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最終更新日:2024/7/10

不動産を相続した時の手続きの流れを紹介|かかる費用や税金について解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

ベンチャーサポート司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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不動産を相続した時の手続きの流れを紹介|特例や注意したいその他の税金など

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相続手続きは複雑かつ必要書類が多岐にわたるため、実際に相続が発生したときに戸惑ってしまう人も多いのではないでしょうか。

相続財産に不動産が含まれていると、不動産の名義変更(相続登記)も必要となり、より混乱してしまう人もいるかもしれません。

この記事では、不動産を相続した時の手続きの流れを紹介します。やらなければならないことを時系列に沿って解説するので、ぜひ参考にしてください。

不動産相続の手続きの流れと期限

不動産相続の手続きの流れと期限

被相続人が亡くなり相続が発生した際には、大まかに下記のような流れに沿って相続税の申告および納付の準備を行います。

流れ やること及び手続き 期限
相続人や遺産総額を確認 相続人の確定、遺言書・遺産の確認、相続放棄、準確定申告 3~4カ月以内
相続財産の名義変更 必要書類を取得して法務局で相続登記する
相続税の申告・納付 相続税の課税価格を確認、相続税申告書の作成、申告、納付 10カ月以内

まずは相続財産を誰がどのくらい引き継ぐのかを明確にするために、相続人と遺産の総額を確認します。

不動産を相続するにあたって、相続税の申告が必要かどうかを調べるためです。相続税申告が必要かどうかは、不動産の価値だけでは決まらず、遺産をすべて調べる必要があるからです。

相続税の申告・納税は、原則として被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から起算して、10カ月以内に行わなければなりません。

ステップ1:相続人や遺産総額の確認

相続税の申告・納税は、相続が発生した日から10カ月以内に完了させる必要があります。

相続の手続きでは、必要書類の収集や遺言書・遺産総額の確認、遺言書がない場合は遺産分割協議を行うなど、様々な事柄を並行して進めなければなりません。

各手続きに時間がかかると申告・納税期限に間に合わなくなってしまうため、計画的に行うことが重要です。

遺言書の有無を確認する

相続が発生した際、まずは遺言書が存在するかどうかを確認しましょう。財産をどのような割合で誰に相続するかは、被相続人の意思が第一に尊重されます。

そのため、遺言書が残されていた場合には、遺言書の記載事項に沿って遺産分割を進めます。

遺言書は主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があり、自筆証書遺言は遺言者本人または法務局が保管し、公正証書遺言は原本を公証役場、正本や謄本を遺言者本人が保管します。

相続人を決める

相続手続きを行ううえで不可欠なのが、法定相続人を確定することです。

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本を集め、相続人となり得る人を洗い出しましょう。被相続人の子の有無を確認したうえで、法定相続人の範囲および順位の特定を行います。

もし遺言書がある場合は、家庭裁判所で検認手続き*を行い、中身を確認しましょう。

「自筆遺言書保管制度」を利用している場合は、法務局に交付申請を行います。

遺言書がない場合は、遺産分割協議を行い、協議で決めた内容を遺産分割協議書にまとめます

*検認手続きとは・・・遺言書の状態や内容を家庭裁判所で確認をしてから保存する手続きのこと。発見者が遺言書の内容を勝手に書き換えるトラブルを防ぐために行う。

相続財産の確認

相続人の確定と併せて、相続財産の確認も進める必要があります。被相続人の財産の洗い出しを行い、相続財産の範囲を確定しましょう。

財産の主な種類は以下のとおりです。

預貯金、現金、株式、有価証券、生命保険、不動産、ゴルフ会員権、美術品などの換価価値のあるもの、借金や貸付金

なお、現金や預貯金、不動産などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も確認しなければなりません。マイナスの財産はプラスの財産から差し引かれ、純資産として相続税の対象となります。

みなし相続財産に注意する

相続財産の確認時に注意が必要なのが、みなし相続財産です。

被相続人が亡くなった際に支払われる死亡保険金のうち、被相続人が契約者で相続人が保険金を受け取った場合、相続税の対象となります。

また、被相続人が亡くなった際、被相続人の勤務先から相続人に死亡退職金が支払われた場合も、みなし相続財産として相続税の対象となります。

農地や林地も相続対象

被相続人が農地や林地を所有していた場合、これらの土地も相続税の対象となります。

農地や林地においては宅地などとは別に、それぞれ手続きが必要になることを留意しておきましょう。

対象 届け出の期限 必要書類 申請場所
農地 10カ月以内
  • 申請書(役所でもらえる)
  • 相続したことが確認できる書類(登記済の登記簿謄本など)
市区町村の農業委員会
林地 90日以内
  • 申請書(役所でもらえる)
  • 権利を取得したことがわかる書類の写し(登記事項証明書など)
  • 土地の位置を示す図面
林地が心材する市区町村

