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最終更新日:2024/6/21

孫への生前贈与は非課税でできる?贈与のやり方やメリット、注意点を解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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この記事でわかること

  • 孫への生前贈与のやり方やメリット
  • 孫への生前贈与の注意点
  • 孫への生前贈与でよくある質問

孫への生前贈与を非課税にするには、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与、住宅取得等資金の贈与の特例を上手く活用するとよいでしょう。
この記事では、それぞれの特例による贈与のやり方やメリット、注意点、孫への生前贈与でよくある質問を解説します。

どのような贈与がいくらまで非課税?

お金やモノをもらうと、もらった人に贈与税がかかります。しかし、すべての贈与に贈与税がかかるとなると、親が子どもの教育費や生活費を負担することにも贈与税がかかってしまうことになります。そこで、扶養義務者*からの通常の日常生活に必要な教育費や生活費で、必要な都度直接これらに充てるための贈与は非課税とされています。つまり、孫の塾代を出すことや、通学のために1人暮らしをしている大学生の子どもへ生活費を仕送りすることは、必要となる額を必要なときに渡すのであれば贈与税はかからないのです。

非課税になるかどうかは、「必要な都度これらに充てるための贈与」に該当するかがポイントとなります。たとえば、大学の入学金100万円に対して300万円を贈与し、もらった側が残りの200万円を貯金したり、株や不動産の購入に充てたりした場合などは贈与税が課税されます。

非課税になることは大きなメリットですが、必要な都度、祖父母などに資金援助をお願いするのは心苦しいものがあるでしょう。そのようなときに使いたいのが贈与の3つの特例「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」「住宅取得等資金の贈与」です。

*扶養義務者とは、配偶者、直系血族や兄弟姉妹、三親等内の親族(同一生計もしくは家庭裁判所により扶養義務者となった者)です。

教育資金の一括贈与

平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、30歳未満の子や孫に対して教育資金に充てるために一括贈与した場合、1,500万円まで非課税となります。なお、この非課税制度を適用できる30歳未満の子や孫は、前年分の合計所得金額が1,000万円以下の人に限ります。

教育資金の一括贈与は、金融機関で教育資金口座の開設等を行い、教育資金非課税申告書をその金融機関の営業所等へ提出する必要があります。

ただし、教育資金の一括贈与したときの贈与税は非課税となりますが、贈与者が亡くなった時点で使い切らずに残額があるなど一定の場合、残額に相続税が課税されます。また、受贈者が30歳に達したなど契約の終了事由に該当した場合は、残額に贈与税が課税されます。

結婚・子育て資金の一括贈与

平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、18歳以上50歳未満の子や孫に対して結婚・子育て資金に充てるために一括贈与した場合、1,000万円まで非課税となります。なお、この非課税制度を適用できる18歳以上50歳未満の子や孫は、前年分の合計所得金額が1,000万円以下の人に限ります。

結婚・子育て資金の一括贈与は、金融機関で結婚・子育て資金口座の開設等を行い、結婚・子育て資金非課税申告書をその金融機関の営業所等へ提出する必要があります。

教育資金の一括贈与と同様に、一括贈与したときの贈与税は非課税となりますが、贈与者が亡くなった時点で使い切らずに残額があるなど一定の場合、残額に相続税が課税されます。また、受贈者が50歳に達したなど契約の終了事由に該当した場合は、残額に贈与税が課税されます。

住宅取得等資金の贈与

令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、18歳以上の子や孫に対して受贈者の居住を目的とした住宅用家屋の新築、取得または増改築等に充てるために贈与した場合、質の高い住宅であれば1,000万円、それ以外の住宅は500万円までの贈与が非課税となります。なお、この非課税制度を適用できる18歳以上の子や孫は、贈与を受けた年の年分の合計所得金額が2,000万円以下、家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下の人に限ります。

贈与を受けたものの住宅取得等に充てなかった分は、贈与税が課税されます。

教育費や結婚・子育て資金、住宅取得等資金にあたらない贈与の場合

上記の3つの特例で贈与を受けたものの使い切らずに残額が贈与税の課税対象となった場合や、贈与税が非課税とならない贈与の場合、贈与税には基礎控除があるため、贈与税の課税対象となる額が基礎控除額の範囲内であれば、贈与を受け取った子や孫に贈与税はかかりません。

「暦年課税」または「相続時精算課税制度」のいずれの課税方法で贈与しても、基礎控除額110万円があり、110万円を超える場合に贈与税がかかります。

暦年課税とは

暦年課税とは、暦年(1月1日から12月31日まで)の間に受けた贈与の額を合算し、基礎控除額110万円を差し引いた残額に税率をかけて贈与税額を計算します。直系尊属からの贈与の場合、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であれば特例税率、それ以外の場合は一般税率となります。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、特定の贈与者からの贈与について、暦年(1月1日から12月31日まで)の間に受けた贈与の額を合算し、基礎控除額110万円を差し引いた残額が、累計2,500万円になるまで贈与税が非課税となる制度です。2,500万円を超えた場合、超えた金額に対して一律20%の贈与税がかかります。また、基礎控除額110万円を超える贈与は、贈与者が亡くなったときに、相続財産に加算する必要があります。納税した贈与税額が相続税額よりも多ければ還付され、不足していれば不足分だけ相続税を納めます。

孫への生前贈与のメリット

贈与のなによりのメリットは、贈与を受け取った孫の喜ぶ顔を見られることでしょう。やはり喜んでもらえるのはあげる側としても嬉しいものです。孫への贈与は相続税対策にもなるため、教育費や結婚・子育て資金、住宅取得等資金を贈与することは、相続人である子にとってもメリットがあります。

