この記事でわかること
- 亡くなった人が借りていたお金も相続して返済しなければならないことがわかる
- 亡くなった人に借金があるかどうかを確認する方法がわかる
- 借金があることを知らずに相続した場合の対処法を知ることができる
亡くなった人が保有していた財産や債務は、すべて相続人が相続しなければなりません。
そのため、被相続人に借金がある場合でも、その借金を相続人が相続し返済することとなってしまいます。
しかし、被相続人に借金がある場合、その借金を相続しなくてもいい対処法があります。
どのようにすれば、借金を相続せずに済むのでしょうか。
また、借金があることを知らずに相続してしまった場合の対処法はあるのでしょうか。
目次
相続時には個人間の借金も相続する必要がある
相続とは、被相続人の財産や債務を引き継ぐことです。
相続というと預金や不動産などのプラスの財産を引き継ぐことというイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、借金がある場合には、その借金も引き継いで返済する必要があるのです。
一般的な相続の方法は、法的には「単純承認」と呼ばれる相続の方法です。
単純承認が成立すると、被相続人が保有していたすべての財産と債務を相続人が引き継ぎます。
財産には、預金や不動産の他有価証券や車など、あらゆるものが含まれます。
また、債務には金融機関への借金や税金などの未払金も含まれます。
さらに、個人間の借金も相続財産に含まれるため、相続人が相続することとなるのです。
亡くなった人の借金の有無を確かめる方法
亡くなった人が抱えていた借金も、相続の対象となることはわかりました。
しかし、被相続人に借金があることに気付かないことも少なくありません。
借金があるかどうかを確認するには、どのような方法があるのでしょうか。
信用情報機関に情報開示請求を行う
金融機関や消費者金融などへの借金があるかないかを確認する場合、金融機関などに直接確認することもできます。
しかし、全国にあるすべての金融機関や消費者金融に確認するのは現実的ではありません。
そこで利用したいのは、信用情報機関への情報開示請求です。
信用情報機関は、すべての金融機関や消費者金融、カード会社などが加盟し、借入金の情報を管理しています。
そのため、信用情報機関に情報開示すれば、その金融機関にいくらの借入金があるのか、そしてその返済状況を確認できます。
信用情報機関は、加盟する会社の種類ごとにJICC、CIC、KSCの3つがあります。
情報開示の方法は郵送のみのところもあれば、WEBやアプリから受け付けているところもあります。
必要書類を準備した上で、3つの信用情報機関に情報開示請求を行いましょう。
被相続人の自宅を調べる
被相続人の借入状況を把握する際に欠かせないのは、被相続人の家にある書類などを調べることです。
ただ、自宅をやみくもに調べてもその手掛かりは得られません。
必要な情報を得るためには、ポイントを抑えて調査を行う必要があります。
被相続人の自宅で調べるものは、以下のようになっています。
- 通帳の履歴で、毎月の借入金の返済状況を確認する
- 金銭消費貸借契約書やカード会社の約款などの書面の保管状況を確認する
- カード会社の明細や督促状などの郵送物がないかを確認する
- 債権者からの内容証明郵便や裁判書類などがないかを確認する
預金口座での返済状況やカード会社への支払い、郵送物などを確認すると、借金の有無がわかります。
中には、返済が滞っているために郵便物が届いている場合もあるため、亡くなったら早急に確認しましょう。
滞納している税金や公共料金がないかを調べる
相続財産となる債務には、借金やカードローンだけでなく、未払いとなっている税金や公共料金なども含まれます。
そのような支払いが残ったままとなっているかどうかを確認する場合、信用情報機関に情報請求を行っても意味がありません。
そこで、未払税金などがないかを確認するためには、被相続人の自宅で書類を調べなければなりません。
支払いが滞っている場合は、請求書が何度も届いていたり、督促状が届いていたりすると考えられます。
そのような書類には、滞納している金額が書かれているため、その金額を確認することができるのです。
ただし、相続財産の金額を確定するためには、債権者に連絡して確認する必要があります。
亡くなった人に借金があったときの対処法
被相続人が多額の借金を抱えており、その借金を相続したくない場合には、いくつかの選択肢があります。
どのような選択肢があり、それらはどのような特徴があるのかを確認していきます。
相続放棄
相続放棄は、相続権が自身に発生しないように相続人が行う手続きのことです。
相続放棄を行うと、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされるため、一切の財産も債務も相続しないこととなります。
相続放棄の手続きは、各相続人が自身で判断して行うもののため、複数の相続人がいる場合でも、1人だけ相続放棄を行うことができます。
もちろん、すべての相続人がそろって相続放棄をすることも可能です。
ただ、法定相続人のすべてが相続放棄を行った場合、次順位の法定相続人に相続権が移ります。
第一順位の子どもが全員相続放棄すれば、第二順位の法定相続人である親に相続権が移ります。
