この時点で相続財産の合計額が基礎控除額より少ない場合、差引計算を行うとマイナスとなってしまいます。

このような場合は、課税対象になる相続財産がないものとされるため、相続税は発生しません。

相続税が発生しないだけでなく、相続税の申告も行う必要はありません。

⑤相続税の総額を求める

課税遺産総額から、相続人全員で納付すべき相続税の金額を計算します。

まずは、課税遺産総額を法定相続分に分割したものとして、その金額を計算します。

この事例の場合、法定相続人が配偶者と子ども2人であるため、配偶者4,500万円、2人の子どもがそれぞれ2,250万円となります。

次に、法定相続分に分割した金額を相続税の速算表にあてはめて、相続税額を求めます

相続税の速算表は、以下のようになっています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参考:国税庁

4,500万円に対する税額は、4,500万円×20%-200万円=700万円となります。

また、2,250万円に対する税額は、2,250万円×15%-50万円=287.5万円です。

これらの税額を合計した金額が相続税の総額となるため、この場合、700万円+287.5万円+287.5万円=1,275万円になります。

この相続税の総額は、特例などを利用しなければ相続人全員で納付しなければならない相続税額となります。

⑥それぞれの納税額を計算する

相続税の総額を求めた後に、各相続人の納税額を計算します。

実際に取得した財産の割合に応じて、相続税の総額を各相続人に按分する計算を行います。

先の事例で、各相続人が取得した財産の割合は以下のとおりです。

  • 配偶者B 3,000万円÷1億3,800万円=21.74%
  • 長男C {(6,800万円÷2)+4,000万円}÷1億3,800万円=53.62%
  • 次男D (6,800万円÷2)÷1億3,800万円=24.64%

したがって、それぞれの納税額は以下のようになります。

 

計算例

配偶者B 1,275万円×21.74%=2,771,800円

長男C 1,275万円×53.62%=6,836,500円

次男D 1,275万円×24.64%=3,141,600円

⑦特例や控除額の計算をする

最後に、それぞれの相続人に適用できる特例や控除額を加味した納税額を求めます。

この事例の場合、配偶者Bについては配偶者の税額軽減が適用できるため、実際の納税額はゼロとなります。

また、長男Cについては相続時精算課税制度により納付した贈与税額300万円を差し引き、実際の納税額は3,836,500円となります。

相続時精算課税制度の利用年に贈与者が亡くなった時の対処法

相続時精算課税制度を利用するつもりで贈与を受けたものの、その年に贈与者が亡くなってしまうことも考えられます。

この場合、どのような手続きが必要となるのか、その対処法を確認していきましょう。

贈与税の申告は必要ない

相続時精算課税制度を利用して財産の贈与を受けた年に贈与者が亡くなった場合、贈与税の申告をする必要はありません

贈与3年以内に亡くなった場合は、贈与された財産は通常の相続税の手続きをとるためです。

したがって、贈与税は発生しないこととなります。

相続時精算課税選択届出書を提出する

前述したように、相続時精算課税制度を利用するつもりで贈与を受けた後に贈与者が亡くなった場合、贈与税の申告は必要ありません。

ただし、贈与したという事実は変わらないことから、何らかの手続きが必要となります。

そこで、贈与を受けた人は相続時精算課税選択届出書を作成し、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。

この届出書の提出期限は、①贈与のあった翌年の3月15日と、②相続税の申告書の提出期限のいずれか早い方です。

亡くなった日によって、①が期限になる場合と②が期限になる場合があるため注意しましょう。

まとめ

相続対策の一環として、相続時精算課税制度を利用することができます。

しかし、相続時精算課税制度により贈与された財産は、相続税の計算時に相続財産となるため、相続税の節税になるとは限りません。

相続時精算課税制度を利用する場合は、事前に相続税のことまで考えておく必要があります。

また、贈与後に相続が発生した場合の手続きは複雑になるため、期限などをよく確認しておきましょう。

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