【被害者が損しないためにやってはいけないこと】交通事故でもらえる4つの慰謝料とその金額目安とは

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【被害者が損しないためにやってはいけないこと】交通事故でもらえる4つの慰謝料とその金額目安とは

この記事でわかること

  • 交通事故の賠償金にどのような種類があるのかを知ることができる
  • 交通事故の慰謝料を自分で計算できるようになる
  • 慰謝料はどの算定基準を用いるかで金額が大きく異なることが理解できる
  • 被害者がやってしまうと損することを知ることができる

交通事故の被害者になると、加害者に対して慰謝料などの賠償金を請求することができます。

ただ、普通の方はどのような項目で賠償金を請求できるのか、どのように計算すればいいのかなど、わからないことがほとんどではないでしょうか。

また、やってしまうと賠償金で損してしまうこともあります。

そこでこの記事では、交通事故の被害者が請求できる賠償金の種類や計算方法、損しないためにやってはいけないことなどを解説していきます。

交通事故の被害にあってお困りの方のご参考になれば幸いです。

交通事故の賠償金には4つの種類がある

まず、交通事故の被害者が加害者に対して請求できる賠償金の種類をみていきましょう。
賠償金の種類は、次の4つです。

  • ・積極的な損害
  • ・消極的な損害
  • ・慰謝料
  • ・物的損害

4種類の賠償金の意味とは

上記の4種類の賠償金について、具体的にどのような賠償金なのかを簡単にご説明します。

積極的な損害

積極的な損害とは、交通事故に遭ったために負担を余儀なくされた出費のことをいいます。
怪我をしたことによる治療費や入院費用、通院交通費などがこれに含まれます。

消極的な損害

消極的な損害とは、交通事故に遭ったために本来なら得られたはずの利益のことをいいます。
休業損害や、被害者が後遺障害を負ったり死亡した場合の逸失利益などがこれに該当します。

慰謝料

慰謝料とは、交通事故によってこうむった精神的損害に対して支払われる賠償金のことです。
入通院慰謝料と死亡慰謝料、後遺障害慰謝料の3種類があります。

物的損害

物的損害とは、交通事故によって壊れた物の修理や買い換えに要する費用のことです。
主に車の修理代や時価相当額が賠償の対象となります。

物損事故では慰謝料は支払われない

物損事故とは、交通事故によって車など物が壊れたものの、被害者に負傷はない事故のことをいいます。

物的損害については、物が壊れた程度に応じて金銭的に賠償されることによって損害が回復されたものとみなされます。
大切な物が壊れたことによって精神的損害を受けたと主張する方も多いですが、物的損害は慰謝料の対象にはなりません。

交通事故の慰謝料の対象となるのは、被害者の負傷や死亡、後遺障害といった人身傷害だけです。

4つの賠償金の計算方法とは

それでは、4つの賠償金についてどのように計算すればいいのかをそれぞれご説明します。

積極的な損害

積極的な損害については、実際に要した費用が交通事故と因果関係が認められる限りにおいて全額支払われます。
例えば、交通事故で負傷して30日間入院し、その後60日間通院して治癒したケースで考えてみましょう。

このケースで、以下の費用を要したとします。

  • ・診察費、治療費、入院ベッド代…50万円
  •   

  • ・入院雑費…4万5,000円
  • ・通院交通費…3万円

以上の金額を合計した57万5,000円が積極的な損害として賠償されます。

消極的な損害

消極的な損害については、休業損害を例として計算してみましょう。

交通事故による怪我の治療のために仕事を休まなければならなくなった場合は、休業損害が賠償されます。
休業損害は基本的には事故前の実際の収入に基づいて、1日あたりの基礎収入に休業日数をかけて計算します。

例えば、月収45万円の人が交通事故で負傷したことにより20日間休業した場合は、30万円が休業損害として賠償されます。

慰謝料

慰謝料のうち、入通院慰謝料は入通院期間に応じて計算されます。
死亡慰謝料は、遺族と被害者との関係に応じて慰謝料が定められています。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて慰謝料が定められています。

