この記事でわかること
- 相続放棄申述書の書き方がわかる
- 相続放棄の申述先や費用、申述期限を知ることができる
- 相続放棄申述に必要な書類を自分で収集できるようになる
- 相続放棄申述の手続きの流れを理解できる
- 相続放棄申述書を書くに当たって注意すべきポイントがわかる
普通に相続をすると、亡くなった方(被相続人)が所有していた全ての財産を引き継ぐことになります。
預貯金や不動産などのようなプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産があれば、それも引き継がなければなりません。
プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合は相続することで損をしてしまいます。
自分では到底支払えないような負債がある場合もあるでしょう。
そんなときは、相続放棄をすることができます。
相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったことになります(民法第939条)。
プラスの財産も引き継ぐことができませんが、マイナスの財産も引き継がないので被相続人の借金を支払う必要がなくなります。
相続放棄をするためには家庭裁判所で手続きをしなければなりませんが、その際に必要になるのが「相続放棄申述書」です。
一定の期限内に相続放棄申述書を正しく作成し、必要書類を添えて家庭裁判所へ提出しなければ相続放棄は認められません。
相続放棄が認められないと、被相続人が残した多額の借金を背負ってしまうことにもなりかねません。
そこでこの記事では、相続放棄申述書とはどのような書類なのか、相続放棄申述書の書き方を記入例とともにご説明し、手続きの流れや気をつけたいポイントもご紹介します。
相続放棄申述書とは?
相続放棄申述書とは、家庭裁判所に相続放棄を認めてもらうために提出する書類です。
家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることを「相続放棄の申述」といいます。
相続放棄の申述をするために提出する書類が、相続放棄申述書です。
相続放棄申述書を提出して家庭裁判所で審査され相続放棄が認められた場合に、相続放棄ができます。
相続放棄申述書のダウンロード
相続放棄申述書の書式は最寄りの家庭裁判所で受け取ることができますが、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
印刷する際は、両面印刷はせずに片面印刷をするようにしましょう。
相続放棄申述書の様式は、申述する方が18歳以上の場合と18歳未満の場合とで異なります。
必ず、該当する様式の相続放棄申述書を入手して使用するようにしましょう。
参考:家事審判の申立書|裁判所
相続放棄申述書の書き方
それでは、相続放棄申述書の具体的な書き方を記入例とともにみていきましょう。
相続放棄申述書の書き方を記入すべき欄ごとにご説明していきます。
参考:家事審判の申立書|裁判所
相続放棄申述先・日付・記名押印の書き方
上記の相続放棄申述書の記入例を見ながら、相続放棄申述書の書き方を解説していきます。
まず記入する欄は、申述先・日付・記名押印欄です。
それより上にもいくつかの欄がありますが、そこには何も記入しないでください。
申述先の欄には、相続放棄を申述する先の家庭裁判所名を記入します。
裁判所の支部名まで記入する必要はありません。
東京都内の家庭裁判所へ申述する場合なら「東京」と記入すれば大丈夫です。
日付の欄には、相続放棄申述書を家庭裁判所へ提出する年月日を記入します。
記名押印欄には申述する方の氏名を記入し、押印します。
印鑑は認印で構いませんし、印鑑証明書を添付する必要もありません。
申述する方が未成年者の場合は、法定代理人(親権者など)が記名押印します。
申述人〇〇さんの父▲▲さんが記名押印する場合なら「〇〇の法定代理人▲▲」と記名します。
相続申述書の添付書類の書き方
相続放棄申述書の添付書類の欄の書き方は、該当するものにチェックを付け、添付する通数を記載します。
必要書類については、後ほどご説明しますが、被相続人の住民票除票又は戸籍附票、申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本は、どのようなケースでも必要となります。
申述人・法定代理人等・被相続人の書き方
相続放棄申述書の申述人・法定代理人等・被相続人の書き方は、それぞれの個人情報を正確に記載します。
