福岡県福岡市を中心に、企業の創業からIPO、事業承継、オーナーの相続までワンストップで対応している税理士法人アーリークロス。平均年齢35歳という若手税理士や公認会計士、社会保険労務士がそれぞれの課題を解決し、年間の新規関与顧問先は200社を超える。「敷居は低いが、クオリティは高い」を掲げる同事務所の取り組みについて、副代表税理士で相続・承継支援部部長の小山 寛史氏に聞いた。
目次
企業の創業から出口まで”を支援。
「税理士法人アーリークロス」の事業内容を教えていただけますか?
当事務所には税理士や公認会計士、社会保険労務士が所属し、企業の創業から成長フェーズ、その後の事業承継やオーナーなどの相続に至るまでサポートしています。創業から出口まで”というコンセプトで事業を展開しています。
それに伴いDX(デジタル改革)などの業務改善や、これから増加が見込まれる事業再生も手掛けていますね。九州・福岡を中心に、中小企業の課題を解決するプラットフォームを目指して活動しています。
ちなみに社名はサッカーに由来し「企業と創業時(アーリー)から交わりたい(クロス)」との思いを込めました。またサッカーでは、アーリークロスはボールを持ったら早い段階でゴールにつながるロングパスを出すことです。「お客さまがより早く目標に到達できるようサポートしたい」という意味もあります。
年間200社超から選ばれているそうですが、どのような業界や業種のお客さまが多いのでしょうか?
ご紹介も含めて、本当に多種多様なお客さまを支援しています。強いて言うなら福岡という土地柄もあり、飲食店のサポートが多いかもしれませんね。あとは当事務所の代表がITの知見を持ち、長く業界に携わってきたきたことから、関連する企業にもご利用いただいています。
その中で小山様はどのような業務を担当されているのですか?
個人の方の相続や事業承継を中心に担当しています。この仕事を通して「生前の準備がいかに重要か」を改めて実感していますね。
特に企業オーナーが亡くなられると、例えば長男が後継者になって会社の株を保有することになります。すると他のきょうだいには、「兄ばかり」という気持ちが芽生え、長男もまた「会社を経営できるならやってみればいい」と、反発し合ってトラブルになりかねません。
だからオーナーには、会社の相続である事業承継やその後の相続で揉めないように生前にしっかりと準備や説明に取り組んでほしいと考えます。
本来なら助け合うはずのきょうだいが、争うことになるのは残念ですね
今のようなケースでは「長男に会社を継がせる」という遺言があっても、きょうだいの皆さんが一定分を請求できるという遺留分侵害額請求につながり、なかなか円満には終わりません。最終的には長男側がいくらかお金を支払い、後味悪く終わることも多いです。なのでやはり特に企業オーナーは生前対策の必要性が高いと感じています。
創業から事業承継、相続までのワンストップ対応がアーリークロスの強みですが、なぜこの体制を選ばれたのでしょうか?
引用元:税理士法人アーリークロス
そもそも当事務所は、現在の代表が立ち上げた会計事務所と、私が代表を務めていた税理士事務所が1つになったという経緯があります。前者は、今でも私たちの強みであるクラウド会計を駆使していて、私たちもクラウド会計に強みをもっていたのですが、私自身が相続や事業承継に力を入れていました。それぞれの長所を組み合わせ、現在のワンストップ対応が可能になっています。
人の思いが交錯する相続。税理士のコアな仕事は機械では担当できない
相続で失敗しないポイントを挙げるとしたら、どんなことですか?
どの税理士に聞いても答えは同じだと思いますが、一番大切なのは遺産分割でトラブルにならないよう遺言を残すことです。これは最もコアになる部分ですね。
また、当事務所では日常的に相続税の手続きに関わっているため、多くのノウハウを蓄えています。相続税は金額が非常に大きく、些細なミスでも深刻な追徴課税につながるので、チェックリストなどを作成し品質管理を徹底しておくことも大切でしょう。
さらに、税理士選びも重要ですね。私も法人顧問メインの事務所で働いていた経験があるのである程度状況を知っているのですが、法人顧問をメインでお仕事されている税理士先生は相続の領域に触れることが決して多くはありません。内科と外科といった形で税理士にも得手不得手があるかと思いますので相続専門を掲げる事務所に相談するのがお勧めでしょう。
富裕層の間では遺言書が浸透していますが、一般家庭にも広めるには何が必要でしょうか?