入通院慰謝料については計算基準が複数あるため複雑な問題がありますが、その点は後ほどご説明します。

一例として、交通事故で負傷して90日間入通院して治癒した場合について説明します。
入通院慰謝料が自賠責保険で賠償されるケースの金額は下記の通りです。

自賠責保険では、入通院慰謝料は基本的に1日あたり4,200円で入通院期間に応じて計算されます。

したがって、このケースでは37万8,000円(4,200円×90日)が慰謝料額となります。

物的損害

物的損害については、車の損壊に対する賠償金を考えてみましょう。
交通事故で車が損壊した場合は、修理見積もり費用と時価相当額を比較して、低い方の金額が賠償されます。
例えば、修理見積もり費用が50万円で時価相当額が100万円だとすれば、50万円が賠償されることになります。

なお、初度登録からあまり年数が経過していない高級車などの場合は、事故によって市場価値が低下したことによる「評価損」が賠償されるケースもあります。

賠償金請求には3つの基準がある

交通事故の賠償金のうち、慰謝料については3つの基準があります。
3つの基準とは、以下のものです。

  • ・自賠責基準
  • ・任意保険基準
  • ・裁判所基準

入通院慰謝料、死亡慰謝料、後遺障害慰謝料のそれぞれについて3つの基準がありますが、以下では入通院慰謝料についてご説明します。

自賠責基準

自賠責基準とは、自賠責保険に賠償金を請求する際に適用される慰謝料の計算基準のことです。

自賠責保険は交通事故の被害者に対して最低限の補償を行うことを目的としているため、3つの基準の中では賠償額が最も低くなります

自賠責基準では、入通院慰謝料について1日あたりの金額を4,200円として、次の2つのうちどちらか少ない日数をかけて計算します。

  • ・実通院日数の2倍
  • ・治療期間の全日数

任意保険基準

任意保険基準とは、各任意保険会社が独自に定めている慰謝料の計算基準のことです。

詳細は非公表のため不明ですが、慰謝料額は自賠責基準よりは高く、次にご説明する裁判所基準よりは低くなります。

入通院期間が短いケースでは自賠責基準による場合とあまり変わりませんが、入通院期間が長くなると自賠責基準との差が大きくなります。

裁判所基準

裁判所基準とは、交通事故の慰謝料を裁判で請求した場合に適用される計算基準のことです。

過去に数多くの裁判で交通事故の慰謝料が争われてきたことから、今では裁判例を分析して慰謝料の計算基準が定められているのです。

入通院慰謝料の裁判所基準には、通常の場合とむち打ちなどで他覚的所見がない場合の2種類があります。
後者については後ほどご説明するので、ここでは前者の通常の場合の計算基準をご紹介します。
単位:万円

