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最終更新日:2022/3/17

名寄帳とは?必要になるケースと取得方法・必要書類や活用時の注意点など

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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この記事でわかること

  • 名寄帳とはどのような書類でいつ必要になるか知ることができる
  • 名寄帳の見方や取得する際の手続きについて知ることができる
  • 名寄帳を取得したり利用したりする際の注意点がわかる

相続に関する手続きをしている時に、名寄帳が必要といわれることがあります。

この名寄帳という書類がどのようなものなのかは聞いたことがない方が多く、どこで取ればいいのかもわからないという方も少なくありません。

ここでは、名寄帳とはどのような書類なのか解説していきます。

また、名寄帳を取得する方法や利用する際の注意点など、名寄帳についての基礎知識をご紹介していきます。

名寄帳とは

名寄帳とは、固定資産税や都市計画税の課税対象となっている土地や家屋について、所有者ごとにまとめた書類です。

固定資産税が課される土地や家屋については、通常、固定資産課税台帳と呼ばれる書類により管理されています。

固定資産課税台帳を見れば、その土地・家屋の所在地や面積、所有者や評価額などの情報がすべて記載されているのです。

これらの情報のうち、所有者が同じ土地・家屋について、その所有者ごとにまとめた書類が名寄帳です。

なお、名寄帳は市町村ごとに作成されるため、2つ以上の市町村に土地・家屋がある場合は、それぞれの市町村で名寄帳が作成されます。

名寄帳を相続税申告や財産調査に必要とするケース

名寄帳が必要になるのは、ほとんどが相続税や遺産分割を行う時です。

どのような理由で、相続税申告や遺産分割の際に利用されるのか確認しておきましょう。

被相続人が所有していた土地や家屋が不明

被相続人が所有していた土地や家屋をはじめとするすべての財産は、相続税の対象となります。

そのため、相続税の計算を行う際には、申告漏れがないことを確認しなければなりません。

しかし、被相続人が実際にどれだけの財産を保有していたか、相続人でもわからないということは珍しくありません。

また、財産の調査や相続税の計算を行うためには、土地や建物の登記簿謄本を取得しなくてはなりませんし、相続登記を行う前には現状の登記の内容を確認しておく必要があります。

しかし、登記簿謄本を取得しようにも、どれだけの財産があるのかわからなければ、すべての登記簿謄本を取得できません。

そういった場合に、被相続人の保有財産を正確に確認するため、名寄帳を取得することがあります。

前述したように名寄帳には被相続人の名義となっている土地・家屋がどれだけあるかがすべて記載されているので、一度取得すればこれを確認する労力を省くことができるのです。

