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最終更新日:2022/11/18

家督相続とは?現代でも適用されるケースや一人で相続しようとする人への対処法

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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家督相続とは?現代でも適用されるケースや一人で相続しようとする人への対処法

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この記事でわかること

  • 現在は実施されていない家督相続がどのようなものだったかわかる
  • 現代でも家督相続が実施されるケースがあることがわかる
  • 特定の相続人に財産を相続させる方法があることがわかる

財産を保有する方が亡くなると、法定相続人で話し合いを行い、誰がその財産を相続するかを決定します。

しかし、以前は家督相続という相続が行われており、現在の相続の方法とはまったく異なる相続が行われていました。

家督相続とはどのような相続の方法なのか、その内容を確認していきましょう。

また、現代でも特定の相続人が多くの財産を相続する方法があるので、どのように行うのか解説していきます。

家督相続とは

家督相続とは、長男がすべての財産を相続することをいいます。

明治時代から昭和22年まで、日本国内で施行されていた民法には、家督相続することが定められていました。

基本的に、相続が発生すると長男がすべての財産を相続することとされており、他の相続人の取り分はありません。

そのため、現代の相続制度と比較すると、長男には手厚い一方で、他の相続人は権利がないも同然の制度となっています。

この家督相続は、終戦後の昭和22年5月2日まで法的に実施されていました。

しかし、戦後に民主的な法律が制定されると、家督相続の制度は廃止されました。

その結果、法定相続人は基本的に男女や出生順に関係なく、平等な相続分を有することとされています。

現代でも家督相続が適用されるケース

戦後すぐに、民法改正の影響で廃止された家督相続ですが、実は現代においても家督相続と同じことが行われることがあります。

具体的には、過去に相続登記が行われていなかった場合に、家督相続が適用されることがあり得ます。

家督相続は、昭和22年5月2日以前に発生した相続において適用されていましたが、その後は廃止されています。

ただ、この日より前に発生した相続について相続登記が行われていないと、遡って相続登記しなければなりません。

この時、家督相続により土地や建物を相続したこととできるため、まずは長男の名義に変更する登記を行います。

その後、その長男が亡くなった時には、遺産分割を経て次の相続登記を行えばいいということになります。

本来、土地や建物の所有者が変更になった時には登記すべきですが、登記しなくても罰則はありません。

そのため、昔の所有者のまま放置されているケースも多いのが現状です。

旧民法が適用されていた時期の相続については家督相続を適用し、遡って相続登記する方が簡単に手続きできます。

家督相続のように特定の人に財産を相続させる方法

家督相続のように特定の人に財産を相続させる方法

家督相続の制度は廃止され、現在の民法ではすべての相続人は平等に扱われています。

しかし、実際の相続の事例では、すべての相続人が必ず平等というわけではありません。

遺産分割には様々な方法があり、特定の相続人だけに財産を相続させることもあります。

具体的にどのような方法があるのか、その方法を解説していきます。

遺言書を作成する

財産を保有する人は、遺言書を作成することができます。

遺言書には、誰にどの財産を相続させるかを記載し、その遺言書に書かれたとおりに遺産分割が行われます。

そのため長男に限らず、特定の人にすべての財産を相続させるとした遺言書も有効に成立します。

遺言書を作成するのは財産を保有する人であり、相続を考えるのであれば被相続人となる親世代ということになります。

したがって、長男などの相続人がすべての財産を相続したいと考えていても、被相続人となる人が動かない限り実現しません。

また、遺言書が有効に成立しなければ、書面に書かれている内容が実行されることはありません。

特に自筆証書遺言を作成する場合は、形式的に有効なものとなるように注意が必要です。

生前贈与を行う

財産を保有する人は、その財産を自由に売却したりあげたりすることができます。

そのため、生きている間に特定の子供だけに財産を贈与し、他の子供の取り分を無くしてしまうことができます

贈与は財産を渡す人と、財産を譲り受ける人との契約によって成立します。

