この記事でわかること
- 遺族年金を受給することができる要件を知ることができる
- 70歳以上・80歳以上の人がもらう遺族年金の計算方法がわかる
- 遺族年金と老齢年金を同時にもらうことができるかがわかる
遺族年金を受給している人の中には、まだ自分の年金をもらうことができない人も多くいることでしょう。
ただ、遺族年金を受給しているうちに、その人自身が老齢年金を受給できる年齢に達することとなります。
この場合、遺族年金をもらい続けることができるのか、疑問に感じるのではないでしょうか。
そこで、70歳以上あるいは80歳以上の人が遺族年金を受給する際の計算方法について解説します。
また、老齢年金と遺族年金をあわせて受給することができるかについても、解説していきます。
目次
遺族年金を受給するための要件とは
遺族年金を受給するための要件については、遺族基礎年金と遺族厚生年金とで違いがあります。
そこで、それぞれの要件について確認しておきましょう。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金の受給要件については、亡くなった人に関する要件と、遺族に関する要件があります。
どちらの要件も満たしていなければ、遺族基礎年金を受け取ることはできません。
亡くなった人についての要件
亡くなった人が、以下のいずれにも該当しない場合には、遺族基礎年金を受け取ることはできません。
- (1) 国民年金の被保険者である間に死亡した場合
- (2) 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡した場合
- (3) 老齢基礎年金の受給者であった人が死亡した場合
- (4) 保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間があわせて25年以上ある人が死亡した場合
遺族についての要件
遺族基礎年金がもらえるのは、以下の人たちです。
- 死亡した人によって生計を維持されていた子どものいる配偶者
- 死亡した人によって生計を維持されていた子ども
遺族基礎年金を受給することができる遺族とは、死亡した人に生計を維持されていた配偶者または子どもを言います。
ただ、すべての配偶者や子どもが遺族基礎年金を受け取ることができるわけではなく、一定の要件が定められています。
このうち配偶者については、子どもと生計を同じくしていることが要件とされます。
ここで言う配偶者には法律上の配偶者だけでなく、事実上婚姻関係にある人も配偶者に含まれることとされています。
一方、ここで言う子どもについては、配偶者の連れ子のような事実上の子どもは認められません。
亡くなった人の実子か、法律上の養子であることが必要です。
配偶者がいなければ、子どもが遺族基礎年金の受給者となります。
子どもの要件は、死亡した人に生計を維持されていた18歳到達年度の末日を過ぎていない子どもとされています。
また、その子どもが1級または2級の障害者である場合は、20歳未満であることが要件となります。
なお、いずれの場合も未婚であることが要件となっています。
生計を維持されていた配偶者または子どもという要件については、具体的な金額が設定されています。
年収850万円以上、または年間所得655万5000円以上の収入を将来にわたって有する者以外を指すこととされています。
遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金の受給要件も、亡くなった人に関する要件と、遺族に関する要件の両方を満たす必要があります。
遺族基礎年金の場合とは要件に違いがあるため、その内容を区別して確認しておきましょう。
亡くなった人についての要件
亡くなった人が以下のいずれかに該当しなければ、遺族厚生年金を受給することはできません。
- (1) 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した場合
- (2) 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡した場合
- (3) 1級・2級の障害厚生年金を受給している人が亡くなった場合
- (4) 老齢厚生年金の受給者であった人が亡くなった場合
- (5) 厚生年金保険の保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間があわせて25年以上ある人が亡くなった場合
遺族についての要件
遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した人によって生計を維持されていた家族のうち以下に該当する人です。
- 妻(年齢の要件なし。ただし30歳未満で子供がいない場合の支給期間は5年間のみ。)
- 夫(遺族基礎年金を受給しており、生計を維持していた人が亡くなった時に55歳以上である場合。支給開始は60歳から。)
- 子ども(18歳になって最初に迎える3月末までの期間。障害等級1級または2級に該当する場合は20歳になるまで。)
- 父母(生計を維持していた人が亡くなった時に55歳以上である場合。なお支給開始は60歳から。)
- 孫(18歳になって最初に迎える3月末までの期間。障害等級1級または2級に該当する場合は20歳になるまで。)
- 祖父母(生計を維持していた人が亡くなった時に55歳以上である場合。支給開始は60歳から。)
具体的には、妻、子どもや孫、55歳以上の夫・父母・祖父母が受給者となる可能性があります。
妻については細かな要件はありません。
原則として、生計を維持されていたという事実があれば、遺族厚生年金が支給されます。
遺族基礎年金のように、子どもと生計を同じくするという要件はないことから、子どもがいなくても支給されるのです。
一方、子どもについては、遺族基礎年金の受給者と同じように、年齢等の要件が定められています。
