この記事でわかること
- 生前整理の具体的な内容
- 生前整理を始める適切なタイミング
- 生前整理の流れや、相談すべき専門家とその費用
人生の終わりに備える取り組みとして「終活」が普及しています。
終活の中でも、身の回り品の整理や自分名義で契約しているサービス等の管理を行う生前整理は、残される家族の負担を軽減するなど多くのメリットがあります。
この記事では、生前整理の具体的な内容や始めるのに適切なタイミング、生前整理をスムーズに進めるための流れなどについて、詳しく解説していきます。
生前整理とは
生前整理とは、自分の死後のことを考え、身の回りの品々や財産を自らの手で整理し、人生の終わりに備えることです。
生前整理は、単に不用品の処分だけではなく、自身が築き上げてきた人間関係や財産を見直し、残される家族が遺産整理で困らないようにするために行います。
生前整理はいつから始めるべき?
「生前整理」という語感から、自らの人生の終わりを意識し始めた頃から取り組むことのようにイメージする方も少なくないでしょう。
しかし、すべての人が必ずしも明日も生きているとは言い切れません。
思い立ったその時が、生前整理を始めるタイミングです。
高齢者層になってから生前整理を始める
60代や70代、またはさらに年齢を重ねてから生前整理に関心を持った方の多くは、自身が亡くなった後に残される家族を心配されていることでしょう。
万が一の時に備えて自ら率先して動き始めることで、親族は一緒に作業しながら、あなたの資産や大事なものへの理解を深めてくれます。
現役世代のうちから生前整理を始める
働き盛りの40代や50代から、もしものときに備えて生前整理を始めることは、決して早すぎるとは言えません。
IDやパスワードなど、デジタル上での本人確認が当然となった昨今では「自分以外の誰にも確認できない財産」をどうするのかが大きな課題となります。
20代や30代から生前整理を始める
就職や結婚、子育てといった節目を機に生前整理に取り組むことには、大きなメリットがあります。
後述するように、長い年月をかけて築き上げた人脈や財産を整理するには、相当の時間と労力を費やさなければなりません。
若いうちから生前整理を意識することで、財産の管理や把握が容易になり、将来の人生設計も立てやすくなります。
生前整理をするメリット・デメリット
生前整理に取り組むと、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
順に見ていきましょう。
メリット(1)遺品整理の負担が軽減
仮に、明日あなたが何かの原因で亡くなった場合、あなたの身の回りの物は誰がどのように処分してくれるでしょうか。
亡くなった方の身の回り品は「遺品」として扱われ、遺族がその整理や処分を引き受けるでしょう。
しかし、遺族にとって、遺品のそれぞれについて処分か保管かの判断をするのは、非常に難しい作業です。
生前整理を行うことによって、残される家族の心理的負担や、処分費用などの金銭的負担を軽減することができます。
メリット(2)相続をスムーズに進められる
高額な資産を持っている場合、その内訳を整理し、誰にどのくらいの財産を継承させるか意思表示をしておかないと、相続争いの原因になり得ます。
残される家族に円満な親族関係を維持してもらえるよう、スムーズな相続の道筋を示すことができるのも、生前整理の大きなメリットです。
また、身内も知らなかった多額の借金があった、とうことも相続で大きな問題が起こる要因になります。 借金については身内に言いだしにくいことですが、生前整理の際にその時点での借金の金額と、どの書類を見れば内容が把握できるかといったことをエンディングノートなどに記載しておくことも大切です。
メリット(3)憂いなく日々を生きられるようになる
誰にでも人生の終わりは訪れますが、そのときを迎える準備ができていれば、将来への漠然とした不安を抱えずに日々を暮らせるでしょう。
また、これまで築いてきた財産を整理すると、残りの人生に向けて新たな目標が見出せるかもしれません。
生前整理は、家族のためだけに行うものではなく、自分のこれからの人生を明るく開くための取り組みでもあります。
デメリット(1)相当の時間と労力を費やす必要がある
このように様々なメリットがある生前整理ですが、取り組むにあたってはいくつかデメリットがあります。
第一に、生前整理を行うにはそれなりの時間と労力を要することです。
