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親族が亡くなった時に、税務署から相続税申告の案内が届いたという人もいると思います。
また、相続税の申告を行ったのに対して、税務調査の連絡が来たという人もいると思います。
申告書の記載自体にミスがあった場合は、それについて指摘を受けても仕方ありませんが、申告の内容が実際と違うのではないかという指摘がなされる場合もあります。
被相続人の財産関係についての情報を、税務署はどのように取得して、税務調査などを行っているのでしょうか。
本稿では、このような税務署の情報網、情報収集能力について確認すると共に、税務調査を受けないためには、相続税の申告に際してどのような配慮をすればいいかについて考えてみたいと思います。
税務署の情報網
個人の死亡に関する情報
冒頭にも書きましたが、税務署からいきなり相続税申告の案内が届いたということを経験した方もいらっしゃると思います。
何故、税務署は自分の親族が亡くなったことを知っているのでしょうか。
被相続人が財産を有していたことを知っているのでしょうか。
その第一の理由は相続税法第58条にあります。
相続税法第58条は、以下のように規定しています。
「市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡点に関する届出を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。」
つまり、死亡届出が提出された場合、その届出された被相続人がなくなったという情報は、市町村から税務署に通知されるのです。
その結果、税務署としては、当該被相続人に相続が発生していることを把握することが出来るのです。
不動産等の所有に関する情報
市区町村は、不動産等に関する固定資産税や都市計画税等を徴収するために、住民が所有する土地や建物に関する情報、その固定資産税評価額に関する情報を保有しています。
そして、これらの情報も当然に相続税算定に関する参考情報として税務署と共有されるのが一般的です。
つまり、税務署は、被相続人が保有していた不動産等に関する情報を保有していることになります。
KSKシステム
KSKシステムとはKOKUZEI SOUGOU KANRIシステム(国税総合管理システム)の略称であり、全国の国税局・税務署をネットワークで結び、納税者の申告に関する全情報を一元的に間知るウコンピューターシステムです。
これによって、特定の被相続人の所得税・固定資産税などの過去の申告データ、過去の確定申告のデータ、給与の支払調書、株式屋不動産の取引情報等を調べることが出来ます。
銀行などの金融機関との情報共有
その他に、税務署は各種の銀行をはじめとする金融機関、保険会社等に対しても、預金や取引明細を照会することが出来るとされています。
その結果、被相続人がどの金融機関にどれだけの預金等を有していたか、また、何時いくらが引き出され、何時、誰からいくらの入金があったかといった金銭の授受等に関する情報が税務署には筒抜けになっているといえるのです。
税務署の情報網を正しく認識しましょう
このように、税務署の情報収集能力は非常に優れたものです。
従って、黙っていれば税務署は分からない、このくらいは大丈夫、といった考えは税務署には通用しないと考えた方がいいでしょう。
そして、過少申告や、無申告がばれたときは、延滞税や加算税が加算され、また、悪質な場合には重加算税を課されることにもなります。
更に、場合によっては10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または、懲役と罰金の併科という刑罰を科される可能性もあるのです。
相続税の過少申告や無申告には、このようなリスクがあるということを正確に認識する必要があります。
相続を隠してもバレるリスクは高い
「相続を隠し通せば、税金を払う必要がない」と思うかもしれませんが、非常に危険な行為です。
なぜなら、税務署はさまざまな方法を使って、相続の財産状況をチェックできるからです。
上記で説明したように、税務署の情報網・情報収集能力は非常に高いものです。
相続税を払いたくないからといって虚偽の申告をして、もしバレてしまったらペナルティとして通常よりも高い税金を払う可能性もあります。
相続を隠して重たいペナルティを課されるぐらいなら、正しく申告して相続税を支払った方がいいでしょう。
また相続税では多額の控除が使えるような仕組みがたくさんあります。
基礎控除といって、なにもしなくても使える控除もあれば、特例という別途手続きが必要な控除もあります。
相続の案件に精通している税理士に依頼して「どうすれば節税できるのか?」といったアドバイスをもらうと効果的です。
税務調査の実態
税務調査の件数
平成26年の相続税の申告書が提出された相続人数は56,239人です。
これに対し、平成26年に相続が開始された案件において平成28年度に税務調査(実地調査)が行われた件数は11,145件でした。
その結果をもとに計算すると、相続税の申告件数に対する税務調査がはいった割合は、実に11,145件/56,239人=19.8%に上ることになります。
つまり、約2割、相続税の申告書を提出した人の5人に1人が税務調査を受けたことになります。
また、これとは別に無申告事案について971件の実地調査が入っています。
要するに、申告書が提出された案件と無申告の案件とで合計12,116件の税務調査が実施されていることになります。
申告漏れが見つかった件数
それでは、税務調査が入った12,116件のうち、申告漏れなどが見つかった件数はどれくらいあったのでしょうか。
実に9,930件で申告漏れ等が見つかっています。
つまり、税務調査に入った件数の9,930件/12,116件=81.9%で申告漏れなどの非違が発見されたことになります。
更に、そのうち、悪質であるとして重加算税を課された件数が1,300件ありました、
