「相続の配偶者控除を利用したいのに、なかなか遺産分割が終わらない」といった事態が起こるかもしれません。
でも調べてみると死亡を知った翌日から10ヵ月以内に申請しなければならないとされています。
もう期限が間近です。
打つ手はないのでしょうか。
実は救済措置があるのです。
配偶者控除のあきらめるべきではない
遺産分割の話が終わらないまま相続税の配偶者控除の期限が近づいても、メリット感が強いのであきらめるべきではないのです。
そのまま遺産を相続しようとすると、基礎控除とよばれる誰でも利用できる相続税の控除が使えます。
これは3,000万円＋600万円×人数、という式であらわされます。
例えば夫が亡くなって4億円を子供と妻で法定相続した場合を考えましょう。
ここで、法定相続分という民法で決められた相続順位に従って決まった割合を相続するものがあります。
注意点として配偶者は必ず優先的に相続するということです。
- ・妻と「子供」は第一順位（子供死亡の場合は孫）
- ・妻と「夫の親（直系尊属）」は第二順位（両親が亡くなっている場合は祖父母）
- ・妻と「夫の兄弟姉妹」は第三順位（兄弟が亡くなっている場合は甥や姪）
という相続順位になり、取り分は
- ・妻のみ⇒相続財産の全額
- ・妻と子供⇒相続財産の二分の一
- ・妻と「夫の親」⇒相続財産の三分の二
- ・妻と「夫の兄弟姉妹」⇒相続財産の四分の三
となります。
つまり、4億円を子供と妻で相続した場合には、
3,000万円＋600万円×2＝4,200万円（基礎控除額）
となり、4,200万円まで控除されます。
一方で配偶者控除の場合は1億6,000万円まで控除枠があり、法定相続（民法で決まった相続分）が1億6,000万円を超えた場合、法定相続分の枠で相続税の控除が使えるので、基礎控除額の4,200万円と比べると圧倒的な数字ではないでしょうか。
申告期限後3年以内の分割見込書を提出
申請期限が来ても配偶者控除は受けられます。
まず、期日後申請というものを利用する方法がありますが、これは延滞税や無申告税を払う必要がありますし、これはどちらかというとうっかり期限が過ぎてしまった場合に利用するものです。
遺産分割がまだ終わっていない段階で申請期限が来てしまった場合、申請期限後3年以内の分割見込書を提出すると、期限から3年間は延長することが可能になるのです。
先ほどの期日後申請と比べると、期日後はどちらかというと罰則のような位置づけの制度です。
一方でこちらは正当な手続きを経て利用する制度で、余計な税金を払わなくても良いのです。
また、遺産分割の決まった日の翌日から4ヵ月以内に税務署に更正の請求をすると、配偶者控除を受けるまでに支払った余分な税金が返還されます。
さらに3年経っても遺産分割出来ない場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」というものを期限から3年経った日の翌日から2ヵ月以内に税務署長に提出すると、さらに期限を延長することが出来るのです。
その後は3年伸ばした場合と同じように、分割できない事情が無くなった日から4ヵ月以内に分割し、更正の請求をすると配偶者控除を利用していないときに支払った余分な税金を返還してもらえます。
まとめ
相続税の配偶者控除の期限、つまり被相続人の死亡を知った翌日から10ヵ月が到来してしまう場合に、遺産分割がまだ行われているようでもあきらめてはいけません。
配偶者控除は誰でも利用できる相続税の基礎控除と比べると、その限度額に差がはっきり出てしまうからです。
うっかりミスであれば期日後申請で良いのですが、遺産分割の場合はきちんと手続きを経ることで、正当に期日を延長することができるのです。
せっかく用意された制度ですので、きちんと理解した上で節税しましょう。
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