この記事でわかること
- 相続税の延滞税とは
- 相続税の延滞税の計算方法
- 相続税の加算税とは
- 相続税の延滞税や加算税を課されないための対策
相続税の申告・納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。相続税の納付が遅れると、延滞税が課税されます。
また、期限内に申告していても内容に誤りなどがあれば、ペナルティとして加算税も課されます。
この記事では、相続税の延滞税や加算税が課税されるケースや税率、計算方法などをわかりやすく解説します。
期限までに、相続税の申告・納付ができないときの対処方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
期限内に相続税申告・納付を行わないと延滞税や加算税が課税される
期限内に相続税申告・納付を行わなかった場合、延滞税や加算税が課税されます。
延滞税や加算税は、本来の相続税額に加えて課されるため、税負担が増えないように注意が必要です。
相続税の申告・納付期限
相続税の申告・納付期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月」です。
たとえば、被相続人が4月10日に亡くなり、亡くなったことを相続人が当日に知った場合は、翌日4月11日から10カ月後にあたる翌年2月10日が相続税の申告・納付期限となります(申告・納付期限が土曜日・日曜日・祝日などの場合には、その翌日が期限)。
遠方に住んでいたり、疎遠になっていたりする場合には、被相続人が亡くなったことを暫く経ってから知ることも珍しくありません。
その場合、葬儀の案内や相続財産の遺産分割協議を行う旨の通知を受けた日の翌日から、相続税の申告・納付期限の日数計算が開始されることになります。
なお、相続税の申告書は、複数の相続人が連名で最も申告期限が早い人に合わせる形で提出するのが一般的です。
相続税の延滞税とは
相続税の延滞税とは、定められた期限までに相続税が納付されない場合に、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、自動的に課される利息に相当する税金のことです。
法定納期限までに相続税を納付していない場合
法定納期限である「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月」以内に、相続税を納付していない場合、延滞税が課されます。
相続税は、原則として現金で一括納付となります。納付期限を1日でも過ぎてしまうと、延滞税がかかり、期限内に申告もしていない場合には無申告加算税もかかります。
しかし、遺産がすぐに換金できない不動産ばかりで現預金が少ない場合、納税資金の準備が間に合わないこともあるでしょう。このような場合には、相続税を分割納付する「延納」や不動産などの相続財産を納める「物納」を利用できる可能性があります。
期限内に申告している場合には、「法定納期限」が納期限となります。
したがって、法定納期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月)の翌日から2カ月を経過する日までの期間は、年2.4%※の延滞税がかかります。
納期限の翌日から2カ月を経過した日以後は、年8.7%※の延滞税となります。
- ※
- 令和4年1月1日から令和7年12月31日までの税率
相続税の期限後申告・修正申告をした場合
期限後申告 | 延滞税・無申告加算税がかかる |
---|---|
修正申告 | 延滞税・過少申告加算税がかかる |
訂正申告 (申告期限内) |
期限内に相続税の納付もしていれば、延滞税・加算税はかからない |
相続税の申告期限を過ぎてから期限後申告をした場合、法定納期限の翌日から相続税を納付した日までの「延滞税」および「無申告加算税」がかかります。
一方、相続税の申告期限を過ぎてから申告内容の誤りに気付いて修正申告をした場合、法定納期限の翌日から相続税を納付した日までの「延滞税」および「過少申告加算税」がかかります(申告期限内に申告内容を修正する訂正申告の場合には、期限内に相続税の納付もしていれば、延滞税や過少申告加算税はかかりません)。
期限後申告または修正申告の場合には、「申告書を提出した日」が納期限となります。
したがって、法定納期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月)の翌日から納期限(申告書を提出した日)までの期間と、納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間は、年2.4%※の延滞税がかかります。
納期限の翌日から2カ月を経過した日以後は、年8.7%※の延滞税となります。
