この記事でわかること
- 相続税を遺産から支払ってよいのかわかる
- 誰が相続税を支払うのか理解できる
- 相続税の支払い方法がわかる
- 相続税が支払えないときの対処法がわかる
国税庁が公表する「令和2年分 相続税の申告事績の概要」によると、被相続人(亡くなった方)1人あたりの相続税は1,737万円となっています。
平均値とはいえかなり高額なので、「どうやって支払うか?」という問題も出てくるでしょう。
また、相続人あてに納税通知書が届くわけではないため、「誰が払うのか?」といった疑問も生じますね。
さらに、相続税は現金一括納付が原則なので、納付期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに必ず現金を準備しなければなりません。
今回は、相続税の支払い方法をわかりやすく解説しますので、申告準備をしている方や、期限内に申告を終えた方はぜひ参考にしてください。
なお、記事の後半では、相続税が支払えないときの対処法も解説しています。
目次
相続税は遺産から払う?自分の預貯金から払う?
相続税は自分の預貯金から支払いますが、納付日までに相続手続きが完了していれば遺産から支払っても構いません。
被相続人の遺産(預貯金)から支払う場合は、まず遺産分割協議を行って承継者を決定します。
承継者が決まるまでは相続人全員の共有財産となり、勝手な引き出しや解約はできなくなるので注意してください。
なお、相続税は基礎控除を超える部分に課税されるので、遺産総額が基礎控除以下であれば、申告・納税ともに不要です。
相続人によっては特例措置や控除の適用により、相続税がかからなくなるケースもあります。
遺産が基礎控除以下のときは相続税がかからない
相続税の基礎控除は以下のように計算します。
相続税の基礎控除
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
基礎控除の最低額は3,600万円(3,000万円+600万円×1人)なので、遺産総額が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除は法定相続人の数で変動するため、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。
また、民法で定められた相続人を法定相続人といい、優先的に相続できる順位も以下のように決まっています。
- 配偶者は常に相続人となる
- 第1順位の相続人:被相続人の子ども(いなければ孫)
- 第2順位の相続人:被相続人の親(いなければ祖父母)
- 第3順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹(いなければ甥や姪)
特例や控除で非課税になるケース
被相続人の配偶者は1億6,000万円まで、または法定相続分のどちらか多い金額までが非課税になるため、配偶者が相続税を支払うケースは少ないでしょう。
自宅の相続には小規模宅地等の特例も適用できるので、配偶者や同居親族が相続すれば敷地部分330㎡までが80%の評価減になります。
ただし、特例や控除の適用で相続税が非課税になっても、申告は必要なので注意してください。
相続税は誰が払う?
相続税は、原則として各相続人が個別に支払います。
各相続人が個別に納税義務者となるためですが、税額は遺産の取得割合に応じて按分します。
なお、相続税は一括納付でも問題ないため、誰かが代表して相続税の納付書を作成し、まとめて支払っても構いません。
ただし、一括納付や立替えによる納付の場合、金額によっては贈与とみなされる可能性があるので注意が必要です。
個別に納付する場合も、一部の相続人の支払いが滞っていれば、他の相続人に督促状が送付されるケースもあるので、次のポイントに注意しておきましょう。
相続税の立替えは贈与とみなされる場合がある
相続税は高額になるケースが多いため、資力のある相続人がまとめて支払う、あるいは立替えで支払う例も珍しくありません。
一時的な立替えであれば特に問題はありませんが、立替分を清算しないまま放置すると、みなし贈与財産に判定され、贈与税がかかる可能性もあります。
ただし、贈与税には年間(1月1日~12月31日)110万円までの非課税枠があるので、立替分が110万円以下であれば贈与税はかかりません。
相続税には連帯納付義務がある
相続税は各相続人が個別に支払うことになっていますが、実は連帯納付義務もある税金です。
一部の相続人が滞納しているときは、他の相続人に未納の通知が送付されるので、協力して未納分を支払わなければなりません。
未納の通知が送付されても支払いが滞る場合、次は他の相続人に納付通知書が送付されます。
つまり、「あなたが支払ってください」と指名されるわけですが、もし支払いに応じなかったときは督促状が送付されます。
督促状にも応じなかった場合は、強制執行により財産が差し押さえられるので注意しましょう。
相続税の支払い方法
相続税は以下の方法で支払いできます。
- 金融機関の窓口
- 管轄税務署の窓口
- コンビニエンスストア
- クレジットカード(国税クレジットカードお支払いサイト)
金融機関や管轄税務署で支払うときは、事前に税務署で納付書をもらい、必要事項を記入しておきます。
また、このときの管轄税務署とは被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。
税額が30万円以下のときはコンビニエンスストアで支払いできますが、税務署でバーコード付きの納付書を発行してもらう必要があります。
クレジットカードの場合は自宅で支払いできますが、1万円ごとに手数料76円(税抜)が発生します。
現金の持ち運びや手数料を考慮すると、金融機関の窓口での支払いがおすすめです。
相続税が支払えないときの対処法
相続税の現金一括納付が難しいときは、分割納付となる延納の制度を活用できます。
延納も困難な場合は物納(土地などの現物納付)の制度もありますが、どちらも要件が細かく設定されています。
相続税の延納
相続税の延納は、以下の要件を満たした場合に認められます。
- 相続税額が10万円を超えていること
- 相続税の納付日または納付期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を税務署に提出すること
- 延納税額と利子税額に相当する担保を提供すること
- 金銭納付が困難である事由があり、納付困難な金額の範囲内であること
相続税の物納
現物納付となる物納については、以下の要件を満たした場合に認められます。
- 延納も困難であり、納付困難な金額の範囲内であること
- 物納対象となる財産のうち、順位の高いものから物納すること
- 物納する財産が管理処分不適格財産(抵当権が設定された土地など)ではないこと
- 相続税の納付日または納付期限までに、物納申請書と必要書類を税務署に提出すること
なお、物納財産と優先順位は以下のようになっています。
- 第1順位:不動産、国債および地方債、上場株式等
- 第2順位:非上場株式等
- 第3順位:動産
まとめ
納税資金が足りないので遺産から払いたい場合は、必ず遺産分割を完了させてください。
被相続人のキャッシュカードが手元にあり、暗証番号を知っている場合でも、共有財産を勝手に引き出すと相続トラブルに発展しかねません。
また、相続税の立替払いが必要であれば、みなし贈与に判定されないよう、相手に支払い(清算)時期を確認してください。
現金一括納付はかなり厳しい条件ですが、期限内に支払わなかったときは追徴課税も発生するので、結果的に割高な税金を支払う羽目になってしまいます。
納税資金や相続税申告で困ったときは、相続に強い税理士にも相談してみましょう。
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