固定資産税の課税明細書が見つからないあるいは紛失した

被相続人が保有していた土地や家屋の状況は、各市町村から送られてくる固定資産税の課税明細書で確認できます。

しかし、被相続人の自宅から固定資産税の課税明細書が見つからないということもあります。

また、一度は見つけた課税明細書を紛失してしまうこともあるでしょう。

この場合、役場で固定資産税課税明細書を再発行してもらうのもいいのですが、名寄帳を取得することもおすすめです。

固定資産税の非課税財産がある

被相続人が保有する土地や家屋について、すべて固定資産税の課税明細書で確認できるわけではありません。

固定資産税が非課税となるものがあると、課税明細書には記載されていないため、確認することができません。

固定資産税の非課税財産であっても、相続税の非課税財産となるわけではありません。

そのため、固定資産税の課税明細書に記載されていない財産を把握するために名寄帳を用いるのです。

共有財産がある

共有名義となっている土地や家屋の場合、その共有者の代表者宛に固定資産税の課税明細書が送られます。

このとき、代表者となるのは共有持分の最も大きな所有者です。

そのため、代表者となっていない場合は固定資産税の課税明細書を手にすることがありません。

ただ、共有持分が少なくても財産であるため、相続税の計算対象から外れてしまうことのないようにしなければなりません。

そこで名寄帳を取得して、共有財産の状況を正確に把握するようにします。

名寄帳には共有財産も含めて、被相続人の名義となっている土地・家屋がすべて記載されるため、申告漏れとなることがないのです。

【項目別】名寄帳の見方

名寄帳には、どのような項目がどのように記載されているのでしょうか。

ここでは、名寄帳の記載内容とその見方について確認していきます。

所有者に関する情報

名寄帳には、まず所有者の情報が記載されます。

前述したように、名寄帳は特定の1人の人が所有する土地や家屋について、その状況を明らかにしたものです。

そのため、誰が所有するのかが最も重要な情報となります。

所有者は固定資産税の納税義務者となるため、「納税義務者」として、所有者の住所と氏名が記載されています

土地に関する情報

次に、納税義務者として記載された人が所有する土地の状況が記載されます。

土地は、固定資産税の対象となるものの1つであり、名寄帳において重要な記載内容です。

市町村によって形式には若干の違いがありますが、記載されている内容には大きな違いはありません。

以下のような内容が記載されています。

○所有形態
所有する土地が単独所有か共有か、あるいはマンションの敷地のような区分所有かが記載されます。

○所在地
土地の所在地として、登記簿や固定資産課税台帳に記載された所在地・地番が記載されます。

○地目・地積
土地の地目や地積が登記簿や固定資産課税台帳にもとづいて記載されます。

地目とは、宅地・田・畑・雑種地などの土地の種類を表すものです。

また、登記上の地目・地積と、固定資産税の課税上の内容が異なる場合は、そのことがわかるように記載されています。

○固定資産価格
土地の固定資産税評価額が記載されています。

マンションの敷地の場合は、その敷地全体についての固定資産税評価額が記載されています

○課税標準額
固定資産税や都市計画税を計算する際に用いる金額のことです。

固定資産税評価額から、一定の計算により求められます。

○持分
共有、あるいは区分所有となっている土地は、納税義務者に書かれた人の持分が記載されます。

家屋に関する情報

固定資産税の対象となるもう1つの財産が家屋です。

家屋に関しても、土地と同じく所有形態や所在地、固定資産価格、課税標準額、持分などが記載されます

ここでは、家屋だけに記載される項目をご紹介しておきます。

○家屋番号
登記簿や固定資産課税台帳に家屋番号が登録されているので、その番号が記載されます。

○種類
家屋の用途などに応じて、その種類が登記簿や固定資産課税台帳に登録されています。

たとえば居宅、事務所、工場、倉庫などといった書類の区分があります。

登記簿と固定資産課税台帳で異なる場合もあり、この場合はそれぞれの種類が記載されます。

○地上・地下
地上階数と地下階数が記載されます。

参考:久留米市

名寄帳の取得方法・必要書類

名寄帳は各市町村役場に備え置かれています

そして、一定の関係のある人であれば、その名寄帳を閲覧することが認められています。

また、名寄帳を閲覧するだけでなく、その写しを交付してもらうこともできます。

名寄帳の交付を受けるためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

その際に必要となる書類についても確認しておきましょう。

名寄帳の取得方法

名寄帳の写しを取得できるのは、その所有者本人や代理人など一定の人に限られます。

また、所有者本人が亡くなっている場合は、その相続人も取得できます。

名寄帳は、被相続人が所有していた土地・家屋の所在地の市町村役場で取得します。

まずは不動産の所在地の市町村役場に行き、担当の窓口で必要な手続きを行うこととなります。

また、被相続人が所有していた土地や家屋が遠方にあるため、簡単に出かけられない場合もあります。

この場合は、郵送で名寄帳を取得することができます。

定額小為替により必要な手数料を支払うこととなるため、事前に準備するとともに、必要書類に漏れがないようにしましょう。

必要書類

相続人が名寄帳の写しを取得するために必要となるのは、以下のような書類です。

  • 申請書
  • 申請者の本人確認書類
  • 被相続人の除籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本

各自治体によって、名寄帳の写しを取得する際の手数料は異なります。

300円程度となっていることが多いのですが、これとは異なる金額となっている場合もあります。

特に郵送の場合は定額小為替を準備しなければなりませんので、事前にホームページなどで確認しておきましょう。

また、相続人本人が手続きを行えない場合は、委任状を作成して代理人に依頼することもできます。

名寄帳を取得・活用するときの注意点

名寄帳を取得したり、取得した名寄帳を利用したりする場合、注意しなければならない点があります。

これらの点に注意して、名寄帳から正しい情報を得るようにしましょう。

年の途中での購入・売却は反映していない

固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の所有者とされます。

そのため、名寄帳には1月1日時点の所有者が記載されています。

仮に、年の途中で土地や家屋を購入した場合、その土地や家屋は名寄帳に記載されていません

また逆に、年の途中で売却した土地や家屋も、名寄帳には所有者として記載されています

このような動きがある場合は、別に登記簿謄本などを準備して、正しく把握する必要があります。

自治体ごとに取得しなければならない

名寄帳は、固定資産税を課す市町村が、それぞれの自治体内にある土地や家屋について記載します。

したがって、自治体をまたいですべてを網羅しているわけではありません

多くの自治体に土地や家屋を所有している場合は、その自治体ごとに名寄帳を取得しなければなりません。

まとめ

被相続人の財産を正確に把握することは、相続人でも難しいことです。

しかし、財産を正確に把握することができなければ、いつまでも相続税の計算や遺産分割ができません。

土地や家屋の状況を把握するには、名寄帳を利用するのが一番の方法です。

登記簿謄本と名寄帳をうまく活用しながら、漏れのないようにしていきましょう。

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