本籍・住所・氏名については略字等を使用せず、戸籍謄本などに記載されているとおりに記載するようにしましょう。
申述の趣旨の書き方
相続放棄申述書の申述の趣旨は、何を申述するのかを記載する欄ですが、既に「相続の放棄をする。」と印字されているため、記入不要です。
申述の理由の書き方
相続放棄申述書にある「申述の理由」の欄には、相続放棄をしたい理由を書くのではなく、相続の開始をいつ知ったのかを記載します。
相続放棄は自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に行わなければならないため(民法第915条1項)、相続の開始をいつ知ったのかを記載する必要があるのです。
多くの方は、被相続人が亡くなった年月日を記載し、「1 被相続人死亡の当日」に○を付けることになるかと思います。
被相続人が亡くなったことを後日知らされた場合は、知らされたときの日付を記載し、「2 死亡の通知をうけた日」に○を付けます。
「3 先順位者の相続放棄を知った日」に○を付けるのは、自分よりも先順位の法定相続人がいるものの、その方が相続放棄をしたために自分が相続人となる場合です。
「4 その他」に○を付けるのは、例えば、被相続人が亡くなったことは当日に知ったものの、借金があることが後日判明したような場合です。
このような場合は、被相続人の死亡から3か月以上が経過していても、借金があることを知ってから3か月以内であれば相続放棄が認められる可能性が高いです。
ただし、相続放棄申述書の申述の理由の欄に記入するだけでなく、具体的な事情を記載した「上申書」や債権者からの通知書面などの提出が求められます。
十分に事情を説明することができなければ相続放棄が認められない場合もあります。
被相続人の死亡後3か月以上が経過してから相続放棄の申述をする場合は、相続放棄申述書の申述の理由の書き方について司法書士または弁護士に相談した方が良いでしょう。
放棄の理由の書き方
相続放棄申述書の放棄の理由の書き方は、なぜ相続放棄をしたいと思ったのかという動機を記載します。
多くの方は「5 債務超過のため。」に○を付けているようです。
該当する者がない場合は、「6 その他」に○を付けて、放棄の理由を簡潔に記載します。
「兄弟に遺産を譲る」「相続争いに巻き込まれたくない」など、率直に記載すれば大丈夫です。
相続放棄申述書の放棄の理由は相続放棄をするための法律上の要件ではありませんし、理由が何であるかによって相続放棄が認められないということはまずありません。
あまり神経質にならず、放棄の理由を素直に記載しましょう。
相続財産の概略の書き方
相続放棄申述書にある「相続財産の概略」の欄には、相続財産としてどのようなものがどれくらいあるのかを資産・負債に分けて記載します。
面倒に感じるかもしれませんが、あくまでも「概略」なので、判明している相続財産の概略を大まかに記載すれば大丈夫です。
相続財産が全く判明していない場合は、相続放棄申述書の相続財産の概略の欄は空欄にしておくか、「不明」と記載しても差し支えありません。
相続放棄申述書の提出方法
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出することによって行います。
ここでは、どこの家庭裁判所に相続放棄申述書を提出すれば良いのか、相続放棄申述書を提出する方法にはどのようなものがあるのかをご説明します。
相続放棄をするためには、自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内に相続放棄申述書を提出する必要があります。
相続放棄申述書の提出方法や申述期間についてくわしく見ていきましょう。
相続放棄申述書の提出先
相続放棄申述書の提出先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
住民票で被相続人の最後の住所地を確認の上、その地域を管轄する家庭裁判所へ相続放棄申述書を提出しましょう。
家庭裁判所の管轄は、裁判所のホームページで調べることができます。
参考:裁判所の管轄区域|裁判所
相続放棄申述書の提出方法
相続放棄申述書の提出方法は、管轄家庭裁判所の窓口に持参する他、郵送で提出することもできます。
相続放棄申述書を窓口に提出すればその場で書類に不備がないかをチェックしてもらえて、不備がある場合はアドバイスしてもらえることもあります。
したがって、不安な方や期限が迫っていて書類の不備が心配な方は、窓口に持参する方が安心できるでしょう。
相続放棄申述書の提出期間
