この記事でわかること
- 財産債務調書の記載内容や提出義務者
- 財産債務調書の記載方法
- 財産債務調書で意識すべき注意点
令和4年度の税制改正で条件の範囲が広がり、それまで提出の必要がなかった人にも義務が生じる可能性があります。
この記事では「財産債務調書」を深堀りし、記載内容や対象者、書き方、注意点などを解説します。
目次
財産債務調書とは
財産債務調書には、適正な提出を促すための措置が設けられており、提出期限内に提出すると、所得税および相続税の申告に際して漏れが生じたとき、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5%軽減されるのです。
一方、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産や債務の記載がない場合、報告した財産または債務に関して所得税の申告漏れが生じた際に過少申告加算税が5%加重されます。
財産債務調書の提出義務者
- その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計額が2,000万円を超え、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産または1億円以上の国外転出特例対象財産*を有する
- その年の12月31日において、その価額の合計額が10億円以上の財産を有する
- *国外転出特例対象財産とは、有価証券(株式、投資信託等。特定口座(源泉徴収選択口座)や非課税口座(NISA)内の有価証券なども含む)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引をいいます。
たとえば、資産家の妻でずっと専業主婦だった人が、配偶者の相続により多額の財産を相続した場合は、所得がなくても財産のある人と言えます。そのような人の保有財産や債務を把握するために、令和4年度税制改正において②の要件が追加されました。
提出義務の判定における3億円(1億円)以上の財産の算定では、国内に所在する財産のほか、国外に所在する財産を含めて算定する必要があります。
この場合の財産額は財産の価額の総額であり、債務を控除しません。
別途で国外財産調書が必要な場合も
ただし、国外財産調書を提出する場合、財産債務調書には国外財産に係る財産の種類、数量、所在などの事項を記載する必要はありません。
財産債務調書の下部「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」欄と、財産債務調書合計表の右下「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」欄、「国外財産調書に記載した国外転出特例対象財産の合計額」欄に金額を記載します。
相続開始年に財産債務調書を提出する場合
たとえば、自身の親などに相続が発生した際に、発生した年中に何をどれだけ相続するか決まらないかもしれません。その場合、相続の開始する日の属する年の財産債務調書には、相続財産債務を記載しないで提出することができます。
また、提出義務の判定においては、相続財産を含めずに判定します。
【財産別】財産債務調書の記載方法
このうち事業上の債権債務は、その年の12月31日における債務の金額が300万円未満のものについては、所在別に区分することなく、その件数と総額を記載してよいとされています。
また、所得税の確定申告において収支内訳書や青色申告決算書の減価償却費の計算欄に記載されている資産は、財産債務調書にはその減価償却資産の価額の総額で記載できます。
記載する価額は償却後の価額となるため、財産債務調書の作成時は注意しましょう。土地、建物に関しては、固定資産税評価額により記載することができます。
特定(非課税)口座内に保有する上場株式等
ただし、証券会社に特定口座や非課税口座を開設している場合、特定(非課税)口座内に保有する上場株式等は、さらに細かく銘柄別に区分する必要はありません。
用途別や所在別、種類別(株式、公社債、投資信託等など)にそれぞれ一括して価額を記載することができます。
家庭用動産
なお、「現金」「書画骨董及び美術工芸品」または「貴金属類」に分類されるものは除かれるので、記載時には注意しましょう。
「その他の動産」に区分される家庭用動産のうち、一個または一組の取得価額が300万円未満のものについては、記載を省略することができます。
保険契約に基づく定期金に関する権利
満期返戻金を年金形式で受け取ることができる内容のものであっても同様です。
ただし、その年中の12月31日より前の日付けで生命保険契約を解約し、保険会社から支払われることになる解約返戻金を入手している場合は、その額を記載します。
財産債務調書の提出有無に関する注意点
特にペナルティを受けると、本来納める税額よりも高い金額となる可能性があるため、注意が必要です。
ここからは、財産債務調書の提出有無に関する注意点を、インセンティブとペナルティそれぞれの説明を交えて解説します。
財産債務調書を適正に提出すればインセンティブがある
財産債務調書に不備があるとペナルティが発生することも
たとえば、財産債務調書を提出期限までに提出していない、提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産債務の記載がない、重要事項の記載が不十分であるなどが挙げられます。
不備が認められる場合には、インセンティブの場合とは反対にその財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されます。
財産債務調書の訂正方法
また、提出期限後の提出であっても、提出期限内に提出したとみなされるケースもあります。
所得税(相続税)について調査があったことにより更正または決定があることを予知してされた提出でないときは、提出期限内に提出されたものとみなされます。
財産債務調書の提出期限
改正前の提出期限(翌年の3月15日)は確定申告の期限でもあります。
財産債務調書の提出義務者が、保有財産の種類・数量・価額をそれまでに正確に算出・記載することは負担が大きい点を踏まえ、提出期限が後倒しになりました。
財産債務調書で意識すべきポイント
そのような財産債務調書における意識すべきポイントを、これまで解説した内容も踏まえて取り上げます。
財産債務調書の提出が必要になる可能性のある人は、ぜひ参考にしてください。
財産債務調書は期限内に提出しよう
財産債務調書を記載して提出することで、申告漏れが生じた場合に過少申告加算税が軽減されるため、ぜひとも期限内に提出したいものです。
とはいえ、毎年財産の棚卸をする必要が生じることから、財産債務調書の提出義務者は大きな事務負担があると言えます。
財産債務調書を提出する必要がある場合は、税理士に相談してサポートを受けながら対応することをおすすめします。
財産額が10億円以上の人は提出を忘れないように注意
したがって、たとえ所得がなくとも、中小企業のオーナーで自社株の評価が10億円以上ある人、特定口座や非課税口座で10億円以上の株式を保有している人、相続により10億円以上の財産を取得した人は提出義務があることになります。
確定申告をしなくてもよい場合、財産債務調書の提出を失念しやすいため注意しましょう。
財産債務調書は税理士に相談しながら正しく提出しよう
提出内容に不備があるとペナルティが発生する可能性があるため、必要書類の作成には慎重さも求められます。財産債務調書を作成するには必要な情報を集める必要があるため、提出義務者の事務的な負担は大きくなります。
財産債務調書に関する悩みがある場合は、税理士に相談するとよいでしょう。
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