この記事でわかること
- サラリーマンが農地相続するメリットやデメリットがわかる
- サラリーマンが農地相続したときの選択肢6つがわかる
- 2種類の農地売却方法がわかる
- 農地を相続したときの手続きや必要書類がわかる
- 農地を相続放棄するときの注意点がわかる
「親が亡くなった後の農地はどうしよう?」と考えているサラリーマンの方は、ぜひ今回のコラムを参考にしてください。
都会で仕事をしているものの、実家に田んぼや畑があるサラリーマンの場合、将来的に農地相続の問題が出てきます。
現在の住まいは仕事やプライベートの拠点であるため「退職後は地元に帰って農地を継ごう」と思っても、妻や子供たちに反対されるかもしれません。
しかし、耕作放棄地(過去1年以上作付け(栽培)をしていなく、またこの先数年間も作付けする予定のない土地)にすると色々な弊害も生じるため、非農家のまま農地を所有し続けると、将来的には子供に負担を押し付ける形になるでしょう。
今回のコラムは、非農家のサラリーマンがどのように農地を相続するのがベストか、6つの選択肢をわかりやすく解説していきます。
サラリーマンが農地を相続するメリット・デメリット
サラリーマンが相続するメリット・デメリットをご紹介します。
サラリーマンが相続する場合、農業を承継できれば問題はありませんが、農家を承継しない場合も考えておかなければなりません。
農地を相続するメリット
サラリーマンの農地相続には以下のメリットがあります。
農地相続のメリット
- 農業収入がある
- 人に貸せば賃料が入る
- 収益物件にできる
農作物を育てて売れば農業収入が入るため、効率的に経営すればサラリーマン以上の収入になる可能性もあります。
農地は人に貸すこともできるので、毎月一定額の賃料収入も得られるでしょう。
また、農業をしない場合は宅地に転用して収益物件を建てたり駐車場にするなど、農地以外の活用方法もあります。
農地を相続するデメリット
サラリーマンが農地を相続するときは、以下のデメリットも考慮してください。
農地相続のデメリット
- 維持管理に労力やコストがかかる
- 農業を維持できなければ負の財産になる
- 売却が難しい
農地は農薬や肥料代、農機具の保守や買い換えコストがかかります。
農業をやめても草刈りは継続しなければならず、固定資産税も払い続けることになります。
農地法の制限により簡単に売却もできないので、農業を維持できなければ負の財産になることもあります。
サラリーマンが農地を相続したときの選択肢6つ
農地相続にメリットがあるかどうかは活用方法次第です。
サラリーマンが農地を相続するときは、次の選択肢6つの中から「どれがベストか?」を考えるとよいでしょう。
選択肢1:農業を始める
まず考えられるのは自分が農家になる方法です。
農地はトラクターなどの農機具と一緒に相続するケースが多いので、初期費用をかけずに農業をスタートすることもできます。
効率性を高めて販路も拡大すれば、サラリーマンのときより多い収入が獲得できることもあるため、経営者を目指したい人には十分な魅力があります。
一方、農地は天候の影響をそのまま受けるので、収入が不安定になるデメリットもあります。
農機具の買い換えには数百万円かかるので、資金的な余裕がなければ、機械の故障と同時に農業の休業を余儀なくされることもあります。
また、農地の近くに引っ越す必要もあるため、家族の理解がなければ農業スタートは実現が難しいでしょう。
選択肢2:農地のまま第三者に貸す
自分の代わりに農業をしてくれる人がいれば、農地を貸してもよいでしょう。
ただし、農地の貸し借りには農地法第3条第1項が関係するため、農業委員会の許可を受けなければなりません。
つまり相手と正式な契約を結び、農地の利用権を移転させる必要があります。
また、年間150日以上は農業に従事するなど、細かな要件も設定されています。
意欲的な農家が見つからなければ賃貸は難しいでしょう。
選択肢3:農地転用して収益物件にする
都市部に近い農地であれば、賃貸アパートや駐車場経営に切り替える方法もあります。
安定的な収入を確保でき、草刈りなどの労力が省けるため、農業をしない人の農地相続であれば検討されることが多いでしょう。
市街地や市街地近郊の農地は相続税評価額も高くなりますが、賃貸物件には節税効果もあるため、相続税対策としても効果的な方法です。
ただし農地転用にも農業委員会の許可が必要であり、宅地にすると固定資産税は高くなります。
また、道路に接していなければ建物は建築できないので、建築基準法の要件も満たさなければなりません。
賃貸経営は金融機関からの借入れで建物を建築する例が一般的なので、経営に失敗すると借金だけが残る可能性もあります。
選択肢4:耕作放棄地にする
あまりおすすめできる方法ではありませんが、農業継続が難しく他に活用方法もなければ、耕作を放棄する選択肢もあります。
ただし、雑草が生い茂ると害虫の発生源になり、雑草の種も近隣農地へ飛散するため、春~秋にかけては定期的な草刈りが必要です。
農地に隣接して納屋を建てている場合は、害獣の住処になる可能性もあり、長く放置すると倒壊リスクも高まるので、使わないようであれば解体しておきましょう。
なお、耕作放棄した農地にも固定資産税はかかります。
宅地よりも低い税額に抑えられていますが、所有している間は納税義務があり、市街地にある農地は宅地並みの固定資産税になるケースもあります。
選択肢5:相続放棄する
農地の相続にデメリットしかないようであれば、相続放棄も検討してみましょう。
相続放棄すると最初から相続人ではなかったことになるため、農地を相続する必要はなくなります。
都会に住みながら地方の農地を相続しなければならない状況であれば、農業の継続どころか維持管理も難しいため、相続放棄が最善策になるかもしれません。
ただし、農地の相続放棄にはいくつか注意点もあるので、本コラム後半の解説も参考にしてください。
選択肢6:農地を売却する
不要な農地であれば売却も選択肢になります。
ただし、先に触れたとおり農地は農業委員会の管理下にあるため、無許可で売却するわけにはいきません。
また、被相続人(亡くなった方)名義のままでは売却できないので、一旦相続人名義に変更しておく必要もあります。
