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親も兄弟姉妹もいない場合、相続はどうなるのだろうと疑問に思ったことはありませんか?
天涯孤独とはいえ、たどりにたどったら親族がどこかにいるかもしれません。
そもそも相続人になる可能性があるのは、親族のうちどこまでの範囲なのでしょうか。
今回は、天涯孤独で相続人がいない場合、本当にいないのか念の為確認するということと、残った財産はどうなるのかという点を詳しく解説します。
天涯孤独と言うけれど相続人はゼロなのか
親も兄弟姉妹もいない、家族がいない状態のことを俗に「天涯孤独」と言いますが、法定相続人がゼロとは限りません。
なぜでしょうか。
天涯孤独という意味
まず、天涯孤独という意味について少し考えてみましょう。
三省堂『新明解四字熟語辞典』によれば、「身寄りがひとりもなく、ひとりぼっちであるさま。
また、故郷を遠く離れて、ひとりぼっちで暮らすさま。
▽「天涯」は空の果て。
また、非常に遠い所の意。
」とされています。
これだけだと、法定相続人がいないとは限りません。
というのも、今は身寄りがなく一人で暮らしているのかもしれませんが、過去には家族がいたのかもしれませんし、あるいは知らないだけで実は親族がいるかもしれません。
法定相続人の範囲
法定相続人は、民法で定められた相続人のことを言います。
配偶者は常に相続人となり、被相続人(相続される人=亡くなった人)に子どもがいれば、配偶者と子が相続人になります。
子が被相続人よりも先に亡くなっていれば、代襲相続が発生し、直系卑属(孫・ひ孫等)が相続人になります。
被相続人に子がない場合は、直系尊属(父母・祖父母等)と配偶者が相続人になりますが、この人たちも亡くなっていて今はいないという場合は、兄弟姉妹と配偶者が相続人になります。
この兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合で、兄弟姉妹に子ども(被相続人から見た甥・姪)がいれば、代襲相続が起こり甥・姪が相続人になります。
このように、天涯孤独と言う人でも、甥や姪がいるならば相続人はいるということになります。
過去に結婚していたことがあるか
さらに、過去に結婚していたことがあるかというところもポイントです。
過去に結婚していた場合で、特に男性の場合は離婚後300日以内に子どもが生まれていて、自身の戸籍に入っている場合があります。
推定嫡出の制度
離婚した後、300日以内に生まれた子どもは元夫の子どもと推定されます(推定嫡出)。
民法772条2項では、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」としているので、例えば戸籍筆頭者が元夫、離婚後300日以内に生まれた子どもがいる場合、子どもは元夫の子どもとされ、元夫の戸籍に入ります。
もともとは父親のいない子どもを作らないための制度だったのですが、離婚協議が長引いてしまい、後に結婚した相手の子どもが生まれたという場合でも前婚の夫の子どもとして推定されてしまうため、現在は問題視されている制度です。
普段の生活で、戸籍を取る機会はそうそうありません。
もしかすると、気が付かないうちに離婚した後に生まれた子どもが戸籍に入っているかもしれません。
天涯孤独な人が亡くなった後の相続の流れ
親がなく、兄弟はそもそもいないので甥や姪もいないという場合、法定相続人はいないということになります。
さて、この場合の相続の流れはどうなるのでしょうか。
戸籍調査で相続人を探す
まず、戸籍を調査して相続人を探します。
また、結婚したことがなくても認知した子どもがいないかという点についても調べます。
相続財産管理人の選任の申し立て
相続人がこの時点でいない場合は、相続財産管理人選任の申し立てをします。
被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者、検察官が相続財産管理人を申し立てることができます。
相続財産管理人は特に資格は必要ありませんが、弁護士や司法書士といった法律専門職が選ばれるケースがあります。
相続人の捜索(官報に公告)
相続財産管理人は、官報に公告をして相続人を捜索します。
官報に掲載して6ヵ月経過しても相続人が現れない場合は、特別縁故者に対する相続財産の分与を行います。
特別縁故者に対する相続財産の分与
特別縁故者とは、具体的には被相続の身の回りの世話をしてきた人のことなどを言います。
相続財産の全てをもらうことはできませんが、特別縁故者として認められれば一部をもらうことはできます。
相続人がいない場合の相続財産の取り扱い
特別縁故者もいない場合は、財産は国に帰属します。
相続人がいないと、財産は国に帰属するということを知っている方もおられますが、自動的に国庫に帰属するわけではないこと、国庫に帰属するまでに時間も手間もかかるということがお分かりいただけたでしょうか。
本当に相続人がいないのか、いないということを確定させるには何段階ものステップがあるのです。
相続人以外にも財産を残してあげることは可能
ところで、相続人以外にも財産を残してあげることは可能です。
どのように残すのかというと、遺言を作成して、相続財産の行き先を指定します。
今回のように、相続人がそもそもいないというケースでは、何もしないままだと複雑な手続きを経て財産は国の物になります。
天涯孤独といっても、誰かしらにお世話になったことはあるでしょう。
また、家族とまでは言えないものの仲が良かったという人はいませんでしょうか。
遺言を作成しておけば、そのような人々に財産を残すことが可能です。
遺言の種類
法律上有効な遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
というのも、遺言は法律に沿った形式で作成しないと無効になってしまいます。
たとえば、亡くなる前にメモ用紙に「財産は●●さんにあげてくれ」とだけ書いても、遺言としての効力はないと考えられます。
なぜなら日付も書いてないですし、署名も押印もないからです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は自分で紙に書く遺言です。
紙とペンと印鑑があれば作成はできますが、文章の内容があいまいだったり、要件を満たしていなかったりすると無効な遺言になってしまいます。
自筆証書遺言の要件は、全文を自分で書くこと、日付を書くこと、署名をすること、押印をすることです。
また、自筆証書遺言は勝手に開けてはいけません。
家庭裁判所の検認が必要です。
ちなみに、封筒に入っていないものでも家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で作成します。
遺言書を公正証書としたもので、公証人が法律の規定に沿った書類を作成してくれますので、法的な効力を確実にさせたいときにおすすめです。
トラブルも起こりにくいです。
相続手続きの際に家庭裁判所の検認は不要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公証役場で作成手続きをしますが、内容は公証人に知られません。
遺言が存在することは記録されます。
遺言の保管は自分で行い、相続が発生したときには家庭裁判所による遺言の検認が必要です。
法律の専門家の力を借りよう
このように、遺言と一言で言ってもさまざまな種類があり、要件があります。
遺言を何度も書くことはあまりないことだと考えられますので、一般の方が最初から法的な効力のある遺言を自分で書くのは難しいのは仕方のないことです。
弁護士、司法書士、行政書士といった法律の専門家の力を借りることをおすすめします。
まとめ
今回は、天涯孤独で相続人がいない人の場合の相続についてご紹介しました。
本当に法定相続人がなく、さらには特別縁故者もいないときは、財産は国の物になります。
ただし、自動的に国の物になるのではなく、そこに至るまでの時間や手間がかかります。
法定相続人も特別縁故者もいない場合で、財産を残したい人や団体がある場合は遺言で財産の行き先を指定できます。
必要があれば活用しましょう。
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