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最終更新日:2022/11/8

相続した農地を売却する流れ・必要書類【売却時に許可は必要?】

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

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相続した農地を売却する流れ・必要書類【売却時に許可は必要?】

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この記事でわかること

  • 相続した農地を売却する際のメリットとデメリットがわかる
  • 相続した農地を売却する流れや、必要な書類を知ることができる
  • 相続した後に農地を売却すると発生する税金について知ることができる

亡くなった人が保有していた農地は、相続人の中の誰かが相続することとなります。

相続人の中に農業を行っている人がいれば、その人が農地を相続するのが最善の方法といえるでしょう。

しかし、相続人の中に農業を行っている人がいなければ、誰もその農地を必要としないことも考えられます。

そこで、相続した後に農地を売却してお金に換えようと考える方もいるのではないでしょうか。

ここでは、農地を相続した後に売却する際の流れや、税金の計算方法などをご紹介します。

相続した農地を売却するメリット・デメリット

相続した農地を売却することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

また、農地を相続した後、売却することによって、デメリットはないのでしょうか。

メリット・デメリットの両面を解説していきます。

相続した農地を売却するメリット

相続した農地を売却することができれば、農業に使わないのにも関わらず農地を管理し続けなければならない状態から解放されます

また、固定資産税は土地を保有しているだけでかかりますが、売却した後には負担がなくなります。

農業をしない人が農地を保有している場合、維持・管理に時間やお金がかかるため、その負担は相当なものです。

そのような負担がなくなることが、一番のメリットといえます。

また、農地を売却して現金収入を得ることができれば、その現金は自由に使うことができます

中でも、相続税が発生している場合は、相続税の納税資金にあてることができます。

資産価値のある土地であっても農地のままでは納税に使えないため、納税用の資金を確保できる点も大きなメリットです。

相続した農地を売却するデメリット

相続した農地を売却するためには、多くの手間と時間がかかります

また、それだけの時間的負担に対して、期待していたほどの金額にならないことも珍しくありません。

さらに、農地を売却することで新たな税金が発生したり、確定申告が必要になったりすることも負担となる場合があるのです。

農地を相続してから、納税猶予制度を利用している場合があります。

この制度を利用するには、農地を保有して農業を続ける必要があります。

しかし、農地を売却した際には納税猶予は取り消しとなるため、相続税の負担が発生する場合もあるのです。

相続した農地は売却できる?

