この記事でわかること
- 私道持分とはなにか、公道との違いもわかる
- 私道持分も遺産分割協議の対象に含まれることが理解できる
- 私道持分が相続財産から漏れやすい理由がわかる
- 私道持分の遺産分割協議方法や流れがわかる
- 私道持分を相続するときの注意点がわかる
宅地のすべてが公道に面しているわけではありません。
袋地や旗竿地などで公道に面していない宅地でも、公道までの私有地を道路として利用できれば家を建てるのに問題ありません。
数軒が共同で土地を出し合って私道を設置するときには、それぞれが出した私道の持分を所有することが通常です。
このような私道は純然たる相続財産に該当するものの、相続が発生したときに遺産分割の対象となる財産から漏れてしまう事態が発生しがちです。
以下では、私道持分とは何か、また公道との違い、私道持分も遺産分割協議の対象に含まれる理由、私道持分が相続財産から漏れやすい理由について紹介します。
また、私道持分を遺産分割協議する際の方法や流れ、私道持分を相続するときの注意点についても、詳しく紹介します。
私道持分とは
敷地が面している道路には、大別して公道と私道があります。
公道は国や都道府県、市区町村などが所有して管理を行っている道路で、私道は私有地を利用して設置や管理を行っている道路です。
道路にも所有権があるため、相続した宅地に面した道路がいずれに属するかは、土地の登記簿を取得して所有者を確認すれば判明します。
私道の所有権については、個人や会社が単独で所有しているケースや複数の個人や会社が共同で所有しているケースがあります。
また、複数の個人や会社が、ひとつの私道を分割して所有しているケースもあります。
これらの形態のうち、複数の個人や会社が共同または分割して私道を所有しているケースでは、それぞれが所有権を共有または分割して持つことになります。
この際、共有や分割した私道の所有権については、それぞれの持分が発生することになり、これを私道持分と呼びます。
さらに、所有する形態によって、私道の持分は共有持分または分割持分として区別されます。
私道持分も遺産分割協議の対象に含まれる
私道持分も相続財産であることには変わりがなく、遺産分割協議の対象に含まれます。
したがって、財産財産調査の段階で、私道持分についても確認しておく必要があります。
もしも私道持分が漏れてしまえば、漏れた財産について再度遺産分割協議を行わなければならないことになってしまいます。
私道持分も相続財産
相続税は、亡くなった方の財産を相続や遺贈によって取得した場合にかかり、金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものが課税の対象です。
具体的には、現金や預貯金、土地、家屋などが対象となりますが、私道持分も土地に対する権利ですから、相続財産に含まれることになります。
ただし、私道の価値は、無評価または宅地の30%程度と低く評価されることになります。
たとえば、通り抜け道路のように不特定多数の方が通行できる公衆用の私道の価値は、相続税の計算上はゼロと評価されます。
また、袋小路のように、特定の方だけが通行するための私道は、宅地として評価した価額の30%相当額で評価されることになります。
遺産分割協議の対象から漏れた私道持分があれば再協議
遺産分割協議を行ったときに、財産が漏れていたとしたらどうなるのでしょうか。
裁判では、財産が漏れていた場合の遺産分割協議の有効性について、漏れた遺産がわずかで協議を無効とするほどの瑕疵が無い場合は、有効との判断が下されています。
つまり、漏れた財産が少額の場合は、漏れた財産についてだけの協議で足りるとされているのです。
私道について当てはめれば、公衆用の道路と判断された私道の価値は、固定資産税や相続税の課税上は評価されず、金銭価値で考えた私道の価値は低いものとなります。
しかしながら、私道も相続財産であることに変わりはありません。
このため、私道持分の漏れがあった場合、先に行った遺産分割協議が有効ではあるものの、必ず私道持分についての再協議を行わなければなりません。
私道持分が相続財産から漏れやすい理由
相続財産を確認する書類として、不動産については固定資産税の納税通知書があります。
