この記事でわかること
- 準確定申告書の提出は電子申告(e-Tax)を利用できる
- 準確定申告書を電子申告する際に必要となるもの
- 準確定申告書を電子申告する時の流れ
被相続人が亡くなった年の1月1日から、被相続人が亡くなるまでの間に所得が発生していると、相続人は準確定申告しなければなりません。
準確定申告には期限があるうえに、準確定申告を書面で申告する場合には各相続人が連署で提出する必要があります。手続きに時間がかかり、期限が迫ってしまうかもしれません。
そこで、準確定申告を行う際には、電子申告を利用するのがおすすめです。
この記事では、準確定申告を電子申告で行った場合、どのような手続きなのか、何が必要になるのか、解説していきます。
目次
準確定申告は電子申告(e-Tax)できる
準確定申告は通常の確定申告と同じく所得税に関する手続きですが、申告書の作成方法や、実際に申告書を作成する人などに違いがあります。
そのため、確定申告は電子申告(e-Tax)の利用が可能でしたが、準確定申告は長らく電子申告に非対応でした。
2020年分の準確定申告から、通常の確定申告と同じく電子申告(e-Tax)が利用可能になり、準確定申告書の提出時の手間などを省くことができるようになりました。
準確定申告を電子申告(e-Tax)するときに用意するもの
準確定申告書を電子申告する際には、以下の2つを準備しておくと良いです。
- マイナンバーカード
- 相続人代表の利用者識別番号
相続人代表の利用者識別番号は必須ですが、マイナンバーカードはなくても電子申告を進めることは可能です。
しかしながら、マイナンバーカードを電子証明書として利用したり、利用者識別番号の取得に活用できたりするため、用意しておくのがおすすめです。
マイナンバーカード
マイナンバーカードは、電子申告を行う際に納税者本人が署名押印するのに代えて、本人が電子申告した証明として用いるものです。
マイナンバーカード自体の取得のためには、まずインターネットなどで申請を行います。その後、マイナンバーカードが交付されるのは、各自治体の役場となります。
なお、準確定申告は相続人全員で行いますが、マイナンバーカードは代表者1人が保有していれば問題ありません。
また、パソコンでマイナンバーカードを読み取る場合は、ICカードリーダライタが必要です。
利用者識別番号
利用者識別番号は、電子申告を行う人や法人が電子申告する前に、申請して交付を受ける16桁の番号です。12桁のマイナンバーとはまったく異なるので注意してください。
利用者識別番号は、税務署に申請する方法やWebから取得する方法などがあり、納税者本人しか交付を受けることができません。相続人が複数いる場合は、代表者1人が取得します。
なお、マイナンバーカードを使って電子申告する場合、利用者識別番号を事前に取得しなくてもアカウント登録で電子申告を進めることも可能です。
この場合は、マイナンバーカードを使って利用者情報を登録する必要があるため、その手続きを行ってください。
準確定申告を電子申告(e-Tax)する手順
ここからは、準確定申告の電子申告を行うための必要書類ややり方の手順を解説していきます。
まずは、準確定申告を電子申告で行う場合の手順から取り上げます。
- 被相続人の所得計算を行う
- e-Taxソフトを準備する
- 電子証明書を取得する
- 利用者識別番号等の取得を準備する
- 申告書を作成する
- 電子申告を行う
①被相続人の所得計算を行う
年度の途中で被相続人が亡くなって相続が発生した場合、まずはその年の1月1日から亡くなった日までの確定した所得や税額を計算します。
準確定申告が必要かどうか、あるいは準確定申告により還付される税金があるかどうかを確認しましょう。
被相続人が確定申告が必要な状況で、「亡くなった年に所得が発生しているか」「亡くなった年に源泉徴収されている税額があるか」など、いずれかに該当すると、準確定申告を検討しなければなりません。
その上で、源泉徴収票や収入金額・必要経費のわかる書類など、計算時の参考となる資料を集める必要があります。
②e-Taxソフトを準備する
準確定申告の電子申告を行う際に、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して準確定申告書の作成を行うことはできません。
そのため、電子申告に対応した申告書ソフトを準備しておく必要があります。
国税庁のホームページからe-Taxソフトをダウンロードすることができるため、あらかじめ準備しておいてください。
③電子証明書を取得する
電子申告において、署名の代わりに申告者が本人であることを証明するのが、電子証明書です。