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326

慰謝料額が最も高額になるのは裁判所基準

例として、交通事故で負傷して3か月入院し、その後6ヶ月通院して治癒したケースについて、3つの基準によって入通院慰謝料を計算してみましょう。

入通院期間を270日間と仮定すれば、慰謝料額はそれぞれ以下のようになります。

  • ・自賠責基準…113万4,000円
  • ・任意保険基準…120万円程度
  • ・裁判所基準…211万円

裁判所基準で計算することで、他の2つの基準で計算する場合と慰謝料額が大きく異なることがおわかりいただけるでしょう。

むちうち事例のシミュレーション-自賠責基準と裁判所基準での賠償金

次に、交通事故でむち打ち症になったケースを例にあげて、自賠責基準と裁判所基準で入通院慰謝料がどのように異なるのかをみてみましょう。

裁判所基準も通常の場合よりやや低額になる

入通院慰謝料の裁判所基準について、先ほどは通常の場合をご紹介しましたが、ここではむち打ち症で他覚的症状がない場合の基準をご紹介します。
単位:万円

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200

むち打ち症で他覚的所見がないケースでは、通院も頻度が低かったり、不定期であったりする場合が多くなります。

そのため、この基準を適用する場合は、入通院期間の全日数を上限として、実治療日数の3倍程度の日数を目安として慰謝料を計算することとされています。

自賠責基準と裁判基準による計算結果の違い

それでは、交通事故でむち打ち症になったものの他覚的所見はなく、6ヶ月(180日)通院して治癒したケースで計算してみましょう。

なお、180日の治療期間のうち、実際に通院して治療を受けたのは150日、つまり5ヶ月であったとします。

  • ・自賠責基準…42万円(4,200円×100日)
  • ・裁判基準…79万円(通院期間150日で計算)

むち打ち症の場合でも、裁判基準で計算することで慰謝料額が大幅に高くなることがおわかりいただけるでしょう。

慰謝料の計算方法を知っておこう

ここでは、交通事故の慰謝料の計算方法について、ここまででご説明しきれなかったことをご説明します。

客観的な基準で計算される

慰謝料は精神的な損害に対して支払われるお金なので、本来であれば同じような交通事故であっても人によって金額が異なるはずです。

しかし、被害者の主観的な精神的損害を測ることは困難であり、個別に判断していたのではスピーディーに賠償することが不可能になってしまいます。

そこで、公平かつ迅速な賠償を実現するために、慰謝料の計算においては客観的な基準が用意されているのです。

入通院慰謝料の基準については既にご説明したので、以下では死亡慰謝料と後遺障害慰謝料についてご説明します。

死亡慰謝料の計算基準

死亡慰謝料についても、入通院慰謝料と同じように3つの基準があります。
自賠責基準と裁判所基準をご紹介しますが、任意保険基準はこの両者の中間程度の金額となります。

自賠責基準による死亡慰謝料

自賠責基準は、まず本人分の慰謝料を350万円とし、さらに固有の慰謝料を請求できる遺族の人数に応じて以下の金額が追加されます。

  • ・遺族が1名の場合…550万円
  • ・遺族が2名の場合…650万円
  • ・遺族が3名以上の場合…750万円

裁判所基準による死亡慰謝料

裁判所基準では、被害者が家庭においてどのような立場であったかによって、以下のように定められています。

  • ・一家の支柱であった場合…2,800万円
  • ・母親や配偶者であった場合…2,500万円
  • ・その他の場合…2,000万~2,500万円

後遺障害慰謝料の計算基準

後遺障害慰謝料については、自賠責基準と裁判所基準でそれぞれ次の表のとおり後遺障害等級に応じて金額が定められています。
(単位:万円)

後遺障害等級 自賠責基準 裁判所基準
第1級 1100 2800
第2級 958 2370
第3級 829 1990
第4級 712 1670
第5級 599 1400
第6級 498 1180
第7級 409 1000
第8級 324 830
第9級 245 690
第10級 187 550
第11級 135 420
第12級 93 290
第13級 57 180
第14級 32 110

損しないために被害者がやってはいけないこと

ここまで慰謝料の計算基準についてご説明してきましたが、実は基準どおりの慰謝料を必ずしも受け取れるとは限りません。

被害者が知らず知らずのうちにやってしまうことによって、損をする危険性があるのです。

以下、損しないために被害者がやってはいけないことをご説明します。

症状固定前に治療をやめてしまうこと

交通事故で負傷して通院治療を続けていても、ある程度の期間が経過すると保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。

