この記事でわかること
- 相続手続きを代行してもらうメリット
- 各専門家に相続手続きの代行を依頼した場合の業務範囲と費用相場
- 相続手続きの代行を依頼する際の注意点
相続が発生した場合、相続人はさまざまな手続きに対応しなければなりませんが、その手続きを専門家に代行してもらえるサービスもあります。相続手続きは煩雑な作業で、専門的な知識も必要になるため、専門家に代行を依頼したいと考えている人も少なくないでしょう。もっとも、専門家ごとに対応できる業務の内容や費用が異なるため、どの専門家に依頼するかは、慎重に検討すべきところになります。
この記事では、相続手続きの代行サービスのメリットや専門家ごとの業務範囲、費用相場などを解説します。
目次
相続手続きの代行とは、相続人が行わなければならない手続きを専門家が代行するサービス
相続手続きの代行サービスとは、相続人が行わなければならない名義変更や相続税申告などの手続きを、専門家が代行してくれるサービスのことです。相続手続きの代行サービスを提供する業者は、大きく士業と銀行に分かれ、士業の中でも、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など専門家ごとに対応できる業務は異なります。
遺産分割やその後の名義変更手続き、相続税の申告など、一連の相続手続きを完了するためには、さまざまな調査や話し合いが必要です。しかも、相続税の申告・納税には期限があります。不動産を相続した場合には相続登記を行う義務もあります。相続手続きに慣れていない方、対応する時間がとれない方に、相続手続きの代行サービスが利用されています。
相続発生時に必要となる主な手続き
相続手続き代行サービスの内容を把握するために、相続が発生した際にどのような手続きが必要になるのかを確認していきましょう。相続が発生してから遺産を分割し、相続税を納税するまでに必要となる主な手続きとスケジュールは、以下の図のとおりです。
このようなさまざまな手続きがあり、場合によっては期限も設定されているため、慣れない作業を迅速に進めなければなりません。中でも、遺言書の確認、法定相続人・遺産の調査、遺産分割協議、名義変更、相続税の申告・納税については、以下のような対応が必要になります。
遺言書の確認
相続が発生した場合、まず遺言書があるか確認します。遺言書は通常、自筆証書遺言であれば法務局や被相続人の自宅、貸金庫など、公正証書遺言であれば公証役場にあります。法務局や公証役場であれば、遺言書が保管されているか調べてもらうことが可能です。
被相続人の自宅、貸金庫などから自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所に提出し、検認手続きを受ける必要があります。
法定相続人・遺産の調査
そもそも誰が相続人になるのか、被相続人の遺産にはどのような財産があるのかを確認することから相続手続きは始まります。法定相続人の確定は、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本をすべて取得し、内容を確認することで行います。被相続人の遺産は不動産や預貯金などプラスの財産だけでなく、借入金や未払金などのマイナスの財産もあるため、どちらも漏れがないように確認する必要があります。
遺産分割協議
遺言書がない場合、各相続人がどの財産を相続するか、相続人同士の話し合いで決めますが、これを遺産分割協議といいます。遺産分割協議は相続人全員が参加する必要があります。相続人が遠方にいたり、疎遠だったりすると思いのほか時間がかかることがあるため、早めの対応が必要となります。
名義変更
誰がどの財産を相続するか決まったら、預貯金や不動産のような名義変更が必要な財産について、手続きを行います。
特に不動産は、2024年4月から相続登記が法律上義務付けられ、分割協議が成立してから3年以内に登記が必要となりました。分割協議が成立しない場合、「相続人申告登記」という簡便な手続きで義務を果たすことも可能です。
相続税の申告・納税
遺産の総額が相続税の基礎控除額を超えている場合は申告・納税が必要となります。申告期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内となるため、ここまでの手続きを迅速に行ってください。遺産の総額が相続税の基礎控除額以下の場合は、申告も納税も必要ありません。
相続手続きの代行を依頼するメリット
相続手続きの代行を依頼すると、迅速に行わなければならないさまざまな煩雑な手続きを、経験やノウハウが豊富な専門家に任せることができます。専門家に任せた場合のメリットとしては、主に以下の5点が挙げられます。
