この記事でわかること
- 家賃収入を相続した場合の家賃収入の税務上の取扱いがわかる
- 家賃収入の相続方法を決めるための方法を知ることができる
- 家賃収入を相続した時に確定申告が必要になることがわかる
相続が発生した時に、被相続人が家賃収入の発生する物件を保有しており、家賃収入を相続することがあります。
家賃収入を相続する場合、どこまでが被相続人の収入でどこからが相続人の収入となるのかわかりにくいのではないでしょうか。
そのため、どのような税金が発生しどのような手続きが必要かを理解できずに、遺産分割を行うケースもあるかもしれません。
そこで、家賃収入が発生する不動産を相続する場合、どのような注意点があるのかを確認していきましょう。
目次
【時系列別】相続した家賃収入の税金取り扱い
相続した財産に賃貸物件が含まれていると、相続の手続きが完了するまでの間も家賃収入が発生しています。
その家賃収入は「誰か」の所得になりますが、その発生時期などにより誰の所得になるかは変わります。
また、亡くなった人に発生する家賃収入の中には、相続財産になるものもあります。
そこで、どのような家賃収入にどのような税金が発生することとなるのか、解説していきます。
被相続人が亡くなるまでの家賃収入
ここからは、被相続人が亡くなった年に発生した家賃収入について、考えていきましょう。
被相続人が亡くなったのが2021年6月30日とした場合、2020年分までの家賃収入については確定申告が完了しています。
一方、2021年1月~6月分の家賃については、まだ確定申告は終わっていませんが被相続人の家賃収入となるべき金額です。
つまり、亡くなるまでに発生した家賃収入については、被相続人の収入となります。
ただ、被相続人はすでに亡くなっているため、実際の申告作業は相続人が行うこととなります。
また税金が発生した場合にも、相続人がその税金を負担することとなります。
亡くなった人に発生する所得の申告を、代わりに相続人が行うことを準確定申告といいます。
準確定申告は、亡くなった日から4か月以内に税務署に申告・納税しなければなりません。
なお、亡くなるまでに発生した家賃収入の中に未収となっている家賃があると、未収金として相続財産となる場合があります。
何月分の家賃を何月に受け取っているのか、契約書や不動産業者に確認して間違えないようにしましょう。
亡くなってから発生した家賃収入(遺言書あり)
被相続人が亡くなってから発生した家賃収入は、亡くなった人の収入にはなりません。
この場合、誰の収入となるのかが大きな問題となりますが、遺言書がある場合とない場合ではその考え方が異なります。
遺言書がある場合、相続発生と同時に新しい所有者が遺言書で指定され、賃貸物件の所有者も確定します。
したがって、被相続人が亡くなった後に発生する家賃収入もその新しい所有者となった人のものとなります。
先ほどの例では、2021年7月以降に発生する家賃収入は遺言書により指定された人のものとなり、2021年7月~12月の家賃収入を2022年2月16日~3月15日に確定申告することとなります。
亡くなってから遺産分割が確定するまでの家賃収入(遺言書なし)
被相続人が亡くなった時に遺言書がない場合、すべての相続財産は相続人の共有財産とされます。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、共有割合は法定相続分と同じく配偶者2分の1、子どもはそれぞれ4分の1となります。
この場合、発生した家賃収入については共有割合で按分します。
減価償却費や固定資産税などの必要経費についても同じように共有割合で按分します。
発生した不動産所得についてはそれぞれの相続人が確定申告しなければなりません。
相続人代表を定めている場合でも、所得を特定の人だけに発生させることはできないため、注意が必要です。
遺産分割が確定した後の家賃収入
遺産分割が確定した後は、相続財産の所有者が確定します。
そのため、遺産分割協議が成立して誰がどの財産を相続するか確定すれば、家賃収入はその賃貸物件を相続した人のものとなります。
家賃収入の相続は遺言書や遺産分割協議で決める
これまで述べてきたように、すべての相続財産について誰が相続するかを決めなければなりません。
遺産分割をしないまま、全相続人の共有とするのはあくまでも仮の状態であり、最終的には相続する人を決める必要があるのです。
中には複数の相続人が共有する財産もありますが、その場合も誰がどの割合で相続するかを決めなければなりません。
相続人を決めるのには2つの方法があります。
1つは遺言書、そしてもう1つは遺産分割協議です。
ただ、相続が発生してから、この2つのいずれかを選択するというわけではありません。
遺言書は、相続が発生する前に財産を保有する人が自分の死後、財産を誰に引き継がせるかを指示するものですので、事前の準備が必要です。
また、遺産分割協議は被相続人の死後、法定相続人が話し合いにより財産の相続割合を決めることです。
遺言書がない場合は、選択肢が遺産分割協議となります。
一方遺言書がある場合は、すべての相続人が遺言書を廃棄することに合意しない限り、その遺言書に従わなければなりません。
遺言書か遺産分割協議のいずれかを、相続人が選択するわけではないことに注意が必要です。
遺言書または遺産分割協議で賃貸物件を相続した人が家賃収入の相続人となり、その人に所得が発生します。
家賃収入を相続したときに必要な確定申告
家賃収入が発生する賃貸物件を相続した場合、所得税の確定申告を行う必要があります。
また、場合によっては相続税の申告が必要になる場合もあります。
家賃収入を相続した場合に必要となる申告について確認していきましょう。
被相続人が亡くなるまでの家賃収入は準確定申告を行う
