目次
この記事でわかること
- 婚外子の制度について理解できる
- 婚外子を認知する法的効果がわかる
- 婚外子が絡む相続トラブルの防止法がわかる
婚外子とは、法的な婚姻関係のない男女の間に生まれた子どものことです。
非相続人が亡くなって相続が開始した場合、手続きの中で今まで知らなかった婚外子の存在が明らかになることがあります。
存在を知らなかった婚外子のいる相続は、トラブルが発生しやすくなっています。
婚外子に遺産を渡す、渡さないの争いになることが多くあるからです。
そこで今回は、婚外子の制度の仕組みや法的な効果、婚外子が絡む相続のトラブルを防止する方法などをご紹介します。
また、婚外子が関係する相続税の計算方法について解説していきます。
婚外子とは
婚外子とは、法的に婚姻関係のない男性と女性の間に生まれた子どものことです。
たとえば、妻子のいる男性と法的に独身の女性の間に生まれた子どもは婚外子にあたります。
婚外子は非嫡出子と呼ばれる場合もあります。
一方、法的に婚姻関係のある男女の間に生まれた子は嫡出子といいます。
戸籍における婚外子の記載方法は、従来は嫡出子と区別するために「男」や「女」と記載されていました。
嫡出子は長男や二女と記載されていたため、戸籍を見るだけで誰でも婚外子であることが分かるのが問題でした。
2004年に戸籍法施行規則が改正されたことで、婚外子の戸籍の続柄の記載方法が変更され、嫡出子と同じように長男などと記載されるようになりました。
婚外子と両親の親子関係
婚外子と両親の親子関係については、母親と父親によって手続きが異なります。
婚外子と母親の親子関係は、役所に子どもの出生届を提出するだけで法的に成立します。
特別な手続きが必要とされていない理由は、現に母親から生まれているためです。
一方、婚外子と父親の親子関係を法的に成立させるためには、認知という手続きが必要になります。
認知の手続きが必要な理由は、現に産んでいる母親とは異なり、親子関係を自然に証明することが困難だからです。
父親による認知の手続きとは
認知とは、父親が子どもを自分の子であると認める意思表示の手続きです。
遺伝的に実の子であっても、認知をしなければ法的には父親の子どもとしては扱われないのがポイントです。
婚外子を認知する方法は、役所に認知届を提出することです。
認知が成立した場合、その効力は子どもが出生した時点までさかのぼります。
それによって、いつ認知されたとしても生まれた当初から父親の子どもであったという効力が生じます。
認知は父親が生存中はいつでもすることができ、期間制限はありません。
また、遺言によって亡くなった後でも認知することが可能です。
愛人との間に生まれ子どもについては、生前に認知したくなかったために遺言によって認知するケースもあります。
なお、胎児を認知する場合には母親の承諾が、成人を認知する場合には本人の承諾が必要になります。
また、亡くなった子どもを認知することもできますが、その場合は子の直系尊属(祖父母など)の承諾が必要です。
父親が婚外子を認知することによる法的な効果としては、父親の遺産の相続権や、親子間の相互扶養義務があります。
また、父母の協議などによる親権、家庭裁判所の許可による父親の戸籍への子の記載、子に対する父親の面会交流なども対象になります。
婚外子による親の遺産の相続
婚外子も嫡出子と同様に親の遺産を相続できますが、母親と父親の場合では手続きが異なります。
母親の場合は遺産を当然に相続することができます。
父親の遺産については、父親に認知されていることが要件になります。
認知されていない場合は、たとえ遺伝的に親子関係があっても当然には相続の対象になりません。
婚外子の法定相続分
婚外子の法定相続分(法律で定められた各相続人の持ち分の割合)については、かつては嫡出子の2分の1とされていました。
たとえば、父親が亡くなって600万円の遺産を配偶者、嫡出子、婚外子の3人で分ける場合についてです。
まず、この場合の配偶者の法定相続分は1/2なので、配偶者の持ち分は300万円です。
次に、残りの300万円を嫡出子と婚外子で分けることになりますが、婚外子の法定相続分は嫡出子の1/2です。
そのため、嫡出子の持ち分は200万円で、婚外子の持ち分は100万円になります。
以上が法定相続分の従来の制度でしたが、この取り扱いは法の下の平等を定める憲法14条に反し違憲であると最高裁判所が判断したことが大きく影響し、民法が改正されて婚外子の法定相続分は嫡出子と同じになりました。
それによって、2013年9月5日以降に発生した相続については、婚外子についても嫡出子と同様の法定相続分で計算することになりました。
たとえば、父親が亡くなって800万円の遺産を配偶者、嫡出子、婚外子の3人で分ける場合、まずは配偶者の法定相続分が1/2の400万円になります。
次に、残りの400万円を嫡出子と婚外子で分けますが、改正によってそれぞれの法定相続分は同じになったので、嫡出子が200万円、婚外子が200万円の法定相続分になります。
婚外子は相続税の計算に関係する
相続が発生すると、相続税の課税対象になることがあります。
相続税計算する場合、法定相続人(法律で定められた相続人)の人数によって金額が異なりますが、この法定相続人には認知された婚外子も含まれます。
相続税の計算で法定相続人の人数が関係するのは、基礎控除額、死亡保険金の非課税限度額、死亡退職金の非課税限度額などです。
基礎控除額の計算方法
基礎控除額とは、相続の対象となる財産の総額が基礎控除額以下の場合には課税されないという制度です。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数」が計算式です。
上記の計算式における法定相続人の人数には、嫡出子だけでなく認知された婚外子も含まれます。
たとえば、父親が亡くなって配偶者、嫡出子、婚外子の3人が4,000万円を相続する場合、法定相続人の数は婚外子も含めて3人になります。
