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最終更新日:2023/4/28

相続税対策に不動産管理会社(資産管理会社)を設立するメリット・デメリットまとめ

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【ベンチャーサポート相続税理士法人】

相続税対策に不動産管理会社(資産管理会社)を設立するメリット・デメリットまとめ

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この記事でわかること

  • 不動産管理会社とはどのような業務を行う会社か知ることができる
  • 不動産会社を活用すると相続対策に有利になることがわかる
  • 相続対策する際に不動産会社を利用するデメリットがわかる

不動産などの財産を多く所有している人の中には、将来の相続に対して漠然とした不安を感じている方も多いでしょう。

しかし、相続税の負担は簡単には減らせないと考え、結果的に何も対策していない方も少なくありません。

しかし、不動産管理会社(資産管理会社)を利用すると、相続対策に大きなメリットが得られる場合があります。

不動産管理会社とはどのような会社なのか、デメリットはないのかといった点も含めて解説していきます。

不動産管理会社(資産管理会社)とは

不動産管理会社(資産管理会社)とはどのような会社なのか、疑問に思われる方もいることでしょう。

また、多くの方は、不動産管理会社が相続対策に役立つ理由について、正確には理解していないのではないでしょうか。

そこで、不動産管理会社とはどのような会社なのか、といった点から解説していきます。

不動産管理会社(資産管理会社)の概要

不動産管理会社(資産管理会社)とは、不動産などの財産の管理を行うためだけに設立される会社です。

商品の販売やサービスの提供といった、多くの会社が行う事業活動は行いません。

会社を設立した後、もともと個人で所有していた不動産などの財産をその会社が所有する形態に変えます

そうすると、不動産などの個人の財産は会社の財産となります。

一方、会社の株式が新たな財産として個人の手元に残る形となります。

不動産管理会社が節税になる理由

不動産管理会社が節税になるのは、相続の際に課税の対象になる財産の種類が異なるためです。

不動産管理会社を設立する前は、個人で多くの不動産を所有している場合、その不動産すべてが相続税の課税対象となります。

また不動産以外にも、預貯金や有価証券など個人で所有する財産があるため、それらをすべて合計して相続税の計算が行われます。

一方、不動産管理会社を設立して個人の不動産が会社のものになると、不動産については相続税の対象にはなりません。

その代わり、個人で所有する不動産管理会社の株式が、相続税の課税対象になります。

不動産管理会社の株式の相続税評価額を計算する際は、その会社が所有する不動産の相続税評価額を計算し、株価に反映させます。

会社の株価を求める際に、法人税相当額を減額して評価額を計算するため、会社で所有する不動産の評価額は低くなります。

そのため、個人で不動産を所有している場合と比較すると、不動産管理会社が所有していることで相続税を減らすことができます。

不動産管理会社の種類

不動産を管理するために設立される会社には、その管理の方法によって3つの種類があります。

  • ①管理委託方式
    不動産物件の管理業務を行う会社を設立し、個人で所有する不動産の管理業務を行います。
  • ②サブリース方式
    個人で所有する不動産を会社が一括で借り上げ、会社が入居者から家賃収入を得ます。
  • ③不動産所有方式
    個人で所有していた不動産の名義を法人に変更し、家賃収入を法人が得ます。

