この記事でわかること
- 子供が親の財産を相続放棄したら孫が相続できるかどうかがわかる
- 子供が相続放棄をすると誰が相続人になるのかを知ることができる
- 代襲相続について注意すべきことが理解できる
親が亡くなると、子供が親の財産を相続します。
しかし、親の財産を相続するはずだった子供が相続放棄をしたら相続人は誰になるのでしょうか。
子供が相続放棄をすることで相続権は孫に移るのでしょうか。
今回は子供が相続放棄すると相続順位や相続割合はどう変わるのかについてわかりやすく解説していきます。
代襲相続が発生するケースや注意点もご紹介しますので、相続放棄を検討している方は参考にしてください。
目次
子供が相続放棄したら孫に相続される?
まずは、子供が親の財産を相続放棄した場合、孫に相続順位が移るのかどうかを明らかにしておきましょう。
相続放棄すると初めから相続人ではなかったことになる
結論からいいますと、子供が親の財産を相続放棄したら、孫は相続することはできません。
なぜなら、相続放棄をした人は初めから相続人にならなかったことになり、そのため代襲相続されないからです。
(相続の放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。引用:民法
初めから相続人とならなかったものとみなすということは、言い換えると、相続の関係でその人は初めからいなかったものとして扱うということです。
相続放棄をした子供は初めからいなかったことになるので、孫もいなかったものとみなされ、孫は相続できません。
相続放棄は代襲相続の要件にも該当しない
子供が親の財産を相続放棄した場合に、孫が相続できないことは、代襲相続に関する民法の規定を見ても明らかです。
(子およびその代襲者等の相続権)
第887条2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
引用:民法
民法より、代襲相続が起こるのは次の条件に該当する場合に限られます。
- 子供が親よりも先に亡くなっている
- 子供が相続人の欠格事由に該当する
- 子供が相続人から廃除されている
つまり、相続放棄は代襲相続の要件に該当しません。
したがって、子供が親の財産を相続放棄すると、孫が代襲相続することはないのです。
子供が相続放棄したときの相続人は誰?
相続放棄をした人は初めから相続人にならなかったものとみなされるので、相続権は次順位の相続人に移ります。
民法では第1順位の相続人として子供、第2順位が父母、祖父などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹と定められています。
したがって、子供が相続放棄した場合、父母などの直系尊属がいればそちらに相続権が移り、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
子供が相続放棄したときに代襲相続が発生するケース
相続放棄した人自身に代襲相続が発生することはありませんが、相続権が移った次順位の相続人について代襲相続が発生することはあります。
ケース別にみてみましょう。
祖父母に代襲相続が発生するケース
両親が亡くなっていて、祖父母が存命中の場合に子供が相続放棄すると、祖父母が相続人になります。
祖父母とも存命中のときは2人とも相続人となり、どちらかのみが存命中のときはその1人が相続人となります。
もし、祖父母ともすでに亡くなっていて曾祖父母が存命中の場合は、さらに代襲相続して曾祖父母が相続人となります。
このように、代襲相続人がすでに亡くなっている場合にさらに発生する代襲相続のことを「再代襲相続」といいます。
甥・姪に代襲相続が発生するケース
直系尊属が全て亡くなっている場合に子供が相続放棄すると、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合は、その子供である甥・姪が代襲相続します。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りで、甥・姪も亡くなっている場合にその子供が再代襲相続することはありません。
代襲相続の注意点
代襲相続には、少し複雑な決まりがあります。
気をつけていないと、代襲相続人を忘れて遺産分割をしてしまったり、逆に代襲相続できない人を遺産分割に参加させてしまったりするおそれがあります。
そこで、代襲相続で気をつけなければならないことをご説明します。
再代襲相続できる範囲は決まっている
親が亡くなったときにすでに子供が亡くなっているとき、孫がいれば孫が代襲相続します。
孫も亡くなっていて曾孫がいる場合は、曾孫が再代襲相続します。
以降、上の世代の人が亡くなっている場合は順次、限りなく下の世代の人が代襲相続することになります。
この点は、直系尊属が代襲相続する場合も同じです。
両親とも亡くなっている場合は祖父母、祖父母も亡くなっていれば曾祖父母、それ以降も順次、上の世代の人が存命している限り代襲相続していきます。
ただし、限りなく代襲相続するのは直系卑属と直系尊属のみです。
兄弟姉妹の代襲相続は一代限りなので、甥・姪は代襲相続しますが、それより下の世代の人が再代襲相続することはありません。
血のつながりがない人は養子縁組以外、代襲相続できない
血のつながりがない人は、養子縁組をしない限り相続することができません。
したがって、養子縁組前に生まれていた養子の子は相続開始時に養子が亡くなっていても代襲相続することはなく、被相続人と養子縁組していない限り、相続することはできないのです。
この点は、配偶者の連れ子についても同じです。
相続開始時に配偶者がすでに亡くなっていても、連れ子が代襲相続することはありません。
連れ子が相続するためには、被相続人と養子縁組をする必要があります。
また、たとえば夫の父(義父)が亡くなったときに夫がすでに亡くなっていても、妻が代襲相続することはありません。
さらに、この記事のはじめでご説明したとおり、子供が親の財産を相続放棄すれば孫以降の世代の人が代襲相続することはできないということも覚えておきましょう。
まとめ
親の財産を子供が相続放棄すると孫が代襲相続できないというと、これはデメリットのようにも思えます。
しかし、親に借金などの負債があった場合、子供が相続放棄をすることによって孫は何の手続きをしなくても負債を引き継がなくてすむというメリットもあります。
とはいえ、代襲相続が発生すると相続関係が複雑になりがちですし、相続放棄が絡むとさらにわかりにくくなることが多いでしょう。
相続放棄や代襲相続で困ったときは、弁護士に相談してみることをおすすめします。