東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産を検討している方にとって、家族に知られずに手続きを進めることができるかどうかは大きな関心事です。
特に、世帯分離をすることで自己破産の事実が家族に伝わらないようにする方法や、実際にどのような影響が生じるかを知りたいと考える人も多いでしょう。
この記事では、世帯分離が家族への影響をどの程度抑えられるか、そして自己破産が同居人に与える影響について詳しく解説します。
世帯分離とは、同じ住所に住みながらも住民票上で世帯を分けることを指します。
世帯分離による戸籍への影響はありません。
自己破産をする際、同居家族の収入や財産情報の提出が必要となることがあります。
このため、世帯分離をして家族に知られないようにしたいと考える方もいるでしょう。
ここでは、世帯分離の効果や家族への影響についてわかりやすく解説します。
自己破産手続きでは、同居していて生活費を共にしている場合、たとえ世帯分離をしても家族の収入や財産情報の提出が必要になるケースが多いです。
裁判所は、形式的に世帯を分けていても、実際の生活費のやり取りを重視します。
たとえば、親と同居してその収入に頼っている場合が考えられます。
また、共働きの夫婦であれば、収入証明書や通帳のコピーの提出を求められることがあります。
さらに、住民票や賃貸契約書には同居人の情報が記載されているため、裁判所の調査で家族が同居していることが確認される場合があります。
これにより、家族に自己破産の事実が伝わる可能性が高まります。
生活費を完全に分けている場合には、世帯分離をすることで自己破産の影響を家族に伝えずに進められるケースもあります。
具体的には、以下のような場合です。
これらのケースでは、裁判所が「生計が別」と認めることにより、家族の収入情報を提出する必要がなくなる可能性があります。
結果として、家族に自己破産が知られるリスクを減らせることもあります。
自己破産を隠し通せたとしても、長期的な視点で見ると、家族に協力を求めることが重要です。
自己破産後も生活を再建するためには、家族の理解や協力が欠かせません。
たとえ一時的に自己破産を隠せても、ローンを組めないなどで後から家族に知られるリスクもあります。
家族に事情を話し、協力を得た上で自己破産を進めることで、生活の立て直しがスムーズに進む可能性があります。
自己破産をする際、家族にその事実を隠して進めたいと考える方もいるかもしれませんが、実際には難しい場合が多いです。
手続きや財産処分の過程で、同居している家族に自己破産を知られてしまう可能性が高くなります。
ここでは、自己破産が家族に隠しにくい理由について詳しく見ていきましょう。
先述の通り、裁判所は、自己破産を申請した人の経済状況を正確に把握するため、同居している家族の収入や財産に関する資料を求めることがあります。
収入証明書や通帳のコピー、家計全体の収支を示す家計簿などがその対象です。
同居している家族からこれらの資料を提供してもらうには、自己破産の理由を説明しないと協力を得るのは難しいでしょう。
裁判所は、申請者が本当に支払い不能か、また不自然なお金の流れがないかを確認するために、こうした情報を必要としています。
そのため、家族に知られずに手続きを進めるのは現実的ではありません。
自己破産の手続きでは、債権者に対して債務の返済を行うため、一定の価値がある財産が処分されることがあります。
たとえば自宅や自動車などが該当し、こうした財産が処分されると、同居している家族に隠しておくのはほぼ不可能です。
特に、自宅が処分されて引っ越しを余儀なくされる場合、家族は自己破産の事実を知ることになります。
自己破産の手続きが進むと、裁判所や破産管財人からの書類が自宅に届きます。
これらの郵便物は、破産手続きに関するものであり、家族が郵便受けを確認した際に目にする可能性があります。
このため、自己破産を家族に隠し通すことが難しくなる場合があります。
自己破産をすると、信用情報機関にその事実が登録され、「ブラックリスト」に載ることになります。
これにより、一定期間はクレジットカードの発行やローンの利用ができなくなります。
たとえば、住宅ローンの審査が通らないなどの影響が出るため、家族に「なぜローンが利用できないのか」と尋ねられることもあり得ます。
こうした質問に対して説明が必要になるため、結果的に自己破産の事実が明らかになりやすくなります。
自己破産を考える際、同居人や家族への影響は気になるところです。
破産手続きでは、財産の処分や書類の提出など、家族や同居人の協力が求められる場面もあります。
しかし、その一方で影響を受けない側面も存在します。
ここでは、同居人への影響や、影響が及ばない部分についてわかりやすく解説します。
自己破産をしたことによって、同居人、特に家族には以下の影響があります。
自己破産の手続きでは、裁判所が申請者の経済状況を正確に判断するため、同居する家族の収入や財産の情報が求められることがあります。