第二順位の親がいなかったり、相続放棄を行ったりした場合は、第三順位の兄弟姉妹に相続権が移ります。
相続放棄の手続きは、相続発生から3か月以内に行う必要があります。
次順位の法定相続人に相続権が移った場合は、自身が相続人となったことを知ってから3か月以内に手続きしなければなりません。
限定承認
限定承認は、相続した財産の範囲内で被相続人の債務を引き継ぐ制度です。
万が一、債務の額が財産の額を上回る場合は、すべての財産と債務を相続しないことができます。
そうすることで、相続人自身が保有している財産を守ることができるのです。
限定承認の手続きは、すべての相続人が一緒に手続きしなければなりません。
1人の相続人だけで限定承認の申請を行うことはできないのです。
そのため、すべての相続人の意見が合わなければ、限定承認を行うことはできません。
債務の方が大きいのか、財産の方が大きいのかはっきりしないのであれば、限定承認を行うのがおすすめです。
また、自宅などの財産をどうしても残したいのであれば、相続放棄ではなく限定承認を行うべきです。
限定承認の手続きも、相続発生から3か月以内に行う必要があります。
もし、限定承認も相続放棄も行わないまま3か月以上経過した場合は、単純承認が成立したものとされます。
すると、相続したくない借金があったとしても、その借金を相続せざるを得なくなるのです。
亡くなった人の借金を知らずに相続してしまったときの対処法
被相続人が借金しているということを知らないまま、他の財産についてのみ遺産分割協議を行うことがあります。
このような場合、相続放棄や限定承認をしていないために、借金も含めたすべての相続財産を相続人が引き継ぐこととなります。
しかし、やむを得ない理由で借金があることを知らなかった場合も考えられます。
何らかの対処法はないのでしょうか。
あくまで原則は法定相続分で引き継がれる
相続財産に借金がある場合、その借金を負担する人を決めて遺産分割協議を行うのが通常の方法です。
しかし、その相続人が借金を全額返済してくれる保証はありません。
中には、途中で借金の返済をやめてしまったり、返済ができなくなったりする場合があるのです。
このような場合、債権者は他の相続人に対して返済を求めることができます。
たとえ遺産分割協議で借金の返済者を決めたとしても、そのことは債権者には無関係なのです。
消滅時効が成立していないか調べる
被相続人が長年借金の返済をせずに放置していた場合、その借金が消滅時効の援用により消滅する可能性があります。
ただ、長年返済していなければ自動的にその借金が消滅するわけではありません。
債権者に対して時効援用通知書を内容証明郵便で送付し、その適用を受ける必要があります。
また、借金の種類などにより異なるため、誰からの借金なのかを整理しておかなければなりません。
過払い金がないかを確認する
消費者金融や信販会社からの借金の場合、過去に利息制限法に定める利息を超える利払いをしていた可能性があります。
このような場合は、返済額の引き直し計算を行い、利息の過払い金を借金の額から引いてもらうことができます。
過去に消費者金融などからの借金があった場合には、完済している場合でも相続して還付請求することができます。
状況次第では相続放棄も可能
基本的に、相続人が財産を相続したり遺産分割協議に参加したりしていれば、その後に相続放棄することはできません。
また、相続が発生して3か月以上の期間が経過している場合も、相続放棄はできません。
ただし、遺産分割に参加したのは、他の相続人が自宅などを相続するためであり、自身は何も相続していない場合もあります。
また、個人間の借金の場合、その存在に気付かないことも珍しくなく、債権者からの請求で初めて借金の存在を知ることもあります。
このような状況の場合には、後から相続放棄することが認められることもあるのです。
ただ、いきなり家庭裁判所に行っても、相続放棄が認められることはありません。
まずは専門家に相談し、相続放棄できるかどうか相談をすることから始めましょう。
【補足】家族間の借金は贈与税に注意が必要
親から子どもがお金を借りるような形で、家族間で借金をすることもあるでしょう。
家族間での借金は、相続税よりも贈与税の問題となることがあるため、注意が必要です。
借金をきちんと毎月返済している場合でも、利息をなしとしている場合は、その利息分が贈与とみなされます。
金融機関より利率が低い場合も、利払いの差額が贈与とみなされることとなります。
また、返済を行っていなければその借金自体が贈与とみなされます。
家族間での借金は、手軽に行うことができますが、多額の税金が発生しないよう注意しなければなりません。
まとめ
亡くなった人と離れて暮らしていた場合、その生活状況を事細かに確認していたわけではない場合も多いでしょう。
そのため、借金をしていたのか、あるいは借金の返済をしていたのかがわからないことも珍しくないのです。
しかし、被相続人に多額の借金や未払となっている支払いがある場合、相続人がそのまま引き継ぐと大変なことになります。
相続にあたって大事なのは、相続財産に借金などの債務があるかないかを事前に確認することといえます。
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