相続放棄

借金や債務がプラスの財産を上回る場合は、相続を放棄することで返済の義務もなくなります。

その場合は、相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要があることを留意しておきましょう。

ただし、相続放棄はマイナスの財産だけでなく、プラスの財産も放棄することになるため注意が必要です。

準確定申告

下記に該当する場合は被相続人の所得税の確定申告(準確定申告)をする必要があります。

被相続人の所得税の確定申告をする必要があるケース

  • 被相続人に不動産所得などがあり、毎年確定申告をしていた場合
  • 給与所得者・年金所得者で申告により還付がある場合

申告の結果、納税の義務が発生する場合は相続開始日の翌日から4カ月以内に申告と納付をしなくてはいけません。

ステップ2:遺産分割協議を行う

遺言書がない場合は、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。遺産分割協議は相続人全員の参加が必須であり、相続人の特定時に漏れがないようにしましょう。

遺産分割協議にて相続人全員の合意を得られた場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が必要で、分割内容に納得できない相続人が出ると、遺産分割協議は完了しません。

そのため、相続人同士が対立してしまうと、遺産分割協議の成立に数年を要する可能性もあります。

ステップ3:相続財産の名義変更

遺言書や遺産分割協議などで、不動産の相続人が決まったら、法務局で不動産の所有権移転登記をして名義を変更(相続登記)をします

差し迫った期限はないため、遺産分割協議が終わったら、都合のよいときに登記を行いましょう。

ただし、不動産の名義変更(相続登記)2024年4月1日から義務化され、「不動産の取得を知った日または2024年4月1日」のいずれか遅い日から3年以内が申請期限となりました。

2027年3月末まで猶予期間が設けられているとはいえ、申請を怠った場合は10万円以下の過料を課される可能性があるため、注意しましょう。

名義変更に必要な書類

名義変更に必要な書類は以下のとおりです。

遺言の内容や相続人数によって必要となる種類が異なるため、注意しましょう。必要書類を集めた上で、法務局で相続登記の申請を行います。

ケース 必要書類
相続人が1人または法定相続分で相続
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人の戸籍謄本・住民票
  • 相続する不動産の固定資産税評価証明書
遺産分割協議で決めた割合での相続
  • 上記の書類
  • 相続人の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書

相続登記は早めに手続きを済ませておくのが大切です。

なぜなら放置している間に相続人が亡くなった場合利権関係が複雑になる可能性があるからです。

相続した不動産を売却したり、借入の担保にしたりすることもできないため、相続登記は後回しにせず速やかに済ませましょう。

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名義変更・登記にかかる費用

名義変更・登記には、下記のような手数料や依頼料などの費用がかかることを留意しておきましょう。

登録免許税 固定資産評価額×0.4%
必要書類(戸籍謄本など)の取得費 各200~1,000円
司法書士などへの依頼費 6~10万円

司法書士などへの依頼費は事務所によって設定が異なります。

名義変更や登記は自身でも行うことができますが、書類の作成や戸籍の読み取りなどのやるべき事柄が多く、時間と労力がかかります。

相続では他にも様々な手続きを進める必要があるため、名義変更や登記は専門家に任せてしまうのがおすすめです。

ステップ4:相続税の申告・納付

相続税の申告・納付を行うための流れは以下のとおりです。

続税の申告・納付を行うための流れ

  • 課税価格を確認する
  • 相続税の申告を行う
  • 相続税を納付する

まずは課税価格を算出して、いくら納税が必要なのか(または納税しなくてもよいのか)を確認しましょう。

その後は必要書類を用意して申告納付を行います。

課税価格を確認する

相続税が発生するかどうかを判断するために、相続税の課税価格を確認します。

相続税の発生の有無は、下記の計算式でわかります。

遺産総額-基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))=課税価格

遺産総額が基礎控除額を下回れば、相続税は発生しません。

例えば不動産を含めた全ての遺産総額が5,000万円で相続人が4人の場合、上記の式に当てはめると、「5,000万円-(3,000万円+(600万円×4))< 0円」となるため、相続税を納める必要はありません。

相続税の申告を行う

遺産総額が基礎控除額を上回る場合は、被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内に相続税の申告を行う必要があります。

申告に必要な主な書類は以下のとおりです。

被相続人との関係を証明する書類 被相続人 戸籍・除籍謄本、住民票の除票、戸籍の附票
相続人 戸籍謄本、住民票、戸籍の附票、マイナンバーがわかる書類(個人番号カード、または通知カード)と身分証明書(運転免許証)などのコピー、印鑑証明書
相続する不動産の書類 登記事項証明書、固定資産税の評価証明書など
その他の書類 相続税申告書

