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最終更新日:2022/3/11

相続税計算時に住宅ローンは債務控除される?団信の加入状況やローンの種類別に解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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相続税計算時に住宅ローンは債務控除される?団信の加入状況やローンの種類別に解説

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この記事でわかること

  • 住宅ローンも相続の対象になることがわかる
  • 団信加入の有無によって住宅ローンの取り扱いが違うことがわかる
  • 親子リレー・ペアローンの計算例についてわかる

財産を相続するときには、現金・預金や持ち家などの財産以外に借金も一緒に相続されます。

持ち家の場合、住宅ローンを組んでいるケースが多くあり、支払い途中の住宅ローンはどうなるのか気になることでしょう。

実は、住宅ローンも相続の対象であり、相続した人に支払い義務があるのです。

ただし、団信に加入していると、住宅ローンはなくなった上で残された家族に家を残すことができます。

こちらの記事では、団信加入の有無による違い・相続税計算時の住宅ローンの取り扱いについて解説します。

住宅ローンも相続の対象になる

故人が契約し、支払っていた住宅ローンも相続の対象です。

相続するということは、貯金や家などのプラス財産だけでなく、住宅ローンなど負債となるマイナスの財産も同時に相続しなければなりません。

もし、相続放棄するとマイナス財産の相続から免れますが、プラス財産である貯金なども放棄することになるのです。

相続時の住宅ローンは、基本的に相続する人が全員で支払います。

誰か1人が支払うことになったとしても、その人が支払えなくなったときは、他の相続人に請求されることになります。

団体信用生命保険(団信)加入者が亡くなった場合

団信の加入者が亡くなった場合、住宅ローンは消滅して家族は今まで通りその家で暮らせます

団信の加入者が死亡もしくは高度障害でローンが払えなくなったとき、団信の保険金で金融機関にあるローン残額を肩代わりしてくれるのです。

団信とは、住宅ローン契約時に任意で加入する「団体信用生命保険」を指します。

ローンの途中で契約者が亡くなると、支払いが残り金融機関にとっては大きなリスクを抱えるため、団信加入が契約上必須となる金融機関もあります。

残された家族にとってもメリットがあり、完済された家にそのまま住めるのです。

団信に加入済みだと住宅ローンは相続対象外

団信に加入していると、住宅ローンは相続の対象外です。

ローン残額である保険金の受け取りは、住宅ローンの貸主である金融機関であり、団信より金融機関に保険金が支払われてローンが消滅するからです。

住宅ローンは、団信からの保険金で消滅するため、ローン残額は相続税の債務控除の対象になりません。

妻は団信の保険金を直接受け取っていないため、相続人として相続税を課税されることはないのです。

また、故人の団信契約があるおかげでローンの返済義務はなく、残された家族は住宅ローンが消滅した家を相続できます。

団信より保険金が支払われ住宅ローンが消滅したあとは、「住宅そのもの・他の財産」を相続する妻には、ローンがなくなった家に対して相続税がかかる流れです。

団信加入により加入者も銀行もメリットがある

団信に加入すると、加入者も金融機関にとってもメリットがあります。

前述しましたが、加入者家族には住宅ローンの支払いがなくなり、家が残せます。

貸主である金融機関は、住宅ローンの契約者が亡くなることで起こる貸し倒れリスクが解消されます。

金融機関では、貸し倒れリスク回避のため団信の加入が一般的になっており、住宅ローンとセットで契約することが多いでしょう。

2013年の会計検査院によるデータでは、フラット35利用時の団信加入率は72.3%であり、ローン契約時に加入するケースが依然多いことを示しています。

団信に加入済みでも完済にならないケースも

団信に加入していても、完済とならないケースがあります。

それは、団信の契約に反し効力を失った場合で、具体的には、以下の内容に該当したときです。

住宅ローンの延滞で団信契約の失効

住宅ローンの支払いが滞ると、団信の契約が失効する可能性があります。

