この記事でわかること
- 原則として遺族年金と自分の年金のいずれか一方しかもらえない
- 遺族年金と自分の年金の両方をもらえるケースがある
- 遺族年金と自分の年金のいずれを選択するといいのかがわかる
遺族年金をもらっている人が自分の年金を受け取れる年齢になると、自分の年金も遺族年金と一緒にもらえるのではないかと考えるのではないでしょうか。
しかし、受け取れる年金の種類は1種類とされており、遺族年金と自分の年金を受け取ることはできません。
そこで、いずれの年金を受給するのか、その選択の方法をご紹介します。
ただ、年金の種類によっては、遺族年金と自分の年金の両方を受け取れる場合もあります。
複雑な遺族年金と自分の年金の関係を、詳しく解説していきます。
目次
もらえる年金は原則1人につき1種類
遺族年金を受け取っている人が歳を重ねると、自分の年金を受け取れる年齢になります。
ただし、受け取ることができる公的年金は1種類と定められています。
そのため、遺族年金と自分の老齢年金を同時に受給することができないことがあります。
日本の年金の制度は、遺族年金、老齢年金、障害年金に分類することができます。
このうち遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
また老齢年金には、老齢基礎年金、老齢厚生年金と特別支給の老齢厚生年金があります。
障害年金にも、障害基礎年金と障害厚生年金があります。
それぞれの年金は、大きく分けて基礎年金と厚生年金に分かれていることがわかります。
基礎年金として受け取ることができるのは、原則として遺族年金と老齢年金のいずれか1種類です。
また、厚生年金として受け取れるのも、原則として遺族年金か老齢年金のいずれかを選択することとなります。
遺族年金と自分の年金を両方もらえるケース・受給額
原則として、遺族年金と自分の年金のいずれかを受給するものとされています。
しかし、年金の種類とその組み合わせによっては、遺族年金と自分の年金の両方をもらえることがあります。
具体的にどのようなケースがあるのか、ご紹介していきます。
専業主婦・主夫や個人事業主の場合
専業主婦・主夫であった方や個人事業主として働いていた方の場合、両方の年金を受け取れるのは次のようなケースです。
・遺族厚生年金を受け取り、遺族基礎年金と老齢基礎年金のいずれかを選択する
亡くなった人が会社員や公務員であった場合、遺族厚生年金を受け取ることができます。
その上で、遺族基礎年金と自分の老齢基礎年金のいずれかを選択して受給することができます。
厚生年金 | 基礎年金 (国民年金) |
|
---|---|---|
遺族年金 | 〇 | △ |
老齢年金 | △ |
ずっと専業主婦・主夫や個人事業主だった人は、自身の老齢厚生年金を受け取ることはできません。
そこで、厚生年金については遺族年金の一択となります。
その上で、基礎年金については遺族年金と老齢年金のいずれかを選択することができます。
なお遺族基礎年金は、子供の有無や子供の年齢により、受給要件を満たさない場合もあります。
受給要件を満たさない場合は、老齢基礎年金を選択することとなります。
会社員や公務員として働いた経験がある人の場合
過去に会社員や公務員として働いた経験が1ヶ月でもある人は、遺族年金と老齢年金のいずれかを選択する必要はありません。
老齢厚生年金に遺族厚生年金の額を上乗せする制度があるため、以下のような形で両方の年金を受給できます。
・自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取り、遺族厚生年金の上乗せを受ける
亡くなった人が会社員や公務員であった場合、遺族厚生年金を受け取ることができます。
また、自分の老齢厚生年金も受給できるため、以下のような形で年金を受給することとなります。
厚生年金 | 基礎年金 (国民年金) |
|
---|---|---|
遺族年金 | ※ | |
老齢年金 | 〇 | 〇 |
※遺族厚生年金の額が老齢厚生年金の額を上回る部分のみ受給できる
遺族厚生年金のうち、自分の老齢厚生年金に相当する部分の金額は、その支給が停止されます。
そのため、遺族厚生年金と老齢厚生年金の合計額が支給されるわけではないことに注意が必要です。
配偶者が亡くなった場合に支給される65歳以降の遺族厚生年金は、以下のうち大きい方の金額となります。
- ①遺族厚生年金の年金額
- ②遺族厚生年金の3分の2と、自分の老齢厚生年金の2分の1を足した金額
自分の老齢厚生年金の額が大きな人は、①より②の金額の方が大きくなることがあります。
この場合、②の算式で計算された金額が、厚生年金として支給される金額となります。
遺族年金と自分の年金はどちらを選ぶべき?
亡くなった人が会社員や公務員としての経験がない場合、遺族厚生年金を受給することはできません。
この場合、遺族年金と老齢年金の両方を受給することはできないため、いずれかを選択することとなります。
そこで、どのような観点で選択するといいのか、解説します。
受給額で決める場合
遺族厚生年金を受給できない場合、遺族年金として受け取るのは遺族基礎年金のみとなります。
遺族基礎年金と老齢基礎年金のいずれか大きい方を選択し、受給することとします。
自分の年金が老齢基礎年金だけの場合、比較するのは遺族基礎年金と自分の老齢基礎年金の額です。
令和5年4月分からの遺族基礎年金の金額は、年額795,000円+子の加算額となります。
子の加算額は、1人目と2人目の子の分としては、228,700円となります。
また、3人目以降の子の分としては、それぞれ76,200円となります。
一方、令和5年4月分からの老齢基礎年金の額は年額795,000円となります。
したがって、遺族基礎年金と老齢基礎年金を比較した場合、必ず遺族基礎年金の受給額が大きくなります。
一方、自身が会社員や公務員として働いた経験がある場合は、自分の年金として老齢厚生年金を受け取ることができます。
この場合、自分の年金は老齢厚生年金+老齢基礎年金、遺族年金としては遺族基礎年金となります。
そして、この両者を比較していずれか金額の大きな方を受給することとします。
手取額で決める場合
遺族年金と自分の年金のうち、遺族年金についてはその全額が非課税となります。
そのため、遺族年金の金額には少なくても税金がかからないため、手取額としては逆に大きくなる場合もあります。
遺族年金以外の老齢年金については、雑所得として課税されます。
公的年金等に係る雑所得の計算には控除額が設けられており、基礎控除の金額とあわせると一定金額までは所得税が発生しません。
具体的には、60歳から64歳までの人が年金を受給した場合は、年間108万円以下であれば所得税はかかりません。
また、65歳以上の人が年金を受給した場合は、年間158万円以下であれば所得税はかかりません。
この金額を超えた場合や他に所得がある場合は、所得税が発生します。
ただし、扶養控除など他の所得控除の適用によっては、さらに所得税がかからない金額が高くなることもあります。
受給者自身の状況を考慮して、いずれが有益になるか検討するようにしましょう。
まとめ
年金の制度は、年金を受給する段階になって考えても、非常にわかりにくい制度となっています。
遺族年金と自分の年金が関わると、さらにその内容は複雑になり、どのようにしたら有益になるのかは人それぞれです。
ただ、遺族年金と自分の年金の両方を受け取ることができれば、生活が楽になる可能性が高くなります。
両方の年金を受け取れる場合に該当しないか、自身の状況を当てはめて考えてみましょう。
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