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最終更新日:2023/2/10

不動産管理会社の事業承継方法と注意点【事業承継税制は活用できる?】

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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不動産管理会社の事業承継方法と注意点【事業承継税制は活用できる?】

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この記事でわかること

  • 事業承継の概要や具体的な方法を知ることができる
  • 不動産管理会社が事業承継する際の注意点について知ることができる
  • 不動産管理会社も事業承継税制を使える方法がわかる

個人で不動産を所有する人の中には、不動産管理会社を設立して税金対策をしている方もいるでしょう。

この不動産管理会社は、個人で保有している不動産の管理業務を行うことや、個人から不動産を譲渡されることもあります。

不動産管理会社は経営者が亡くなっても存続しますが、会社を引き継ぐ人がいなければ会社を運営することができなくなってしまいます。

ここでは、不動産管理会社の事業承継の方法と、事業承継を行う際の注意点について解説していきます。

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営者が自身の経営する会社や、経営する会社の事業を後継者に引き継ぐことです。

事業承継を行うと、自身で保有する会社の株式を後継者に譲渡しなければなりません。

不動産管理会社が不動産を所有している場合は、会社の株式を承継すると、そのまま会社ごと後継者が引き継ぐこととなります。

また、不動産管理会社は不動産管理業務を行っているため、その業務をスムーズに引き継がなければなりません。

先代経営者は第一線を退き、後継者が新たな経営者となるだけでなく、その経営環境をそのまま引き継ぐことが重要です。

不動産管理会社の事業承継方法は3種類

不動産管理会社の事業承継を行う場合、どのように事業承継を行うといいのでしょうか。

誰が事業承継を行うかにより、大きく3つの事業承継の方法があるため、その内容を確認しておきましょう。

親族が承継する

中小企業の事業承継の方法として、これまで最も一般的とされてきた方法です。

親族が後継者となって会社を引き継ぎますが、中でも特に子どもが後継者となることが多いです。

子どもが事業承継を行うことが最も多かった理由は、子どもは法定相続人であることが挙げられます。

会社の経営者が、会社の株式を所有したまま亡くなった場合、その株式は法定相続人が相続することとなります。

配偶者や子どもがいる人であれば、その配偶者や子どもが法定相続人となり、会社の株式を相続します。

世代交代を行うためには、子どもが会社の株式を相続するのが、最も自然な流れとなります。

先代経営者が健在の間に相続対策を行っていなかった場合には、子どもが相続するより他に選択肢がないということもできます。

一方、子どもがいても会社の経営に関係がない場合、あるいは子どもがいない場合には、他の親族が後継者となることもあります。

たとえば、甥や姪、あるいは自身の兄弟などに会社を引き継いでもらう場合です。

会社の経営に関わる親族が子ども以外にいる場合は、先代経営者が健在のうちに後継者を決めておきます。

この時、会社に関係のある人だけでなく、他の親族にもできる限り理解してもらえるような状況を作っておくことをおすすめします。

そうすることで、事業承継を実行した時、あるいは相続が発生した時のトラブルを防ぐことができます。

従業員が承継する

会社の業務や経営の状況を理解している従業員に、会社の事業承継を行うこともできます。

会社内の優秀な人材に経営を任せることができ、取引先との関係を構築する必要もないため、会社の業務はスムーズに引き継げます。

ただ、会社の株式をどのように後継者となる従業員に譲渡するかが、大きな問題となります。

会社の株式を購入してもらうか、あるいは会社の株式を贈与するか、いずれかの方法となるでしょう。

いずれの場合も、従業員にとっては金銭的な負担が発生することから、誰でも後継者になれるわけではありません。

また、子どもなどの相続人がいる場合、その人が会社の株式を引き継ぐつもりでいる場合があります。

従業員が会社の株式を引き継ぐと、相続人は自身が相続すると思っていた財産を引き継げないこととなり、揉める原因となることもあります。

第三者が会社を引き継ぐ

会社の経営権を会社に全く関係のない第三者に譲ることで、その第三者に会社の経営を引き継いでもらう方法もあります。

親族の中に会社の経営を行うことのできる人がいない場合、あるいは従業員に適任者がいない場合があります。

そこで、会社の経営に興味のある第三者が会社の株式を取得し、その会社の経営を引き継ぐことも候補となります。

