この記事でわかること
- 相続時精算課税制度を利用する場合の申告期限がわかる
- 相続時精算課税制度の申告を忘れてしまった場合にどうなるかがわかる
- 相続時精算課税制度の申告が間に合わない場合の対処法がわかる
相続税対策の一環として、生前贈与を行う人がいます。
生前贈与を行った際には贈与税が発生しますが、その負担を減らすために相続時精算課税制度を利用する方もいるでしょう。
しかし、相続時精算課税制度を利用するには、必ず税務署への申告が必要です。
いつまでに申告しなければならないのか、そしてその申告を忘れた場合どうなるのか、確認しておきましょう。
目次
相続時精算課税制度の申告期限
相続時精算課税制度を利用するつもりで贈与を行ったとしても、その贈与の時点で税務署に届け出をする必要はありません。
税務署に対して相続時精算課税制度を利用したと意思表示する方法は、申告書を提出することとなっています。
贈与税の申告は、通常の贈与にあたる暦年課税制度と、相続時精算課税制度の2つがあり、いずれかを選択しなければなりません。
いずれを利用したのかは、贈与税申告書の記載でわかるようになっています。
なお、この申告書の提出期限は、暦年課税制度・相続時精算課税制度いずれも同じ日となっており、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日が、贈与税申告書の提出期限となっています。
相続時精算課税制度だけ別の期限が設けられているわけではないため、注意が必要です。
相続時精算課税制度の申告忘れはどうなる?
相続時精算課税制度を利用するためには、贈与税申告書でそのことを明らかにし、税務署に対して意思表示しなければなりません。
期限内に相続時精算課税制度を利用した申告書を提出しなければ、相続時精算課税制度は利用できないということです。
もし申告を忘れてしまうと、相続時精算課税制度を利用できないため、その贈与は暦年課税制度を利用したものとされます。
この場合、どれくらいの贈与税が発生することとなるのか、実際の事例で確認していきましょう。
事例
2022年4月に、祖父から孫に対して現金2,500万円が贈与されました。
この贈与は相続時精算課税制度を利用する前提で行われたため、贈与税は発生しないはずでした。
しかし、孫は贈与税が発生しないのであれば申告も必要ないものと勘違いし、相続時精算課税制度の申告を忘れてしまいました。
この場合、相続税がどれくらい発生するのでしょうか。
暦年課税制度による相続税の計算
暦年課税制度による贈与税の計算方法は、以下の計算式によります。
計算式
贈与税額={贈与した財産の金額-110万円(基礎控除額)}×税率
110万円の基礎控除額は、暦年贈与を行う際に毎年適用されます。
基礎控除とは、贈与した財産のうち110万円については贈与税を課さないとするものです。
したがって暦年課税制度による場合、年間の贈与額が110万円以内であれば贈与税は発生しません。
しかし、今回の贈与は2,500万円を贈与されたため基礎控除額を上回っており、非課税とはなりません。
そこで、先ほどの計算式を使って贈与税の金額を求める必要があります。
なお、贈与税の税率は、下記の速算表を使います。
特例贈与(18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合)の速算表
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
参考:国税庁
贈与された金額2,500万円から、基礎控除110万円を差し引いた2,390万円が課税価格です。
2,390万円をこの速算表にあてはめて計算すると、2,390万円×45%-265万円=810.5万円となります。
したがって、2,500万円を贈与された場合の贈与税額は810万5,000円となります。
贈与税の申告忘れ・期限を過ぎたときのペナルティ
期限内に申告しなければ、相続時精算課税制度を利用することはできません。
さらに、期限内に申告をしていないということは、暦年課税制度についても期限後の申告となってしまいます。
もし期限内に贈与税の申告をし忘れてしまった場合、どのようなペナルティが課されるのでしょうか。
加算税が発生する
本来、贈与を受けた翌年の3月15日までに贈与税の申告・納税をしなければなりません。
しかし、その申告・納税を期限内に行っていない場合、無申告加算税が課されます。
無申告のまま申告期限を迎え、その後自ら期限後申告を行った場合は、納付税額の5%が加算税となります。
2,500万円を贈与した場合の贈与税額8,105,000円に対しては、405,200円の加算税となります。
また、税務署に無申告であることを指摘されて申告した場合は、加算税の税率が大きくなります。
税額50万円までは15%、50万円を超える部分の金額については20%の税率となります。
2,500万円を贈与して発生した税額8,105,000円に対しては、1,596,000円の加算税となります。
延滞税が発生する
延滞税は、納期限までに納税できなかった場合に、その期間と金額に応じて計算される遅延利息のようなものです。
令和4年の場合、納期限から実際に納付した日までの期間に応じて、次のように税率が定められています。
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで 年2.4%
- 納期限の翌日から2か月を経過した日以降 年8.7%
延滞税の税率は年度により異なるため、注意が必要です。
なお、実際に納付する時は、税務署に金額を確認してから納付するようにしましょう。
相続時精算課税制度の申告が間に合わないときの対処法
相続時精算課税制度を利用するつもりで贈与を受けたものの、その申告が法定納期限に間に合わないことがあります。
この場合、期限後になっても相続時精算課税制度を利用する申告をすることができるのでしょうか。
実は、相続時精算課税制度を利用するために期限内に申告しなかった場合、後から相続時精算課税制度を利用することはできません。
税金計算に関する申告手続きについては、一定の事情がある場合には、期限後申告を認める規定が設けられています。
この規定を宥恕規定といい、やむを得ない理由がある場合、期限後の申告・納税となってもペナルティは課されません。
しかし、相続時精算課税制度を利用するための申告については、そのような宥恕規定は設けられていません。
相続時精算課税制度を利用したい場合は、くれぐれも申告期限を守るように注意しましょう。
贈与税の申告だけは行う
期限内に申告が間に合わないために相続時精算課税制度が利用できなくても、贈与税がかからないわけではありません。
そこで、申告を忘れていたことに気づいたときは、できるだけ早く贈与税の申告を行う必要があります。
この場合、暦年課税制度による申告を行うこととなります。
多額の贈与税がかかることも考えられますが、早めに申告を行い、贈与税を納税する必要があります。
前述したように、この時、贈与税の申告を自ら行うか、税務署からの指摘により行うかによって、発生するペナルティの金額が変わります。
税務署から指摘を受ける前に、できるだけ早く申告を行いましょう。
また、延滞税の金額も納付した日によって変わるため、できるだけ早く申告・納付することをおすすめします。
まとめ
相続時精算課税制度を利用するためには、必ず期限内に贈与税の申告を行わなければなりません。
多額の財産を贈与していることも多いため、贈与された翌年の申告を忘れないようにしましょう。
また、申告を忘れてしまうと相続時精算課税制度を利用できなくなり、暦年課税制度が適用されて多額の贈与税が発生します。
こうしたペナルティの負担を考えると、できるだけ早く申告するのが得策といえます。
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