この記事でわかること
- コロナ禍で見合わせが続いていた税務調査が再開されているとわかる
- 相続税の税務調査が行われる時期には波があることがわかる
- 相続税の税務調査を受ける際の注意点を知ることができる
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、ビジネスや生活様式にも大きな変化をもたらしています。
そんな中、税務署による税務調査にも大きな影響を与え、通常は現地で行われる実地調査が見合わせとなっていました。
しかし、実地調査を行わないことは不正な申告を誘発し、税収の減少を招きかねないと考えられており、2020年10月から税務職員が訪問して行う税務調査が本格的に再開されています。
ここでは、相続税の税務調査の注意点などを解説していきます。
コロナで中断していた相続税の税務調査が再開
新型コロナウイルスの感染拡大により、税務署による税務調査にも大きな制限が生じていました。
特に相続税の調査は被相続人の自宅で行われることが多く、感染対策が限定的となるため、実地調査は難しい状況にありました。
また、申告を行った相続人も高齢者が多く、重症化のリスクが高いことから税務署としても無理にお願いはできなかったのです。
そのため、コロナの拡大に合わせる形で、現地での税務調査は行わない方針となっていました。
しかし、税務調査を簡単に行えない状況にあることを利用して、誤った申告を行う人がいる可能性はあります。
税務調査がほとんど行えない状況にあれば、仮に申告書の内容に疑義があっても、税務署が正解を確認することは難しいのです。
相続税額が少なくなるように相続財産の評価を低く行ったり、財産を申告しなかったりする不正が行われているかもしれません。
そこで2020年10月からは、税務職員が訪問する形での税務調査が再開し、以前と同じように調査が行われているのです。
もっとも、実地での税務調査が行えなかった間も、税務署は全く調査を行っていなかったわけではありません。
税務署から納税者宅への電話により、申告書の内容を確認し、あるいは申告上の問題点を指摘することは可能でした。
また、納税者から資料や書類を税務署に送付したりファックスしたりすれば、取引の内容や金額を確認することもできます。
ただ、税務署員が現地で感じる違和感や、対面して感じる表情の変化などを見ることはできません。
そこで、納税者の同意を得た上での実地調査が徐々に行われるようになってきたのです。
相続税の税務調査が行われる時期
相続税の税務調査は、一般的に8月から12月頃に行われることが多くなっています。
この調査の時期は、実際に相続税の申告が何月に行われたのかとは関係ありません。
なぜ8月から12月が多いのかというと、税務署の人事異動や他の申告期限と関係しています。
まず、税務署の人事異動についてです。
税務署の人事異動は、毎年7月に行われます。
7月に異動となった人は、新しい勤務先の税務署に勤務をするようになります。
一方、異動の前に着手している案件がある場合には、異動後も引き続き担当するか、新しく来た人に引き継ぐかとなります。
ただ、このような形で処理を行うと、非常に手間がかかり、納税者にも不安を与えかねません。
そのため、通常は異動を挟まないように、異動前にすべてを決着させるようにするのです。
税務調査を行ってからすべてか決着するには数か月かかるため、それを逆算して時期を決めているのです。
もう1つは、税務署の最も忙しい時期が確定申告時期であるということです。
毎年2月~3月にかけての確定申告時期は、すべての納税者が1年分の金額を集計した確定申告を行います。
そのため、税務署は大変に混雑しますし、業務の量も大変に多くなります。
このような時期は、税務署員は確定申告の対応にあたる機会が多くなり、時期を定めて税務調査を行うことが難しくなります。
そのため、税務調査の開始時期が1月以降になることはきわめて少ないのです。
このような理由から、相続税の税務調査は例年8月から12月にピークを迎えます。
ただし、この時期を避けて税務調査が行われることもあるため、絶対的なものではないことに注意が必要です。
税務調査の事前調査で気を付けること
税務調査というと、ある日突然、税務署員が自宅に訪ねてきて、机の中や押し入れを調べるという状況を想像するかもしれません。
実際にそのような調査もないわけではありませんが、それは査察と呼ばれる捜査であり、通常の税務調査はそうではありません。
事前に税務職員から、納税者に電話で連絡がきます。
そこでの打ち合わせの上、税務職員が訪問する日程を決めることとなるのです。
では、この事前調査の段階ではどのような点に注意しなければならないのでしょうか。
調査の日時を明確に決めておく
税務調査が行われる日程は、事前調査の段階で税務署員から伝えられます。
ただ、その日程はあくまで税務署員の希望する日程であり、絶対にその日程に従わなければならないわけではありません。
特に相続税の税務調査は、仕事とは関係のない、完全に個人的な内容のものとなります。
そのため、急に仕事を休んで行くとか、大事な仕事の日程に穴をあけることはできないと考えるのが普通です。
税務署員から候補の日程を伝えられても、その日程で合わせる必要はありません。
その日程とは異なる日にしてもらうことも可能であるため、きちんと事情を説明した上で、日時を決めておきましょう。
調査の場所を決める
相続税の税務調査を行う場所は、必ずしも決められているわけではありません。
そのため、税務署員との話の中で決めることとなります。
なお、税務署員は被相続人の自宅で行うことを希望するケースが多いようです。
その理由は、被相続人の住所地を所轄する税務署から調査に来るためです。
また、被相続人の自宅には相続財産に関する多くの資料が残っていると考えられることも理由です。
ただし、すでに被相続人の自宅を売却したり、取り壊したりしている場合もあります。
また、相続税の計算に使った資料などを相続人の自宅で保管している場合もあるでしょう。
そのため、相続人の自宅にしてもらうこともできるのです。
ただ、ドラマのように税務署で調査を行うとか、喫茶店で調査を行うといったことはできません。
あくまで個人情報に関する話をできる環境が必要とされるのです。
どのような書類を準備したらいいのか確認する
事前調査の電話の中で、どのような点を重点的に確認したいか伝えられることがあります。
このようなケースでは、税務署が事前に何らかの情報をつかんでいると考えられます。
たとえば、過去の通帳や契約書、確定申告書の控えなどから、相続財産の申告漏れが指摘されることもあるのです。
不動産なのか、生前贈与なのか、名義預金なのか、どの点に問題があったのかがわかるような書類を準備しておきます。
また、中には事前調査の段階で申告内容の間違いを指摘されることもあります。
申告書の記載や、税額の計算に明らかなミスがあった場合などです。
このようなケースでは、実地調査に移るのではなく、そのまま修正申告の話をされることもあります。
電話で理解できない場合には、税務署に訪問する約束をして、どのような修正が必要なのか確認するようにしましょう。
まとめ
相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内とされており、実際に申告する時期は人によって異なります。
しかし、税務調査が行われる時期はおおむね申告した年の翌年か翌々年の8月から12月にかけてとなっています。
税務調査はすべての相続について行われるわけではないため、心の準備をしておくことは難しいかもしれません。
ただ、税務署から調査の連絡を受けた場合は、しっかりと打ち合わせをして対応するようにしましょう。