普段の片付けの延長で闇雲に生前整理を進めてしまうと、どこまで整理するかという着地点がわからなくなり、途中で挫折してしまいかねません。
生前整理は、綿密に計画を立てて、気力と体力に余裕があるうちから取り組むのがよいでしょう。
デメリット(2)不用品の処分に費用がかかる
生前整理で処分する身の回り品の中には、家電や大きい家具など、粗大ごみに該当する物も出てくるでしょう。
自治体によって金額は異なりますが、粗大ごみや一時多量ごみの処分には費用がかかりますし、不用品回収業者に依頼するにしても料金が発生します。
リサイクルショップを活用する、価値のありそうな物であればもらい手を探してみるなど、処分費用を抑えるための工夫も必要になります。
生前整理の流れ
生前整理には決まった進め方があるわけではありませんが、ここからは一般的な流れについて解説していきます。
身の回り品の要・不要を仕分ける
生前整理の手始めに、身の回り品を必要な物とそうでない物に仕分けて、不用品を処分することから取りかかるのがおすすめです。
「一定期間以上使っていない物は処分する」「思い入れの深いものは残す」など、ルールを決めて行うと、迷いが少なくなり仕分けがはかどります。
不要と判断した物は、ごみとして処分する他、それを必要としている誰かに譲渡や売却することを検討してもよいでしょう
自分名義の契約やアカウントの整理
私たちは、日常生活を送る中で様々な企業と契約し、サービスの提供を受けています。
その中には、たとえば生命保険のように死後に効力を発するものや、解約申込をしない限りサービスが継続するものなども含まれています。
自分がどの企業と契約し、どのようなサービスを利用しているのか、リストに整理してみるとよいでしょう。
特に、PCやスマホからのログインが必要なサービスについては、IDやパスワードなどのアカウント情報をノート等に可視化しておくことをおすすめします。
財産の整理と目録の作成
預貯金や有価証券、不動産など、自分の名義になっている財産を整理して目録を作っておくことは、円滑な相続のために欠かせない生前整理です。
インターネット上で取引している金融商品や、貸金庫に保管している貴重品など、手元に管理していない財産は、その所在や金額を分かりやすくしておきます。
このとき、前述したようにローンや借金といった高額なマイナスの財産がある場合は、それについても包み隠さず目録に落とし込むことが必要です。
相続放棄の手続きには期限があり(相続を知ったときから3カ月以内)、マイナスの資産の発覚が遅れると、残された家族が債務を背負うことになりかねません。
遺言書の作成や生前贈与
所有する財産の整理ができたら、誰にどのくらいの財産を遺すのかを書面で明らかにしておきましょう。
遺言書は要件が厳密に定められており、これを満たしていないと相続争いの場で無効とされる可能性があるので、作成に際しては専門家に相談しましょう。
遺言や相続による他、生前贈与によっても、自身の財産を他の誰かに引き継ぐことができます。
エンディングノートの作成
エンディングノートは、自分の死後に想いを遺すツールとして、「終活」に取り組む人々の間で普及しつつあります。
遺言書のように厳格な要件も法的拘束力もないため、残される家族へのメッセージを自由に書き記すことができます。
どのような葬儀を希望するか等、自身の死後に思いを巡らせながらエンディングノートを綴ることは、気持ちの整理にも役立ちます。
生前整理をスムーズに行うコツ
生前整理をスムーズに進めていくためには、いくつかのコツがあります。
ここに取り上げる4つのコツを意識して、生前整理を行ってみましょう。
思い立ったその時から少しずつ取り組む
どんな健康な人でも必ず命は尽きますから、生前整理は思い立ったその時から始めてみましょう。
ただし前述したように、生前整理は取り組むべきことが多いので、張り切り過ぎて一度に全部をやろうとすると、途中で挫折してしまいかねません。
生前整理は、生きている「今」を大切にしながら、少しずつ進めていくのがよいでしょう。
ルールを作って見やすく掲示する
身の回り品の整理作業を長い時間していると、面倒になって全部捨てたくなることや、逆に、全部取っておいた方がよいように思えることもあります。
生前整理の際は、取捨選択の判断がブレないように明確なルールを決めて、それを見やすい場所に貼り出しておくことをおすすめします。
どうしても処分に困ったときは判断を保留して、時間を置いてから改めて考えるようにすると、滞らずに作業を進められます。
悲しい気持ちになったら手を止める
