この記事でわかること
- タンス預金とは何か
- タンス預金が相続対策になるかどうか
- タンス預金のメリット・デメリット
遺産相続でよく耳にする「タンス預金」とは一体どのようなものでしょうか。
タンス預金自体が悪いことではありませんが、脱税を企む人がタンス預金を利用する事実があり、税務署からはあまり好ましい行為とは見られていません。
下手なやり方をして税務署に睨まれないように、このページをよく見て、タンス預金について詳しく知っておきましょう!
目次
タンス預金とは?
タンス預金とは、まとまった現金を金融機関に預けずに自宅で保管することです。
かつては、現金をタンスに仕舞い込んでおくことが多かったため、現在もこの表現が使われています。
自宅の金庫やベッドの下、冷蔵庫、仏壇、さらに庭に埋めておかれた現金も同様にタンス預金と呼ばれます。
特に多いのは、現金を自宅保管している場合や亡くなった方の預金口座から、親族などが引き出して手元に保管するケースです。
タンス預金のメリット
タンス預金にどんなメリットがあるのかを説明します。
銀行が倒産してもお金が減らなくてすむ
「銀行にお金を預けておけば安心」というイメージがある人も多いでしょう。
しかし、不祥事や不景気の影響を受け銀行が倒産するようなことになれば、元本1,000万円を超える部分については保証されません。
これは、預金保証制度によって決められています。
そのため、1,000万円を超える預金を銀行に預けるのは、倒産した場合にリスクがあると言えるのです。
手元にすぐ使えるお金があるので安心
被相続人が死亡した場合、被相続人の銀行預金はすぐに凍結されて、基本的には相続の内容が決定されるまで預金を引き出せません。
しかし、タンス預金として手元に持っておけば、自由に使えます。
被相続人の死亡直後は葬儀費用が必要ですが、葬儀の規模によっては数百万円になることもあります。
このような大きなお金を親族が立て替えるのが難しい場合、タンス預金は便利でしょう。
国に財産を把握されずにすむ
2023年10月現在、マイナンバーの連携は義務化されてはいませんが、マイナンバーの紐づけを求める金融機関も増えています。
将来的には、国に財産の把握がされやすい状況になるでしょう。
例えば、銀行の預金口座から大きな額の振り込み(年間110万円以上の贈与が課税対象)が第三者に対して行われれば、贈与税課税の指摘をされる可能性が高いです。
タンス預金ならばこのような財産の移転の記録が残らず、税務署から都度チェックが入ることはないでしょう。
とはいえ、記録が残るかどうか・税務署にチェックされるかどうかに関わらず、贈与や相続は一定のルールで税金の申告が必要です。
くれぐれも脱税のためにタンス預金を用いないようご注意ください。
タンス預金のデメリット
タンス預金のデメリットやリスクについてみていきましょう。
預金利息がつかない
銀行に預けていると預金額に対する利息がつきますが、タンス預金の場合は利息が付きません。
とはいえ、現実的には銀行預金の水準は非常に低い水準です。
メガバンクの定期預金では1年預けても0.002%に留まります。
インフレで価値が目減りする可能性がある
インフレとは、物価が上がることです。
現在の100万円の価値で購入できるものが、10年後に物価が上がり購入できなくなっている可能性があります。
インフレで現在の財産の価値が下がることを見越して、株式投資などで資産運用をすれば資産を増やせるでしょう。
アベノミクス以降株式市場は上昇傾向にあるので、資産運用による利益を得られないのはタンス預金のデメリットになります。
相続時のトラブルの元になることがある
タンス預金は相続発生時に相続人同士の財産分配のトラブルになる可能性があります。
相続は遺言書がある場合は遺言書の内容に従いますが、遺言書がない場合は相続人同士の話し合いによって遺産の分配方法を決めます。
その時に、想像していたよりも相続財産が少ないと、同居していた相続人等のタンス預金の使い込みを疑われるケースもあるでしょう。
盗難や災害のリスクがある
タンス預金を相続財産として載せずに申告していたことが税務署に見つかった場合には、重いペナルティが課せられます。
しかし、それ以外にも怖いのが盗難や災害によってせっかくのお金が手元から無くなってしまうことです。
特に近年はタンス預金が増加してきたことに伴って、タンス預金を狙った空き巣や詐欺も増加してきています。
相続税対策でタンス預金を使うのは違法
タンス預金をする人の多くが、相続対策として有効であり税務署に見つからずに済むと考えています。
預貯金は一度現金として引き出せば、以後は金融機関など他人の目に触れることがないと思っているためです。
しかし実際には、金額の大きな預貯金だと税務署に見つかってしまい、最終的には相続税の対象として課税される場合がほとんどです。
税務署は銀行口座の細かな入出金を調べて、怪しい取引があれば調査が入ります。
相続税申告をした家庭は、他の税金の申告をした人と比べて税務調査の入る確率が高いです。
タンス預金を使って、意図的に相続財産の金額を下げてしまうと、それは脱税となります。
税務調査で発覚すると、ペナルティとして通常よりも高い金額の相続税を払うことになるかもしれません。
「いくらまでなら違法ではない」というわけではなく、タンス預金として相続財産に載せないこと自体が違法になります。
預金から引き出した現金が100万円以上になるとタンス預金の疑いがかけられます。
引き出したお金を何に使ったのか、しっかりとした説明ができ、客観的な証拠もあれば問題になることはありません。
しかし、何に使ったのか説明できない場合は、タンス預金として現金が保管されているのではないかという疑念を持たれます。
税務調査で徹底的に調べられることになるので注意してください。
タンス預金が税務署にバレる理由
なぜ税務署はタンス預金を見つけられるのでしょうか。
税務署は口座名義人の同意なしで取引記録を調査できる
税務署には銀行や証券会社などあらゆる金融機関に対し、口座名義人や相続人からの同意なく調査する権限があります。