この場合の基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円です。
相続価格の4,000万円が基礎控除額の4,800万円を下回っているので、相続税は課税されません。
非課税限度額の限度額
被相続人が亡くなると死亡保険金や死亡退職金が支払われる場合がありますが、これらは原則として課税の対象になります。
ただし、「500万円 × 法定相続人の数」の金額までは非課税になり、法定相続人には認知された婚外子も含まれます。
たとえば、被相続人が亡くなって相続人として配偶者、嫡出子、婚外子の3人がいるケースにおいて、勤めていた企業から1,000万円の死亡退職金が支払われた場合について考えてみます。
この場合の非課税の限度額は500万円 × 3 = 1,500万円なので、死亡退職金の1,000万円は限度額の範囲内なので課税されません。
相続で婚外子がいる場合によくある疑問
相続で婚外子がいる場合によくある疑問について、ケースごとに解説していきます。
婚外子に遺産を相続させたい
嫡出子以外にも婚外子が存在し、その婚外子に遺産を相続させたい場合は、まずは認知によって法的な親子関係を成立させる必要があります。
認知を済ませて親子関係を確立させれば婚外子にも自分の遺産を相続させることができます。
注意点として、婚外子の存在を嫡出子が知らない場合、相続が始まるまでに明かさなければ後々のトラブルにつながるおそれがあります。
婚外子について嫡出子に明かせない事情がある場合には、遺言をして遺産分割を嫡出子が納得できるような割合にするなどの工夫が重要になります。
被相続人の戸籍を調べたら隠し子が判明した
被相続人が亡くなって相続手続きのために戸籍謄本を取得したところ、戸籍の記載から隠し子がいることが判明したケースです。
相続の手続きをする場合、被相続人の出生から死亡までの全ての時期が記載された戸籍謄本が必要になります。
死亡時の戸籍謄本だけでは足りない場合、出生時の戸籍謄本までさかのぼって取得していきます。
戸籍をたどっていくうちに、相続人が知らなかった隠し子の存在が明らかになることがあります。
戸籍の記載から隠し子について分かる場合、その隠し子は認知された婚外子ということです。
そのため、他の相続人だけでなく婚外子にも被相続人の遺産を相続する権利があります。
婚外子と交渉をするのは負担である、相続分が減ってしまうなどの理由から、婚外子を除外したまま遺産分割協議を進めたくなることがあります。
しかしながら、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、婚外子も相続人に含まれます。
相続人を除いて行った遺産分割協議は無効になるので注意が必要です。
婚外子がいるが争いなく相続を済ませたい
遺産分割協議は相続人同士の話し合いが基本になります。
それだけで解決をすれば問題はないのですが、相続が開始してから婚外子がいることを初めて知ったような場合には、遺産をめぐってトラブルになることもあります。
相続の争いを防止するために有効な方法の1つは、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。
法的な意味での遺言書とは、遺産の分割方法について指定した書類のことです。
遺産をどう分割するかを遺言書によって指定しておけば、遺産分割に伴う争いを防止することにつながります。
特に、婚外子が絡む場合はトラブルが起こりがちなので、遺言書を作成しておく必要性は高くなります。
注意点として、遺言書はどのように作成してもよいというものではなく、有効な遺言書の様式は法律によって厳密に定められています。
様式を備えていない遺言書は無効になってしまうので、作成の際には注意しましょう。
争いが起きてしまったら
婚外子が絡む相続について争いが起きてしまったら、相続問題に詳しい弁護士に相談するのも有効な方法です。
一度話がこじれてしまうと、当事者同士の話し合いだけで解決するのは難しい場合が少なくないからです。
弁護士に相続問題の解決を依頼するメリットとして、以下のものがあります。
解決のための近道がわかる
相続は複雑な法律の制度が絡む問題なので、自力で解決しようとしてもその方法がわからない場合も少なくありません。
どうすればいいかわからずに迷ったり悩んだりするうちに、時間もエネルギーも消費してしまいがちです。
相続に関する知識や経験が豊富な弁護士に相談することで、トラブルを回避するための有効な道筋を見つけることにつながります。
相手との話し合いから解放される
トラブルの解決を弁護士に依頼すると、相手との話し合いや交渉を弁護士がサポートしてくれます。
自分で相手と話さなくても弁護士がかわりに話してくれるので、対立している相手と話し合うという負担から解放されるでしょう。
また、話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所での調停など、裁判所を介しての解決も視野に入れる必要がでてきます。
この点、弁護士に依頼すれば裁判所での手続きも任せることが可能です。
まとめ
法的に婚姻関係のない男女の間に生まれた子どもを婚外子といいます。
婚外子と父親の親子関係を法的に成立させるためには、認知の手続きが必要になります。
父親に認知された婚外子は、父親が亡くなって残した遺産を相続する権利があります。
婚外子の法定相続分は嫡出子と同じ割合です。
一方、相続に婚外子が絡むと争いになることがあります。
特に、嫡出子が婚外子の存在を知らなかった場合です。
相続を巡るトラブルを防止するには、被相続人が生前に遺言書で遺産の分割方法を指定しておくのが有効です。
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