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最終更新日:2023/9/19

贈与税の申告漏れはばれる?発覚する理由や脱税が見つかったときの罰則を解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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2016年1月から本格的な運用が始まったマイナンバー(個人番号)ですが、2018年から銀行預金口座とマイナンバーへの紐づけが始まり、2021年には、それが義務化されることになっています。

マイナンバーと銀行預金口座が紐づけされると、税務署が、贈与税の申告漏れを発見することがより簡単になります。

従って、今後は、贈与を行った場合にきちんと贈与税の申告を行う癖をつけておかないと、トラブルに巻きこまれる確率が高くなります。

贈与を隠しても、高い確率でばれるため、正直に申告した方がいいでしょう。

そこで、今回は、贈与税の申告漏れがばれるケースやその罰則及び対策について解説します。

贈与税と他の税金の申告期限は異なる

確定申告というと、毎年2月15日~3月15日の申告期限に行うものというイメージがありますが、これは所得税の確定申告の申告期限です。

件数から言うと、所得税の確定申告が、他の税金のそれよりも圧倒的に多いので、申告期限というと所得税の申告時期を思い浮かべる人が多いのは事実です。

しかし、申告する税金の種類によって、申告期限は異なってくるので注意が必要です。

贈与税の確定申告の申告時期について

贈与税の申告期限は、毎年2月1日から3月15日です。

期限の最初の日又は最後の日が、土日休日など、閉庁日に当たる場合には、その翌日が開始日または最終日となります。

贈与税の確定申告は、所得税の確定申告より半月程度早く始まり、同じ時期に終了します。

1月1日から12月31日までの1年間に基礎控除額110万円を超える贈与があった場合に、その翌年の贈与税の申告時期に、申告するというスタンスになります。

贈与の種類によって申告期限は異ならない

贈与税の申告期限は、全国一律に、贈与があった年の翌年の2月1日から3月15日までです。

贈与の種類によって、申告期限が異なることはありません。

贈与は、適用される税率の相違によって、20歳以上の方が直系尊属(父母、祖父母など)から財産を受ける特例贈与と、特例贈与以外の一般贈与の2つに分けることができますが、どちらの贈与の申告期間も同じです。

また、課税方式の相違によって、暦年課税贈与と、相続時精算課税方式の贈与に区分することができますが、このケースでも、どちらの贈与の申告期間は同じです。

相続税の確定申告の申告時期

参考までに、相続税の確定申告の申告期限は、相続人が被相続人の死亡のあったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から起算して10カ月が経過した日です。

相続税の場合には、所得税や贈与税のように、全国一律の申告期間が設けられているわけではありません。

個別の相続ごとに、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に申告することになります。

110万を超える贈与を受けると申告が必要になる

贈与された財産は、すべてが贈与税の対象になるわけではありません。

暦年贈与といって、年間110万円以下が非課税になる仕組みがあります。

そのため贈与があったとしても、年間110万円以下であれば、基本的に贈与税はかかりません。

まとめると「年間110万円を超える贈与を受けると申告が必要になる」と覚えておきましょう。

贈与税の申告漏れがばれる5つのケース

税務署は、驚くべき情報ネットワークを持っていて、かなり細かいところまで、人々のお金の流れを把握していると言われています。

さらに、今後、マイナンバーに預金口座情報の紐づけが義務化されると、税務署の情報収集能力はさらに高くなります。

従って、贈与税の課税対象となる贈与があったにもかかわらず、申告漏れが見つかるわけがないだろうと甘く考えていると、突然税務調査が入って、申告漏れのペナルティ分を上乗せした金額の贈与税の支払い命令を受けることがあります。

不動産の登記名義からばれる

土地や建物の不動産を贈与した場合、たいていは、登記原因を贈与として、登記名義を贈与者から受贈者に変更します。

贈与を原因として、登記名義を変更した場合、登記所から税務署に連絡が行くことになっています。

ある年に不動産評価額が110万円以上の土地・建物を贈与し、登記名義を直したうえで、その翌年の贈与税の確定申告期間のときに、申告をしないでおくと、税務署から納税通知書が送られてきてビックリすることがあります。

これは、登記所から税務署に不動産の登記名義を直した(贈与があった)という連絡が行くことにより、税務署が、贈与当事者の住所・氏名と贈与財産の金額を把握しているためで、基礎控除を超える贈与があったのに、受贈者が確定申告をしない場合、納税命令が出されます。