相続放棄の申述ができるのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です。
必ずしも「被相続人が亡くなったときから3ヶ月以内」ではありません。
ただし、被相続人が亡くなってから3か月以上経過後に申述する場合は、相続の開始を知った時期を家庭裁判所に信用してもらえる程度に具体的に説明しなければなりません。
場合によって申述が受理されず、被相続人の負債を相続しなければならないおそれもあります。
被相続人が亡くなった後しばらくしてから借金が発覚したような場合は、司法書士または弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄申述書の手続きの流れ
管轄裁判所に相続放棄申述書を提出しても、まだ相続放棄が完了したわけではありません。
ここでは、相続放棄申述書を提出する準備から完了に至るまでの流れをご説明します。
相続放棄の申述に必要な書類を準備
ここでは相続放棄の申述を行う際に必要となる書類をご紹介します。
ただし、以下でご紹介する書類の他にも審理のために提出が必要となる書類もあります。
その場合は家庭裁判所から指示がありますので、確認の上で提出するようにしましょう。
まず、どのようなケースでも必要となる書類は以下の3種類です。
- ・相続放棄申述書
- ・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- ・申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本
これらの書類に加えて、誰が相続放棄の申述をするかによって必要な書類が異なるので、順にご説明します。
被相続人の配偶者が相続放棄を申述する場合
被相続人の配偶者が相続放棄を申述する場合は、
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)
が必要です。
ただし、被相続人と配偶者は同じ戸籍に記載されているのが通常なので、ほとんどの場合は「申述人の戸籍謄本」に被相続人の死亡の記載がされていると思われます。
その場合は別途戸籍謄本を提出する必要はなく、1通で大丈夫です。
被相続人の子または孫など代襲者が相続放棄を申述する場合
被相続人の子または孫など代襲者が相続放棄を申述する場合も、
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)
が必要です。
孫などの代襲者が相続放棄を申述する場合はそれに加えて、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)も必要となります。
被代襲者とは、例えば、被相続人の子が本来相続人となるはずだったところ、子が既に亡くなっていたために孫が代襲相続する場合の「子」のことをいいます。
被相続人の父母または祖父母等が相続放棄を申述する場合
被相続人の父母または祖父母等が相続放棄を申述する場合は、
被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)
が必要です。
被相続人の父母や祖父母等が相続人となるのは、被相続人に子及びその代襲者がいない場合です。
そのことを証明するために、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要となります。
したがって、被相続人に子(及びその代襲者)がいたものの既に亡くなっている場合は、
被相続人の子(及びその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)
も提出します。
さらに、被相続人の父母も亡くなっていて祖父母が相続放棄の申述をする場合は
被相続人の父母の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)
が必要となります。
被相続人の兄弟姉妹または甥・姪が相続放棄を申述する場合
被相続人の兄弟姉妹が相続放棄を申述するのは、被相続人に子(及びその代襲者)も父母や祖父母もいない場合です。
したがって、ここまでにご紹介した全ての書類が必要となります。
つまり、
- ・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)
- ・被相続人の子(及びその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)
