「遺言ですらよくわからないことが多いのに危急時遺言となるとさっぱりお手上げ」そう思われる方は多いでしょう。
危急時遺言とは、どんな時に誰が何のために作成するのでしょうか。そして作成手続きはどうなっているのでしょうか。
目次
時間をかけて遺言を作れるとは限らない
遺言とは、まだ元気なうちにゆっくり時間をかけ、熟慮に熟慮を重ねて作るもの。そんな風にイメージしていませんか。
家業をきちんと守ってくれるか、兄弟仲良くやっていけるか、先祖代々の土地を守るのに最善の選択肢は何かなど、さまざまな思いが交錯するでしょう。
それでも、遺言作成は面倒がられてほったらかしされがちです。なぜそうなるのでしょうか。
内容を考えるのが面倒な遺言作成
遺言を作るとなると、さまざまな条件が交錯し考えがまとまらないのも確かです。
それに妻に先立たれたり、自分自身が再婚したり、長男が家業を継がなかったりと状況が変化するかもしれません。
相続させる財産だって目減りするかもしれないですし、事業が立ち行かなくなることだって考えられます(もちろん、嬉しい誤算でその逆の事態も起こりえますが)。そんな複雑かつ可変的な条件を踏まえると、先に進まないのです。
自筆証書遺言は手間がかかる
それに自筆証書遺言を作るとなると、すべて自筆で書かなければなりません(注:2019年1月の法改正により、署名・押印すれば一部パソコンによる作成も可)。
記録方法や記載に誤りがあれば、遺言の効力が無効になる場合もあります。例えば財産が不動産なら、「自宅の土地・建物」といった記載では効力を有しません。地積・地番・家屋番号まで正確に記載しなければ真正とは認められません。遺留分の請求権を侵害するような遺言書も、効力は認められません。
お金はどのくらいかかるの?公正証書遺言
公正証書遺言なら、自分で書く手間は省けるし、法的な要件などに気を回す必要もなくなります。デメリットとしては、お金がかかります。財産額によって変わってきますが、財産が1億円前後なら20万円かかります。
遺言を作る前に病気になってしまったらどうするか
そのうちそのうちと遺言作成を後回しにしていたら、突然のっぴきならない事態に陥ってしまう、ということもあるでしょう。
いつもの健康診断のつもりでいたら、再検査でがんのステージ4を宣告されたという話も聞いたことがあります。インフルエンザで入院したら、他でも悪い部分が見つかり退院が長引き、そうこうしているうちに足腰が弱り寝たきりになってしまった、ということも起こりえます。
前の日まで元気でも、交通事故に遭い症状は重体、いきなり脳卒中や心筋梗塞で倒れるというケースもあるでしょう。では、こうした状況になったらもう遺言書は書けないのでしょうか。
危急時遺言
民法976条では、病気やけが等の理由で生命の危機にあり、急がないと遺言作成の機会が失われる、そんな場合における遺言の作成について規定しています。
その作成要件は、自筆証書遺言や公正証書遺言よりはるかにハードルが上がっています。
<作成要件>
3人の証人立ち会い
未成年者・推定相続人とその配偶者及び直系血族・公証人の配偶者や4親等以内の親族など、利害関係者は証人にはなれません。
利害関係者が立ち会った場合
証人以外の配偶者や子供が遺言作成の場に立ち会っても、直ちに遺言の効力が失われるわけではありません。ただし遺言者の発言や口述筆記を誘導するような発言をしたと認められる場合は、効力を疑われる可能性があります。それでなくても家庭裁判所は、利害関係者立ち合いの有無に神経質であり、後々問題にされるのを回避したいなら、出来れば立ち合いしない、どうしても立ち会いたいなら隅にひっそり立つなどの配慮が欠かせません。
生命危急の事態
命の危険が迫っているかどうかの判定に医師の診断は必須ではなく、あくまで遺言者や関係者の判断でも認められます。
遺言の口授筆記方法
遺言者から口授を受けた内容を証人のうち1人の者が正確に記憶し、かつ書面に記したうえで遺言者及び他の証人に閲覧または読み聞かせによって正確であることを確認させ、最後に証人3人の署名・捺印によって完成させます。遺言者が今際の際にあるだけに、口授の有無については後々の裁判で問題になることも少なくありません。過去の判例では「ただ頷くだけでは口授したと認められない」「さりとて遺言者が全てを後述するのは現実的ではない」「特定の事柄について意思表示を示したことが明確」といった見解が示されています。口授に関しては過去の判例を参考にしつつ、後日効力が問題とされないよう慎重な判断が求められるのです。
なお、署名・捺印を遺言者の前で行うべきかについては法に明確な規定はありませんが、過去の判例から類推すると有効性に疑義が挟まれる可能性が捨てきれないので、充分な配慮が必要です。
遺言者が話せない場合
口授が難しい場合は、これに代えて通訳者が遺言者の意向を申述します。
遺言の作成方法
自筆遺言証書と異なり、パソコンによる作成も認められます。
裁判所の確認
作成した遺言はその日から20日以内に家庭裁判所の確認を得なければ、その効力を生じません。
まとめ
危急時遺言に関しては、法曹界からも「遺言者の真意が歪められる」と危惧する声も少なくありません。この事実は、作成した遺言が効力の面で問題となる可能性が高いことを示しています。ですので、作成するなら危急時遺言に関して経験豊富な専門家に依頼することをお勧めします。
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