調査権限に基づいて、ターゲットとなる人の預金の入出金履歴はすべてチェックされます。
亡くなった方の預金から引き出され、その親族の口座に入金されればその一部始終は丸見えです。
また、引き出された後に入金されない場合には、使われたかどこかに保管されていることがバレてしまいます。
なお、被相続人の口座からの出金が100万円を超えると、税務署はタンス預金を疑います。
もちろん、引き出した100万円について、その使い道をはっきりと説明できれば問題ありません。
ただ、引き出したお金の使途が明確にできない場合、タンス預金の疑いが強くなります。
仮にタンス預金をしていなくても、何に使ったのかをはっきり説明できなければ、タンス預金と判断される可能性が高いです。
また、タンス預金の事実を明らかにするため、税務署により実地調査が行われることもあります。
死亡届の情報は税務署に通知される
人が亡くなると、市町村役場に提出される死亡届の情報が税務署に通知されます。
その事実をもとに税務署は、多額の預金などの財産のその後の行方を追跡し始めます。
この段階から税務署は、相続人がどのような申告を行うかを追っていくのです。
相続税の無申告・過少申告が疑われた時点で「お尋ね」がある
多額の預金があるのに相続税の申告が無ければ無申告と判断し、「お尋ね」と呼ばれる通知を本人宛てに送付します。
それでも相続税の申告や適正な税額の申告がなければ、相続人となる本人か担当税理士宛てに実地調査の連絡をして調査に入ります。
この段階で税務署はかなりの確証をもって調査に入るため、脱税はほぼ確実に見つかり、摘発される可能性が高いのです。
税務署の調査は無申告に限らず、適正な税額の申告をしていなかったという「過少申告」の場合でも調査が入るので注意が必要です。
このようにタンス預金は、相続対策として有効ではありません。
大きなお金の流れがあるはずなのに入口と出口で辻褄が合わなければ、税務署は調査に入ってくると考えたほうがいいでしょう。
タンス預金がばれたときのペナルティ
タンス預金が税務署に見つかって相続税の無申告や過少申告が指摘されると、重い追徴課税や、最悪の場合には刑事罰を受けるリスクがあります。
追徴課税
税務署から課せられる可能性がある追徴課税には、以下2つの種類があります。
加算税 | 懲罰的な意味合いで課せられるもの |
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延滞税 | 本来納付すべき税金に対して利息請求の意味合いで課せられるもの |
また、タンス預金が発覚した場合の加算税としては、「無申告加算税」「過少申告加算税」「重加算税」が考えられます。
このうち無申告加算税は、本来納付すべきだった税額の50万円までが15%、50万円超の部分には20%の加算税が課せられるものです。
過少申告加算税は、申告した税額が過少であった際のペナルティで、過少だった税額について5~15%の割合で課税されます。
刑事罰
相続税を脱税することは立派な犯罪です。
脱税した場合には、上述のような非常に重い税金が課せられる他にも「刑事罰」が科せられるリスクがあります。
仮に脱税目的で現金を隠す場合も、結果的に隠してしまっていた場合も刑事罰の対象になるケースがあるのです。
裁判で有罪が確定すると、以下のような罰則が科される可能性が高いです。
脱税の意思があって無申告だった場合 | 懲役5年以下または500万円以下の罰金 |
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脱税の意思がなかった場合 | 懲役1年以下または50万円以下の罰金 |
タンス預金で多額の追徴課税を請求された事例
タンス預金が税務署に簡単にはバレないだろうと思っている方も多いでしょう。
しかし、現実にタンス預金が税務署に見つかり、多額の相続税が課された事例があります。
そもそも、タンス預金をしている人が生きている間は、家族もその事実を知らないということが少なくありません。
亡くなって遺品の整理をしている中で、はじめてタンス預金をしていたことを知るケースが多くあります。
遺品の整理をしている際に多額の現金が見つかると、相続人は頭が真っ白になってしまいます。
そこで、何も見なかったことにして、相続税の申告の際に現金を申告しないことが多いのです。
しかし、タンス預金を申告しなかった場合、それは意図的な財産隠しと判断されかねません。
意図的な財産隠しと判断されれば、重加算税という極めて重いペナルティを負担せざるを得なくなります。
もしそうでなくても、相続財産の過少申告であることに変わりはありません。
不足分の税額とは別に、過少申告加算税が課されることとなります。
タンス預金は相続税対策にならない
相続税の対策方法は、たくさんあります。
たとえば亡くなった人の配偶者は「配偶者控除」という特例を利用可能です。
配偶者控除を利用すれば、1億6,000万円以下または法定相続分の財産を非課税で相続できます。
このように、条件さえ満たせば利用できる特例がたくさんあります。
タンス預金で相続税対策を検討するぐらいなら、正規の特例を活用した方がいいでしょう。
まとめ
「バレないだろう」と考えて始めたタンス預金は相続対策にならないうえ、ペナルティや一方的なリスクを負うきっかけにもなりかねません。
タンス預金が税務署から指摘された場合、本来支払う必要のなかった高額の加算税を納めなければならない可能性もあります。
相続税に対する節税対策には合法的な正しいやり方があります。
節税を考えているのであれば、タンス預金などではなく、税法上も認められている方法で適切に行うことが一番効果的です。
相続に慣れた税理士であれば、各家庭の状況を見て、適切な節税方法・手続き方法を教えてくれるでしょう。
多くの税理士は初回の相談を無料で受けつけているため、まずは初回の相談が利用するのがおすすめです。
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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