この記事でわかること
- 遺言信託は、信託銀行や一部の銀行が提供している「遺言書の作成相談~執行」を一括で任せられるサービス
- 便利な一方で、「費用が高くなりやすい」「担当が法律や税金に詳しくない可能性がある」などの注意点がある
- 遺言書の作成については、税理士などの専門家に相談するという選択肢もある
「遺言信託のサービスを利用したいけれど、実際のところどうなのだろう?」
遺言書を作ろうと考え始めたとき、選択肢の1つとなるのが、信託銀行や一部の銀行が提供する「遺言信託」というサービスです。
このサービスはメリットがある一方で、事前に知っておくべき注意点も存在します。
本記事では、相続専門家の税理士の視点から、「遺言信託」のサービスについて、詳しくお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、遺言書などの相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、下記からお気軽にご連絡ください。
遺言信託とは?
そもそも「遺言信託」という言葉は、次の2つの異なる意味で使われています。
まずは、この違いを簡単に見ていきましょう。
信託銀行などのサービスとしての「遺言信託」
一般的に「遺言信託」と呼ばれるのは、信託銀行や一部の銀行が提供する「遺言書の作成相談・保管・執行」をパッケージ化したサービスのことです。
具体的には、以下のようなサービスが含まれます。
サービス | 概要 |
---|---|
遺言書の作成相談 | 本人の希望を聞き取り、財産目録の作成をサポートし、遺言書の原案を作る |
遺言書の保管 | 作成した遺言書を厳重に保管する |
遺言の執行 | 相続が発生した際、銀行が「遺言執行者」として、遺産の名義変更や預貯金の解約などの手続きを行う |
法律用語としての「遺言信託」
法律(信託法)における「遺言信託」とは、「遺言によって信託を設定すること」を指します。
これは、特定の財産を信頼できる人(受託者)に託し、特定の人(受益者)のために、あらかじめ設定された目的に従って、管理・運用・処分してもらう制度です。
たとえば、「私が亡き後、この不動産から得られる家賃収入を、妻が亡くなるまで渡し続けてほしい」といった、長期的な財産管理を実現したい場合などに利用されます。
信託銀行などのサービスが「手続きの代行」であることに対し、法律上の遺言信託は「財産管理の仕組みそのもの」だという違いがあります。
本記事では、主に前者である「信託銀行や一部の銀行のサービスとしての遺言信託」についてお伝えしていきます。
信託銀行などの遺言信託サービスの流れ
信託銀行などの遺言信託サービスは、一般的に以下の3つのステップで進められます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1:遺言書の原案を作成する
最初のステップは、「銀行の担当者との面談」です。
ここでは、「誰に・どの財産を・どのように相続させたいか」といった希望を担当者に伝え、所有している不動産や預貯金などの財産目録を作成します。
銀行は、そのヒアリング内容と財産状況に基づき、遺言書の原案を作成・提案してくれます。
ステップ2:公正証書遺言を作成する
遺言信託サービスでは、「公正証書遺言」を作成するのが一般的です。
このステップでは、銀行が作成した原案をもとに、公証役場の公証人と打ち合わせを行い、遺言書を作成します。
その際、銀行が公証人とのやり取りや必要書類の準備をサポートしてくれるため、スムーズに手続きを進められます。
作成された遺言書の「原本」は公証役場で、「正本」は銀行で厳重に保管されるため、紛失するおそれはありません。
ステップ3:遺言者の死後、遺言を執行する
遺言者が亡くなって相続が発生すると、銀行は保管している遺言書に基づき、遺言執行者として手続きを開始します。
具体的には、以下のような業務を担当してくれます。
- 相続人への「相続開始・遺言書の内容・遺言執行者の就任」の通知
- 遺言の内容に沿った財産の分配
- 預貯金の解約、不動産や株式の名義変更 など
信託銀行などの遺言信託を利用するメリット
信託銀行などに遺言信託を依頼するメリットは、次の2つです。
ここでは、それぞれについて詳しく見ていきます。
メリット1:遺言書の作成から執行まで一貫して任せられる
1つ目のメリットは、遺言に関する一連の手続きをワンストップで依頼できることです。
特に、遺言者が亡くなった後は「財産調査」や「各種手続き」などが発生しますが、遺言信託を利用すればこれらをすべて任せられます。
ただし、銀行が直接行えない業務は「外部の専門家」を紹介され、その方とのやり取りが生じる点には注意が必要です。