しかし、主治医が症状固定と判断する前に治療をやめてしまうと、入通院慰謝料はそこまでの分しか賠償されなくなります。

また、適切な治療を受けていないことになるため、後遺障害等級の認定にも影響が出てしまい、後遺障害慰謝料でも損してしまう可能性が高いです。

後遺障害等級の認定を適当に受けてしまうこと

後遺障害慰謝料を請求するためには、まず後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

後遺障害等級は損害保険料率機構という自賠責保険に関する機関によって審査の上で認定されますが、認定結果が必ずしも正しいとは限らないので、注意が必要です。

審査に提出する書類や資料が不足していたり、記載が誤っていたりすると認定結果も誤ったものとなるおそれがあります。

むち打ち症で後遺障害等級が認定される場合は12級か14級になります。
裁判基準では12級(290万円)か14級(110万円)かによって後遺障害慰謝料の金額に180万円もの差があります。

申請手続きを適当に行ったために非該当と判断されれば、0円になってしまいます。
したがって、後遺障害等級認定の申請はしっかりと行う必要があります。

いったん認定された後遺障害等級に納得できない場合は異議申し立てをすることができます。

しかし、認定された等級を覆すことは簡単ではなく、納得できる認定結果を得るためには専門的な知識が必要になります。

後遺障害等級に納得できない場合は、交通事故に強い弁護士事務所にご相談されることをおすすめします。

慰謝料の増額が可能な事由を知らずに示談すること

慰謝料の金額は、基本的にはこの記事でご紹介した計算基準に基づいて客観的に計算されます。

しかし、不公平・不合理であると認められる特別の事情がある場合は、慰謝料を増額して請求することが可能なこともあります。

例えば、加害者が飲酒したり無免許の状態で無謀な運転をして事故を起こした場合や、謝罪の対応が不十分で被害者や遺族の感情を逆なでするなど悪質な場合に、慰謝料が増額されることがあります。

また、後遺障害等級が認定されても実際の労働能力喪失の程度が不明確で逸失利益の算定が難しいような場合、逸失利益を認めない代わりに慰謝料を増額することで妥当な賠償額を算定するようなケースもあります。

つまり、慰謝料の算定基準が全てだと考えていると、賠償金額で損してしまうおそれがあるのです。

加害者側保険会社の言うことを鵜呑みにすること

加害者が任意保険に加入している場合は、その保険会社の担当者と示談交渉を行うことになります。

保険会社の担当者はおおむね物腰が柔らかく、いっけん親身な態度で対応してきます。
しかし、加害者側の保険会社が提示する賠償金額は通常、できる限り低額に抑えたものになっています。

保険会社も利益を確保しなければならないため、被害者に有利になるように配慮してくれるわけではないのです。

担当者のことを味方だと思って言うことを鵜呑みにすると、損してしまうので注意が必要です。

交通事故の慰謝料請求を弁護士に任せるべき理由

交通事故で慰謝料を請求するなら、弁護士に依頼するのがおすすめです。

なぜなら、被害者が損しないためにやってはいけないことについて弁護士は熟知しているので、損することはやらないように、逆に少しでも増額につながる対応についてアドバイスを受けることができます。

その上で示談交渉を代行してくれるので、自分で示談する場合よりも多くの賠償金を受け取ることが期待できます。

また、自分で示談する場合、慰謝料は任意保険基準で計算した金額になりますが、弁護士に依頼すれば裁判所基準で計算した金額が認められる可能性が高まります

さらに、弁護士は裁判も代行してくれますし、裁判すれば賠償金に加えて遅延損害金や一定の範囲で弁護士費用も賠償金として受け取ることができます。

交通事故の慰謝料請求を弁護士に任せるメリットは大きいといえるでしょう。

ただ、交通事故に関する経験が乏しい弁護士に相談してしまうと、適切な賠償金が得られない可能性が高くなりますのでその点には注意しましょう。

まとめ

この記事では交通事故の賠償金の種類や慰謝料の計算方法、損しないためにやってはいけないことをご説明してきました。

賠償金の種類や慰謝料の計算方法それ自体も、被害者が正しく知っておかなければ損することになってしまいますので、自分で対応する場合でも弁護士に相談する場合でもある程度把握しておくことをおすすめします。

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