私の本音としては、一定年齢を超えたら遺言書の作成を必須にしてほしいです。通常はその内容通りに物事が進んでいき、遺言書の有無によって相続でもめる度合いが左右されます。
しかし現実には「うちの子どもたちは仲がいいから大丈夫」と、皆さん口をそろえたようにおっしゃいます。もちろん、配偶者であるお母さまが健在であればリードすることが可能ですが、子どもだけの場合は鶴の一声が無いいと、利害が対立してしまうケースが多いですね。
もちろん“相続の現場”を知っている私たち専門家も、啓蒙していく必要があるとも感じています。
相続でトラブルにならないために、どのような対策を講じればよろしいのでしょうか?
やはり財産を“残す人”が“残される人”を想って遺言を書くことですね。この影響力は非常に大きいです。
遺言書には、最後に付言事項(ふげんじこう)という項目があり、感謝の気持ちや遺言を書くにあたった理由を任意で記入できます。「このような思いで財産を分けたので家族円満に暮らしてください」と書かれていることもあり、私たちも読んでいてしんみりとしてしまいます。「残されたみんなで仲良くやってね」という言葉があれば、トラブルは起こりにくいですよね。
例えば、どのような付言事項が印象に残っていますか?
「他のきょうだいには申し訳ないけれど、長女には財産を多めに残したい」といった内容を拝読したことがあります。おそらく、長女の方からの献身的なサポートがあったのでしょう。誰かに財産が偏ると揉める可能性がありますが、財産を遺す側の想いを組んで他のきょうだいも素直に財産の配分を受け入れていました。
もし、遺言書がなければもめたかもしれませんが、やはり作成することの効果は大きいと再認識しました。
「税理士の仕事がAIに取って代わられる」と伝えるメディアもありますが、どうお考えでしょうか?
AIに奪われる仕事として会計士税理士が上位にランクインしていましたので、さまざまな場面で議論されるようになりましたね。しかし、私たち税理士は気にしておらず、不安に思っている仲間を見たことがありません。
機械に任せられるのはあくまでも事務的な作業であり、そもそも税理士の業務はお客様と対面でコミュニケーションを取ることが中心で、そこに付加価値があります。
だから私としては「現場を知らない一部の人たちが騒いでいるだけ」と捉えていますね。
人間にしか担当できない業務とはどんなことでしょうか?
例えば法人顧問になった場合、常に不安と向き合う孤独な経営者の“伴走者”でいられるのは人間の税理士だけです。会社の運営について何でも相談でき、的確なアドバイスを送ることが可能です。
また、相続において最も大切なキーワードは「安心感」です。右も左も分からず困っている相続人の悩みや疑問を解消できるのは、やはり人間の税理士ならではです。
インターネット検索も含めて、相続に強い事務所や相性の良い税理士の探し方を教えてください
同業者として感じるのは、まず資産税大手事務所の出身者であれば相続に詳しいと思います。私も規模の大きい資産税専門の税理士法人を経験しましたが、いずれの出身者もレベルが高く、お客さまの期待に応えていました。初めて検索する人にとってその判断をするのは難しいと思いますが。。。
逆にネット検索などで注意してほしいのは、法人顧問の業務を大々的に謳いながら、小さくメモ程度に「相続事業承継も引き受けます」などと書かれている場合です。法人の仕事がほとんどで、相続の経験は少ない可能性があります。
コロナ禍での相続税申告や成年年齢の引き下げ、暗号資産の扱いには注意を
コロナの影響で相続税の申告期限が延長されましたが、それでも手続きが困難な方はどう対応すればよろしいのでしょうか?
コロナウイルスによる申告期限の延長をする際の注意点は「コロナで遺産分割が間に合わなかった」「相続人が感染した」などは理由にならないことです。相続税は一人一人で申告するため、誰かが発症しても他の人は手続き可能だからですね。
外出することができず、資料の入手が困難な場合はある程度認められるようですが、いずれも適切な理由が無いと許可が下りないでしょう。
配偶者居住権とは、どのような権利でメリットやデメリットはいかがでしょうか?