- ・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)
がいずれも必要です。
被相続人の甥・姪が相続放棄の申述をするのは、さらに被相続人の兄弟姉妹も亡くなっている場合です。
その場合は、
被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)
も提出します。
戸籍謄本を収集するときの注意点
ケースによっては大量の戸籍謄本等を収集しなければなりませんが、同じものがある場合は重ねて取得する必要はなく、1通で大丈夫です。
また、同一の被相続人について他の相続人が先に相続放棄申述書を提出しているような場合、その手続きで既に提出されている書類も不要です。
相続放棄の申述をする前に取得するのが難しい書類がある場合は、先に申述をして後で追加提出することもできます。
申述期限が迫っている場合は家庭裁判所に相談の上、取り急ぎ相続放棄申述書を提出すると良いでしょう。
相続財産を調査
相続財産にはプラス財産(預貯金など)とマイナス財産(借金など)があり、マイナス財産が大きい場合に相続放棄を検討することになります。
預金口座は通帳やキャッシュカードから判明しますが、不動産は権利証や固定資産税の納税通知書のほか、不動産所在地がある役場で入手できる名寄帳も確認しましょう。
借金については、契約書や郵便物から判明する場合もありますが、申込みから融資までネット完結する借金もあるので、メールも確認するようにしてください。
また、定期的な引落しから借金が判明することもあるので、預金通帳の出金欄もチェックしておきましょう。
なお、相続放棄申述書を記入する際、相続財産は大まかな内容で構いませんが、詳細を把握できれば、相続放棄が最善策かどうか判断しやすくなります。
相続放棄の申述にかかる費用を準備
相続放棄を申述する際には、以下の費用がかかります。
- 収入印紙代800円
- 郵便切手400円程度
収入印紙は、郵便局やコンビニエンスストア、法務局で購入することが出来ます。
収入印紙は、相続放棄の申述書に貼付欄があるので、そこに貼ります。
郵便切手の種類や金額は家庭裁判所によって異なる場合があるので、申述先の家庭裁判所でご確認ください。
郵便切手は貼付せずに申述書にクリップなどで留めた状態で出すと良いでしょう。
その他、戸籍謄本を取得する際に1通450円程度の手数料がかかります。
遠方の役所から取り寄せる際には往復の郵送料も必要です。
相続放棄の手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合は、その費用もかかります。
費用の相場としては、数万円~10万円程度になるとお考えください。
家庭裁判所に相続放棄を申立
相続放棄の申立を行う場合、申述先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」になります。
また、相続放棄には郵送扱いもあるので、忙しい方はぜひ利用してくだい。
ただし、「最後の居住地=最後の住所地」になるとは限りません。
最後の住所地は「住民票除票」や「戸籍附票」から確認できるため、市町村役場で交付してもらい、内容を確認しておきましょう。
もし、「どこで住民登録しているかわからない」という状況であれば、自分の戸籍を遡ってみてください。
被相続人が親であれば必ず同一戸籍(同じ戸籍に入っている状態)にあたるので、次に親の戸籍を現在のものまで辿ります。
死亡が記載された戸籍に辿り着けば、戸籍附票などを請求できるので、最後の住所地が判明します。
未成年者はどうやって相続放棄する?
未成年者の相続放棄には以下のようなケースが考えられます。
- (1)親権者が相続放棄した後、未成年者の相続放棄も行う
- (2)親権者と未成年者が同時に相続放棄する
- (3)親権者と未成年者が共同相続人であり、未成年者だけが相続放棄する
- (4)複数の未成年者のうち、一部の未成年者の相続放棄を行う
未成年者は法律行為については、法定代理人である親権者が手続きしますが、お互いの利益相反が問題となります。
(1)や(2)の場合、お互いが相続放棄するので利益相反にはならず、問題なく家庭裁判所へ申立できます。
(3)と(4)については、親権者と一部の未成年者が遺産を独占してしまう恐れがあるため、利害関係のない人(伯父や伯母など)から特別代理人を選任します。
家庭裁判所から届く照会書に回答する
申述書の提出後、1~2週間すると家庭裁判所から「照会書」という書類が送られてきます。
これは、相続放棄の申述に至った経緯や状況、申述人の意向などを家庭裁判所が調査し、確認するための書類です。