収入証明書や通帳のコピー、家計の収支を示す資料がその対象です。
これらの資料を用意するには、家族の協力が必要となります。
自己破産をすると、裁判所が本人の財産を処分し、債権者への返済に充てることになります。
このため、自宅や車、預貯金などの資産を手放さなければならない場合があります。
こうした財産が失われることで、同居している人にも影響を与える可能性が高いです。
たとえば、自宅が処分されると同居人も一緒に引っ越しを余儀なくされることがあり、家賃や住居の選択肢が変わるため、住環境が大きく変わる可能性があります。
また、車が処分される場合、同居人が通勤や買い物などの移動手段を失うことになり、不便を感じることがあるでしょう。
さらに、不動産が共有名義の場合、破産手続き中に破産管財人から同居人に対してその不動産の売却について相談されることがあります。
特に、住宅ローンが残っている家の場合は、自己破産により、ローンを提供している金融機関がその家を競売にかけることが多く、同居人が新しい住居を探さなければならなくなるケースもあります。
ただし、破産する本人に価値のある財産がまったくない場合や、家や車が同居人の名義であれば、自己破産による影響は少なくなります。
しかし、名義が同居人であっても、裁判所がその財産を破産者のものと判断することもあるため、注意が必要です。
自己破産をしても、同居している家族や親しい人が自動的に借金の返済義務を負うわけではありません。
たとえ同じ住所に住んでいたとしても、借金をしたのが自分であれば、その返済は同居人に求められないのが原則です。
しかし、状況が変わるのは、同居人が「保証人」になっている場合です。
保証人は、主債務者が返済できない場合、代わりにその借金を返済する義務を負います。
自己破産によって主債務者が支払い不能になると、債権者は保証人に対して残りの債務を一括で請求することができます。
たとえば、配偶者が保証人になっている場合、自己破産すると、配偶者がその借金を全額支払わなければならない事態に陥ることがあります。
支払いが困難な場合、保証人である配偶者も自己破産を検討せざるを得ない可能性もあるでしょう。
また、保証人でなくても、連帯債務者として同じ借金を負担している場合も注意が必要です。
連帯債務者は主債務者と同じ立場で返済義務を持つため、自己破産が影響を及ぼすことがあります。
自己破産を考える際は、同居人が保証人や連帯債務者になっていないか、事前に確認しておくことが重要です。
先述の通り、自己破産をすると、信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載る状態になります。
このため、破産後は一定期間、ローンやクレジットカードの利用ができません。
たとえば家族のために住宅ローンを組もうとしても、その審査が通らず、資金を借りられない状況が続きます。
自己破産をしても、同居人は下記の点では自己破産の影響を受けません。
自己破産をしても、家族が所有している財産には影響がありません。
同居している場合でも、家や車などが家族名義で、破産者本人と無関係であれば、これらを処分する必要はありません。
そのため、家族の財産はそのまま保護されます。
自己破産した本人には、一定期間、特定の資格や職業に就けない制限がありますが、同居している家族にはそのような制限はありません。
家族の就職や転職、現在の職業に影響を受けることはなく、自由に選択できます。
自己破産しても、生活に必要な家具や家電は処分の対象にはなりません。
冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの基本的な家電は引き続き使用できるため、家族が日常生活に困ることはありません。
ただし、アンティーク家具などの高価なものは処分の対象になる可能性があります。
自己破産が家族の結婚に影響を与えることはありません。
自己破産によって戸籍や住民票に記載がされることはないため、法的には結婚の障害にはなりません。
ただし、自己破産の情報が官報に掲載されるため、その情報から相手に知られるリスクが完全になくなるわけではありません。
自己破産した本人は、一定期間、信用情報に登録されるため、新たなクレジットカードやローンが利用できなくなりますが、同居している家族の信用情報には直接影響しません。
そのため、家族が自分の名前でローンを組むことやクレジットカードを作ることには問題はありません。
ただし、ローンの審査で家族の信用情報が関係する場合には、自己破産した事実が間接的に影響する可能性があります。
自己破産を家族に知られないようにすることは難しい面もありますが、世帯分離や生活費の管理方法次第で影響を抑えられる場合もあります。
まずは専門家に相談し、家庭の状況に応じた最適な方法を検討しましょう。
家族の協力を得られるかどうかを話し合い、支え合いながら手続きを進めることで、生活の再建をスムーズに進めることができます。