読んで字のごとく、子どもなどの相続人が自宅の所有権を持つことになっても、配偶者であるお母さまがそのまま住み続けられる権利のことです。
メリットは、何よりもお母さまが暮らしていく場所を確保できることです。また、お母さまが亡くなられた際には配偶者居住権に関する相続税がかかりません。一方でデメリットは、例えばお母さまが「自宅を売った資金で高齢者施設に入りたい」と考えても、所有権がお子さまにあるため叶わないことです。
成年年齢が18歳になり、相続税や贈与税への影響はいかがでしょうか?
広くいわれていますが、相続税額から一定額が差し引かれる未成年者控除も18歳で判定されるようになり、実質的な増税となります。
控除の計算式は「(18歳-相続開始日の未成年者の年齢)×10万円」です。例えば13歳であれば「(18歳-13歳)×10万円」で50万円ですよね。従来の20歳の場合は「(20歳-13歳)×10万円」となり、控除額は70万円でした。
また、未成年の相続人に対しては特別代理人を選ぶ必要があります。家庭裁判所に遺産分割協議案を提出することになりますが、未成年者が不利になる手続きは行えません。実際に、高校生である相続人がが数億円を手にしたケースもありますね。
2022年度の税制改正大綱では相続税と贈与税の一体化が見送られました。今後どうなると思いますか?
私たちの間では「これだけ話題になっているから改正はある」と見込んでいます。とはいえ個人的には「今年ではない」という気もします。
この相続税と贈与税の一体化にはアメリカ式とヨーロッパ式があり、前者は生前贈与の全てを相続税の対象としている一方、後者では相続開始前の7年や10年以内の贈与が相当します。
対して日本では、現在は相続開始前3年以内の贈与が相続財産に含まれます。海外の事情を見る限り、おそらく5年から10年以内という期間に変更されるのが現実的でしょう。
暗号資産(仮想通貨)での相続について注意点はございますか?
国内の取引所は残高証明書の交付といった対応が整っていますが、海外では資産の所在さえ把握することが困難なようですね。調べようにも、いずれの相続人もスマートフォンや海外取引所のIDおよびパスワードを知らないケースが多々あります。
また、ビットコインなどは値動きが激しく、例えば「相続申告時の価値が200万円で、納税時の価値が100万円」という場合もあります。上場株にも同じような問題がありますが、そもそも値動きが小さく、上場株の評価では、相続開始前直近3カ月間の平均値から最も低い値を選ぶこともできます。暗号資産も、いずれ同じような扱いになると思われます。
現在は「タワマン節税訴訟」の行方に注目。「福岡で相続といったらアーリークロス」を目指して
現在の興味や関心は何ですか?
2022年4月に最高裁判決が下りた「タワマン節税訴訟」の影響が気になります。私たちにとって、とても衝撃的なニュースでしたね。
まず、ある高齢者が資金を借り入れ、タワーマンション高層階の部屋を2つ、合わせて約14億円で購入しました。その方は3年後に他界し、相続人は財産評価基本通達に基づいて物件を3億円ほどで評価した上、借入金を控除して相続税0円で申告しました。ところが国税庁は「評価額はおよそ12億円である」とし、最高裁で国側が勝訴したのです。
確かに物件の購入による相続税の減税は理論上で成立するものの、明らかな相続税対策ためだけのものであり、時価と評価通達による評価額との乖離がこれまでも問題点が指摘されてきました。今回の判決で否認されたことにより、相続税対策として営業をしていた不動産会社などがどのような対応を取るのか、実務側として注目しています。
これからアーリークロスとして取り組んでいきたいことをお聞かせください
冒頭でも述べましたが、九州の福岡をメインに、中小企業をはじめとする皆さまにとって課題解決のプラットフォームになることを目指します。私としてはその中でも「福岡で相続といったらアーリークロス」といわれる存在になりたいですね。また、相続に関連する不動産や保険などの資産運用ビジネスも展開したいです。
また、個人的にはお客さまの悩み事を解消するソリューションを次々と提案し、これからも相続専門の税理士として活躍していきたいですね。
小山寛史 様
税理士法人アーリークロス 副代表税理士 相続・承継支援部部長
■企業プロフィール
社名:税理士法人アーリークロス
所在地:福岡市中央区天神4丁目3-30 天神ビル新館2階(本店)
事業内容:スタートアップ支援、経営戦略支援、経営支援、財務・経理、業務改善、M&A/事業承継支援、相続
E-mail:info@earlycross.co.jp
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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