申告漏れがあると相続時精算課税制度は利用できない

60歳以上の父母・祖父母から、20歳以上の子や孫に贈与があった場合、相続時精算課税制度が利用できれば、相続の時に精算する必要はありますが、贈与時点では最大で2,500万円まで、非課税で贈与ができます。

普通に生前贈与を行うと、非常に高い税率の贈与税が課税されるため、そのメリットは大きく損なわれます。

しかし、相続時精算課税制度が利用できれば、贈与税の負担を大きく減じることができるので、生前贈与を行う際に、この制度は絶対に利用すべきです。

しかし、相続時精算課税制度を利用するためには、必ず、贈与を行った年の翌年の贈与税の申告期間内に、贈与税の確定申告を行わなくてはなりません。

この申告をしないで、後から税務署より納税命令を受けた場合には、当該制度は利用できません。

相続の時の税務調査でばれる

例えば、夫から妻に500万円の現金の贈与があったとします。

夫は自分の預金から500万円を引き出し妻に現金を渡し、贈与を受けた妻は、夫から貰った現金を自分名義の預金口座に預金したとします。

贈与金額は基礎控除額の110万円を超えますから、本来であれば、贈与があった年の翌年の申告期間に贈与税の確定申告が必要です。

しかし、このケースで、妻が贈与税の確定申告をしなくても、関係者から税務署に密告でもない限り、税務署から、贈与税の支払い命令が出ることはまずありません。

よほどのことがない限り、税務署では、夫と妻の間で500万円の贈与があったことを把握できません。

しかし、夫に相続が発生すると、税務署では、相続税の支払い義務を確認するために、夫の過去の所得状況や預金の流れや、妻などの親族の資産状況を調査します。

その際に、夫から妻に500万円の現金を贈与したことが発覚します。

マイナンバーの預金情報の紐付けで申告漏れがより簡単にばれる

2021年から銀行預金口座情報とマイナンバーを紐づけすることは義務化されます。

これが実現すると、相続税に関する税務調査の時に、より簡単に、税務署が被相続人のお金の流れを把握できるようになります。

上記のようなケースでも、税務署の職員がマイナンバーを使って口座情報を検索できるようになるので、より簡単に、贈与税の申告漏れを発見できるようになります。

親族間の贈与だから、税務署が把握できるわけもないし、贈与税の申告はしなくていいだろうと思っていると、後から痛い目に合うことになります。

贈与税をしっかり申告することの重要性が、今後、いよいよ増してきます。

法定調書からばれる

法定調書と呼ばれる書類があります。

これは、所得税法、相続税法など、税法各法によって、一定の取引(お金の動き)があった場合に、税務署に提出が義務付けられている書面で、全部で60種類あります。

サラリーマンの方におなじみの「給与所得の源泉徴収票」や、年金生活者に交付される「公的年金等の源泉徴収票」、自営業やフリーランスの方が交付を受ける「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」も法定調書の1つです。

60種類ある法定調書によって、税務署では、一定金額以上のお金の流れの大部分を把握しています。

当然、贈与税の申告が必要な贈与があったことも把握しています。

贈与税の申告漏れが、この法定調書によってばれることがあります。

生命保険金を貰ってばれる

生命保険などの保険金を貰った時、保険金を支払った保険会社は、1回あたりの支払額が100万円をこえるときは、税務署に対して、保険契約の被保険者、契約者(保険料を負担する者)、保険金の受取人、支払った保険金額などを記載した法定調書(支払調書)を交付します。

この支払調書によって、税務署では、いつ、だれが、どんな種類の保険金を、いくらぐらい貰ったかということを把握できます。

例えば、保険料を負担する者と、保険料の受取人が異なる場合で、当該保険金が保険料を負担する者の死亡保険金でない場合は、受取人が受け取った保険金は、贈与されたものとみなされます。

このケースで、その金額が贈与税の基礎控除額110万円を超える場合には、贈与税の確定申告が必要です。

しかし、申告期間内に申告をしない場合、税務署では保険会社から送られてくる法定調書によって、贈与に該当する保険金の支払いがあったことを把握しているわけですから、当然、申告漏れを疑います。

税務調査の結果、申告漏れが判明すると、後から贈与税の納税命令を出してきます。

贈与財産で金・プラチナを購入してもばれる

貴金属業者は、金やプラチナなどの貴金属の購入に際して、1回の取引額が200万円を超えた場合には、税務署に購入者の住所・氏名や購入した貴金属の種別、購入金額等を記載した法定調書(支払調書)を交付することになっています。