被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの間に発生した家賃収入は、被相続人の所得となります。
この間に発生した所得については、被相続人に代わって相続人が準確定申告を行います。
この準確定申告は、亡くなった日から4か月以内に申告書を提出し、納税しなければなりません。
準確定申告書は、原則としてすべての相続人が全員で行うこととされています。
この時発生した納税額については、どの相続人が納付するのか疑問に感じるかもしれません。
亡くなってから4か月では遺産分割が完了していないことがほとんどであり、この場合誰が納付するのだろうかと思う方が多いようです。
結論としては、遺言書がなければ、すべての相続人が法定相続割合により税金を負担することとなります。
また、遺言書があればその指定相続分により税額を按分し、納付することとなります。
この納付税額は相続税の計算上、債務の額として相続財産の額から控除することができます。
なお、準確定申告により所得税が還付されることもあります。
この場合も、法定相続分または指定相続分により、その金額を按分することとなります。
また、還付税金は相続財産として、相続税の対象となることに注意が必要です。
準確定申告書には、すべての相続人の住所や氏名、相続分や税額などを記載した確定申告書付表を添付しなければなりません。
また、提出先は被相続人が亡くなった当時の納税地の所轄税務署となります。
遺産分割が完了するまでの所得の確定申告
前述したように、遺産分割が完了するまでに時間がかかり、誰が相続するかの目途もついていない場合は、相続財産は相続人の共有となります。
この場合、発生した所得については法定相続人の共有となり、法定相続分で按分することとされています。
そのため、後で遺産分割が成立したとしても、原則は法定相続人全員について確定申告しなければならないこととなります。
共有となっている財産の申告を行う際も、各相続人が個別に確定申告を行う必要があります。
ただ、それぞれの所得金額は、全体の所得金額を計算してから按分することとなるため、バラバラに計算することはできません。
所得計算は協力して申告や納税は個別に行う必要があることに注意が必要です。
なお、個別の所得金額が20万円以下となった場合は、申告しなくてもいいケースもあります。
遺産分割が完了した場合の確定申告
遺産分割が完了すれば、賃貸物件を相続する人が正式に確定します。
この場合、遺産分割をした日から後に発生する所得はすべて、その賃貸物件を相続した人のものとなります。
また、相続発生後しばらくして相続人が決まった場合は、相続直後からその人が所有していたものと考えられます。
そのため、相続人が所得金額を計算し、そこから発生する所得税の額を納付しなければなりません。
なお、遺産分割の結果、1つの賃貸物件を複数の相続人で共有するというケースも考えられます。
この場合は、遺産分割が完了するまでのケースと同じようにそれぞれが確定申告をしなければなりません。
一方で、所得金額の計算は全体の所得計算を行った後、所有割合で按分することとなります。
家賃収入がある不動産を相続するときの注意点
家賃収入がある不動産が相続財産に含まれている場合、単に財産を相続する場合とは異なる注意点があります。
どのような点に注意すべきなのか、その内容を確認していきます。
家賃収入は相続した人の財産になる
遺産分割の際、できるだけ相続人間で不公平が出ないように、財産を均等に分けるという人が多いでしょう。
この時、多くの人が気を付けているのは、それぞれが相続した財産の金額が不公平が生じないように同じくらいになるようにすることです。
一方、家賃収入がある不動産が相続財産に含まれている場合でも、その家賃収入については注目していないことが多いようです。
しかし、この家賃収入があるかないかにより、相続人間に不動産の価格以上に大きな差が生じることも考えられるのです。
たとえば、家賃収入が毎年150万円ある不動産を相続したとしましょう。
この物件を10年間所有した場合、手元に残る収入金額は累計で1,500万円にもなります。
もちろん、賃貸物件にはメリットだけでなく、管理費用が掛かること、損失が発生するかもしれないというリスクもあります。
しかし、そのリスクを最小限に抑えられるのであればメリットが大きく上回ることとなるのです。
賃貸物件を相続した人と相続しなかった人の間には、大きな差が生まれることも考えられることを覚えておきましょう。
青色申告承認申請書を提出する
青色申告承認申請書は、不動産所得が発生する場合、5棟10室基準を満たす人の場合に最大65万円の特別控除が適用されます。
また、そうでない場合でも10万円の特別控除の適用が受けられます。
ただ、被相続人が青色申告の適用を受けていても、相続人にその立場が自動的に引き継がれるわけではありません。
提出期限までに青色申告承認申請書を提出すれば、相続した年からでも青色申告を適用できます。
必ず提出期限や青色申告の適用条件を確認し、青色申告の適用を受ける場合には期限内に申請を行っておきましょう。
まとめ
相続税の申告を行う際に、家賃が発生する賃貸物件を相続するということは少なくありません。
賃貸物件を相続すると、その人に新たに不動産収入が発生し、確定申告義務が発生する場合があります。
被相続人が青色申告を行っていた場合、相続人も青色申告を行うには、青色申告承認申請書の提出が必要です。
特に青色申告承認申請書の提出は忘れやすく、また相続後の所得税に対する影響も大きくなります。
必ず、申告や税務署での手続きを忘れないようにしましょう。
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