- ※
- 令和4年1月1日から令和7年12月31日までの税率
税務調査で更正・決定の処分を受けた場合
税務調査で、更正・決定の処分を受けた場合、法定納期限の翌日から相続税を納付した日までの「延滞税」がかかります。
更正・決定の処分を受けると「更正決定等通知書を発した日から1カ月後の日」が納期限となります。
したがって、法定納期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月)の翌日から納期限(更正決定等通知書を発した日から1カ月後の日)までの期間と、納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間は、年2.4%※の延滞税がかかります。
納期限の翌日から2カ月を経過した日以後は、年8.7%※の延滞税となります。
- ※
- 令和4年1月1日から令和7年12月31日までの税率
参考更正・決定の処分
更正処分とは、相続税の申告書が提出されている場合に、税務調査によって申告内容の誤りがあるとして処分されることです。
一方、決定処分とは、相続税の申告書が提出されていない場合に、税務調査によって納税義務があるとして処分されることです。
延滞税の計算方法
延滞税は、下記のように計算します。
延滞税の計算方法
引用元 国税庁
令和4年1月1日から令和7年12月31日までの期間は、納期限までの期間および納期限の翌日から2カ月を経過する日までは年2.4%の税率となります。納期限の翌日から2カ月を経過した日以後は年8.7%の税率です。
- 期限内に申告した場合:法定納期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月)
- 期限後申告または修正申告の場合:申告書を提出した日
- 更正・決定の場合:更正通知書を発した日から1カ月後の日
具体的に、延滞税を計算してみましょう。
事例
納付すべき本税300万円を90日延滞した場合の延滞税
- 納付すべき本税の額:300万円
- 法定納期限:令和7年4月30日
- 完納した日:令和7年7月29日
- 延滞日数:90日
延滞税は、暦に従って日数を計算するため、法定納期限の翌日から2カ月を経過する日(5月1日~6月30日)は61日、2カ月を経過する日の翌日から完納した日(7月1日~7月29日)は29日となります。
延滞税の計算式
(2)法定納期限から2カ月を経過する日の翌日から完納した日までの延滞税:(300万円×8.7%×29日)÷365日≒20,736円(1円未満の端数切り捨て)
(1)+(2):12,032円+20,736円=32,768円
延滞税:32,700円(100円未満の端数切り捨て)
特に、法定納期限から2カ月を経過する日の翌日から、延滞税の税率が高くなるため注意しましょう。
延滞税の計算期間の特例(免除期間)
延滞税には、下記の図のように延滞税の計算期間の特例(免除期間)があります。
期限内に相続税の申告書を提出したあと、法定申告期限後1年を経過してから修正申告または更正の請求をする場合、法定納期限から1年を経過した日の翌日から「修正申告書を提出した日」または「更正通知書を発した日」までは、延滞税の計算期間に含まれません。
したがって、期限内申告をおこなったあと、3年後に修正申告をしたとしても延滞税は1年分のみとなります。
ただし、重加算税が課された場合には、延滞税の計算期間の特例(免除期間)の適用はありません。
同様に、期限後申告書を提出したあと、1年を経過してから修正申告または更正の請求をする場合は、期限後申告書の提出後1年を経過した日の翌日から「修正申告書を提出した日」または「更正通知書を発した日」までは、延滞税の計算期間から控除されます。
なお、修正申告によって新たに納める相続税は、「修正申告書を提出する日」が納期限となります。「修正申告書を提出する日」までに納めないと、納期限の翌日から2カ月を経過する日までは税率2.4%、納期限から2カ月を経過する日の翌日から完納した日までは税率8.7%の延滞税がかかりますので注意しましょう。
相続税の延滞税|よくある質問
相続税や延滞税を納めないまま放置するとどうなりますか?
相続税や延滞税を納めないまま放置すると、税務署から督促状が送付されます。
税務署からの督促状にも応じず、相続税や延滞税を納付しないときは、財産の差し押さえなど滞納処分を受ける場合があります。
参考滞納処分
滞納処分とは、相続税などを滞納している人の意思に関わらず、滞納している税金等を強制的に徴収するために、預貯金や給与、不動産などの財産を差し押さえ、場合によっては公売などにより差し押さえた財産を換価し、滞納している税金等に充てる一連の強制徴収手続きのことです。
相続税に時効はありますか?