遺産や相続人の調査、書類作成の手間が省ける
相続手続きの代行を専門家に依頼するメリットは、時間と手間の節約になる点です。
相続人を確定するためには被相続人の戸籍謄本を取得しますが、最低でも3通程度取得する必要があります。引っ越しなどをしているとそれ以上のこともよくあります。
戸籍謄本は手書きで書かれているものもあり、慣れていない人にとっては非常に読みにくいものですが、専門家に依頼するとそれらの収集、判読をしてもらえます。
相続税の申告書の作成では、まず被相続人の財産と債務を確定させる必要がありますが、被相続人の居住地や趣味、仕事、残された書類、手紙、メールなどから財産を探すサポートをしてもらえ、申告書に添付する金融機関の残高証明書や不動産の登記簿謄本などの取得も依頼できます。
お仕事をされている方は特に、平日の日中に役所などに出向くのは時間がきびしいことも多いと思います。相続手続きの代行を専門家に依頼することで時間と気持ちの余裕が生まれます。
ミスなく期限内に申告できる
税理士に相続税申告の代行を依頼すると、ミスなく期限内に申告できるといったメリットもあります。
相続税の申告は、財産を漏れなく調査して、不動産などさまざまな財産の評価額を適切に算出し、複雑な要件のある特例なども適用して最終的な税額を申告しなければなりません。どこかでミスをして正しい税額よりも低い税額で申告すると、追徴課税が発生するリスクがあります。
これらの作業は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があり、期限に遅れると無申告加算税や延滞税などを課される可能性もあります。ミスなく、迅速に対応するには、経験と知識を持つ税理士に代行を依頼するのがおすすめです。
税理士の名前で申告をすることにより、税務調査を抑制する効果も期待することができます。
相続税が安くなることがある
税理士に相続税申告の代行を依頼するメリットとして、相続税が安くなるケースがある点も挙げられます。相続税は、誰がどのように財産を相続し、どのような特例を適用するかで税額が変わります。遺産分割の方法を工夫したり、相続税法に従って財産の評価を減額したりして相続税の負担を少しでも抑えたい場合は、税理士に相談しましょう。
将来に有効な専門家のアドバイスをもらえる
税理士に相続税の申告を依頼すると、将来を見据えたアドバイスがもらえる点もメリットです。たとえば、配偶者の相続税額は、配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)で軽減できるため、配偶者に多めに財産を相続させるようにすると一見有利ですが、将来配偶者が亡くなった際にはその相続財産に対する相続税も想定しなければなりません。配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)をあえて活用せずに、相続税がかかっても子どもに財産を相続させたほうがトータルの相続税額が安く済むというケースは珍しくありません。
相続税に関する豊富な知識を持っている税理士であれば、将来も見据えてもっとも税負担が安くなる遺産分割や財産承継の計画を立てることが可能です。
代理人になってもらえる
弁護士に遺産分割の交渉を依頼した場合は、代理人としてあいだに立ってもらえるといったメリットもあります。遺産分割で揉めている場合でも、弁護士を立てることで協議をスムーズに進めて決着することができます。
依頼できる相続手続き代行の業務範囲
代行できる相続手続きは、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、銀行で異なります。それぞれの専門家で対応できる業務範囲の一覧表は、以下のとおりです。なお、銀行に相続手続きの代行を依頼する場合は、必要に応じて銀行が提携する士業を紹介してもらい手続きを進めます。
相続手続き | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 |
---|---|---|---|---|
遺言書の検認の申し立て | ○ | △ ※3 | × | × |
相続人の調査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
遺産の調査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
相続放棄の申し立て | ○ | △ ※3 | × | × |
相続人間の紛争解決 | ○ | × | × | × |