生前準備を進めていると、まるで死ぬための準備をしているように思えて、悲しい気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
身の回りから少しずつ物をなくしていくことに寂しさを覚えるのも、自然な感情だと言えます。
気持ちが沈んでしまったときは、無理に頑張らず、心が落ち着くまで生前整理の手を休めることも大切です。
家族と一緒に生前整理に取り組む
自分だけでなく家族と一緒に取り組むことも、生前整理をスムーズに行うコツのひとつです。
身の回り品の整理では、それぞれの品に思い出話が弾むこともあり、楽しく処分を進めることができるでしょう。
また、財産の配分に関しては、残される家族の希望を聞き入れずに独断で決めてしまうと、後々に相続のトラブルの火種になる可能性があります。
突然やってくるかもしれない「その時」への備えに、家族全員で向き合うことが大切だと言えるでしょう。
生前整理を依頼できる専門家・費用相場
生前整理を進めていく中で、不安を感じて専門家に依頼をしたいと考えることもあるでしょう。
生前整理の作業に応じて依頼できる専門家と、依頼した際の相場費用について解説します。
身の回り品の整理は「不用品回収・買取業者」
処分に苦労するほどの不用品が出るときは、不用品の回収や買取りを専門に請け負っている業者に処分を依頼することをおすすめします。
不用品回収業者には搬出作業も任せられる
不用品回収業者は、引き取った処分品をリメイクし、再販してコストの削減を図り、不用品の回収を低価格で請け負っている業者です。
家電や粗大ごみに該当する物もまとめて搬出してくれる上、手際よく短時間で作業が完了するので、費用をかける価値があります。
また、業者によっては不用品の買取りも行っているところもあるので、依頼の際に確認をするとよいでしょう。
費用は不用品の数や種類によりますが、ワンルームや1Kの場合の相場は3万円前後、2LDKや3LDKだと15万円前後です。
価値がありそうな不用品は買取業者へ
買取業者は査定を無料で実施してくれるところが多く、査定の金額に納得ができなければ、買取りを断ることも可能です。
不用品買取業者は、依頼すれば自宅まで不用品の査定・買取を行いに来てくれます。
ただし、査定して値段が付かなかった物は、処分費用を別途支払い引き取ってもらうことになる場合もあるので、依頼の際に確認をしましょう。
財産目録や遺言の作成は「弁護士・司法書士・行政書士」
財産目録や遺言書は自分で書くこともできますが、法的に有効で正確な内容のものを作成するのであれば、弁護士など法律の専門家に依頼しましょう。
円滑に相続が進まないようなら弁護士に
弁護士は法律のスペシャリストであり、相続に際して親族間で争いごとがあった場合には、調停や裁判による解決を依頼することができます。
そのため、家族に遺す財産が高額である場合や、親族の仲が円滑とは言えず遺言の内容で揉める可能性がある場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。
ただし、弁護士に依頼する際の費用は高く、遺言書の作成の場合で10万円から30万円程度が相場とされています。
円満に相続できるなら行政書士や司法書士に
親族間で法律的な争いごとが起こる可能性がない場合、遺言書や財産目録の作成を行政書士や司法書士へ依頼することもできます。
費用は弁護士に依頼する場合よりも安く、遺言書の作成については10万円から20万円前後が相場とされています。
生前整理アドバイザーや生前整理相談士も
生前整理には「これが正しい」というやり方がないことから、自分にとって最適な進め方が分からない、という悩みも生じやすくなります。
そのようなときにコンサルティングを依頼できるのが、一般社団法人生前整理普及協会が資格認定をしている生前整理アドバイザーや生前整理相談士です。
生前整理の前半の「身の回り品の片付け方」に詳しく、1時間当たり3,000円から5,000円程度で、思い出の品の整理に関する相談に応じてもらえます。
まとめ
生前整理は、思い立ったその時から始めることをおすすめしますが、コツを押さえながら取り組んでいかないとなかなかはかどらないことがままあります。
不安を感じたときには専門家に相談しつつ、じっくりと着実に、必ず来る人生の終わりのための準備を進めていきましょう。
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