そのため、将来的に被相続人になる人、相続人になる人のいずれか一方の思いだけで成立するものではありません。

贈与契約がお互いの合意により結ばれたものであることを明らかにするため、贈与契約書を作成し、保管しておくようにします。

なお、財産を贈与された場合には贈与税が発生しますが、贈与税の税率は相続税の税率より高くなっています。

また、贈与税の基礎控除は、相続税の基礎控除より少なくなっています。

つまり贈与税より相続税の方が、税金が発生しやすく、税負担が少なくなる傾向にあるということです。

そのため、無計画に生前贈与を行うと、多額の贈与税が発生することとなってしまうことに注意しましょう。

遺産分割協議で他の相続人の同意を得る

遺産分割協議を行った上で、相続人の一人がすべての財産を相続することも可能です。

この場合、他の相続人は自らの相続分を放棄していることとなり、相続する権利はあるがその権利を主張しない状態となります。

この時注意しなければならないのは、何も相続しなかった相続人の法的な立場です。

相続放棄したと思っている場合もあるのですが、家庭裁判所で手続きしていなければ相続放棄したことにはなりません

相続放棄しなければ、被相続人に債務がある場合、何も相続していない相続人に対しても債権者から返済請求される可能性があります。

相続放棄と相続分の放棄は異なることに注意が必要です。

家督相続のように一人で相続しようとする人への対処法

家督相続のように一人で相続しようとする人への対処法

特定の相続人がすべての財産を相続することに、他の相続人が同意していれば問題はありません。

しかし、中には一人ですべてを相続しようとすることに反発する人がいるケースもあります。

そこで、一人ですべてを相続しようとする相続人に対して、どのような対処法があるのか、解説していきます。

遺言書の無効を主張する

一人の相続人にすべての財産を相続させるために用いられる手段として最も多いのが、遺言書です。

遺言書があっても、すべての相続人の同意があれば、それによらず遺産分割協議を行うことができます

逆に言えば、遺言書のとおりに遺産分割しようとする人が一人でもいれば、その内容を覆すことは難しいのです。

しかし遺言書があっても、その遺言書が有効に成立していなければ、相続人による遺産分割協議が必要となります。

そこで、まずは遺言書の有効性を細かく確認する必要があります。

本人によって自筆により作成されたものであるか、日時が記載されているかは特に重要なポイントとなります。

また、遺言書が偽造されていないか、あるいは改ざんされていないかといった点も確認する必要があります。

さらに、保管されている時に開封されていないか、あるいは他に遺言書が存在する可能性はないかといった点も確認しましょう。

たとえば、自宅で自筆証書遺言が見つかったが、法務局に公正証書遺言が保管されていることも起こり得ます。

この場合、どちらが後に作成されているかが重要なので、その両方の作成日を確認しましょう。

慰留分を主張する

遺言書により一人の相続人がすべての財産を相続することとなった場合、他の相続人は慰留分を主張することができます

慰留分とは、最低限相続することのできる財産の割合のことであり、子供の場合は法定相続分の1/2となります。

これにより、自身にまったく相続分がないと知った相続人が、一定の財産を手にすることができるようになります。

すべての財産を相続した相続人に対して慰留分を主張することで、その請求金額を払ってもらうことができます。

ただ、どうしても慰留分の支払いに応じない場合は、裁判所での手続きとなることもあります。

遺産分割調停を行う

遺言書がなければ、遺産分割協議で財産を相続する人を決定します。

遺産分割協議は相続人全員が話し合いに参加し、相続人全員の同意が必要です。

そのため、一人の相続人がすべての財産を相続することに反対する人がいると、遺産分割協議は成立しません

話し合いを重ねても妥協点が見つからない場合には、遺産分割調停を行うこととなります。

遺産分割調停では、それぞれの立場から主張を行いますが、基本的に法定相続分に近い形での決着を目指すこととなります。

そのため、通常は一人ですべての財産を相続することはできなくなるといえるでしょう。

まとめ

家督相続のように、すべての財産を長男が相続するということは、現在は行われていません。

ただ、法的に認められないわけではないことから、ほとんどの財産を長男が相続するようなケースは今でもあります

もちろん、他の相続人が納得して行われるのであれば、問題はありません。

ただ、一人ですべての財産を相続するのを防ぎたい場合には、対処法を実践する必要があります。

家督相続への対処が難しい場合には、弁護士などの専門家の力を借りましょう。

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