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最終更新日:2025/3/6

資本金の仕訳はこれで安心!会社設立時の勘定科目と仕訳例をわかりやすく解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

資本金の仕訳はどうすればいい?会社設立時に使う勘定科目とよくある質問を解説

会社設立後、いざ会計ソフトに入力を始めようとした際、仕訳に迷うことがあるかもしれません。

事業を開始すると、法人名義の口座が開設されるまでに必要な費用が発生することがあります。また会社設立日までに、事業に必要な費用を個人で立て替えることもあるでしょう。

会社設立時の資本金の仕訳はどうすればよいのでしょうか?

結論からいうと、資本金が現金出資で資本金の額が100万円の場合、以下のようになります。

日付借方貸方
会社設立日現金1,000,000円資本金1,000,000円
  • (日付) 会社設立日
  • (借方) 現金
  • (貸方) 資本金
  • (金額) 100万円

ここでは、会社設立時に必要な資本金の仕訳とよくある質問について解説します。

会社設立時に必要な資本金の仕訳

資本金は、発起人(出資者)の個人名義の口座に振り込みます。原則、資本金の払込みは定款の作成後に行います。

個人名義の口座に振込みを行うのは、法人登記が完了するまで法人名義の口座は存在しないからです。最近は、法人名義の口座が開設できるまで申込みから2〜3週間を要します。

また会社設立時の出資には、現金と現物の2つの方法があります。

現金出資と現物出資で、資本金の仕訳が異なるため注意が必要です。

まずは、現金出資の資本金の仕訳を見ていきましょう。

現金出資のみの時

現金出資とは、資本金を現金で準備する方法です。

現金出資の場合、資本金の仕訳は法人口座の開設前と開設前に分けて考える必要があります。

法人口座の開設がまだできていない

資本金は、発起人の個人名義の口座に振り込みます。

会社設立日には、まだ法人口座ができていません。

法人口座ができるまでは、振込みをした個人名義の口座に一時的に資金がある状態になります。

会計ソフトへ入力する際、資本金の仕訳の日付は会社設立日になります。

個人名義の口座に資本金がある状態の仕訳は、以下の通りです。

例)現金出資のみで資本金の額が100万円

日付借方貸方
会社設立日現金1,000,000円資本金1,000,000円

借方勘定科目には、現金の代わりに「預け金」や「仮払金」を使うことがあります。

代表的な会計ソフトである、弥生会計とマネーフォワードの実際の入力画面を確認しておきましょう。

  • 会社設立日 4月1日
  • 現金出資  100万円

【弥生会計】

【マネーフォワード】

法人口座の開設ができた

法人口座の開設ができたら、なるべく早い時期に、資本金の払込みをした個人名義の口座から法人口座へ資金を動かしましょう。

早い時期に資金を動かすのは、資本金はあくまでも「会社のお金」だからです。

個人名義の口座から資金を動かさずにいると、会社の財産と個人の財産の区別がつきづらくなります。後々経理処理が煩雑になる可能性があるためおすすめできません。

個人名義の口座から法人口座へ資金を動かした際の仕訳は、以下の通りです。

例)個人名義の口座から100万円を法人口座へ移動
  振込手数料220円

日付借方貸方
資金移動日普通預金999,780円現金1,000,000円
支払い手数料220円

資本金の仕訳を入力した際、現金の代わりに「預け金」や「仮払金」を使った場合、貸方勘定科目は「預け金」や「仮払金」となります。

振込手数料は、「支払手数料」として会社の経費になります。

実際に会計ソフトの画面も確認しておきましょう。

  • 資金移動日 4月30日
  • 移動金額  100万円
  • 振込手数料  200円

【弥生会計】

【マネーフォワード】

次に、現物出資の資本金の仕訳を見ていきましょう。

現物出資がある時

出資は、現金でなく現物で行う方法もあります。これを現物出資といいます。

会社の資本金は、現金で準備するのが一般的です。

しかし、少ない資金で会社を設立する場合や資本金の額を増やしたい場合には、現物出資を行うことがあります。

具体例として、個人事業を法人化する際、在庫を現物出資するケースがあげられます。

現物出資が可能な財産には、在庫のほかにも自動車や不動産などもあります。

定款を確認する

会社設立時に現物出資を行う場合、定款に記載が必要です。

資本金の仕訳をする際には、必ず定款を確認しましょう。

定款には以下のような記載があります。

  • 第〇条(現物出資)
    現物出資をする者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数は次のとおりである。

資本金の仕訳を行う際は、「出資財産」と「価額」の情報が必要です。

具体的な仕訳例

現物出資の仕訳の例として、個人事業で使用していた自動車を現物出資した場合を考えてみましょう。

今まで事業用で使っていた自動車を会社設立後にも使用することはよくあります。

定款には、以下のように記載されています。

出資者〇〇 〇〇
出資財産自転車 〇〇社製 〇〇ー〇〇〇〇
車台番号:〇〇〇〇〇〇〇〇 数量:1
価格金〇,〇〇〇,〇〇〇
現物出資財産の価額金〇,〇〇〇,〇〇〇