死亡した人に生計を維持されていた18歳到達年度の末日を過ぎていない子どもで、未婚であることが要件とされています。
また、その子どもが1級または2級の障害者である場合は、20歳未満で未婚であることが要件となります。
また、夫や父母、祖父母については、すべて55歳以上であることが要件とされます。
なお、対象者となる要件は55歳以上となっていますが、実際に支給が開始されるのは60歳からとされています。
70歳以上の遺族年金がもらえる額と計算方法について
遺族年金を受給するための要件は、遺族基礎年金・遺族厚生年金のそれぞれで定められています。
そして、この要件を満たせば、亡くなった人が70歳以上であっても、受給者が70歳以上であっても、遺族年金をもらえるのです。
そして、受給できる遺族年金の額は、70歳以上であっても70歳未満であっても変わりません。
それでは、遺族年金の計算方法はどのようになっているのでしょうか。
遺族基礎年金の計算方法
配偶者が受け取る遺族基礎年金の金額は、令和2年4月分以降で年額781,700円となっています。
また、子の加算額として1人目、2人目はそれぞれ224,900円、3人目以降は75,000円が支給されます。
たとえば、配偶者と子ども3人がいる場合、1年間の遺族基礎年金の支給額は以下のとおりです。
781,700円+224,900円×2+75,000円=1,306,500円
なお、子の加算の対象となる子どもは、遺族基礎年金の受給資格の判定をする場合と同じです。
18歳になった年度の3月31日までか、20歳未満で障害等級1級または2級の状態であり、婚姻していないことが要件となります。
なお、子どもが18歳になった年度の3月31日を過ぎると、子の加算の対象から自動的に外されます。
また、配偶者がすでに亡くなっており、子どもが遺族基礎年金を受給する場合は、子の加算は第2子以上について行うこととなります。
遺族厚生年金の計算方法
遺族厚生年金の金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3とされています。
ところで、老齢厚生年金の受給額については、人によってその額が異なりますが、計算方法が決められています。
老齢厚生年金には報酬比例部分と定額部分があります。
このうち報酬比例部分とは、厚生年金保険加入期間における報酬と加入期間に応じて計算される金額を言います。
平成15年3月以前に加入していた期間については、「平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの加入月数」で計算されます。
平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を、加入期間の月で割った金額です。
また、平成15年4月以降に加入している期間については、「平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以降の加入月数」で計算します。
なお、平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額の合計を、加入期間で割った金額をいいます。
また、遺族厚生年金を受給する妻は、中高齢寡婦加算を受給できる場合があります。
本人が40歳以上で、18歳到達年度の末日まで(1級・2級の障害がある場合は20歳未満)の子どもがいない妻に対して65歳まで支給されます。
18歳未満の子どもがいるために遺族基礎年金を受給していた場合、遺族基礎年金が支給停止となり中高齢寡婦加算が支給されます。
中高齢寡婦加算の額は、令和2年度では年額586,300円となっています。
また、65歳を超えると中高齢寡婦加算に代わり、経過的寡婦加算が遺族厚生年金に加算されます。
経過的寡婦加算の額は、妻の生年月日により段階的に定められています。
80歳以上の遺族年金の受給額はどのくらいか
遺族年金を受給する際に気になるのは、受給額が一体どれくらいになるかということです。
そこで、引き続き遺族年金を受給する場合の受給額について考えてみます。
80歳以上の人が遺族年金を受給する場合も、遺族年金の金額は70歳以上の人が受給する場合で説明した内容と変わりはありません。
遺族基礎年金の受給額は、「781,700円+子の加算額」で計算されます。
生計を維持されていた子どもがいなければ、遺族基礎年金を受けることができない点も変わりはありません。
また、遺族厚生年金の計算方法も変わりなく、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。
特に遺族基礎年金の受給対象となるためには、原則18歳未満の子どもがおり、その生計を維持されている必要があります。
80歳以上の人が亡くなった場合の遺族年金については、生計を維持されていた子どもがいないケースが多くなります。
このような場合には、配偶者や子どもは遺族基礎年金を受け取る権利はなく、遺族厚生年金だけを受給することとなります。
遺族厚生年金の金額を知る方法
現在、年金を受け取っている人であれば、年間の老齢厚生年金の額はおおよそ計算ができるはずです。
しかし、現時点で年金の受給ができる年齢に達していない場合には、遺族厚生年金がいくらになるのか、まったく手掛かりがありません。
そこで活用をおすすめしたいのが、日本年金機構が開設している「ねんきんネット」です。
これは、過去に納付した年金保険料の金額などの記録を照会できるものです。
また、今後どれくらいの年金保険料を納付すると、いくらくらいの受給額になるかがシミュレーションできます。
このサイトを利用すれば、今現在、そして将来的に、遺族厚生年金の額がどれくらいになるのかを想定しておくことができるのです。
遺族年金と老齢年金は両方一緒に受給可能か
遺族年金を受給する権利が発生した人の中には、すでに自身の老齢年金を受給している人もいます。
また、遺族年金をすでにもらっている人が、新たに老齢年金の受給年齢に達することもあります。
