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最終更新日:2024/5/31

財産債務調書とは?記載内容や対象者、書き方などをわかりやすく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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財産債務調書

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この記事でわかること

  • 財産債務調書の記載内容や提出義務者
  • 財産債務調書の記載方法
  • 財産債務調書で意識すべき注意点
財産債務調書は、ある一定の条件を満たす人に財産債務調書合計表と共に提出義務が発生する書類です。

令和4年度の税制改正で条件の範囲が広がり、それまで提出の必要がなかった人にも義務が生じる可能性があります。

この記事では「財産債務調書」を深堀りし、記載内容や対象者、書き方、注意点などを解説します。

財産債務調書とは

財産債務調書とは、提出義務者の保有財産や債務を記載する書類です。主に富裕層にあたる人に対する制度で、所得税と相続税における適正な課税の確保を目的に提出を義務付けられています。

財産債務調書には、適正な提出を促すための措置が設けられており、提出期限内に提出すると、所得税および相続税の申告に際して漏れが生じたとき、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5%軽減されるのです。

一方、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産や債務の記載がない場合、報告した財産または債務に関して所得税の申告漏れが生じた際に過少申告加算税が5%加重されます。

財産債務調書の提出義務者

財産債務調書の提出義務者は、以下に該当する人です。
提出義務のある人

  1. その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計額が2,000万円を超え、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産または1億円以上の国外転出特例対象財産*を有する
  2. その年の12月31日において、その価額の合計額が10億円以上の財産を有する
*国外転出特例対象財産とは、有価証券(株式、投資信託等。特定口座(源泉徴収選択口座)や非課税口座(NISA)内の有価証券なども含む)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引をいいます。
以前は上記1に該当する人のみに提出義務が課されていましたが、令和4年度の税制改正から提出しなければならない人の範囲が拡大しています。提出義務者の範囲が広がった背景として挙げられるのは、所得がなくても一定以上の財産を持つ人の保有財産や債務の把握です。

たとえば、資産家の妻でずっと専業主婦だった人が、配偶者の相続により多額の財産を相続した場合は、所得がなくても財産のある人と言えます。そのような人の保有財産や債務を把握するために、令和4年度税制改正において②の要件が追加されました。

提出義務の判定における3億円(1億円)以上の財産の算定では、国内に所在する財産のほか、国外に所在する財産を含めて算定する必要があります。

この場合の財産額は財産の価額の総額であり、債務を控除しません。

別途で国外財産調書が必要な場合も

その年の12月31日において国外財産の合計額が5,000万円を超える人は、国外財産調書を別途で提出する義務があります。

ただし、国外財産調書を提出する場合、財産債務調書には国外財産に係る財産の種類、数量、所在などの事項を記載する必要はありません。

財産債務調書の下部「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」欄と、財産債務調書合計表の右下「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」欄、「国外財産調書に記載した国外転出特例対象財産の合計額」欄に金額を記載します。

相続開始年に財産債務調書を提出する場合

相続開始年分の財産債務調書に関しては、発生した相続や遺贈時に取得した財産(または債務)を未記載で手続きを進めることが可能です。

たとえば、自身の親などに相続が発生した際に、発生した年中に何をどれだけ相続するか決まらないかもしれません。その場合、相続の開始する日の属する年の財産債務調書には、相続財産債務を記載しないで提出することができます。

また、提出義務の判定においては、相続財産を含めずに判定します。

【財産別】財産債務調書の記載方法

財産債務調書に記載する内容は、住所・氏名・マイナンバー(個人番号)といった基本的な情報のほかに、財産の種類、数量、価額、所在ならびに債務の金額等です。

このうち事業上の債権債務は、その年の12月31日における債務の金額が300万円未満のものについては、所在別に区分することなく、その件数と総額を記載してよいとされています。

また、所得税の確定申告において収支内訳書や青色申告決算書の減価償却費の計算欄に記載されている資産は、財産債務調書にはその減価償却資産の価額の総額で記載できます。

記載する価額は償却後の価額となるため、財産債務調書の作成時は注意しましょう。土地、建物に関しては、固定資産税評価額により記載することができます。

特定(非課税)口座内に保有する上場株式等

有価証券にあたる財産の記載時には、種類別に記載(株式、投資信託など)することとされています。

ただし、証券会社に特定口座や非課税口座を開設している場合、特定(非課税)口座内に保有する上場株式等は、さらに細かく銘柄別に区分する必要はありません。

用途別や所在別、種類別(株式、公社債、投資信託等など)にそれぞれ一括して価額を記載することができます。

家庭用動産

家庭用動産は、基本的に「その他の動産」に区分されます。

なお、「現金」「書画骨董及び美術工芸品」または「貴金属類」に分類されるものは除かれるので、記載時には注意しましょう。

「その他の動産」に区分される家庭用動産のうち、一個または一組の取得価額が300万円未満のものについては、記載を省略することができます。

保険契約に基づく定期金に関する権利

保険契約に基づく定期金に関する権利は、その年の12月31日に生命保険契約を解約することとした場合に支払われることになる解約返戻金の額を、申告時の財産の価額として記載します。