なお、申告期限を過ぎてから申告したり、実際の評価額より少額で申告したりすると、加算税や延滞税が余計にかかる可能性があります。

そのため、申告期限については申告期限を過ぎそうだとわかった時点で、法定相続分で相続したと仮定した相続税額で申告と納付を行いましょう。

申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したうえで、3年以内に遺産分割を完了します。

遺産分割協議書が作成できたら修正申告、または遺産分割を更正の請求(※更正の請求の場合は、分割が行われた日の翌日から4カ月以内が期限となることに注意)を行いましょう。

相続税を納付する

納税期限も、申告期限と同じく被相続人が亡くなった日の翌日から10カ月以内です。そのため、申告・納税が遅れた場合は、無申告加算税と延滞税が同時にかかる点に留意しておきましょう。

納付時には一度に現金で全額を納めるのが原則ですが、やむを得ない理由で現金を用意できない場合は、延納と物納が認められています。

これらを利用する場合は、申告期限までに税務署に申請書などを提出して許可を受ける必要があるので注意が必要です。

なお、相続税の納税場所は税務署のほか、金融機関や郵便局の窓口でも可能です。

関連動画

相続後の不動産の分割方法3つ

相続後の不動産の分割方法には、主に3つのやり方があります。

特に不動産は、分けるのが難しい相続財産です。

3種類の分割方法ごとにメリットやデメリットがあるため、ぜひ不動産の相続時の参考にしてください。

現物分割

現物分割とは、相続財産をお金などに換えず、そのまま分割する相続方法です。

例えば、自宅や土地、現金といった遺産がある場合、遺産そのものの取得先を決める方法と言えます。

ただし、相続財産が不動産のみなど、分割が難しい場合は別の分割方法を適用します。

代償分割

代償分割とは、不動産を相続した特定の相続人が、他の相続人に相続分のお金を支払う分割方法です。

代償分割は、不動産のように相続財産をそのまま分割するのが困難な場合に、有効な方法と言えます。

財産をそのままの状態で残したうえで分割できるため、不動産の活用を検討している場合に適しています。

ただし、代償金の額で相続人ごとに主張が食い違うなど、分割がまとまらない可能性もあります。

換価分割

換価分割は、不動産を売却したうえで、売却して換金した金額を相続人ごとに分割する方法です。

換価分割では、不動産を価値を把握しやすいお金に変えるため、公平な遺産分割に繋げられる方法と言えます。

ただし、換価分割では不動産の売却に時間を費やす可能性があるうえ、仲介手数料をはじめとする追加費用が発生する点に注意が必要です。

不動産の評価額の調べ方

土地の評価は主に路線価で決められています。路線価がついている地域では、路線価に敷地面積を乗じた値に補正値をかけあわせて、評価します。

路線価がない地域では「倍率方式」が採用され、固定資産税評価額に適用地域・用途ごとに決められた倍率をかけあわせた金額です。

路線価はインターネットで調べることができ、倍率方式の場合はおおよそ固定資産税評価額に1.1倍をかけると相続税の計算上の評価額に近い金額になります。

固定資産税評価額は、毎年の春に届く固定資産税の納税書に記載されている金額です。

不動産の評価額を下げる特例がある

不動産の相続では、その評価額を最大80%減額することができる「小規模宅地等の特例」という特例があります。

小規模宅地等の特例では被相続人が「居住していた土地」「事業を営んでいた土地」「貸し出していた土地」が対象です。

ほかにも、建物の所有者が別にいる土地は借地といってその評価額を約30~40%程度に減額することができます。

建物については固定資産税評価額をそのまま利用します。

不動産に課税される相続税以外の税金

法律で定められた相続人以外の人が遺言書によって土地や建物などの不動産を取得した場合、以下のような税金が課されます。

税金の種類 対象者 納付のタイミング
不動産取得税 不動産を取得した人 所有権取得後、6カ月~1年
固定資産税 不動産を取得・所有している人 毎年4~6月頃
所得税 不動産を売却した人、賃貸物件を相続して不動産収入がある人 毎年3月15日まで

また税金ではありませんが、不動産を所有するとその所有者には管理者責任が課されることになります

所有する不動産の不備により他人に迷惑をかけてしまった場合、責任を負う必要があります。

田舎の実家で両親が亡くなった後、空き家の管理をせずに放置しているケースが多く社会問題化しているほどのため、他人事と思わずに注意しておきましょう。

不動産の相続に不安がある場合は専門家への相談も有効

不動産の相続では、多くの手続きを行わなければなりません。

その内容は相続した不動産の名義変更・登記はもちろんのこと、評価額の算出、遺産分割協議など、多岐にわたります。

また手続きにはそれぞれ費用も発生することを覚えておきましょう。

相続はいつ起こるか予測がつきません。、今から少しずつ準備をはじめておくことをおすすめします。

また、相続登記に不安がある場合は、司法書士などの専門家に依頼するのも有効です。専門家によるバックアップのもと、スムーズな相続登記の手続き進行に繋がります。

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