遺産分割協議書の作成 | ○ | △ ※4 | ○ ※4 | △ ※4 |
不動産の名義変更(相続登記) | △ ※1 | ○ | × | × |
預貯金の解約払い戻し | ○ | ○ | △ | ○ |
有価証券の名義変更 | ○ | ○ | △ | ○ |
自動車の名義変更 | ○ | × | × | ○ |
相続税の申告 | △※2 | × | ○ | × |
- ※1 司法書士に任せるのが一般的
- ※2 税理士に任せるのが一般的
- ※3 代理申請はできない
- ※4 事案によって異なる。遺産分割協議の代理交渉および交渉結果をまとめた遺産分割協議書の作成は、弁護士のみ
基本的には各士業の業務範囲は上記のようになります。各士業の業務範囲ではない相続手続きについては、業務提携しているほかの士業を紹介してもらうことも可能です。各士業や銀行が主に担当している業務について、以下で確認していきましょう。
弁護士
弁護士は、ほとんどすべての手続きを代行することが可能です。遺産分割協議で代理交渉が必要になる場合は、弁護士しか対応できません。遺産分割のトラブルの解決を依頼したい場合は、弁護士に相談する必要があります。
司法書士
司法書士は、主に不動産の登記手続きの代行や、裁判所へ提出する書類の作成の代行をします。登記は弁護士でも対応することはできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。
遺産分割協議書の作成は可能ですが、遺産分割協議で代理人になることはできないため、もめているケースでは弁護士に相談するようにしましょう。
なお、相続手続きのすべてをワンストップで代行依頼できるサービスを用意している司法書士事務所も少なくありませんが、その場合は司法書士が窓口となり、司法書士では対応できない業務はほかの士業に外注する形になります。
税理士
税理士は、主に相続税の申告に関連する手続きを代行します。税務申告の代行は、基本的に税理士にしか依頼できません。相続税の発生が見込まれる場合は、税理士に相談するのがおすすめです。
財産を相続しても、遺産の総額が相続税の基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の範囲内に収まる場合は、相続税はかかりません。詳細は以下の関連記事をご参照ください。
行政書士
行政書士は、文書の作成を代行する専門家で、相続手続きではトラブルがない場合の遺産分割協議書の作成や自動車の名義変更手続きなどを代行します。遺産分割のトラブル対応や登記、税務申告には対応できません。相続人の調査、遺産の調査には対応可能です。
銀行
銀行は、基本的にすべての業務に対応する代行サービスを提供していますが、銀行の担当者が各業務を行うわけではありません。各業務の代行業務自体は対応できる士業に委託して、銀行は窓口として機能します。銀行に代行を依頼する際は、各士業への委託費用も別途かかるため、コストが高額になりがちです。
相続手続きの料金相場
代行できる業務範囲の違いなどから、代行を依頼した場合にかかる費用の相場も異なります。弁護士、司法書士、税理士、行政書士、銀行それぞれに業務を依頼した場合の費用の相場は、以下のとおりです。
弁護士
弁護士はほとんどの相続手続きに対応でき、相続税申告以外の遺産整理を代行依頼した場合の費用相場は、遺産総額の0.5~3%程度で、20万~60万円程度の最低報酬額も設定されています。遺産総額が高額になるほど報酬金額の割合を減らす料金設定をしている事務所もありますが、場合によっては100万円を超えるケースもあります。
また、個別に一部の手続きを依頼することもでき、たとえば遺産分割協議の調停なら、20万~60万円程度の着手金+経済的利益×4~16%の金額が一般的です。経済的利益とは、遺産分割協議の結果、依頼人が取得できた財産の金額です。
ほかには、相続放棄をスポットで頼むと、5万~20万円程度の費用がかかります。
司法書士
司法書士は、主に不動産の登記手続きを代行し、不動産登記をスポットで依頼した場合の費用相場は、1件あたり5万~15万円程度です。相続人の調査や遺産分割協議書の作成を依頼した場合は、一般的に数万円程度の費用がかかります。
相続手続きのすべてをワンストップで代行依頼する場合は、数十万円程度が相場です。
税理士
税理士に相続税の申告業務と、それに付随する相続人・財産の調査や遺産分割協議書の作成を依頼した場合の費用の相場は、遺産総額の0.5~1%程度の金額が一般的です。税理士が行う業務は財産が多いほど煩雑になるため、遺産総額に比例して費用は増加します。複雑な財産評価が必要になる土地や非上場株式が含まれる場合は、金額が加算されることもあります。