この通知は、不動産の所有者ごとの固定資産税に関する評価額や課税評価額、納税額など記載され、納税を促すために市町村から送付される書類です。
ただし、公衆用道路と判定されている私道については、固定資産税が非課税です。
課税対象ではない私道については、市町村によって異なりますが、この固定資産税の納税通知書に記載されないことがあります。
また、固定資産課税台帳の写し、いわゆる名寄帳は同一市町村にある不動産をまとめて確認できる書類で、相続不動産を確認するための重要な資料です。
しかし、亡くなった方が他の人と共同して所有していた不動産については、個人所有のものとは別に作成されているため、別に請求しなければなりません。
また、私道の共有者が複数人いて代表者が指定されている場合は、市町村によって異なりますが、代表者の名前で請求しないと取得できないこともあります。
さらには、納税通知書と同様、多くの市町村では非課税の私道についても確認できるものの、一部の市町村では記載されません。
このように、納税通知書や名寄帳を確認しても、私道を見落としてしまう事態が発生しやすいといえるのです。
私道持分の遺産分割協議方法・流れ
遺産分割協議が1回で終わらなければ、再協議でも同じ手順をたどることになります。
しかし、再協議では時間的な経過によって相続人の構成が変わる可能性があり、協議の必要性についても認識の違いなどが生じやすくなります。
1回目の遺産分割協議で私道持分を含めて行うことができた場合
遺産分割協議は、相続人全員が参加して話し合いを行い、遺産分割の内容を決めていく手続きです。
ただし、協議の前には相続人や相続財産を確定しておかなければなりません。
(1) 相続人の確定
協議は相続人全員が参加して行うことが前提です。
後から相続人が現れた場合は協議をやり直さなければならないため、正確に確認する必要があります。
亡くなった方の出生から死亡までが連続する戸籍を取得し、離婚歴や再婚歴、子の認知、養子縁組の有無などを含めて確認していきます。
(2) 相続財産の確定・財産目録の作成
遺産分割協議の前提として、相続の対象となる財産を確定しなければなりません。
現金や預金、有価証券、不動産などプラスの財産だけではなく、借金などマイナスの財産についても調べる必要があります。
通帳や証券、不動産の権利証などの書類の他、郵便物などを確認していく作業が必要になります。
また、財産が確定できたら、遺産分割協議に備えて目録を作成しておくことも大切です。
(3) 遺産分割協議書の作成・署名・押印
相続人と相続財産が確定すれば、遺産分割協議前の準備が整います。
遺産分割協議では、どの財産を誰がどのくらい相続するかを決めていきます。
協議は、相続人全員が参加して行わなければなりませんが、必ずしも一か所に集合して行う必要はありません。
ただし、話し合った内容は遺産分割協議書として整理し、全員が署名と押印して成立するものです。
このため、できれば法要などの機会を利用し、一堂に会して行うことが望ましいでしょう。
なお、マイナスの財産がある場合は、それぞれの相続人の法定相続分に従って、公平に負担することが原則です。
私道持分が相続財産から漏れたために再度遺産分割協議を行う場合
私道持分が漏れていたために再度の遺産分割協議を行う場合も、1回目の遺産分割協議と同じ手順で行います。
ただし、私道自体にはほとんど価値がなく、宅地とセットで相続することで私道の価値が生まれることになることに注意が必要です。
つまり、1回目の協議で宅地を譲り受けた方が相続することが協議の前提になるということです。
(1) 相続人の確定
1回目の協議からの経過期間が長ければ、相続人の構成に変化が生じる可能性があります。
たとえば、相続人の死亡や死亡に伴う代襲相続の発生、認知症の発症、行方不明者の発生などがあれば、相続人のメンバーが変わっていくことになります。
また、認知症や行方不明者がいれば、新たに成年後見人や不在者財産管理人の選任手続きが必要になってしまいます。
(2) 遺産分割協議書の作成・署名・押印
前述したように<1回目の協議からの経過期間が長いほど、相続人の構成に変化が生じやすく、再度の協議に協力が得られにくくなる状況が起きやすいのです。