農地を相続する場合、相続人は農業委員会に対して届出しなければならず、許可が必要な場合もあります。

相続した農地を売却する場合には、何らかの許可が必要となるのでしょうか。

農地を実際に売却するために、事前に知っておくべきポイントを確認しておきましょう。

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農地を売却する際の許可や届出

相続した農地を売却する際に、すべてのケースで何らかの許可が必要とされるわけではありません。

その農地の所在する地域により、必要となる手続きは異なります

そのため、その違いを知っておく必要があるのです。

市街化区域にある農地を売却する場合

市街化区域とは、都市計画法により「優先的に市街化するべき」と指定されている地域のことをいいます。

市街化区域では、すでに周辺の市街化が進んでおり、農地が少なくなっているケースが多いでしょう。

市街化区域については、農地をそのままの形で保全するべきという方針ではありません。

そのため、農地の宅地などへの転用ついても、一切の制約は設けられていませんす。

市街化区域にある農地については、農業委員会への届出を行うだけで簡単に転用できます。

そして、転用すればその後は自由に売却することができるのです。

市街化区域以外の地域にある農地を売却する場合

市街化区域以外の地域にある農地については、農地のまま売却するか、そのほかの土地に転用してから売却するかのいずれかとなります。

このうち農地のまま売却する際は、原則として農業委員会の許可が必要です。

この時、買い手となる人や法人は、農業に従事している人(または法人)でなければならないため、簡単に買い手が見つからないこともあります。

一方、市街化区域以外にある農地を転用することも、簡単ではありません。

農地の区分によっては、まったく転用が認められない場合や、転用に厳しい条件が設けられている場合もあるのです。

そのため、転用して売却しようとしても、その転用自体が認められないことも少なくありません。

市街化区域外にある農地の場合、市街化区域内にある農地に比べると、売却のハードルは格段に高くなることがほとんどです。

相続した農地を売却する流れ・必要書類

相続した農地を売却する流れ・必要書類

相続した農地を売却するには、宅地を売却する場合と比べて、多くの手続きが必要となります。

そこで、売却するための手続きを、順を追ってご紹介していきます。

(1)相続の届出

農地を相続した場合、その農地を売却する予定があるか否かに関係なく、農業委員会に届出をしなければなりません

届け出は、相続が発生してから10か月以内が期限とされているため、忘れないようにしましょう。

(2)役所に事前相談・事前確認を行う

農地を売却することができるか、または転用してからの売却が可能かどうかは、その農地の所在地によって異なります。

そこで、相続した農地を売却できるのか、そして売却するのであれば、どのような条件があるのかを役所で確認します。

農地を転用せずに農地のまま売却する場合は、農業委員会が窓口となります。

また転用した後に売却するのであれば、都道府県知事又は指定市町村長が相談先になります。

転用できるかどうかという確認もこの時一緒に行い、どのような方法があるのかを把握しておきましょう。

(3)価格の査定

事前相談で売却できそうな見込みがあることが確認できれば、売却しようとしている農地の査定を不動産会社に依頼します

農地のまま売却するか、転用してから売却するかによって、売却できる相手や金額は大きく変わります。

どちらの方針でいくのかについてあらかじめ検討したうえで、価格を査定してもらいましょう。

また、どちらの方針がいいのか、不動産会社に聞いてから結論を出すのも、売却にあたっての方法の1つです。

そのためには、農地の売買に詳しい不動産会社に相談することが望ましいといえます。

(4)媒介契約の締結

数社の不動産会社に査定などを依頼した上で、売買の仲介を依頼する会社を最終的に1社に決めます。

この時、不動産会社と媒介契約を締結して、売却活動を始めていきましょう

売却に向けた活動は、農地の許可申請を行う前に始める必要があります。

最終的には買い手を探すだけでなく、許可申請なども不動産会社の協力を得ながら進めていくことが望ましいでしょう。

(5)停止条件付き売買契約を結ぶ

売却活動を行った結果、買い手を見つけることができたら、売買契約を締結します。

この時に締結する契約は「停止条件付き売買契約」という種類になるため、注意が必要です。

「停止条件付き売買契約」とは、売買できる条件が整うまでは法律の効果が停止しているものとする契約のことです。

農地の売買を行う際には農地法の規定に基づく許可が必要になり、その許可が得られなければ売買契約は成立しません。

一方で、売買を行う際には、許可を取得する前に買主を決めておかなければなりません。

そこで、売買契約を締結して買主を確定させておく一方で、許可が下りなければ契約が成立しないものとしておくという仕組みになっています。

(6)許可申請を行う

売買契約を締結したら、その売買が成立するために必要な申請をしなければなりません

転用してから売却するのであれば、農業委員会に転用許可の申請を行い、農地のまま売却する場合あ、売却の許可申請を行います。

売買契約の内容に基づいた手続きを、不動産会社と一緒に進めていくことになります。

(7)買い手が仮登記を行う

売買契約を締結した後、農地に関する許可申請を行いますが、実際に許可が下りるまでは1か月程度かかります。

そこで、買い手が自身の買い手としての順位を明確にするため、仮登記を行います

農地の売買には時間がかかるため、仮登記を行っておくことがトラブルを防ぐ要因となるのです。

(8)農地の引き渡しを行う

許可申請が下りたら、農業委員会から発行される許可指令書を受け取ります

その後、許可指令書に基づいて法務局で所有権移転登記を行い、売買代金の精算を行います。

そして、農地を買い手に引き渡したら、売買は完了です。

農地を売却したときにかかる税金

農地を売却すると、売り手は売却した代金を手にすることとなります。

ここで売却益が発生すると、その売却益に対する税金がかかります。

売却益の金額は、売却して得た収入金額から、その土地を取得するためにかかった取得費を差し引くことで計算します。

また、売却するためにかかった手数料などの費用も、差し引くことができます。

なお、先祖代々の土地などで、取得費が不明である場合は、売却価格の5%を取得費とすることができます。

農地を売却して売却益が出ると、所得税と復興特別所得税、住民税がかかります

農地の保有期間に応じて税率が変わるため、相続する前から通算して保有期間を確認しておく必要があります。

まとめ

農地を保有する人が亡くなった場合、その農地を誰が相続するのかや、相続後どのように利用するのかという点は大きな問題となります。

特に農業をしている相続人がいない場合や、農地が遠方にある場合は、その農地を相続人が管理できないこともあります。

そのため、相続後に売却することを前提にしているケースも少なくありません。

しかし、農地を売却することは、決して簡単なことではありません。

許可が下りなかったり、買い手がなかなか見つからなかったりするなど、様々な点で宅地の売却とは違いがあるためです。

売却したい場合は、売却できる条件について、あらかじめ確認しておく必要があります

また、農地の売却に強い不動産会社を選定することが、農地売却の成否に大きくかかわります。

そのため、農地を売却する時の不動産会社は慎重に選びましょう。

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