行政書士
行政書士は、主に文書の作成や自動車の名義変更を代行し、たとえば遺産分割協議書の作成の費用の相場は1件あたり3万~5万円程度、自動車の名義変更は1件あたり2万~5万円程度です。
銀行
銀行に相続手続きの代行を依頼した場合、銀行への報酬と各士業への外注費用が必要になります。銀行への報酬は、遺産の相続税評価額や固定資産税評価額などに応じて費用が異なり、大手都市銀行などでは評価額に対して0.3%~2%程度の費用を設定しているのが一般的です。報酬金額の割合は、たとえば1億円以下の部分は1.7%、1億円超~2億円以下の部分は1%といった形で定められ、遺産の評価額にかかわらず必要となる、最低報酬額も設定されています。
これに加えて、各士業への外注費用が別途必要になります。上記の報酬金額の設定で、遺産の評価額が合計1億5,000万円だった場合は、総額で以下の費用がかかります。
遺産の評価額が合計1億5,000万円だった場合の計算例
- 1億円以下の部分の費用:1億円×1.7%=170万円
- 1億円超~2億円以下の部分の費用:5,000万円×1%=50万円
- 司法書士費用(一般的な報酬額):10万円
- 税理士費用(一般的な報酬額):100万円
- 合計:170万円+50万円+10万円+100万円=330万円
士業への外注費用も加算されるため、各士業に個別に業務を外注する場合と比べて、銀行に相続手続きの代行を依頼すると費用が高額になる傾向があります。銀行の費用が高額になりやすい理由として、銀行は相続手続き以外にもさまざまな業務を行っているため多額の人件費を要すること、店舗が好立地にあり家賃などの経費がかかりやすいことも挙げられます。
相続手続きの代行を依頼する際の注意点
相続手続きの代行を依頼する場合、上記の業務範囲や費用を参考に、自身のケースではどのような手続きが必要で、誰に依頼すべきなのかを検討しましょう。ただし、実際に依頼先を選ぶ際には、注意点もあります。以下の3点を念頭に置いて、依頼先選定を進めてください。
相続に実績があるかどうかチェックしておく
士業でも銀行でも、すべての専門家が相続に慣れているわけではないため、検討している依頼先が相続の実績を持っているかチェックを忘れないよう、注意しなければなりません。
たとえば、税理士に依頼する場合でも、起業の手続きや法人・個人事業主の税務を得意としている税理士もいます。事前に調べずに依頼すると、相続に慣れていない人に依頼してしまうかもしれません。相続を専門・得意としている事務所なのか事前に実績を確認しておきましょう。
明朗な料金設定になっているか見積もりを確認する
相続手続きを依頼すると、数十万円を超える高額な費用を支払うことになるため、料金設定や見積もりの確認も怠らないよう注意が必要です。
場合によっては、料金の正確な計算方法や最終的な費用の総額の目安などが依頼時に提示されず、手続きが終わってから想定よりも高額な費用を請求されるケースも存在します。相続手続きを依頼する際は、複数の専門家から見積もりを取り寄せ、費用の総額だけではなく内訳も比較してください。見積もりにどのような費用が含まれていて、手続き完了時までに総額でいくらかかるのか、可能な限り正確に把握することが重要です。
相続税申告がある場合は1日でも早く相談する
相続税の申告には、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内という期限があるため、依頼しようか悩んでいるあいだに期限間近になってしまうと、代行を依頼しても期限に間に合わないことがある点に注意してください。
専門家によっては、初回の相談を無料で受け付けている場合もあります。悩んだら、すぐ相談することをおすすめします。
相続手続きの代行依頼では、業務範囲や費用などから最適な依頼先を選ぼう
相続手続きは煩雑で、仕事をしていれば平日に休みを取らなければならない可能性もあるため、忙しい人は代行を依頼するのがおすすめです。代行を依頼する際は、各士業や銀行に依頼できる業務範囲、依頼した場合の費用、メリットなどから、自身にとって最適な依頼先を判断してください。
相続税の申告の代行を依頼する場合は、税理士への依頼が主な選択肢となります。ベンチャーサポート相続税理士法人では、経験豊富な税理士が、相続税の申告を親身にお手伝いしています。無料相談も受け付けているため、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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