団信の保険料は、金融機関から住宅ローンに金利を含めて保険会社に支払っているため、延滞がおこると銀行から保険料が支払えなくなります。

たとえば、税金の延滞なら延滞料が加算されるだけですが、住宅ローンの場合は保険料の支払いが関わっているため、延滞は契約失効という大きな致命傷となるのです。

親子リレーもしくは夫婦ペアローンで契約

住宅ローンは、親子リレーもしくはペアローンなど複数人で契約するケースがあります。

後述しますが、ペアローンは契約者の1人が亡くなると亡くなった人のローンは完済されます。

ですが、もう1人の契約はそのまま継続されるため、完済扱いにはならないのです。

親子リレーの場合、団信に加入できるケースで多いのは子どものみです。

この場合、親が亡くなっても子どものローンは残るため、返済は続くでしょう。

団信契約時に虚偽や無申告の内容があった場合

団信契約時に、病気にもかかわらず告知していない場合、その病気が起因で死亡・高度障害などに該当すると、支払いの対象外になることがあります。

これは、一般的な入院保険などと同じ仕組みで、保険会社の審査により支払いの対象から外れるためです。

団信で住宅ローンがなくなったら抵当権抹消登記を行う

団信の保険によって住宅ローンがなくなったら、「抵当権抹消登記」をします。

団信から銀行に保険金が支払われることで住宅ローンはなくなりますが、不動産の登記簿には自動的に抹消手続きがされるわけではないからです。

抵当権抹消登記とは、不動産に付けられている抵当権を登記簿から消す手続きです。

抵当権は、金融機関でローンを組む時にローンが滞った場合の担保として設定されているため、残金がなくなった場合は不要になるでしょう。

抵当権抹消登記するには、手続きに添付する書類を準備し、不動産がある地域の法務局へ「抵当権抹消登記」の申し立てをします。

こちらの章では、専門家に依頼する方法もしくは自分で手続きする方法について説明します。

相続発生から抵当権抹消登記までの流れ

相続が発生(加入者の死亡)してから、抵当権抹消時までの順番は以下の通りです。

  • 1)住宅ローンの加入者が亡くなる
  • 2)相続人が金融機関にその旨連絡する
  • 3)金融機関より、「団信弁済届」を受け取り記入し提出
  • 4)保険金の支払い審査に、1~2カ月程度かかるため、この間はローンの返済をする
  • 5)団信から金融機関に保険金の支払い(住宅ローンが消滅するので、抵当権も消滅)
  • 6)金融機関より、完済を証明する書類および抵当権抹消に関する書類を受け取る

ここまでが、抵当権抹消登記する直前までの流れです。

このあと、実際に抵当権抹消登記するために2つのステップを踏みます。

  • 7)不動産の所有者名義を一旦相続人に変える
  • 8)抵当権抹消登記の申し立てをする

司法書士などの専門家に依頼する

司法書士など登記の専門家に依頼すると、不備なくスムーズに手続きができます。

相続が起こると、残された財産に対して相続税が発生することもあり、抵当権抹消登記もその一部としてお任せするのが便利でしょう。

専門家に依頼する費用は、おおよそ1万円程度ですが、5,000円程度で代行してくれる専門家もいます。

報酬は専門家によって異なりますので、依頼前に確認しましょう。

自分で抵当権抹消登記をする場合

抵当権抹消登記は、自分でも登記手続きができます。

記入する申請書類は少なく、法務局で書き方を教えてもらいながら作成できるので、書類手続きが不慣れな場合でも比較的簡単に手続きができるでしょう。

登記手続きは、不動産がある管轄の法務局で申立します。

ネットで登記申請書類をダウンロードし、銀行より受け取った資料一式を持って、法務局の相談窓口へ行きます。

法務局では、登記事項証明書(不動産の内容が書いてある書類)を取る作業も必要です。

登記事項証明書を取るには、住民票や印鑑証明書を取るような流れと同じと考えていいでしょう。

住宅ローンがなくなった後に支払った分は返金可能

故人が亡くなったあと、そのまま気づかず支払った分は返金されるケースがあります。

住宅ローンは、ローンを組んだ金融機関の口座振替で支払うことが多く、振替日がきたら自動的に支払い処理されてしまいます。

団信加入時に保険金が支払われ、ローンがなくなることについて理解していないと、見落としがちな点でもあります。

また、ローンを組んだ金融機関から、今後ローンは支払わなくていいという通知が届くわけではないので、相続後の慌ただしい日常などもあり、そのまま払い続けてしまう場合もありえます。