相続人代表者が電子証明書を発行する手続きを行い、発行された電子証明書を電子申告のデータに添付することで、相続人代表者本人から申告が行われたことが証明されます。
電子申告に利用できる電子証明書には、以下のようなものがあります。
実際には、マイナンバーカードの交付を受けたうえで、地方公共団体情報システム機構の「公的個人認証サービス」に係る電子証明書を利用するケースがほとんどです。
発行機関 | 電子証明書の種類 |
---|---|
地方公共団体情報システム機構 | 公的個人認証サービスに係る電子証明書 |
商業登記認証局 | 商業登記に基づく電子証明書(商業登記電子証明書) |
株式会社帝国データバンク | TDB電子認証サービスTypeAに係る認証局が作成する電子証明書 |
東北インフォメーション・システムズ株式会社 | TOiNX電子入札対応認証サービスに係る認証局が作成する電子証明書 |
日本電子認証株式会社 | AOSignサービスG2に係る認証局が作成する電子証明書 |
株式会社NTTネオメイト | e-Probatio PS2サービスに係る認証局が作成する電子証明書 |
セコムトラストシステムズ株式会社 | セコムパスポート for G-IDに係る認証局が作成する電子証明書 |
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 | DIACERTサービスまたはDIACERT-PLUSサービスに係る認証局が作成する電子証明書 |
地方公共団体組織認証基盤(LGPKI) | 地方公共団体(LGPKI)の認証局が作成する電子証明書 |
政府共用認証局(官職認証局) | 政府共用認証局(官職認証局)が作成する電子証明書 |
④利用者識別番号等の取得を準備する
前述したように、電子申告を行うために準備しなければならないのは、利用者識別番号です。
利用者識別番号の取得方法は、大きく分けて「税務署で直接申請する方法」と「Web上で申請する方法」があります。
- e-Taxソフトのログイン画面からマイナンバーカードを使用してアカウント登録
- Web上の「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」から取得
- マイナポータルの「外部サイトとの連携」ページを通じて取得
- 国税庁サイト「確定申告書作成コーナー」よりID・パスワード方式の届け出を送信
- 税務署でID・パスワード方式での届出を作成する
- 国税庁サイトより用紙をダウンロードし、必要事項を記入して税務署に送付する
インターネットで申請すれば、その場で利用者識別番号を入手することができるため、早く次の手順に進むことができます。
e-Taxソフトを利用して、申告書を作成します。事業や不動産賃貸による収入がある場合は、帳簿を作成しなければならないため、帳簿を作成するところから始めます。
また、年金や給与だけを受け取っている場合は、その金額を申告書に入力してください。入力する項目や金額を間違えると、税額の計算も変わってしまうため、注意が必要です。
⑥電子申告を行う
準確定申告書を作成したら、その申告書を税務署に電子申告します。利用者識別番号をソフトに登録し、その申告書データにマイナンバーカードの電子証明書を付与して送信します。
送信する準確定申告書の書類は、以下のとおりです。なお、所得税の計算において青色申告決算書や収支内訳書を作成した場合には、これらの書類も一緒に送信します。
準確定申告を電子申告(e-Tax)する際の必要書類
準確定申告を電子申告する際、以下のような書類を用意する必要があります。
- 所得税及び復興特別所得税の準確定申告書(第一表、第二表)
- 亡くなった方の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
- 準確定申告の確認書(※)
- 委任状(※)
(※)相続人が2名以上の場合
なお、準確定申告の確認書と委任状は相続人が2名以上いる場合に必要で、委任状は特定のケースに限られます。
所得税及び復興特別所得税の準確定申告書(第一表、第二表)
準確定申告書自体の様式は、通常の確定申告書と同じです。氏名欄には、被相続人であることがわかるようにして、被相続人の氏名を記載します。
なお、令和元年分以前の準確定申告書は電子申告で提出することができないため、注意が必要です。
亡くなった方の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