このような場合、年金をどのようにもらうこととなるのでしょうか。
遺族年金と老齢年金を同時にもらうことは可能かどうか、確認していきましょう。
遺族基礎年金をもらう場合
遺族基礎年金を受給する場合は、老齢年金と一緒に受給することはできません。
したがって、老齢年金か遺族基礎年金かのいずれかを選択する必要があるのです。
年金を受給する方が自営業者だった場合、老齢基礎年金だけを受給することとなります。
この場合、老齢基礎年金の額より遺族基礎年金の額の方が大きくなることが多いため、遺族基礎年金を選択する方が有利になります。
一方、会社員や公務員だった方は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受給することとなります。
この場合、ほとんどのケースで遺族基礎年金の額より、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額の方が大きくなります。
そのため、老齢年金を選択する方が有利になると考えられます。
ただし、遺族厚生年金をもらう場合はさらに考えなければならないことがあります。
次の項目で、その内容を解説していきます。
遺族厚生年金をもらう場合
遺族厚生年金を受給する時には、老齢年金と両方をもらえる場合とそうでない場合があります。
そのため、様々なケースを想定して考える必要があるのです。
もっとも単純なケースとして、遺族厚生年金と老齢基礎年金は、両方同時にもらうことができます。
そのため、遺族厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせで年金を受給する人がいます。
一方、遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金は両方を同時にもらうことはできません。
なお、特別支給の老齢厚生年金とは、60歳から64歳までの間にもらえる老齢厚生年金のことです。
通常は、遺族厚生年金の方が大きな金額になると思われるため、そちらを選択する方が有利です。
また、65歳以降に受け取る老齢厚生年金は、遺族厚生年金と一緒にもらうこととなります。
この場合、自身が収めた分の老齢厚生年金が優先支給され、老齢厚生年金との差額分のみが遺族厚生年金として支給されることになります。
自身で納めた保険料が反映しないという不公平感を排除するため、以下のいずれか大きい方の金額が遺族厚生年金の額になります。
- (1) 亡くなった方の老齢厚生年金額の4分の3
- (2) 亡くなった方の老齢厚生年金額の2分の1+自身の老齢厚生年金額の2分の1
遺族年金で悩んだら税理士への相談がおすすめ
遺族年金について悩んでいるなら、税理士への相談がおすすめです。
知識がない状態で判断をして、手続きをすると損する可能性があります。
ここからは税理士に相談するメリット・気になる費用について紹介します。
- 状況を見て適切なアドバイスをくれる
- 相続税の対策もできる
- まずは初回の無料相談を利用
詳しくみていきましょう。
状況を見て適切なアドバイスをくれる
遺族年金の受給は、細かな条件・年齢によって、受給できるかどうか決まります。
まず遺族年金自体に、遺族基礎年金・遺族厚生年金の2種あり、それぞれ対象者と受給条件があります。
すべての条件をチェックしたうえで、受給額がもっとも大きくなるように手続きをするのは難しいかもしれません。
そこで専門家である税理士に依頼すれば、状況を見たうえで「どうすれば年金受給額が多くなるのか?」といったアドバイスをもらえます。
知識がない状態で手続きを進めてしまうと、受給できたはずの年金を見落としてしまう可能性もあり危険です。
「なるべく損をしたくない」という人は、税理士への相談がおすすめです。
相続税の対策もできる
遺族年金の受給を検討しているなら、相続が始まっているかもしれません。
相続税は他の税金に比べて、税率が高く設定されているため、節税をしないと損をします。
また相続では特例が多く認められており、うまく特例を活用することで、大幅な節税が期待できます。
しかし相続の特例・節税方法も条件が複雑だったり、そもそも手続きの期限が短かったりします。
さらに相続税が発生した場合には申告が必要になるため、分からないまま放置していると、ペナルティとして通常よりも高い税金が課せられるかもしれません。
遺族年金の受給に合わせて、相続でも悩んでいるなら、税理士への相談がいいでしょう。
税理士に相談することで、相続の状況をふまえた効果的な節税方法が分かります。
まずは初回の無料相談を利用
「税理士に依頼したいけど、相続税申告にかかる税理士費用が気になる」という人もいるでしょう。
費用が気になる人は、初回の無料相談がおすすめです。
多くの税理士が初回の相談を無料で受け付けています。
まずは無料相談を利用して、遺族年金について相談してみましょう。
相談をしてみて「この税理士さんに依頼したい」と思えば、そこで依頼します。
無料の範囲内であれば、依頼しなかったとしても費用もかからないため、気軽に相談できるのもメリットです。
まとめ
遺族年金を受給するためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。
これらの条件を満たしているかどうかを自分で判断することは、それほど難しくはないかもしれません。
しかし、自分の老齢年金と遺族年金を同時に受け取る際には、どの年金を受け取ることができるのか判断に迷うかもしれません。
また、これらの年金の受給額がいくらになるかを計算することは、非常に困難なことです。
ねんきんネットや日本年金機構の窓口での手続きの際に、その内容をよく確認するようにしましょう。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。
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