例えば、金やプラチナなどの貴金属の贈与を受けた者が、贈与を受けた貴金属を売却して換金した場合、その金額が200万円以上であれば、税務署では、その取引について把握していることになります。

贈与を受けた者が、贈与を受けた年の翌年の申告期間に、贈与税の確定申告をしない場合には、税務署の方では、贈与税の申告漏れを疑います。

税務調査の結果、贈与税の申告漏れであることが判明した場合には、後から納税命令を出してきます。

関係者からのタレコミでばれる

親族間の贈与があったことが、関係者から税務署に告げ口されるということはめったにないと思いますが、親族間以外の贈与の場合、関係者から税務署に情報のリークがあって、税務調査が入り、その結果、贈与税の無申告がばれることがあります。

飲み屋などでうっかり話してしまったことが、誰かの告げ口で税務署職員の耳に入ってしまい、税務調査の対象になることもあります。

贈与価額が少ない場合は、リークがあっても税務調査が入ることは少ないと考えられますが、多額の贈与だと、調子に乗ってうっかり話をしてしまったことが、無申告の発覚につながることがあります。

税務署からのお尋ね文書からばれる

土地や建物などの不動産を購入した場合、管轄税務署から、「お買いになった資産の買い入れ価格などについてのお尋ね」という文書が届くことがあります。

この文書には、以下のような事由についての質問が記載されています。

  • ・購入金額
  • ・不動産の共有名義の有無
  • ・購入者の職業
  • ・購入者の購入年の前年年収及び所得
  • ・購入時の関連費用の有無
  • ・支払金額の出所

こういった文書が送付されるのは、税務署が、購入者が年収や所得に不釣り合いの高額の不動産を購入した場合に、両親などからの資金援助があった可能性が高いわけですが、その場合の贈与税の無申告がないかどうかを調べるためです。

この文書に対する答えから、親などから資金援助を受けたにもかかわらず贈与税の申告をしていないことが疑われる場合には、税務調査が入り、その結果、申告漏れが判明することがあります。

手渡しの贈与もばれる

現金手渡しの場合、贈与があった証拠が残らないので、贈与税の申告漏れは発覚しないのではないかとも考えられます。

しかし、手渡し現金で贈与を受けた場合、その現金をタンス預金しておく場合は、確かにそう通りですが、何かに使ってしまった場合には、これがキッカケで申告漏れがバレます。

例えば、贈与を受けた方が、貰った現金で金やプラチナを買えば、貴金属業者から税務署に支払調書が送付されるので、税務署がその事実を把握します。

もらった現金で、高額の商品をオークションで落札した場合も、オークション業者から税務署に支払調書が送付されるので、税務署が把握します。

不動産を購入しても、登記所から税務署に連絡が入ります。

預金をしても、税務署は金融機関から情報を受けることができるので、税務署が把握することは可能です。

年収不相応のお金を使っているので贈与を疑われる

税務署では受贈者の年収や所得を把握していますから、年収・所得と比較して不釣り合いな買い物を繰り返していると、税務署で、当然、誰かから贈与を受けたのではないかという疑念を持ちます。

そうすると、税務調査が入り、贈与税の無申告が発覚するという算段になっています。

現実には、比較的少額の贈与税の申告漏れの場合、税務調査を行っても、納税命令が出せるできる税額が少ないので、費用対効果の関係から、見て見ぬふりをするケースも多いようですが、100%税務調査の対象とはならないとは言い切れません。

見せしめ的に、そういった場合でも、税務調査を実施することがあるようです。

従って、手渡し贈与であっても、年間110万円を超える贈与を行う場合には、贈与税の確定申告を行う必要があります。

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贈与税の申告漏れへの罰則

申告漏れ(悪意がなく、意図的でもなく、単なる計算ミスによって、本来の税額よりも少ない税額で申告してしまった)の場合、過少申告加算税がペナルティとして加算されます。

過少申告加算税は、追加で納付すべき金額に対して10%を乗じた金額となります。

ただし、追加で納付すべき税額が、期限内に納税すべきであった本来の税額または50万円のどちらか高い方を上回っている場合には、その超過分に対しては15%の税率が課税されます。

無申告加算税について

申告漏れではなく、申告期限までに申告書を提出しなかった場合には、罰則として無申告加算税が課税されます。

無申告加算税の税額は、期限後、税務調査が行われる前に、自主的に申告した場合には5%となり、期限後、税務調査が実施された後に申告した場合は、納税額のうち50万円までは15%、50万円を超える部分については20%となります。