相続して家を保有もしくは相続放棄するいずれのパターンでも、もう支払いをする義務はないため、金融機関に加入者の死亡の旨を連絡します。

加入者が亡くなったあとに支払った分は、金融機関に申し出ることで返金されるでしょう。

団体信用生命保険(団信)未加入者が亡くなった場合

団信に未加入の人が亡くなった場合、相続人が残りのローンを支払わなければなりません

住宅ローンも債務の1つであり、相続対象となる財産であるからです。

団信未加入者の住宅ローンは、債務控除にあたるため財産からマイナスできます。

また、亡くなったときの債務は、ローン残高(元本のみ)を債務控除として相続税から差し引けるでしょう。

住宅ローンの連帯保証人になっている人は、相続放棄しても返済義務は残ってしまいます。

連帯保証人を解除するには、自己破産や個人再生など債務整理を経て解決するしか方法はありません。

適用 団信に加入している 団信に加入していない
住宅ローンはどうなる? なくなる なくならない
相続税の対象になる? ならない なる
相続税から債務控除できる? できない できる

住宅ローンを引き継がない方法もある

団信未加入で、相続人が住宅ローンを引き継ぎたくない場合、相続の方法によって相続しなくてもすむケースがあります。

限定承認でプラスマイナス相殺する

限定承認は、亡くなった人のプラスの財産を限度とし、マイナスの財産を相続して借金をすべて返済しなくてもいい制度です。

たとえば、相続財産が800万円・借金が300万円あったときに、限定承認を選ぶと300万円の借金を支払うことで、残りの500万円を相続できます。

相続放棄する

相続放棄すると、亡くなった人のプラス財産もマイナス財産も相続しなくてもいいことになります。

住宅ローンを支払ってまで家を残したくない場合、相続放棄により返済義務もなくなります。

ただし、相続がはじまってから3カ月以内に申し立てが必須ですので、考えているうちに期日を過ぎないように注意しましょう。

親子リレーをしていた住宅ローンの相続税の計算方法

住宅ローンを組むときに、親子リレーローンを選択した場合は相続税がかかります。

親子リレーローンとは、親子が一緒に暮らすために2世代に渡って支払う住宅ローンを指します。

リレーという名前の通り、最初は親がローンの支払いをして一定の年齢になると、子どもがローンの支払いを引き継ぎます。

契約名義は親と子の2人であるため、親の名義分については相続税の対象でしょう。

原則として、財産を共有する同士で亡くなった人がいる場合、残された人が亡くなった人の財産を相続します。

つまり、親の共有比率が高いと、かかる相続税も高額になるでしょう。

たとえば、親子リレーで4,000万円の家を建てたとします。

親・子半分ずつの持ち分であり、今までに2,000万円支払い済です。

先に親が亡くなると、親の財産は相続対象のため家の半分を相続財産として扱い、残された遺族で分配します。

もし、親子リレーをした子どもの他にきょうだいがいて、不動産の他に財産がない場合、財産分与時にきょうだい間の紛争となるケースがあります。

親子リレーを契約する前に、家族間で十分に話し合いを持っておきましょう。

親が団信を利用できるケースもある

親子リレーの場合、親子どちらかが団信に加入します。

原則として、親子リレーで団信に加入できるのは子どもです。

親が加入する場合は、親と子の双方の加入を求められるケースが多くあります。

借入れするときは、子どもは満20歳以上・親は満70歳未満など、加入時に条件が適用されることが一般的でしょう。

前述しましたが、相続時に不動産以外の財産が少ない場合、リレーした子以外に相続人がいると、財産額に差が出て不公平になることがあります。

リレーを引き継ぐ子供は原則1人ですので、あとあとの相続トラブルに発展しないよう協議しておくことが大切です。