照会書で調査される内容は主に以下のようなものです。
- ・いつ相続の開始を知ったのか
- ・どのようにして相続の開始を知ったのか
- ・相続放棄をすることでどうなるかを正しく理解しているか
- ・自分の意思で相続放棄の申述をしたのか
- ・本当に相続放棄をしても構わないか
難しく考える必要はありませんが、ケースによっては「いつ相続の開始を知ったのか」は重要ですので注意が必要になります。
照会書に回答を記載したら、家庭裁判所へ返送します。
相続放棄申述受理通知書の受取り
照会書を返送すると、その内容に基づいて家庭裁判所で審理が行われます。
審理とはいっても受理されるのが原則で、特に問題がなければ受理されます。
申述が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が届きます。
この書類が届けば、相続放棄の手続きが完了したことになります。
相続放棄申述受理証明書の発行
もし被相続人の借金の債権者から返済を催促された場合、通常は「相続放棄申述受理通知書」を見せれば催促をやめてもらえます。
しかし、債権者によっては証明書の提出を求めてくることがあります。
その場合は、家庭裁判所で「相続放棄申述受理証明書」の発行を受けて債権者に提出します。
発行手数料は1通につき、150円です。
また、あなたが相続放棄をしたことで他の相続人が不動産を相続した場合、登記手続きで「相続放棄申述受理証明書」が必要になります。
この場合も、証明書の発行を受けてその相続人に渡しましょう。
相続放棄申述書を作成するときの注意点
相続放棄は被相続人の財産を一切取得できなくなるという重要な手続きなので、申述人本人の意思で申述することが重要です。
ただ、申述人が高齢であったり病気であったりして自分では申述書に記載できないこともあります。
そのような場合には、親族などが代筆で申述書を作成することができる場合もありますが、以下の3つのポイントに注意が必要です。
相続放棄申述書の代筆は問題なし
そもそも代筆というのは、本人に代わって文字を書くというだけのことです。
したがって、本人の意思に従って相続放棄申述書が作成されている限り、代筆でも問題はありません。
ただし、家庭裁判所は本当に本人の意思で相続放棄の申述をしているのかどうかをチェックするので、代筆した理由や事情は適切に説明できるようにしておきましょう。
本人が認知症の場合は代筆不可
申述する本人が認知症などで判断能力が低下している場合は、親族が代筆して申述書を提出しても無効になります。
この場合は、本人のために成年後見人を選任した上で、成年後見人が申述書を作成・提出します。
成年後見人は本人の法定代理人なので、委任状は不要です。
相続放棄申述書には提出期限がある
相続放棄申述書には提出期限があり、相続放棄は基本的に自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以上経過していると認められません。
3か月を過ぎると相続を承認したことになってしまうため、相続放棄申述書の申述の理由に記載する日付には注意が必要です。
もし3か月を過ぎてから借金の存在が分かった場合は、相続放棄申述書の書き方について司法書士または弁護士に相談するのがおすすめです。
また、やむをえない事情により3か月以内に相続放棄の判断が難しい場合は、家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申請することで、期限を3か月伸ばすことも可能ですので専門家に相談しましょう。
まとめ
相続放棄申述書とは、相続放棄をするために家庭裁判所に提出する書類です。
相続放棄申述書の書き方は難しくありませんが、準備には手間がかかることもあります。
戸籍謄本などの書類が大量に必要となるケースも多いですし、相続財産の調査も大変でしょう。
とはいえ、戸籍謄本の収集は弁護士や司法書士などの専門家に任せることができますし、相続財産の調査も遺産分割協議の場合とは異なり、できる範囲で行えば十分です。
また、弁護士に依頼すれば、代理として相続放棄の手続きをしてもらうことが出来ます。
弁護士に依頼する場合は、本人から弁護士への委任状を作成する必要がありますが、弁護士が代理人として相続放棄申述書を作成し家庭裁判所へ提出してくれます。
どうしても期限内に申述するのが間に合わない場合は、期限を延長する手続きもあります。
準備が大変な場合や、期限に間に合うか不安な場合は、お早めに弁護士などに相談してみた方が良いでしょう。