相続税の時効は、申告書の提出期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月)から5年です。ただし、偽りその他不正の行為によって相続税を逃れるなど悪質な場合、相続税の時効は7年となります。
延滞税は、期限までに相続税を納めないときに課される税金であるため、相続税の延滞税の時効も、5年あるいは7年と解されます。
ただし、前述のように、相続税や延滞税を納めないまま放置すると、財産の差し押さえなど滞納処分を受ける可能性があるため、速やかに納付するようにしましょう。
加算税とは
加算税とは、期限内に相続税申告をしなかった場合や、本来の税額より少なく申告した場合などに、本来の相続税額に加えて課される行政上の制裁です。
相続税の加算税には、下記の3種類があります。
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
【無申告加算税】期限内に相続税申告をしなかった場合
期限内に相続税申告をしなかった場合、無申告加算税がかかります。
加算税の概要
引用元 財務省
なお、法定申告期限から1カ月以内に期限後申告をするなど一定の要件を満たしていれば、無申告加算税はかからないため、申告漏れに気付いたときは速やかに相続税の申告をしましょう。
無申告加算税の税率は、税務調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合には、税率5%に軽減されます。
しかしながら、税務調査の事前通知の後に期限後申告をした場合(調査による決定を予知する前の期限後申告)は、税率10%(50万円を超え300万円までの部分は15%、300万円を超える部分は25%)となります。
特に、税務調査を受けた後に期限後申告をした場合(調査による決定を予知した期限後申告)には、税率15%(50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%)となりますので注意しましょう。
【過少申告加算税】本来の税額より少なく申告した場合
本来の税額より少なく申告した場合、過少申告加算税がかかります。
加算税の概要
引用元 財務省
なお、税務署から指摘される前に自主的に修正申告をすると、過少申告加算税はかからないため、申告内容の誤りに気付いたときは速やかに修正申告をしましょう。
【重加算税】申告内容を隠蔽・仮装した場合
申告内容を隠蔽・仮装した場合、重加算税がかかります。
隠蔽・仮装とは、故意に財産を隠したり、偽ったりして課税を逃れようとする行為のことで、重加算税の対象になると、下記のように35%あるいは40%の重い税率が課されます。
加算税の概要
引用元 財務省
延滞税・加算税を課税されないためには?
延滞税や加算税を課税されないようにするためには、以下のことを心がけましょう。
- できるだけ速やかに相続税を納付する
- 相続税の納税資金を計画的に準備する
- 申告漏れや申告内容の誤りに気付いたら速やかに申告する
できるだけ速やかに相続税を納付する
相続税の納付は、相続税の申告書を提出する前におこなっても問題ありません。相続税の納付をし忘れないためにも、相続税の申告書を作成して納付額が確定したら、申告書の提出前に納付するとよいでしょう。
万が一、相続税の納付期限を過ぎてしまった場合は、できるだけ延滞税を増やさないためにも速やかに納付しましょう。
相続税の納税資金を計画的に準備する
できるだけ速やかに相続税を納付するためにも、納税資金は計画的に準備しましょう。
特に、換金しにくい不動産などが財産の大半を占める場合には、生前に不動産を売却して現金化したり、生命保険の受取人に相続人を指定したりするなど対策が必要です。
申告漏れや申告内容の誤りに気付いたら速やかに申告する
相続税の申告が漏れていたときは、速やかに申告しましょう。法定申告期限から1カ月を過ぎると、延滞税だけでなく無申告加算税もかかるため注意が必要です。
前述したように、無申告加算税は、税務調査の事前通知の後に期限後申告をする場合や、税務調査を受けた後に期限後申告をする場合には、無申告加算税の税率が上がります。
税務調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をする場合であれば、無申告加算税の税率を抑えられるため、速やかに申告するようにしましょう。
相続税の延滞税・加算税については税理士に相談しよう
期限までに、相続税の申告や納付が間に合わないときは、速やかに税理士に相談することをおすすめします。
相続専門の税理士であれば、申告書を正確に作成してくれ、より相続税額が少なくなるように、適用可能な特例や税額控除を活用してくれます。
また、現金での一括納付が難しい場合には、延納や物納などの方法についても税理士と相談した上で、税務署での申請手続きを進めることができます。
相続税に不安があるときは、相続専門の税理士に相談して、よりよい対処方法を検討しましょう。
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