脊髄とは、脊柱の中を通って全身に張り巡らす中枢神経系を指し、多くの機能をつかさどる重要な器官でもあります。
この脊髄が損傷してしまうと、手足のしびれ・機能障害が起こるほか、重症の場合は四肢麻痺、損傷部分以下の全機能が喪失されます。
最悪の場合は、呼吸困難で死に至ることもあるほどです。
そして、脊髄は一度損傷してしまうと、二度と修復・再生されず、医学が発展している現代においても治療方法がありません。
一般的に「脊髄損傷」と言われていますが、損傷部分によって下記のように傷病名がつけられます。
・頚髄損傷
・胸髄損傷
・腰椎損傷
・中心性脊髄損傷
事故に遭って脊髄を損傷した場合、先にも述べた通り手足の自由がきかなくなって事故前のような生活に戻れなくなってしまったり、社会復帰が難しくなってしまいます。
また、生活のために車いすをはじめとした道具などをそろえるだけでなく、家族や周囲の協力が必要となってきます。
少しでもその手助けとなるよう、後遺障害等級を獲得し、後遺症慰謝料や逸失利益を請求したり、自賠責保険からの支払い額を先取りするなどの方法を模索しましょう。
後遺障害等級を獲得するためには、どのような準備をする必要があるのでしょうか。
脊椎に骨折や脱臼がある場合、レントゲンを撮影して医師に診断してもらいます。
脊椎だけでなく、脊髄の損傷の可能性がある場合は、CTスキャンやMRIなど神経も写る機器で障害部位を撮影して診断してもらいます。
画像による診断だけでなく、触診や問診によって、違和感やしびれがないかの知覚障害があるか、力がどのくらい入るのか、また腱反射(※)の検査などを行い、脊髄損傷の症状がどの程度なのかを確認します。
※ハンマーで神経を叩き、反射的に筋が収縮するかを確認すること
筋電図や脳・脊髄誘発電位という検査を行い、神経の伝達に障害が起きているかを見る場合もあります。
脊髄損傷の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。
また、後遺障害等級を決めるための麻痺の種類や程度について解説していきます。
脊髄損傷には、主に4つの種類があります。
脊髄が横断的に断裂し、末梢神経と完全に切り離されるため、損傷した部分以下の神経への伝達が全く行われなくなります。
この完全損傷になると、体を動かすことはもちろん、感覚機能も失われます。
さらに、体温調節機能、退社機能も失われ、完全麻痺の状態になります。
頸部(首)の脊髄神経が損傷されることを指し、胸から下の体幹部の運動が麻痺し、排泄機能が失われます。
さらに頚髄の損傷したところによっては、手の運動機能にも影響が出ます。
上部の場合は指や手の動きが不自由になり、下部の場合は車いすを漕ぐことはできます。
胸部の脊髄神経の損傷を言い、損傷したところから下の体幹部に麻痺が残るため、排泄機能が失われます。
胸椎の何番目を損傷したかによって、体幹の動きに差が出ますが、手の運動機能は失われないため、車いすを漕いで自分の意志で移動することができます。
これまでに紹介した3つの損傷は、骨折の結果として脊髄が断裂するものですが、骨折ではなく衝撃によって脊柱内部の頚髄が損傷することもあります。
それが、不完全損傷です。
この不完全損傷はレントゲンでは見つけられず、軽い頚椎捻挫として診断される可能性もあります。
具体的な症状としては、下肢・上肢の麻痺、感覚障害、排泄障害などです。
特に上肢の麻痺が重度になり、下肢が改善しても上肢の麻痺が残る場合もあります。
また、排泄障害も残ってしまいます。
脊髄損傷による後遺障害を説明してきました。
ここからは、後遺障害の麻痺の種類や程度について解説します。
これらによって、後遺障害等級が変わってくるので、確認が必要です。
脊髄損傷があるだけでは、後遺障害等級の認定はされません。
では、脊髄損傷の後遺障害等級判断基準はどのようになっているのでしょうか。
脊髄損傷によって、どこにどの程度の麻痺が生じているのかを、医学的な根拠に基づき証明する必要があります。
また、どの程度の介護が必要なのかについても考慮されます。
完全損傷の場合は、その場所によって等級が変わります。
不完全損傷は、多くの場合3~9級の後遺障害等級となりますが、まれに1級や2級の認定がされる場合もあります。