満期返戻金を年金形式で受け取ることができる内容のものであっても同様です。

ただし、その年中の12月31日より前の日付けで生命保険契約を解約し、保険会社から支払われることになる解約返戻金を入手している場合は、その額を記載します。

財産債務調書の提出有無に関する注意点

財産債務調書の提出においては、適正な提出を促すためのインセンティブと一種のペナルティが設けられています。

特にペナルティを受けると、本来納める税額よりも高い金額となる可能性があるため、注意が必要です。

ここからは、財産債務調書の提出有無に関する注意点を、インセンティブとペナルティそれぞれの説明を交えて解説します。

財産債務調書を適正に提出すればインセンティブがある

財産債務調書は納税者の保有する財産についての情報を提出させる制度であり、納税者の中には自分の財産の開示を快く思わない人もいるかもしれません。

そのため、財産債務調書には、適正に提出した場合のインセンティブが設けられています。

財産債務調書に記載がある財産債務に関して、所得税または相続税の申告漏れが起きた場合、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等が5%軽減されます。

財産債務調書に不備があるとペナルティが発生することも

財産債務調書の提出時に不備があると、ペナルティが発生するかもしれません。

たとえば、財産債務調書を提出期限までに提出していない、提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産債務の記載がない、重要事項の記載が不十分であるなどが挙げられます。

不備が認められる場合には、インセンティブの場合とは反対にその財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されます。

財産債務調書の訂正方法

提出した財産債務調書の記載内容に誤りがあった場合、提出期限内はもちろんのこと、提出期限後であっても再提出することで訂正が可能です。再提出する場合、当初提出した調書に記載されている財産債務を含め、すべての財産債務を記載する必要があります。

また、提出期限後の提出であっても、提出期限内に提出したとみなされるケースもあります。

所得税(相続税)について調査があったことにより更正または決定があることを予知してされた提出でないときは、提出期限内に提出されたものとみなされます。

財産債務調書の提出期限

令和4年以前の財産債務調書の提出期限は、その年の翌年の3月15日でしたが、令和5年分以後の調書ではその年の翌年の6月30日となりました。

改正前の提出期限(翌年の3月15日)は確定申告の期限でもあります。

財産債務調書の提出義務者が、保有財産の種類・数量・価額をそれまでに正確に算出・記載することは負担が大きい点を踏まえ、提出期限が後倒しになりました。

財産債務調書で意識すべきポイント

令和4年度の税制改正で提出義務者の範囲が広がるなど、財産債務調書に関する注意点はいくつかあります。

そのような財産債務調書における意識すべきポイントを、これまで解説した内容も踏まえて取り上げます。

財産債務調書の提出が必要になる可能性のある人は、ぜひ参考にしてください。

財産債務調書は期限内に提出しよう

税務署によっては、土地の売却などにより所得が2,000万円を超えた納税者に対して、財産債務調書の提出を促す文書の送付があります。財産債務調書の提出義務を認識していなくても、知らせを受けて財産債務調書の対応をはじめる人もいるでしょう。

財産債務調書を記載して提出することで、申告漏れが生じた場合に過少申告加算税が軽減されるため、ぜひとも期限内に提出したいものです。

とはいえ、毎年財産の棚卸をする必要が生じることから、財産債務調書の提出義務者は大きな事務負担があると言えます。

財産債務調書を提出する必要がある場合は、税理士に相談してサポートを受けながら対応することをおすすめします。

財産額が10億円以上の人は提出を忘れないように注意

令和4年度の税制改正で、財産額が10億円以上の人も財産債務調書の提出義務者となっています。
したがって、たとえ所得がなくとも、中小企業のオーナーで自社株の評価が10億円以上ある人、特定口座や非課税口座で10億円以上の株式を保有している人、相続により10億円以上の財産を取得した人は提出義務があることになります。

確定申告をしなくてもよい場合、財産債務調書の提出を失念しやすいため注意しましょう。

財産債務調書は税理士に相談しながら正しく提出しよう

財産債務調書は、提出義務者に該当するかどうかを確認することが大切です。

提出内容に不備があるとペナルティが発生する可能性があるため、必要書類の作成には慎重さも求められます。財産債務調書を作成するには必要な情報を集める必要があるため、提出義務者の事務的な負担は大きくなります。

財産債務調書に関する悩みがある場合は、税理士に相談するとよいでしょう。

ベンチャーサポート相続税理士法人では、親身でわかりやすい説明を心がけ、無料相談を実施しています。また、税理士だけでなく弁護士や司法書士、行政書士も在籍しているためワンストップで相談することが可能です。初めて相続税の申告を行う方もお気軽にご相談ください。

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