一方、フラット35でしたら、親だけの団信契約が可能です。

親が加入している場合、親が返済している間に亡くなると親の返済分が消滅します。

この場合、団信の保証期間は満80歳ですので、80歳を過ぎると子どもが団信と契約しなければなりません。

子どもが先に亡くなってしまった場合、ローンの支払いはそのまま残ります。

親と子どもの双方が団信に加入する場合、どちらかが亡くなった場合は、亡くなった方のローンがなくなるのです。

名義が誰かで相続税の取り扱いが変わる

親子リレーの場合、住宅の名義は親と子の共同名義です。

もし、親の名義を外し子の名義にすると、親から子への贈与扱いとなるため、贈与税がかかってしまいます。

このように、不動産を共同名義にしていると、親が亡くなったあとは相続税が課税されます。

早く亡くなる可能性がある親の持ち分を多くすると、当初の贈与税と亡きあとに支払う所得税も高額になるでしょう。

夫婦でペアローンをしていた住宅ローンの相続税の計算方法

夫婦でペアローンを組んだ場合、夫が亡くなると残された妻に契約したローンは残ります

ペアローンは夫婦それぞれが契約者であり、亡くなった人のローンは団信の保険金により完済されるのです。

ところが、妻の契約はそのまま継続するため、通常のローンと同じく完済するまで支払い続けます。

単独で契約した場合、契約者が亡くなると団信の保険金で賄われ残額の支払い義務はなくなり、残された家族に不動産は残ります。

ここが単独で組むローンとペアローンの大きな違いであり、亡くなったあとの結末も全く異なりますので、ペアローンを組む前には入念な検討が必要です。

なお、団信の保険金によって完済された住宅ローンは、亡くなったあとに返済されます。

そのため、相続時に不動産に債務はないと判断され、手続き時に保険金が手元になく債務が残っていても、住宅ローンは債務控除の対象外です。

相続税を節税できる

仮に夫が先に死亡して相続が起こったとき、夫の持ち分のみが相続税の課税対象です。

ペアローンでは、持ち分に応じて相続税がかかるため、持ち分が半分であれば半分のみが課税されるので、単独ローンに比べて相続税が少なくなるのです。

夫1人の名義でしたら、家の評価額が丸々相続税としてかかってしまうので、持ち分により課税されるのはペアローンならではのメリットと言えるでしょう

たとえば、ペアローンで夫婦それぞれ半分ずつの持ち分で6,000万円の家を建てたとします。

夫が亡くなり2人(妻と子)の法定相続人に相続が発生すると、夫の持ち分である半分の3,000万円に相続税がかかります。

夫の持ち分の3,000万円は、相続税の基礎控除額である4,200万円(法定相続人2人)より少ないため、相続税はかかりません。

このあと、妻が亡くなり子どもに相続が発生したときも、妻の持ち分は3,000万円なので、子どもにも相続税はかからないのです。

まとめ

住宅ローンが相続税の対象になるケースや団信加入の有無、ローンの種類について説明しました。

相続という言葉からはプラスの財産を受け継ぐイメージがありますが、実際には住宅ローンなど借金があるとき、マイナスの財産として引き継がれることもあります。

団信は任意加入ですが、保険に入れないケースを除いて入っておくメリットが大きいことがおわかりいただけたのではないでしょうか。

また、単独で組むローンだけでなく、親子リレー・ペアローンなど、ローンの形態もさまざまです。

親子リレー・ペアローンを利用すると、単独で組むよりも大きな額を借りられますが、その反面大きな借金を背負うことになり、デメリットの大きさも考慮し無理のない範囲で契約することが大切です。

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