現金出資とあわせて自動車で現物出資を行なった際の仕訳は、以下の通りです。

例)現金100万円と自動車100万円の出資で資本金200万円を準備した

日付借方貸方
会社設立日現金1,000,000円資本金2,000,000円
車両運搬具1,000,000円

自動車の現物出資で勘定科目を「車両運搬具」とするように、出資した資産の内容に応じた勘定科目を使って入力を行います。

続いて、会社設立時の経理処理でよくある質問について解説していきます。

会社設立時に迷いがちな仕訳

事業を開始すると、法人口座が開設される前に、必要な費用を支払うことがあります。法人口座の開設は申込みから2〜3週間を要するため、よくあるケースです。社長個人が、事業に必要な費用を立て替えて支払うこともあるでしょう。

ここでは、会社設立時の仕訳で迷いがちな2つのケースを紹介します。

経費を資本金から支払った

法人名義の口座が開設できるまでは、現金で準備した資本金は個人名義の口座に一時的にある状態です。

会社設立日以降、資本金のお金は自由に使えます。

「資本金から支払う」「資本金を使う」というと「資本金が減る」と考え、正しい仕訳が分からなくなることがよくあります。

資本金として準備した「現金」は減少しますが、資本金の金額は変わらないことに注意が必要です。

個人名義の口座にある資本金から経費を支払った仕訳は、以下の通りです。

例)オフィス備品としてコピー用紙の代金3,000円を支払った

日付借方貸方
支払日消耗品費3,000円現金3,000円

実際に会計ソフトの画面も確認しておきましょう。

  • 支払日 4月10日
  • オフィス備品  3,000円

【弥生会計】

【マネーフォワード】

会計ソフトに入力する際、勘定科目の選択で迷うことがあるかもしれません。

例にあげたオフィス備品は、弥生会計では「消耗品費」、マネーフォワードでは「備品・消耗品費」と入力を行いました。

使用する会計ソフトで、同じ内容の取引でも勘定科目の名前が異なる場合があります。

また、ガソリン代は「旅費交通費」「車両費」のどちらだろうと勘定科目の選択に迷うことがあるかもしれません。答えは「旅費交通費」「車両費」のどちらでも構いません。

ポイントは、同じ内容の取引は毎回同じ勘定科目を使い続けることです。

同じ勘定科目を使い続ければ、大きな変動を調べることが可能です。毎月の推移や過去との比較を行う際、正しく分析することができます。

経費を個人が立て替えて支払った

事業を開始すると、社長が経費を現金や電子マネー、個人のクレジットカードで立て替えて支払うことがあります。

社長が経費を立て替えて支払った仕訳は、以下の通りです。

例)出張先でホテルの宿泊代金1万円を社長が立て替えて支払った

日付借方貸方
支払日旅費交通費10,000円短期借入金10,000円

貸方勘定科目には、短期借入金の代わりに「役員借入金」を使うこともあります。

頻繁に社長個人が経費を立て替えて支払うと、短期借入金や役員借入金の額が膨らみます。

適切な時期に法人口座から精算を行うとよいでしょう。

社長が立て替えて支払った経費を精算したときの仕訳は、以下の通りです。

例)社長が立て替えていた経費の合計額5万円を法人口座から引き出した

日付借方貸方
清算日短期借入金50,000円普通預金50,000円

個人名義のクレジットカードを利用する場合、カード会社が発行する明細には事業に使った経費だけでなく、社長や家族のプライベートな支出も載っています。

誤って一緒に精算しない工夫が必要です。

事業との関連がわかる支払いのメールや資料を保管しておくと、後から確認ができます。

また、特定の個人のクレジットカードを事業用の支払い専用と決めておくことで、ビジネスでの支出とプライベートでの支出を明確に区別することができます。

起業当初は日々の忙しさに追われ、会計処理まで手が回らないことがよくあります。

後から会計ソフトに入力する際、過去の記憶を正確に思い出すのは簡単ではありません。会社設立当初から、負担の少ない方法で経理処理が楽になる工夫をするとよいでしょう。

続いて、会社設立や開業の際に必要な費用の仕訳について解説します。

会社設立時にかかる経費の勘定科目

会社を設立する際、さまざまな費用を支払います。

会社設立や開業のために費用を支払った場合、「創立費」か「開業費」のいずれかの勘定科目を使って会計処理を行います。

創立費

創立費は、会社を設立する際に支払った費用のことです。

定款の作成費用や登録免許税などが該当します。

会社の設立費用を支払った仕訳は、以下の通りです。

例)会社設立費用20万円を支払った

日付借方貸方
会社設立日創立費200,000円現金200,000円

開業費

会社を設立しても、すぐに事業を開始できるとは限りません。

事業を開始するまでには準備が必要で、さまざまな費用がかかります。

開業費は、事業を開始するまでに支払った費用をいいます。

事業を開始するまでに経費を支払ったときの仕訳は、以下の通りです。

例)開業準備に必要な名刺を作成し、1万円を支払った

日付借方貸方
支払日開業費10,000円現金10,000円

会社設立時に必要な資本金の仕訳を理解しておきましょう

会社を設立したら、事業だけでなく会計ソフトを使って経理業務も進めなければなりません。

会社設立後は法人口座を開設し、できるだけ早い時期に資本金を個人口座から法人口座へ移動しておくことが大切です。

会社設立時に必要な資本金の仕訳を理解し、正しい会計処理ができるようにしましょう。

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