これらはいずれも、所得税の節税を行うのに有効な方法です。

しかし、相続税の節税を考えた場合には、③不動産所有方式でなければ節税効果はありません

①管理委託方式や②サブリース方式では、不動産の所有者は個人のままとなり、不動産が相続税の課税対象になってしまうためです。

所得税の節税を考える方は、相続税の節税も考慮して不動産管理会社の種類を選ぶ必要があります。

相続対策に不動産管理会社を活用するメリット

相続税対策に不動産管理会社を活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

メリットはいくつもあるので、その内容を確認しておきましょう。

相続税の負担が軽減される

相続税は、個人で所有するすべての財産が計算の対象になります。

不動産を所有している場合は、その不動産が相続税の対象になり、会社を設立した後はその会社の株式が相続税の対象になります。

不動産を会社が所有している場合、不動産の評価額を基に会社の株価が計算されるため、単純に相続税が減るわけではありません。

ただし、会社の株価を計算する際には、不動産の評価額からさらに減額されるため、株価は低くなります

その結果、不動産を個人で所有する場合より、相続税の負担を軽減することができます。

相続財産を減らせる

賃貸不動産を個人で所有していると、家賃収入はその所有者自身のものとなります。

不動産の所有者は家賃収入として現金を受け取ることとなるため、その分財産としての現金も増えることとなります。

賃貸収入として受け取った現金は、将来的に相続財産として相続税の課税対象となります。

そのため、所有する不動産以外にも多くの財産が相続税の対象となり、相続税の負担が増えてしまう可能性があります。

不動産管理会社が賃貸不動産を所有している場合、家賃収入はすべてその不動産管理会社のものとなります。

そうすると、個人には現金収入が入ってこないので個人で所有する財産の額を減らすことができ、相続税の負担が軽減されることとなります。

相続人が納税資金を準備できる

不動産管理会社を設立すると、その会社の役員を選任しなければなりません。

役員になるのは誰でもいいため、それまで不動産を所有していた人でなくても構いません。

そこで、将来的に相続が発生した時に相続人になる人が役員となり、役員報酬を受け取るようにします。

こうすることで、相続人は新たな収入を得ることができ、なおかつ相続税の納税資金を準備しておくことができます。

遺産分割がしやすくなる

前述したように、不動産を所有している人が亡くなると、所有していた不動産はすべて遺産分割の対象となります。

この時、1つの不動産を物理的に2つ以上に分けることが、そもそもできない場合もあります。

また、複数の相続人で共有にしてしまうと、後から大きなトラブルになってしまうことがあるので、避けるのが無難です。

しかし、これらを考慮した上で、すべての相続人が納得できる遺産分割を行うことは、非常に困難が伴います。

そこで、不動産管理会社が不動産を所有し、その会社の株式を相続人が相続する形とします。

こうすることで、不動産が相続の対象にならない上に、不動産の分割や共有といった面倒なことに対応する必要がなくなります

さらに、相続分に応じて会社の株式数を調整すればよく、公平な遺産分割を行いやすくなります。

不動産の相続登記が不要になる

不動産を個人で所有しており、その人が亡くなると、不動産の登記を変更しなければなりません。

相続が発生した時に所有者を変更することを相続登記といい、相続人は必ず行わなければならないこととされています。

ただ、相続登記は非常に費用がかかるため、相続人にとってあまりメリットを感じられないものと言えます。

不動産管理会社が不動産を所有している場合、不動産の所有者は会社であるため、相続登記は必要ありません

また会社の株式を相続する際は、相続登記のように費用の掛かる手続きは必要ありません。

相続登記がなくなると、相続人にとっては費用の負担が軽減され、相続の手続きも楽になるため、大きなメリットと言えます。

相続対策に不動産管理会社を活用するデメリット

不動産管理会社を設立して相続対策を行う場合、必ずしもメリットしかないわけではありません。

中には、デメリットと感じられるようなこともあるため、その内容を確認しておきましょう。

不動産管理会社の運営に手間がかかる

不動産管理会社を新たに設立するということは、その会社について税金の負担が発生するということです。

会社で発生する法人税や消費税の計算を行えばいいというものではなく、日頃から様々な会社の業務に対応する必要があります

会社で受け取る賃貸収入の管理や、会社で発生する費用の支払いは、常に行わなければなりません。

また、会社の役員や従業員に対する報酬・給与や所得税の計算は、毎月必ず発生する業務の1つです。

さらに、会社で人件費を支払うと、社会保険の適用を受けることとなるため、社会保険に関する手続きや支払いも発生します。

会社を運営するということは、このような業務を行っていく必要があるということです。

毎日何かをしなければならないということはありませんが、週に何日か、短時間でもこれらの業務を行わなければなりません。

そのため、本業を別に持っている方はなかなか時間が取れず、自分ですべてを行うのは難しいケースも考えられます。

また、運営を社労士などに依頼するとそのコストがかかることも考えられます。

かえって税金の負担が増える可能性もある

会社で発生する法人税と、個人について発生する所得税の税率は、税率自体も異なりますが、その仕組みが大きく異なります。

法人税の税率は基本的に一律ですが、中小企業については軽減税率が適用され、その税率は15%です。

一方、個人に対する所得税の税率は、所得金額が高くなるほど税率が高くなる累進課税制度となっています。

そのため、一番低い税率は5%、一番高い税率は45%となっており、7段階に税率が定められています。

個人の所得が大きい人がその一部の所得を法人に振り替えると、節税効果が発生します。

しかし、もともとそれほど個人の所得が大きくない人が法人に所得を移しても、節税効果はあまり期待できません

それどころか、逆に税金の金額が上がってしまう場合もあるため、注意が必要です。

まとめ

不動産を所有する人にとって、相続は避けては通れない大きな問題です。

そこで直面する問題とは、相続税の負担が大きくなってしまうこと、そして遺産分割の際に揉める可能性が高くなることです。

この相続の問題を解決してくれるのが、不動産を所有する不動産管理会社の設立です

ただ、不動産管理会社の設立にはデメリットも少なくないため、事前によく考えて実行しなければなりません。

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