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最終更新日:2022/4/1

相続税対策としてのM&A活用ポイント|節税が期待できる資産管理会社のメリット・デメリットとは

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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相続税対策としてのM&A活用ポイント|節税が期待できる資産管理会社のメリット・デメリットとは

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この記事でわかること

  • なぜM&Aが相続税対策に有用なのか理解できる
  • 節税対策になる資産管理会社のメリットやデメリットがわかる
  • 3つの事例から相続対策に活用できるM&Aがわかる

M&Aは企業合併や買収を意味しており、Mergers and Acquisitionsを略した言葉です。

大手ドラッグストアやIT企業の経営統合など、M&Aの事例は数多くあり、近年では後継者問題などから中小企業のM&Aも加速化しています。

M&Aには様々な形態があるため、事業内容や手法によっては相続税対策としても活用でき、事業承継の際に有利となります。

また資産管理会社の設立も税制面では有利になる場合があり、家族の収入源として事業を残すことも可能です。

ただし、メリットばかりでないため、それぞれの特徴をよく把握しておかなければなりません。

今回は相続税対策としての資産管理会社や、M&Aの手法について解説しますので、事業をされている方はぜひ参考にしてください。

M&Aは相続税対策として有用?

会社の分社化や合併など、M&Aには相続税対策として有用なスキームが何パターンもあり、いずれも事業の評価額(株価の評価額)を下げる効果があります

事業の各部門を整理すれば公平性のある事業承継もできるため、相続人同士の争いを防止する効果も期待できるでしょう。

ただし、相続税対策ばかりを意識し過ぎると、事業の発展や継続に支障をきたす場合もあるため、専門家を交えた検討が必要です。

具体的なスキームは後半で解説しますが、事業を行っておられる方は次に紹介する資産管理会社の活用も検討してみてください。

節税が期待できる資産管理会社を活用するメリット・デメリット

資産管理会社はプライベートカンパニーとも呼ばれ、自分でつくった会社に自分の財産を管理させる手法です。

多額の資産がある方や事業をされている方にはメリットが多く、様々な方面の節税効果を期待できますが、事業規模によってはデメリットが生じる場合もあります。

メリット・デメリットの双方を解説しますので、資産家やオーナー社長はぜひ参考にしてください。

資産管理会社を活用するメリット

賃貸事業を行う土地オーナーなどは、資産管理会社を活用すると次の節税効果を期待できます。

  • ・実効税率が低くなる
  • ・所得を分散できる
  • ・経費計上できる項目が増える

法人税の実効税率は最高でも33.8%であり、贈与税の最高税率55%に比べて低いため、所得額によっては財産を法人へ移転させた方が得になります。

また、家族が会社役員になると役員報酬を支払うため、所得分散によって全体が支払う税金も安くなります。

法人の場合は個人よりも経費計上できる項目が多いため、役員の生命保険契約や通信費、出張旅費(日当)なども経費にできます。

役員報酬には適正額があり、出張旅費については規定を作成する必要もありますが、個人よりも圧倒的に信用度の高い法人は、税制面も優遇されています

資産管理会社を設立した場合のデメリット

税制面ではかなり有利な資産管理会社ですが、設立や維持にはコストがかかり、所得によっては個人が有利になるなど、以下のようなデメリットがあります。

  • ・設立時の費用がかかる
  • ・赤字でも維持費用がかかる
  • ・所得額によっては節税効果が低い

会社設立時には登録免許税や定款の認証手数料などが必要となり、合同会社や合名会社の場合は15万~20万円程度、株式会社であれば30万円以上の費用になります。

また顧問税理士への報酬や法人住民税の均等割もあるため、安くても年間50万円以上の維持コストがかかるでしょう。

資産管理会社を検討する場合は細かな試算も必要で、所得額が低くければ節税効果も低いため個人のままでよかったというケースもあります。

資産管理会社以外のM&Aの相続対策スキーム

相続及び相続税対策としてM&Aを行う場合、事業内容や相続人の状況によっていくつものスキームを設計できます。

今回は事業の評価減や相続トラブルの防止など、相続時に有用な3つのスキームを紹介します。

相続税対策に合併スキームを活用した例

複数の会社を経営しているオーナーの場合、黒字会社と赤字会社の合併によって株価の評価額を下げることができます。

相続税対策として有効な手段ですが、合併により相続人同士の不公平感も緩和される効果があります。

相続税対策に合併スキームを活用した例

相続トラブルを防止する分社化スキーム

父親がオーナーである会社に複数業務がある場合、各部の所属長に子どもを就任させ、事業別に分社化して相続に備えるスキームです。

事業価値に極端な差が出ないよう調整が必要となりますが、相続後の株式取得分を遺言で指定すればトラブル防止効果もあるでしょう。

ただし、分社化によって事業価値が低下または失われてしまう場合は、他企業との取引に影響する可能性もあります。

また上場を予定している場合にも分社化によって上場基準を満たさなくなる場合があり、税制適格になるよう簿価や課税関係の引き継ぎにも注意が必要です。

相続トラブルを防止する分社化スキーム

会社の評価を下げる吸収合併のスキーム

オーナー会社が複数あり、特定評価会社と一般の評価会社がある場合は、吸収合併によって特定評価会社の株価を下げることもできます。

図の例では、一般の評価会社(株価の評価は類似業種批准方式)であるB社の通販部を、特定評価会社であるA社に分割承継しています。

会社の評価を下げる吸収合併のスキーム

特定評価会社の場合、株価の評価は原則として純資産評価額方式なので、一般の評価会社より高い評価額になることが多くあります。

類似業種批准方式を採用する通販部を吸収した場合、双方の株価評価方式がミックスされるため、A社の価値を下げる効果があります。

事業規模によっては特定評価会社の適用から外れる可能性もあるでしょう。

まとめ

事業のM&Aは相続税対策として有効活用できますが、事業の規模や内容によって手法は何パターンにも分かれます。

税務や財務、会計や会社法など多くの知識が必要なため、専門家のアドバイスは不可欠といえるでしょう。

また資産管理会社についても稼働実態が重要であり、租税回避に判定されると厳しいペナルティも科されます。

事業には永続性や収益性も重要なので、相続のためだけの会社設立や合併・吸収にならないよう、長期的スパンで考えなければなりません。

まずは相続専門の弁護士や税理士に事業内容や家族構成などを伝え、最適なプランを設計していきましょう。

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