納税額が発生した場合の各相続人の納付額、あるいは還付になった場合の各相続人の還付税額を記載します。
書面で準確定申告を行う場合、付表の使用は相続人が2名以上いるケースに限られますが、電子申告の場合は、相続人が1名でも必ず確定申告書付表を提出しなければなりません。
準確定申告の確認書
所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について|国税庁より引用
相続人が2名以上いる状況で電子申告を行う場合、準確定申告の確認書の相続人全員が申告内容の確認と署名を行ったうえで、書面で作成します。
その後PDFデータに加工して、電子申告のデータに添付して送信します。
委任状
相続人が2名以上おり、相続人の代表者が準確定申告による還付金を受け取る場合、委任状をPDF方式で作成したうえで送付する必要があります。
なお、委任状には、代表者以外の相続人全員が申告内容や還付額を確認したうえで、記名と認印が必要です。あらかじめ連携しスムーズに対応できるようにしてください。
準確定申告を電子申告(e-Tax)するときの注意点
準確定申告を電子申告する場合は、注意点がいくつかあります。
- 確定申告書等作成コーナーでは準確定申告書を作成できない
- e-Tax対応のパソコンやスマホを利用する
- 電子申告しても節税になるわけではない
準確定申告ならではの気をつけるべきポイントもあるため、ぜひ参考にしてください。
確定申告書等作成コーナーでは準確定申告書を作成できない
電子申告時に準確定申告書を作成する場合、確定申告書等作成コーナーを利用することはできません。
国税庁ホームページからe-TaxソフトをダウンロードするかWeb上で入力し、準確定申告書を作成します。
e-Tax対応のパソコンやスマホを利用する
e-Taxソフトはダウンロード版とWeb版があり、パソコンやスマホの利用環境に応じて選択することができます。
e-Taxサイトに推奨OSやブラウザが記載されているため、電子申告前に確認しておきましょう。
なお、ダウンロード版ではMacOSのパソコンが未対応となっているため、注意が必要です。
電子申告しても直接節税になるわけではない
準確定申告を電子申告で行うことが、直接節税に繋がるわけではありません。
特に被相続人が年金や給与などの形で所得を得ていた場合、電子申告によるメリットは、手間を省けるなど手続き面に限られます。
青色申告の場合は節税効果が期待できる
不動産所得があるなど、青色申告で準確定申告を行う場合、青色申告特別控除を受けられる可能性があります。
青色申告特別控除における複数の適用要件を満たすと、55万円の所得税控除を受けられます。
加えて、他の適用要件を満たしたうえでe-Taxで電子申告を行った場合、最大65万円の控除を受けられるため、節税効果も期待できます。
準確定申告の期限は4カ月
通常の確定申告は、2月16日から3月15日までの間に申告・納税を行いますが、準確定申告は違います。
準確定申告は相続発生日(被相続人が亡くなったことを知った日)の翌日から4カ月以内に申告しなければなりません。
通常の確定申告のように、毎年決められた時期に行うものではないことに気を付けてください。
電子申告(e-Tax)のメリット
ここからは以下のような電子申告のメリットを解説します。
- 自宅から24時間申告ができる
- スマホでも手続き可能
自宅から24時間申告ができる
節税以外には物理的な手間の削減にもつながります。
紙で申請した場合、自宅からポストや郵便局へ出向かなければならず、また発送しても受け渡しまで数日掛かっていました。しかし電子申告なら自宅から24時間いつでも申告可能です。
また還付金があった場合、紙でのやり取りより電子申告の方が還付までの期間が短くなるメリットもあります。
スマホでも手続き可能
電子申告はスマートフォンからも申告が可能です。
マイナンバーカードを使用してパソコンから電子申告をする場合、カードを読み取るための装置が別途必要になります。
しかしスマートフォンならカメラを使用し、マイナンバーカードを読み取ることができるため手軽に手続きできます。
まとめ
準確定申告において書面で税務署に提出する際は、相続人全員分のマイナンバーカードのコピーなどを添付しなければならず、手間がかかってしまいます。
そこで、電子申告を行って、必要書類や申告書の作成にかかる手間を減らしてみてください。
相続手続きで忙しい中ですが、期限が4カ月と短いため、早めに準確定申告が必要かどうか確認することが大切です。
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