税務調査を受けないために
過少申告等を指摘されないために
上記の統計数字からも分かるとおり、税務調査に入られると、約8割以上の確率で申告漏れ等が見つかっていることになります。
もちろん、申告漏れ自体が不適切な行為ではありますが、その中には不正行為をしたわけではなく、法律の解釈・適用についての見解の相違等が理由で過少申告と判断された例というのもあると考えられます。
それらについては、税務調査等で詳細がチェックされなければ、適正な申告として処理されているものもあるわけです。
そう考えると、そもそも税務調査の対象とならない形で相続税の申告を行うことが過少申告等を指摘されないための第一の対応策になります。
税務調査の対象とならない相続税申告の方法
それでは、税務調査の対象とならないようにするためにはどうすればいいでしょうか。
エビデンスをしっかりつける
申告内容についてきちんとしたエビデンスをつけることによって、申告書に記載された内容について信憑性が格段に高くなります。
例えば、預金の金額等を単に申告書に記載しただけでは、税務署としても「本当にそれだけ?もっとあるのでは?」と疑われる可能性があります。
これに対して、金融機関が発行する残高証明書等を添付することによって、申告書に記載された数字に対する信用度は一気に高まるのです。
また、お金の流れや使途に関して、金融機関等が発行する証明書等を添付できないような場合には、それについての「事情説明書」などを添付書類として提出することも考えられます。
余計な情報は提供しない
相続税の申告は、あくまでも、相続財産の額がいくらあるのか、それがどのように遺産分割されるのか、が重要なポイントとなります。
逆に言うと、それらの相続財産の額や相続財産の流れに直接関係ないことは、敢えて、申告書や事情説明書等に記載する必要はありません。
その様な余計な情報についての記載があると、その情報に基づいたお金の流れがあるのではないかという疑いを持ち、それについて調査を行うといった事態になりかねないからです。
調査内容をアピールする
相続財産について正確な情報を収集し、それを、適切に表示することで、相続財産をしっかり把握、管理しているという印象を税務署に与えることが出来ます。
また、相続財産の調査の内容、経緯について説明資料を作成・添付することも有効な手段といえるでしょう。
これらによって、相続財産を適切に管理・把握しているという印象を与えることが出来れば、申告書野内容自体に対する信憑性も上がり、税務調査は不要という判断に傾く可能性は十分にあります。
税理士を有効に活用する
相続税の申告については、税理士に依頼せずに、相続人が本人申請することも可能とされています。
確かに、相続財産が現金などに限られていて、相続財産の評価に関して複雑な問題が生じないような場合には、税理士等に依頼しないで、本人申請を行うことも十分に可能です。
ただ、税務署としては、税理士などが関与していない申告については、法律の解釈・適用に間違いがあるのではないかといった疑いの目を持つ傾向にあることは否定できません。
その為には、敢えて、税理士を活用するといった対応も、賢い対応としてあり得ます。
税理士に依頼するメリット
相続や税務調査に悩んでいる人は、税理士への依頼がおすすめです。
ここからは税理士へ依頼するメリットを紹介します。
適切な相続ができる
相続は法的な知識が必要になるため、自分たちだけで手続きを進めるのは非常に危険です。
相続財産を抜かりなく把握して、財産の配分を決めて、期限内の手続きを完了しなければいけません。
相続税が抑えれるような特例を使う場合は、別途税務署への申告が必要になります。
手続きが複雑であり、知識がないとスムーズに進めないでしょう。
相続税の計算を間違えたまま申告をしてしまうと、税務調査が入ったときに、間違いを指摘されるかもしれません。
そこでプロである税理士に依頼して、アドバイスをもらうことで、間違いのない相続ができます。
最初から正しい相続税の申告をしておけば、もし税務調査が入ったとしても、問題ありません。
相続税を抑えられる
相続では控除金額が増えるような特例という仕組みがあります。
特例をうまく活用することで、控除金額が増えて、結果的に相続税の節税に繋がります。
ただし特例は適用条件が複雑だったり、そもそも特例自体を知っておかないと利用できません。
特例を適用するためには、通常の申告に加えて、別の手続きも必要になります。
そこで税理士に依頼すれば、相続の状況を見たうえで、適用できる特例を教えてくれます。
複雑な手続きも任せられるため、「なるべく相続税を抑えたい!」という人におすすめです。
税務調査に対応してくれる
税理士に依頼しておけば、もし税務調査が入った場合にも対応してくれます。
税務調査では、何気ない雑談から情報収集されています。
そのため対策をしないまま税務調査に対応してしまうと、余計な情報を提供してしまうかもしれません。
税務調査の対応に慣れた税理士に同席してもらうことで、税務調査中の振る舞い・対応での失敗を防げます。
「税務調査に自分だけで対応するのは不安だ」という人は、税理士への相談がおすすめです。
まとめ
以上、税務署の調査権限の実際について確認すると共に、税務調査の実態、そして、税務調査を受けないようにするためには、そもそも相続税の申告の時点でどのような対応をすることが考えられるかについて、検討してきました。
これらの対応をきちんととったからといって、税務調査を絶対に回避できるというわけではありません。
ただ、税務署・税務官も人間ですから、その内容がしっかりしたものであるという好印象を与えることが出来れば、その内容に対する信憑性が上がるということは事実としてあるといえるでしょう。
その意味で、相続税の申告においても、きちんと真摯に、事実を正確に把握して、それを税務署にきちんと説明する姿勢で申告書を作成・提出することが第一といえるでしょう。
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