この記事でわかること
- 相続税の非課税財産の種類
- みなし相続財産には非課税枠がある
- 相続税の債務控除とは
通常、相続税は被相続人が亡くなっていたときに所有していたすべての財産にかかるものです。
しかし、国民感情や残された相続人の生活、公益性などを考慮して、相続税が非課税とされる財産があります。また、非課税財産以外にも、被相続人が債務を負っていた場合、相続税の計算で遺産総額から差し引くことができます。
この記事では、非課税財産の種類やみなし相続財産における非課税枠、債務控除などを解説します。相続税の課税対象について正しく理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
相続税が課税されない非課税財産の種類
相続税の計算における非課税財産とは、相続税を計算するにあたって、含めない財産のことです。
非課税とされる財産の種類としては、次のものが挙げられます。
- 祭祀財産
- 国や公共団体、特定の公益法人に寄付した相続財産
- 特定の公益を目的とする事業に使用する財産
それぞれ詳しくみていきましょう。
祭祀財産
祭祀財産とは、祖先を祀るために用いられる財産のことですが、国民感情を考慮してこのような財産に対して相続税は課税しないこととされています。
祭祀財産の具体例としては、次のものが挙げられます。
- 仏壇、仏具
- 位牌(いはい)
- 墓地、墓石
- 神棚、神具
- 庭内神し など
なお、祭祀財産に該当する財産であっても、骨董品としての価値を有する財産や投資目的のために所有している財産は相続税の課税対象とされる可能性があるため注意が必要です。
あくまで非課税財産として扱われるのは、祖先を祀るという本来の目的で所有する祭祀財産に限られます。
国や公共団体、特定の公益法人に寄付した相続財産
相続財産を国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した場合、当該財産は非課税財産として扱われます。
寄付した財産が非課税財産として扱われるためには、特例の適用要件を満たさなければなりません。たとえば、国や地方公共団体などに寄付した場合の特例が適用されるには、次の要件を満たす必要があります。
- 相続や遺贈によって取得した財産であること
- 取得した財産を相続税の申告書の提出期限までに寄付すること
- 寄付した先が国や地方公共団体、特定の公共法人などであること
特定の公益を目的とする事業に使用する財産
相続や遺贈によって取得した財産を宗教、慈善、学術などの公益を目的とする事業に使用することが確実な場合には、当該財産は非課税財産として扱われます(相続税法12条1項3号)。
公益を目的とした事業の例としては、次のものが挙げられます。
- 寺社の運営
- 教育施設の運営
- 図書館や博物館などの文化施設の運営
- 学術研究所の運営 など
公益を目的とした事業に使用する非課税財産として扱われるためには、財産を取得した日から2年以内に、事業のために使用されていなければなりません。財産を取得した人が、公益目的ではなく自身の利益のために財産を使用する場合、相続税の課税対象となります。
みなし相続財産には非課税枠が設けられているものもある
みなし相続財産とは、民法上は相続人の固有の財産と認められているが、相続税が課税される財産のことです。そのため、相続放棄をしていても相続人はその財産を受け取ることができます。
みなし相続財産が相続税の課税対象とみなされるのは、他の相続財産と同様に、相続が発生したことで財産の移転がおこることからです。
みなし相続財産には次のものがあげられます。
- 死亡保険金
- 死亡退職金
- 生命保険契約に関する権利
- 定期金に関する権利
このうちの死亡保険金や死亡退職金には相続税が課税されない非課税枠が設けられています。
死亡保険金の非課税枠
死亡保険金には、「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠が設けられています(相続税法12条1項5号)。
たとえば、法定相続人が3人いる場合、500万円×3人で非課税枠は1,500万円となり、1,500万円を超える部分のみが相続税の課税対象です。
死亡保険金は、被相続人が亡くなった後の遺族の生活を保障するものであり、こうした性質を持つ財産のすべてを課税対象として扱われると、遺族が生活に窮する恐れもあります。そのため、死亡保険金には非課税枠が設けられています。
なお、死亡保険金がみなし相続財産として扱われるのは、被相続人自身が保険料を支払っていた場合です。相続人以外が保険金を受け取る場合であっても相続税が課税されます。
死亡退職金の非課税枠
死亡退職金にも死亡保険金同様に「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠が設けられています(相続税法12条1項6号)。
死亡退職金も、死亡保険金と同じように遺族の生活を保障するものであるため、非課税枠が設けられています。
死亡退職金がみなし相続財産として扱われるのは、被相続人が死亡してから3年以内に支給が確定した退職金限られ、被相続人の死亡から3年が経過したよりも後に死亡保険金に準ずる金銭を受け取った場合、相続税ではなく所得税の課税対象となります。
相続税の計算から差し引く財産(債務控除)
相続税の課税対象の遺産総額を計算する際に、被相続人の債務や相続人が負担した葬儀費用などがあれば、遺産総額から差し引くことができます。
課税される遺産総額は、現金、預貯金、不動産などのプラスの財産の総額から、債務や葬儀費用などのマイナスの財産を差し引いた額となります。マイナスの財産を差し引くことを債務控除と言います。
債務控除の対象となる財産について詳しくみていきましょう。
被相続人の債務や未払い金等
債務控除の対象となる債務や未払い金などの例としては、次のものが挙げられます。
- 借入金(住宅ローン、事業資金など)
- 未払いの医療費
- 未払いの税金(所得税、固定資産税など)
- 未払いの公共料金(電気代、ガス代、水道代など)
債務控除の対象となる金額は、被相続人が亡くなった日の時点で未払いである元本や利息の合計額です。
なお、住宅ローンがあっても、団体信用生命保険が付されている場合、被相続人の死亡により住宅ローンの残高が補填されるため、住宅ローンは債務控除の対象とはなりません。
また、被相続人が連帯保証人になっていた場合、被相続人が最終的に債務を負担するか否かが確定していないため、保証債務は債務控除の対象とはなりません。しかし、連帯保証人の地位は引き継ぐことになるため注意してください。
連帯保証の主債務者が債務を滞納している、債務整理をしているなどの事情で、保証債務を履行せざるを得ない状況で、主債務者に対する求償権の行使も難しいときには、保証債務も債務控除の対象となります。
葬儀費用
被相続人の葬儀にかかった費用の一部は、遺産総額から差し引いて相続税の計算から控除することができます。
相続税の計算から控除できる葬儀費用には、下記のものがあげられます。
- 通夜、葬儀の費用
- 火葬、埋葬の費用
- お布施、戒名料
- 霊柩車の費用
- 会場費、料理代
- 葬儀場から焼き場までの移動代 など
一方、下記の費用は控除の対象とすることはできません。
- 香典返し
- 墓石や仏壇、位牌などの購入費用
- 葬儀後の法事(四十九日、一周忌など)の費用 など
香典の収入は相続財産に含まれないため、そのお返しである香典返しの費用も控除の対象とすることはできません。
通夜、告別式は葬儀費用に含まれますが、初七日や四十九日は葬儀費用に含まれません。これは、特定の宗教を国が支持しているとみなされないためといわれています。
告別式の費用と初七日(繰り上げ初七日)の費用が合算で請求され分けられない場合には全額を控除の対象としても問題ありません。
まとめ
相続税の計算は複雑です。非課税財産や債務控除の対象を把握していないと、本来納めるべき税額よりも多い相続税を納めることにも繋がります。
どのような財産が非課税財産となるかの判断や、債務控除の対象となる債務の区別、葬儀費用については、専門的知識が求められます。
判断に迷う財産がある場合には、相続税の専門家である税理士に相談することをおすすめします。
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