成年後見人や不在者財産管理人が遺産分割協議に加わることになれば、協議を行うこと自体も簡単ではありません。
私道を相続する立場にない相続人にしてみれば、遺産分割協議に対する関心も決して高いものではありません。
協力しても得られるものがないことも、協議への協力が得られにくくなる大きな理由です。
(3) 遺産分割協議に協力が得られない場合の手続き
1回目の協議でも、話し合いがまとまらなければ遺産分割調停・審判の申立が必要になりますが、再協議ではその懸念が高まります。
相続人の一人でも同意が得られなければ私道を相続できないため、その際は裁判所に解決を依頼する手続きが必要になります。
また、私道は、単独ではほとんど価値のない財産であっても、宅地を利用するためには必要不可欠なものとなります。
このため、協議によって得るもののない他の相続人に対しては、代償金の提示などが必要になる可能性もあります。
私道持分を相続するときの注意点
相続財産の中に私道持分がある場合は、相続すべき人や相続すると必要になることなど、いくつかの注意点があります。
主な注意点を確認しましょう。
相続すべき人
私道は、単独では不動産としての価値はほとんどなく、宅地とセットで相続することで大きな価値が生じるものです。
宅地に面した私道の権利を持っていない場合は、建て替えやライフラインの敷設替えなどの工事を行う場合に、私道の所有者全員の承諾が必要になってしまいます。
このため、私道に面した宅地を相続する方がセットで相続すべきと言えるでしょう。
相続登記が必要
私道の権利は、土地の所有権です。
したがって、宅地などと同様、相続登記をしなければ権利を主張することができないのです。
万一、相続登記を漏らしてしまえば、建て替えやライフラインの工事などを行う際にトラブルが発生する恐れが高くなります。
建築基準法で認められる道路か
宅地に面した私道が、建築基準法で道路と認められるかどうかは大きな問題です。
都市計画区域内などでは、道路に2メートル以上接した土地でなければ建物を建てることができません。
また、道路と認められるには基本的に4メートル以上の幅員が必要です。
ただし、法律以前からあって、この規定に満たない幅員1.8メートル以上の道路でも、既存の建築物については問題ありません。
しかしながら、規定に満たない道路の場合は、建て替えの際に4メートルの幅員を確保するために、道路から敷地を後退させるセットバックが必要になります。
維持管理は所有者の責任
私道は、所有者自ら維持管理を行わなければなりません。
道路の傷みや埋設管の交換などについては、すべて私道の所有者が共同で労力や費用を負担しなければならないことに注意が必要です。
固定資産税や都市計画税が免除されるには要件がある
すでに非課税とされている私道がある反面、公衆用道路としての要件を満たす場合でも、固定資産税や都市計画税が課税されていることがあります。
公衆用道路として認められるためには、使用制限などがなく、誰でも通行や利用できる通路として使用されている必要があります。
また、基本的に宅地部分と分筆されて登記されていることも必要とされることが一般的です。
このような要件を満たす私道について税金の免除を受けたい場合は、住所地の市町村への申請手続きが必要です。
まとめ
分譲地や旗竿地などでは、複数戸が共同で私道を所有して、それぞれの宅地への出入りを可能にしているケースが多くみられます。
このように私道を共同で所有している場合は、所有者が死亡した場合も宅地と私道の所有権をセットで相続することが重要です。
相続財産から私道が漏れていれば、将来的に建て替えや売却などの際にトラブルの原因となり、最悪の場合は宅地が利用できなくなる恐れもあります。
納税通知書や名寄帳にも掲載されないようなケースでは、宅地に面する道路の地番を調べ、該当する地番の登記簿すべてを確認する必要にも迫られます。
相続手続きでは、これ以外にも様々なトラブルがつきものです。
不安な場合や困った場合には、相続に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。
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