この記事でわかること
- ジュニアNISAの概要がわかる
- ジュニアNISAを相続税対策で活用するメリットがわかる
- ジュニアNISAを相続税対策で活用するデメリットがわかる
- ジュニアNISAで相続税対策をするときの注意点がわかる
金融庁が「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げて20年近く経ちましたが、2022年5月、政府は新たに「資産所得倍増プラン」を打ち出しました。
細かな内容は2022年中に策定されるようですが、預貯金を資産運用へ誘導するため、少額投資非課税制度(NISA)の拡充も予定されています。
NISAといえば、ジュニアNISAの2023年末終了が決定し、現在は駆け込み需要の口座開設も増加しているようです。
ジュニアNISAは子供や孫の資産形成に活用できますが、相続税対策にも使える非課税制度なので、生前贈与を考えている方は検討してみるべきでしょう。
今回はジュニアNISAが相続税対策になる理由や、生前贈与との関係をわかりやすく解説します。
目次
ジュニアNISAとは
2016年にスタートした少額投資非課税制度がジュニアNISAです。
未成年の子供や孫の資産形成を目的としており、ジュニアNISA口座を使って投資すると、配当金や分配金が非課税扱いになります。
ジュニアNISA口座は親権者によって運用・管理されますが、親権者の同意があれば、子供や孫が売買注文することも可能です。
投資対象には上場株式や株式投資信託、ETF(上場投資信託)や上場REIT(不動産投資信託)があり、非課税枠には年間80万円までの上限があります。
2023年末に終了するジュニアNISAですが、終了後も非課税措置は継続され、次のように相続税対策としても活用できます。
ジュニアNISAを相続税対策で活用するメリット
ジュニアNISAの投資対象者は未成年の子供や孫ですが、資金は親権者が拠出するため、生前贈与と同等の効果があります。
しかし、贈与税がかかる可能性は低いため、相続税対策としても十分に活用できます。
では、具体的なメリットをみていきましょう。
贈与税を気にせず投資できる
贈与税には年間110万円までの非課税枠があるので、ジュニアNISAの非課税枠80万円を最大限に使っても贈与税の非課税枠を超えません。
つまり、ジュニアNISAの拠出金に贈与税がかかることはなく、贈与税の申告も不要です。
相続税の節税効果が期待できる
ジュニアNISAを利用すると子供や孫に資産を移転できるため、親や祖父母の相続財産が減少し、相続税も低くなる効果があります。
相続税は基礎控除を上回る部分に課税されるので、活用次第では相続税がかからない可能性もあるでしょう。
相続人が1人であれば基礎控除は3,600万円、2人の場合は4,200万円となり、相続人が1人増えると基礎控除も600万円ずつ上がります。
相続財産の額について基礎控除を超える部分がわずかであれば、2023年末のジュニアNISA終了までに資金を移転し、基礎控除内に納めることも可能です。
二次相続に有効活用できる
父母のどちらかが亡くなる相続を一次相続といいますが、亡くなった方の配偶者は「配偶者の税額軽減」が使えるため、1億6,000万円まで非課税相続できます。
また、1億6,000万円超の財産を相続しても、法定相続分の範囲内であれば相続税はかかりません。
しかし、配偶者に相続財産を集中させると、二次相続(配偶者も亡くなる相続)のときに子供の税負担が重くなります。
すでに、配偶者の税額軽減を目一杯使っているようであれば、ジュニアNISAを活用して資金移転してみましょう。
ジュニアNISAは贈与税を気にせず資金移転できますし、投資効果により移転した資金が増加する可能性もあります。
ジュニアNISAを相続税対策で活用するデメリット
ジュニアNISAは上場株式などに投資するため、次のようなデメリットがあります。
親や祖父母の拠出金が減少する可能性もあるので、貯蓄とは異なることを理解しておきましょう。
拠出金が元本割れするリスクがある
ジュニアNISAはあくまでも投資なので、運用成績によっては拠出金が元本割れするリスクもあります。
もちろん拠出額以上に増える可能性もありますが、貯蓄のような確実性は担保されていないので、元本保証が必要な方には向いていません。
資金移転としての相続税対策には使えますが、子供や孫の納税資金確保が目的であれば、預貯金の方が確実でしょう。
金融機関の変更には解約が必要
ジュニアNISAの口座は1人につき1口座であり、金融機関や証券会社も1つしか選べません。
原則として金融機関は変更できませんが、どうしても変更したいときは一旦口座を廃止して、別の金融機関で再開手続きすることになります。
金融機関や証券会社によって投資商品も異なるので、利用開始前には商品ラインナップや利便性も比較検討しておきましょう。
ジュニアNISAで相続税対策をするときの注意点
相続税対策にジュニアNISAを活用するときは、次の2点に注意してください。
資産の移転状況によっては贈与税がかかるケースもあるので、贈与税の非課税枠や贈与契約がポイントになります。
贈与税の非課税枠を超えないようにする
ジュニアNISAの非課税枠は年間80万円までですが、ジュニアNISA以外の贈与を含めて年間110万円を超えると、贈与税がかかってしまいます。
たとえば、親がジュニアNISAに80万円を拠出し、祖父母から120万円の生前贈与があった場合、90万円に対して贈与税が課税されます。
90万円には税率10%が適用されるため、9万円の贈与税申告と納税が必要です。
ジュニアNISAの非課税枠は、贈与税の非課税枠内で考えるので、別枠と勘違いしないように注意してください。
相続税対策にするときは贈与契約書を作成する
相続税や贈与税は申告ミスが起きやすいため、税務署(国税庁)も厳重にチェックしています。
贈与に判定されなかった財産は相続財産にカウントされるので、ジュニアNISAを活用するときも贈与契約書は作成しておきましょう。
贈与契約書に決まった書式はありませんが、以下の項目は必ず記載してください。
- 表題~贈与契約書
- 贈与者と受贈者
- 贈与額
- 贈与日
- 贈与方法(銀行振込など)
- 贈与契約の締結日
- 贈与者と受贈者の署名捺印(本人自筆と実印)
また、資金の拠出には銀行振込を利用し、資金の動きがわかるようにしておきましょう。
ジュニアNISAの目的は未成年の子供や孫の資産形成なので、相続税対策が主目的にならないよう注意してください。
税制改正の動向にも注意する
従前より議論されてきたように、2023年度版の税制改正大綱においても、依然として贈与税と相続税の一体化が議論されています。
現在の税制では、相続開始前3年以内の贈与を相続財産にカウントする「持ち戻し」のルールがありますが、2023年版の税制改正大綱により持ち戻しの期間が7年に延長されることが明記されました。
ジュニアNISAへの影響はないかもしれませんが、今後、生前贈与による相続税対策には制限がかかる可能性が高いでしょう。
まとめ
「貯蓄から投資へ」の考え方は国が主導しているため、政策に従った金融商品などを利用すれば、税制面はかなり優遇されます。
低金利も長期化しているので、子供や孫が未成年のうちから投資に馴染んでおけば、成人した後の資産形成にも十分役立つでしょう。
ジュニアNISAは2023年末に終了するため、高額な資金移転には不向きかもしれませんが、運用成績によっては拠出金以上の額になり、教育費などに有効活用できます。
ただし、贈与税や相続税の仕組みを理解しないまま利用すると、節税効果が半減する可能性もあるので注意しましょう。
効果的な相続税対策に悩んでおられる方は、早めに相続専門の税理士へ相談してください。
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