それぞれ、本来の税額に無申告加算税の税率を乗じた金額が、ペナルティとして、本来の税額に加算して納める金額となります。

重加算税について

申告漏れと、無申告につき、悪意や詐欺、隠蔽等があった場合には、重加算税としてより高額の税額がペナルティとして課税されます。

過少申告加算税が課税されるケースで、悪意や詐欺、隠ぺいがあった場合には、追加本税×35%の重加算税が課税され、無申告加算税が課税されるケースで、悪意や詐欺、隠ぺいがあった場合には、追加本税×40%の重加算税が課税されます。

刑事罰について

この他、不正行為によって贈与税の納税を逃れた場合には、刑事罰として、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(支払うべき贈与税の金額が500万円以上の場合、500万円以上が罰金となる場合がある)、又は併科されます。

また、正当な理由がないにもかかわらず、法定期限までに贈与税の申告書を提出しなかった場合には、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処されます。

贈与税を抑えたい人がやるべきこと

「贈与を隠してもばれるリスクが高いのは分かったけど、なるべく贈与税を払いたくない」という人もいるでしょう。

そこで、ここからは贈与税を抑えたい人がやるべきことを紹介します。

暦年贈与を活用する

贈与税を抑えたいなら、暦年贈与の活用がおすすめです。

暦年贈与は年間110万円の贈与が非課税になる仕組みです。

「年間110万円って少ない」と思うかもしれませんが、コツコツ贈与すれば、大きな金額になります。

例えば3人の子供に年間110万円ずつ贈与して、10年継続すれば、非課税で3,300万円の贈与ができます。

贈与する期間が長ければ長いほど、暦年贈与は効果を発揮します。

ただし毎年決まった金額を贈与していると、定期贈与とみなされて、初年度しか暦年贈与が使えなくなるかもしれません。

毎年贈与するとしても、金額・時期を変更して、定期贈与とみなされないように工夫が必要です。

非課税枠が増える「特例」を活用する

贈与では、暦年贈与以外にも非課税枠が増えるような「特例」という仕組みがあります。

例えば教育資金の一括贈与の非課税制度を利用すれば、最大1,500万円の贈与が非課税になります。

教育資金の対象となるのは、学校の入学金・授業料・通学費などです。

この他にも様々な特例があるため、贈与税を抑えるためには、特例をうまく活用するのが重要なポイントになります。

相続までトータルで考えて判断する

贈与税を抑えるためには、相続まで考えてトータルで判断することが大切です。

相続開始から3年以内の贈与に関しては、相続分としてカウントされます。

さらに贈与で特例を使い非課税になったとしても、相続時にその分が課税される場合もあります。

贈与だけ見て判断すると、いざ相続が始まった時に、損をするかもしれません。

「なるべく税金を抑えて贈与したい」と思っているなら、相続のことまで考えておきましょう。

税理士に相談する

贈与・相続は法的な専門知識が必要になるため、自分で判断して手続きを進めるのが難しいです。

自力での手続きも可能ですが、間違った贈与をしてしまうと、撤回が難しくなります。

そこで税理士に依頼すれば、状況を見て一番節税できる方法を教えてくれます。

自分で判断するよりもプロに任せた方が確実なので「贈与で損をしたくない」という人は、税理士への相談がおすすめです。

贈与税の申告漏れの対策について

贈与税の申告漏れに対する対策としては、しっかりと申告期限内に贈与税の確定申告を行うことにつきます。

贈与税の税率は非常に高率ですが、特に親族間の贈与に関しては、さまざまな非課税制度や税額軽減制度が設けられています。

親族贈与については、税務署が適用な水準だと認める範囲内であれば、ほとんどの贈与は、非課税又は低額の税の負担で贈与できます。

ただし、これらの制度の適用を受けるためは、申告期限内に贈与税の確定申告を行う必要があるので、申告の必要性は重大です。

まとめ

マイナンバーの預金口座情報の紐づけが実施されると、贈与税の課税対象となる贈与を受けた場合に、正しく申告することの重要性がいよいよ増します。

今後は、贈与を受けた場合には、その贈与が贈与税の課税対象となるかどうかを確認し、対象となる場合には、期限内にしっかりと申告しなければなりません。

贈与税の確定申告について、不安だという場合には、税の専門家である税理士に相談や手続きを依頼する方法もあります。

贈与税に詳しい税理士を見つけておくと、いざという時、安心です。

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