この記事でわかること
- 相続税の障害者控除の概要
- 相続税の障害者控除の大まかな計算方法
- 障害者控除を適用する場合の注意点
障害者の相続人必見!「相続税の障害者控除」を賢く利用する方法 #相続税 #障害者控除
動画の要約相続税の障害者控除は、障害を持つ相続人が相続した財産に対して税額を軽減する特例です。控除額は最大1700万円で、障害者控除は税額から直接控除されるため、節税効果が高いです。適用要件には法定相続人であること、日本国内に住所があること、障害者であることなどがあります。また、一般障害者と特別障害者で控除額が異なり、特別障害者の方が控除額が大きくなります。障害者控除の計算方法や申告手続きについても詳しく解説しています。
相続税の障害者控除とは
相続税の障害者控除(障害者の税額控除)とは、相続または遺贈によって財産を取得した相続人が85歳未満かつ障害を抱えている場合、相続税から一定額を差し引ける制度です。 相続税の障害者控除は、障害のある相続人の経済的負担を軽減することを目的としています。 そのため、被相続人ではなく、相続人が障害者控除の対象となります。障害者控除の適用要件
相続税の障害者控除を受けるためには、85歳未満の対象者が相続または遺贈により財産を取得していなければなりません。 そのうえで、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。- 法定相続人であること
- 相続または遺贈で財産を取得したとき、日本国内に住所がある人
- 相続または遺贈で財産を取得したとき、障害者である人
法定相続人であること
第一に、対象者が法定相続人でなければなりません。 相続放棄をした場合でも相続税法上では法定相続人として扱われますが、遺言で法定相続人以外が受遺者となった場合は対象外となります。相続または遺贈で財産を取得したとき、日本国内に住所がある人
第二の要件として、相続開始日に日本国内に住所がある人が対象となります。 なお、日本国内に住所がある場合でも、相続人が一時居住者かつ、被相続人が外国人被相続人もしくは非居住被相続人のケースは対象外です。- 一時居住者とは
- 「一時居住者」とは、相続開始時に在留資格を保有し、その相続の開始前15年以内に日本国内に住所がある期間の合計が10年以下の人。
- 外国人被相続人とは
- 相続開始時に在留資格を保有しているうえで、日本国内に住所を有していた人。
- 非居住被相続人とは
- 相続開始時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、以下の①もしくは②に当てはまる人
①相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある人のうち、そのいずれの時においても日本国籍を有していなかった人
②その相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人 - 参照:No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁
相続または遺贈で財産を取得したとき、障害者である人
第三の要件は、相続開始日において対象者が障害者であることです。 障害者に該当するかを判定するタイミングは原則として相続開始日時点ですが、相続開始時に障害者手帳を持っていなくても、以下の要件を満たせば対象となる可能性があります。- 相続税申告書を提出する時点で、障害者手帳の交付を受けているか、または交付を申請中であること
- 相続開始時の状況において、医師の診断書などによって、手帳に記載される程度の障害があると明らかに認められること
控除額の基本的な計算方法
相続税における障害者控除額は、85歳から相続開始時における障害者の年齢を引いたうえで、その年数に一定額を乗じる形で計算されます。 障害者には「一般障害者」と「特別障害者」の二つの区分があり、一般障害者の場合は控除される年数に10万円を、特別障害者の場合は20万円を乗じます。計算例
一般障害者の場合
(85歳 - 相続した年齢) × 10万円 = 控除額
計算例
特別障害者の場合
(85歳 - 相続した年齢) × 20万円 = 控除額
一般障害者とは
一般障害者には、精神障害者保健福祉手帳の2級または3級を持っている方、身体障害者手帳の3級から6級までの方、戦傷者手帳第4〜第6項症に該当する方が該当します。 また、療育手帳等の交付を受けている方のうち、軽度・中度と判定された方もこれに含まれます。療育手帳の交付を受けている場合でも障害者控除は適用できる
児童相談所もしくは知的障害者更生相談所の判定に基づいて交付される「療育手帳」を保有している場合でも、障害者控除の適用を受けることができます。
なお、療育手帳は自治体によって手帳自体の名称や障害の程度を示す区分が異なるケースがあるため、確認しておくと良いでしょう。
特別障害者とは
特別障害者は、精神障害者保健福祉手帳の1級、身体障害者手帳の1級または2級を持っている方が該当します。 また、児童相談所等の判定から療育手帳において重度と記載された方も特別障害者として認定されます。成年被後見人も特別障害者として扱われる
成年被後見人は、家庭裁判所に「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と判断され、後見開始の審判を受けた人を指します。
この点を踏まえ、所得税法および相続税法上で成年被後見人は、特別障害者として扱われます。
市町村長等の認定により対象となる場合
要介護認定を受けているだけでは、障害者控除の直接の要件とはなりません。 しかしながら、相続人が65歳以上かつ要介護認定を受けている場合、市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで、相続税の障害者控除の適用を受けることができます。 なお、障害者控除対象者認定の基準は自治体ごとに異なるため、申請を検討している場合は事前に自治体に確認すると安心です。控除額の計算事例
控除額の計算事例を一般障害者の方の場合と特別障害者の方の場合に分けて、解説します。 たとえば、相続開始時に60歳の一般障害者の方の場合、計算式は「(85歳-60歳)×10万円」で相続税額から直接控除できる控除額は250万円となります。 一方、同じく相続開始時に60歳の特別障害者の方の場合は、計算式が「(85歳-60歳)×20万円」となり、控除額は500万円となります。控除しきれない金額は扶養義務者の相続税額から控除できる