贈与をすることで相続財産を減らすことができる

相続税は亡くなったときに所有していた財産に対してかかります。相続税よりも贈与税の負担の方が軽くなる範囲内で生前贈与することによって財産を減らしておくと、相続税の節税になります。贈与するときは必ず相続税額のシミュレーションを行ってから実行しましょう。

贈与することで一代飛ばしとなる

相続税の税率は10%から55%となっています。相続が3回あるとその家の財産はなくなるといわれるほど相続税の負担は重いものですが、孫に贈与することで、相続税の課税回数を一回飛ばすことができます。

相続開始前7年以内の持ち戻しがない

相続または遺贈によって財産を取得した人が、相続開始前7年以内に被相続人から暦年課税による贈与で財産を取得していた場合、贈与された財産額を相続財産に加算して相続税を計算する必要があります。

子はたいてい相続財産を取得するため相続開始前7年以内の持ち戻しがありますが、孫の場合は、遺言書によって遺贈される、養子縁組をしている、代襲相続人であるといった場合でなければ、相続で財産を取得することはほぼないでしょう。よって、孫への贈与は、相続開始前7年以内の持ち戻しに該当しないため、贈与の時期を気にせずに贈与でき、相続税の節税になります。

孫への生前贈与の注意点

孫への生前贈与には、以下のような注意点があります。

相続開始前7年以内の持ち戻しがあることも

一般的に孫への贈与は相続開始前7年以内の持ち戻しがないと先ほど述べましたが、死亡保険金の受取人が孫となっている場合には注意しましょう。死亡保険金を受け取ると、死亡保険金の遺贈を受けたとみなされ、遺贈により財産を取得したことになるため、相続開始前7年以内に贈与を受けた財産を相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。なお、相続開始前7年以内の贈与は、基礎控除額110万円以下であっても相続財産に加算する必要があります。

名義預金に注意

たとえば、相続税対策を兼ねて贈与税の負担を抑えながら孫へ贈与する場合には、通帳やキャッシュカード、印鑑を孫本人が管理し、普段使いしている口座に入金するようにしましょう。贈与は「あげます」「もらいます」という双方の同意のもとに成り立ちます。祖父母が管理している孫名義の口座に入金を続けても、それは「名義預金」とみなされ、祖父母の財産であるのと変わらないと税務署は判断します。

贈与契約書を作成しよう

贈与するときは、贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者の双方が自筆で署名します。贈与契約書の署名や日付を自筆で書くことにより、双方の「あげます」「もらいます」という意思や信頼性を示すことができます。

相続税対策として毎年贈与する場合は、毎年、贈与契約書を作成します。たとえば、「今後10年にわたり1,000万円を贈与する」といった文面にすると、一定の期間で一定の給付をする「定期贈与」となり、贈与契約書を締結した年に1,000万円贈与したのとほぼ同額の贈与税を負担することになってしまうため、面倒でも毎年作成しましょう。

贈与する日は誕生日や記念日など、毎年同じ日付で同じ額を贈与する「連年贈与」でも問題ありませんが、税務調査において調査官から「毎年決められた金額をいくらになるまで贈与するという定期贈与の約束があったのではないか」と質問を受ける可能性があります。一定の期間で一定の給付を受ける約束をしていないこと、あらかじめ決められた金額に達したら贈与を終了する約束はなかったことをしっかりと調査官に伝えましょう。

相続時精算課税制度は届出に注意

暦年課税による相続開始前7年以内の贈与の持ち戻しを避けるために、寿命や体調を考慮して相続時精算課税制度に切り替え、基礎控除額110万円以下で贈与する場合、贈与税の申告は必要ありませんが、相続時精算課税制度を選択して初めて贈与した翌年の2月1日から3月15日までの間に相続時精算課税制度選択届出書を税務署に提出する必要があります。税務署への届出を忘れると暦年贈与となり、相続財産への持ち戻しの対象となるため注意しましょう。

なお、基礎控除額110万円を超えた贈与は、相続財産に加算され相続税がかかります。孫の場合、相続税額は2割加算の対象となります(代襲相続人である場合を除く)。

孫への生前贈与でよくある質問

贈与税は誰が払うの?

贈与税はもらった人(受贈者)が納付します。

もらった人が納付しなかった場合、あげた人(贈与者)には連帯納付義務があるため、贈与した財産の価額に相当する金額を限度として贈与税を負担することになります。

教育資金の一括贈与などの3つの特例をひ孫に適用することはできる?

わかりやすく説明するために、一般的な事例として「子や孫への贈与」と記載している解説が多いですが、条文では「直系尊属からの贈与」に贈与特例があるとされているため、ひ孫に対しての贈与でも適用することが可能です。

0歳の孫に贈与できる?

孫の年齢は問わないため、0歳の孫にも贈与できます。ただし、贈与契約書に署名はできないため、孫の親権者に代理人として署名してもらいましょう。なお、贈与した財産の管理は孫の親権者が行います。

孫への生前贈与は相続税の負担も考慮して検討しよう

教育資金の一括贈与など、孫へ非課税で贈与する方法はいろいろあります。ただし、贈与税が非課税となり、相続税対策にもなるような効果的な贈与をするためには、相続税の負担がいくらになるのかシミュレーションが必要です。注意点もあるため、大きな金額を動かす前には一度、相続税を専門とする税理士に相談することをおすすめします。

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