以前は、第三者が会社の経営を引き継ぐのは、大企業の吸収合併などごく一部のケースに限られていました。

しかしここ数年、事業承継の仲介業者が数多く現れ、隠れたニーズを発掘しています。

そのため、会社を売却したい人と、会社を購入したい人のマッチングが数多く実現しています。

不動産管理会社が事業承継するときの注意点

不動産管理会社の事業承継を行う際には、どのような点に注意する必要があるでしょうか。

不動産管理会社という業種特有の注意点もあるため、事前に確認しておきましょう。

会社の株価評価が複雑になる

会社の事業承継を行う際には、会社の株式について評価額を計算しなければなりません。

会社の株式の評価額を求めるのは複雑な計算となるため、専門家でなければ簡単ではありません。

また、不動産を所有している不動産管理会社の場合、その所有する不動産の評価額も計算しなければなりません。

建物や土地の評価額の計算は、その利用状況に合わせて行う必要があり、複雑な計算になることがあります。

計算方法がわからない場合には、専門家に依頼するのが確実な方法です。

後継者を誰にするか揉める

会社の事業承継で後継者になるのは、子どもとは限りません。

子どもが事業承継するのであれば、周囲の人の理解も得やすいのですが、そうでない場合は注意が必要です。

何故その人を後継者にしたのかをきちんと説明して、周囲の人の理解を得るようにしましょう。

もし先代の経営者が後継者を選んだのであれば、そのことが相続時や会社の経営に悪影響を及ぼさないようにする必要があります。

特に先代経営者の子どもがいる場合、その人は法定相続人であることから、すべての財産を相続する可能性のある人となります。

しかし、相続人以外の人に会社の株式を譲ることとなれば、そのことが大きなトラブルの原因となることも考えられます。

会社の後継者を決定した時には、早めにそのことを伝え、理解を得られるようにしなければなりません。

事業承継税制が適用できない場合がある

会社の株式を後継者に贈与・相続する場合、後継者には大きな税負担が発生します。

しかし、後継者はこれから会社の経営に従事する人であり、会社を引き継いだ時点で多額の税金を支払うことは難しいでしょう。

そこで、事業承継税制が設けられ、後継者の税負担がほとんど発生しないような事業承継が行えるようになっています。

しかし不動産管理会社の場合、資産保有型あるいは資産運用型の会社として、事業承継税制の対象に含まれないことがあります。

事業承継税制が適用できない場合には、後継者に会社の株式を贈与すると、多額の贈与税が発生する可能性があります。

不動産管理会社で事業承継税制を活用する方法

不動産管理会社は事業承継税制の対象外とされ、後継者に多額の税金が発生することがあります。

しかし要件をクリアすれば、事業承継税制の適用対象に含まれるケースがあるため、大きく税負担が変わってきます。

では、どのような要件をクリアすると、事業承継税制が適用されるのか、確認しておきましょう。

資産保有型会社に該当しないようにする

資産保有型会社とは、有価証券や自社で使用していない不動産、預貯金などの比率が、全資産の70%以上となる会社です。

賃貸用の不動産を保有している会社は、資産保有型会社になる可能性が高く、これを避けることは難しいでしょう。

まずは、資産保有型会社に該当するか否かを確認しましょう。

資産運用型会社に該当しないようにする

資産運用型会社とは、特定資産の運用により得られる収入金額が、すべての収入の75%以上となる会社です。

家賃収入があると、その収入は特定資産からの収入となるため、資産運用型会社に該当する可能性があります。

不動産管理会社で他の収入を得るようにすれば、資産運用型会社に該当するのを避けられる可能性があります。

事業の実態を有するようにする

資産保有型会社または資産運用型会社に該当しても、事業の実態を有する会社であれば、事業承継税制の対象になります。

事業の実態の要件としては以下の3つがあり、その全てを満たさなければなりません。

  • 3年以上継続して事業を行っている
  • 親族以外の従業員が5人以上いる
  • 事業所を所有または賃貸している

特にネックになるのは②の従業員に関する要件でしょう。

生計を一にする親族以外の従業員が5人以上いなければならず、その判定は社会保険への加入が基準とされています。

これだけの人数の従業員を雇用する負担は大きいことから、事業実態要件をクリアするのは簡単ではありません。

まとめ

個人で不動産を所有する方が不動産管理会社を設立すると、その会社の経営に従事しなければなりません。

また、その会社を後継者に引き継ぐ際には、誰に引き継ぐのか、どのような方法で行うのか、決めておく必要があります。

会社の事業承継は、相続と同じようにたとえられることもありますが、それ以上に先代経営者の役割が重要です。

スムーズな事業承継を実現するため、できることは何でもしておくという気持ちで準備をしておきましょう。

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