メリット2:金融機関に任せるため安心感がある
遺言の内容を実行する「遺言執行者」は、友人などに依頼することも可能です。
しかし、任された方が高齢であったり、先に亡くなってしまったりするリスクも考えられます。
また、相続に関する知識のない方が遺言執行者に就任したものの、どうしていいかわからずに辞退するケースもあります。
その点、信託銀行などは法人という永続的な組織であり、倒産のリスクも極めて低いため、「確実に遺言を執行してもらえる」安心感があることは、大きなメリットです。
信託銀行などの遺言信託を利用する際の注意点
実際に信託銀行などの遺言信託サービスを利用するときは、以下の6点に注意が必要です。
契約してから後悔しないよう、これらの注意点を事前に把握しておきましょう。
注意点1:個別の専門家に依頼するより費用が高い
信託銀行などの遺言信託サービスは、「弁護士・司法書士・税理士」といった専門家に個別に依頼する場合と比較して、手数料が割高になる傾向があります。
具体的な手数料は金融機関によって異なりますが、一般的に以下のような費用がかかります。
- 契約時の手数料:数十万円~
- 保管手数料:年間数千円~
- 執行時の手数料:遺産総額に応じて変動(最低報酬額が110万円以上の場合が多い)
以上のことから、遺産総額によっては、総額「数百万円以上」の手数料がかかるケースも珍しくありません。
しかも「執行時の手数料」は、遺言信託を依頼した本人ではなく、相続人が負担することになる点にも注意が必要です。
なお、これらに加えて、遺言執行時の「相続税の申告」や「不動産の登記」などは税理士・司法書士に依頼することになり、報酬が別途発生します。
注意点2:窓口となる担当者が専門知識に詳しいとは限らない
銀行の窓口担当者は、あくまで金融機関のスタッフであり、必ずしも税金や法律の専門家ではありません。
このことから、下記のようなリスクが生じるおそれがあります。
- 相続トラブルを避けようとするあまり、遺言者の本当の想いを実現する踏み込んだ遺言内容の提案ができない
- 「相続税の負担軽減」のことを一切考慮していない、遺産の配分方法が提案される
注意点3:紛争の可能性があると引き受けてもらえないことがある
信託銀行などが報酬を得て「紛争処理(訴訟など)」を行うと、弁護士法に抵触する可能性があります。
このため、相続トラブルが発生する可能性があるケースでは、遺言信託を引き受けてもらえないことが多いです。
注意点4:遺言内容が制限される可能性がある
信託銀行などが扱う遺言信託は、法律で「財産の処分・相続に関するもの」に限られています。
このため、遺言書による「子どもの認知」など、身分に関する執行は引き受けてもらえません。
注意点5:内容変更に手数料がかかる
銀行と契約を結んだ後で「財産状況」や「家族関係」が変化して、遺言の内容を見直したくなることもよくあります。
このような場合、遺言書の内容を変更すると「手数料」が発生するのが一般的なため、契約前に確認しておきましょう。
注意点6:遺言書と異なる遺産分割が困難になる場合がある
遺言書があったとしても、相続人全員の合意があれば、遺言の内容とは異なる遺産分割ができます。
ただし、遺言執行者が指定されている場合、遺産分割協議の内容での分割を行うには遺言執行者の同意が必要です。
遺言執行者となった銀行が、「協議による新しい分割方法は、遺言者の意思と反している」として同意をしない場合、遺産分割協議が無効となる可能性があります。
遺言書については「士業グループ」に相談するのも一手
信託銀行や一部の銀行が提供する「遺言信託」は、遺言書の作成相談から保管、そして死後の執行までをワンストップで任せられる利便性の高いサービスです。
しかし、「費用が高い」「税金面での最適な提案を受けられるとは限らない」といった注意点も存在します。
このような背景を踏まえて、遺言書については「相続専門の士業グループ」に相談することをおすすめします。
士業グループは、遺言書の作成を代行できる「司法書士・行政書士」と、相続税に関する深い知識を持つ「税理士」が、同じ組織に所属していることが強みです。
これにより、「税負担を最低限に抑えられる遺言書」の作成が可能です。
もちろん、遺言書を遺した方が亡くなった後の手続きについても、ワンストップでお願いできます。
弊社でも「遺言書サービス」を提供しておりますので、よろしければ活用をご検討ください。
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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