障害者控除を適用した相続人の相続税額が控除額に満たない場合、引ききれなかった分の控除額は他の相続人の相続税額から控除できます。 たとえば、障害をお持ちの相続人の相続税額が200万円で控除可能額が350万円の場合、控除しきれなかった150万円分を、「扶養義務者」である他の相続人の相続税額から控除することができます。 この扶養義務者には、配偶者、直系血族(親や子)、兄弟姉妹のほか、一定の条件下で三親等以内の親族も含まれます。事例
控除しきれない障害者控除額を扶養義務者に振り分けた場合
たとえば、相続人が扶養義務者である長男と障害をお持ちの次男で、長男の相続税額が400万円で次男の相続税額が200万円とします。
次男の障害者控除額が350万円だとした場合、(200万円-350万円=▲150万円)で150万円分控除しきれないこととなります。
この150万円分を長男の相続税額400万円から差し引くことができるため、長男の相続税額は250万円となります。
過去に相続で障害者控除を受けている場合は控除額が制限される
障害者控除は複数回利用することもできますが、対象の相続人が過去に相続で障害者控除を受けている場合は控除額が制限されます。 たとえば、父親の相続(一次相続)で障害者控除を適用し、その後、母親の相続(二次相続)でも控除を受ける場合、二次相続での控除額には一定の制限が設けられます。 具体的には、二次相続での控除可能額は、通常の計算式で算出された金額と、一次相続で使い切れなかった控除額のいずれか少ない方となります。以下の①と②どちらか少ない方の金額
①(85歳 - 今回の相続開始時の年齢) × 10万円(※20万円) = 控除額
②(85歳 - 最初の控除を受けた年齢) × 10万円(※20万円) - 控除の合計額 = 控除額
※特別障害者の方の場合
相続税の障害者控除を申告する際のポイント
相続税の障害者控除を申告する際、以下のような注意点があります。- 障害者控除の適用で相続税の課税額が基礎控除額を下回る場合は申告不要
- 障害者控除を申告する際の必要書類
- 控除漏れや誤りが判明した場合は修正申告や更正の請求を行う
- 相続財産が未分割でも適用は可能
- 障害者控除は他の相続税控除と併用できる
- 相続放棄をしている場合の障害者控除適用に関する注意点
障害者控除の適用で相続税が0円の場合は申告不要
障害者控除の適用で全ての相続人の相続税課税額が基礎控除額を下回る場合は、相続税の申告自体が不要となります。 なお、同じく相続税の負担を軽減できる「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった制度は適用要件に相続税申告が含まれています。 こちらの2つの制度を適用して相続税がかからなくても申告自体は必要のため、注意が必要です。障害者控除を申告する際の必要書類
相続税申告で障害者控除の適用を受ける場合、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」に必要事項を記入して提出します。 加えて、適用対象の相続人が相続開始時において障害者であることを証明する書類が必要です。具体的には、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、療育手帳などのコピーを申告書に添付します。 なお、相続開始時に障害者手帳や療育手帳の交付を受けていなかった場合でも、申告時までに手帳の交付を受けるか、または交付申請中であれば対応が可能です その場合は、相続開始時において障害者に該当する状態であったことを証明する医師の診断書のコピーが必要となります。控除漏れや誤りが判明した場合は修正申告や更正の請求を行う
相続税の障害者控除には当初申告要件が設けられていないため、修正申告や更正の請求を行っても控除を適用できます。 たとえば、相続税申告時に控除の存在を知らずに申告を済ませてしまった場合でも、相続税の申告期限から5年以内であれば更正の請求により、控除の適用を受けることができます。相続財産が未分割でも適用は可能
相続財産が未分割の場合でも、相続税の障害者控除を適用することができます。 同じく相続税の税額控除である配偶者の税額軽減の場合、適用するには遺産分割が確定していなければなりませんが、障害者控除にはそのような要件はありません。 そのため、相続財産が未分割の場合、法定相続分に応じて計算された相続税額に基づいて申告と納税をします。その後、実際の遺産分割が行われた際に、必要に応じて修正申告を行うことになります。障害者控除は他の相続税控除と併用できる
相続税の障害者控除は他の相続税控除と併用することができます。たとえば、相続人である配偶者が障害を抱えている場合、配偶者の税額軽減と障害者控除を併用可能です。 そのため、配偶者の税額控除の適用で相続税が0円となったならば、使用していない分の障害者控除額を他の扶養義務者に振り分けることができます。 ただし、配偶者の税額軽減の適用要件には相続税申告が含まれているため、併用する場合は相続税申告が必要です。相続放棄をしている場合の障害者控除適用に関する注意点
障害者控除の要件には「法定相続人であること」が含まれていますが、この法定相続人の中には元々相続人であり相続放棄により民法上の相続人に該当しなくなった者も含まれます。 よって、相続放棄をしたとしても障害者控除の適用は可能ですが、相続放棄をして一切の財産を取得していない場合には障害者控除の適用はできません。 つまり、死亡保険金等の受取人固有の財産であるみなし相続財産を取得して相続放棄をした人が障害者控除の適用対象となります。相続税の障害者控除の疑問は相続専門税理士のような専門家に相談しよう
相続税の障害者控除は、障害をお持ちの方とそのご家族の生活を支援する重要な制度です。この制度の特徴は、相続税額から直接控除できる点にあり、適切に活用することで相続税の負担軽減にも繋がります。 しかし、制度の活用にあたっては適用要件を把握したり、相続税申告が必要な場合は申告書を作成しなければなりません。 相続税の障害者控除に関して不明な点がある場合は、相続税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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