農地を売却する方法は2種類
農地を売却する場合、農地のまま売却する、または宅地に転用して売却する方法があります。
一般的な宅地売却とは性質が異なるので、それぞれの特徴をよく理解しておいてください。
農地のまま売却する
農地をそのまま売却する場合、売却相手は農業従事者や認定農業者(農業委員会の許可を受けた農家)、または農業法人に限られます。
購入者にも、年間の農業従事期間や必要な農機具の有無など多くの条件があるため、買い手探しはかなり難しいでしょう。
もともと売りにくい土地のため売却価格もかなり低くなりますが、手放すことが目的であれば、買い手探しを農業委員会に相談してみるのもおすすめです。
宅地に転用して売却する
農地を宅地に転用すれば、高額で売却できる可能性が高くなります。
ただし、農地転用にも農業委員会の許可が必要であり、転用後の用途が決まっていなければ許可は下りません。
つまり買い手を先に探し、住宅建築や駐車場にするなど、事業計画が確定していなければならず、事業資金が確保されていることも証明する必要があります。
また、宅地にするときは地盤改良などの転用コストがかかり、一般的には買い主負担になりますが、高額になる場合は買い手が付かない可能性もあります。
まず買い手が見つかりそうな農地かどうか、地域事情に詳しい不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
農地を相続したときの手続き・必要書類
土地を相続したときは法務局へ登記申請しますが、農地の場合は農業委員会への届け出も必要です。
手続きの流れや必要書類を解説していきます。
法務局の手続きと必要書類
農地を相続登記するときは、以下の書類を法務局に提出します。
法務局で取得する書類
- 相続登記申請書:法務局窓口またはホームページから取得
- 登記事項証明書:法務局窓口、郵送、オンラインのいずれかで取得。1通480~600円
役所で取得する書類
- 相続人全員の印鑑登録証明書:1通300円
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本:1通450~750円
- 被相続人の戸籍附票:1通300円
- 被相続人の住民票除票:1通300円
- 相続人全員の戸籍謄本:1通450円程度
- 農地の固定資産評価証明書:1通200~400円程度
自分で準備する書類
- 遺産分割協議書:専門家に依頼すると3万~8万円程度
登記の際には登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)も納めます。
参考:相続登記申請書(法務局)
参考:登記事項証明書の取得(法務局)
農業委員会の手続きと必要書類
法務局の相続登記が終われば、次は以下の書類を揃えて農業委員会に届け出します。
農業委員会に提出する書類
- 農業委員会が指定する届出書:各農業委員会の窓口や自治体ホームページから取得
- 相続登記した登記事項証明書:法務局窓口、郵送、オンラインのいずれかで取得。1通480~600円
農業委員会の所在地や連絡先がわからないときは、各自治体に問い合わせてください。
なお、農業委員会への届け出は「相続開始を知った日から10ヶ月以内」が期限です。
期限後の届け出は10万円以下の罰則規程になる可能性もあるので、十分注意してください。
農地を相続放棄するときの注意点
農地を有効活用できないときは相続放棄も選択肢になりますが、次のような注意点があるので慎重に検討してください。
相続放棄は期限が短い
相続放棄は「相続開始を知った日から3ヶ月以内」が期限です。
期限経過後の相続放棄は原則として認められないので、多忙な方は弁護士に手続きを依頼することも検討してください。
農地だけの相続放棄はできない
相続放棄は「相続権の放棄」であり、すべての財産を相続できなくなります。
したがって、農地だけの相続放棄はできないので注意しましょう。
単純承認が成立すると相続放棄できない
相続放棄の期限までに被相続人の財産を使い込むと、単純承認が成立します。
単純承認は相続を承諾する行為になるため、被相続人の預貯金などを私的に使うと相続放棄は認められなくなります。
注意してください。
相続放棄しても管理義務は残る
仮に相続人全員が相続放棄したとしても、相続財産管理人の選任までは農地の管理義務が残ります。
したがって草刈りやゴミの撤去など、近隣迷惑にならないよう管理しなければなりません。
相続財産管理人への報酬も必要
全員が相続放棄した農地は「相続人不在」となり、いずれ国庫に帰属します。
国庫に帰属するまでは相続財産管理人によって管理されるため、その間は相続財産管理人への報酬も発生します。
また相続財産管理人を選任するときは、20万~100万円程度の予納金も必要です。
コストはかかりますが、相続財産管理人がいなければ、自分で農地管理を続けなければなりません。
相続放棄には様々なデメリットもあるので、安易に選択しないよう注意してください。
まとめ
サラリーマンが農地を相続する場合、自分が死亡した後のことも考えておかなければなりません。
自分の子供が相続するとき、一般的な宅地であれば自由に売却できますが、農地は何をするにも農地法の規制がかかります。
先代の投資で機械化が進んだ農地や、規模の大きい農地はある程度の収益を見込めますが、小規模農地で機械も古ければ、出費ばかりかさむ可能性が高いでしょう。
また、固定資産税は優遇されているものの、相続税は宅地と同程度の評価をするため、市街地の農地を相続すると相続税が高額になるケースもあります。
農地を相続するときは家族と十分に話し合い、結論が出なければ相続の専門家に頼ってみましょう。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。
対応エリアは全国で、オフィスは東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸の主要駅前に構えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。