最終更新日:2024/6/21
起業するには何をすればいい?起業の方法や必要な知識、成功の秘訣なども解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 「起業する」とは何をすることなのか
- 起業に向いている人や成功する起業家の特徴
- 起業に必要な知識やスキル、手続きの流れ
- 起業失敗のリスクを軽減する方法
起業とは「新しく事業を起こすこと」です。特別な資格は不要で、志さえあれば誰でも起業家になることができます。また、会社法の改正により、小さな会社を設立する間口がぐんと広がりました。行政機関などの支援も増え、近年、起業のハードルは着々と低くなっています。
とはいえ、起業には事前準備や手続きが必要であり、向き不向きや失敗のリスクも存在します。「起業したいけど何から始めればいいかわからない」「そもそも自分に起業なんてできるのか」と悩んでいる人も多いでしょう。
この記事では、起業に必要な知識やスキル、手続きの流れなどを解説します。起業に向いている人や成功する起業家の特徴、失敗を回避する方法についてもまとめます。「起業とは何か」を明確に理解し、ぜひとも自身のアイデアを事業として結実させてください。
目次
起業とは「新しく事業を起こすこと」
はじめに「そもそも起業とはどのような行為なのか」を明確にしておきましょう。
冒頭で述べたとおり、起業とは「新しく事業を起こすこと」を意味します。「起業」と聞くと会社設立をイメージする人が多いかもしれませんが、必ずしも「起業=会社設立」とは限りません。
以下では、起業の種類、それぞれのメリット・デメリットをまとめます。まずは起業の種類についてです。
起業の種類
起業には、大きく分けて次の3つのやり方があります。
- 副業・兼業を始める
- 個人事業主として開業する
- 会社設立(法人化)する
以下、それぞれの「起業」について詳しく見ていきましょう。
副業・兼業を始める
副業や兼業を始めることも、起業の一種だといえます。
本業に従事しながら自分の時間を使って別の仕事をするのが「副業・兼業」です。会社などに勤めている状態で、就業時間外に新しく仕事を始めるのも1つの起業のかたちになります。
「起業」というとハードルが高そうなイメージがありますが、起業を目指しているなら、副業・兼業というやり方もあることは覚えておきましょう。
個人事業主として開業する
個人事業主として開業するのも、起業の一種です。
個人事業主とは、管轄の税務署に開業届を提出したうえで事業を営む人を表します。フリーで活動するイラストレーターや(法人化していない)自営業者など、必要な手続きを経て「開業」した人が個人事業主です。
個人事業主として起業する場合、副業・兼業を行うよりも事務手続きが増え、リスクも大きくなります。ただ、会社設立ほどはハードルが高くない起業スタイルだといえます。
会社設立(法人化)する
3つ目の起業の種類は、とくに起業のイメージが強いであろう「会社設立(法人化)」です。
会社設立による起業は、定款の作成や登記申請など、後述する多様な手続きをクリアしたうえでなされます。ゼロからの会社設立はもちろん、個人事業主として起業し、事業が軌道に乗ってから法人化するというケースも多いです。
なかでも設立件数が多い会社形態は、株式会社です。ただ最近では、より設立費用を安くできる合同会社もよく選ばれています。
それぞれの起業方法のメリット・デメリット
代表的な起業のやり方として「副業・兼業」「個人事業主」「会社設立」の3種類があることがわかりました。ここでは、これら3つの起業スタイルのメリット・デメリットをまとめます。
下表が「副業・兼業」「個人事業主」「会社設立」それぞれのメリットとデメリットです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
副業 ・ 兼業 | ・大きな経済的リスクがない ・所得を増やしたりスキルを高めたりすることができる | ・時間の制約がある ・本業に支障をきたす恐れがある ・副業禁止の会社だと実行しづらい |
個人 事業主 | ・時間を自由に使うことができる ・開業手続きに大きな費用や手間がかからない ・比較的容易に税務申告ができる | ・社会的信用を得るのが難しい ・利益が多くなると税負担が重くなる ・事業に失敗したら個人の資産で弁済しなければならない |
会社 設立 | ・社会的信用が高まる ・一定以上の利益があれば個人事業主より節税できることがある | ・設立手続きに時間と費用がかかる ・税務・会計処理が複雑になる ・赤字でも納付すべき税金や社会保険料の負担がある |
「副業・兼業」の最大のメリットは大きなリスクがないことです。「個人事業主」の場合、事業で失敗したときの負債には個人で対処することになりますが、時間に縛られることなく簡単な手続きだけで事業を行えます。
「会社設立」は、設立手続きやその後の事務処理が大変です。ただ、個人事業主よりも社会的信用が格段に高く、他社との取引や金融機関からの融資の面で有利になります。また、所得が一定の額を超える場合、税制上のメリットも大きいです。
起業する場合、「まずは副業・兼業から」「まずは個人事業主から」というようにハードルが低いところから始めるのも大切になります。
起業家とは「自ら事業を立ち上げる人」
起業には、大きく3つの種類があることがわかりました。なかでも「副業・兼業」を起業の一種と考える見方は新鮮だったかもしれません。
ここからは、最も直感的で、かつ実行のハードルが高い「会社設立」にフォーカスして話を進めていきます。
先述のとおり「起業」は広義にとらえられる言葉です。一方で「起業家」というと、多くの場合、意味がやや狭くなります。
起業家とは「自ら事業を立ち上げる人のこと」です。一般的には、独自のアイデアで事業を創り出して「会社設立(および運営)」を行う人を指します。
以下では、起業家に向いている人や成功する起業家の特徴を紹介します。ただその前に、企業家や実業家などの紛らわしい言葉と「起業家」との違いを整理しておきましょう。
企業家や実業家、経営者との違い
「起業家」と似たような言葉には、企業家、実業家、事業家、経営者などがあります。これらと「起業家」との違いを整理したのが下表です。
起業家 | 新しい事業を立ち上げ、会社を設立する人 |
---|---|
企業家 | 企業の経営に取り組む人 |
事業家 | 事業の経営に優れた人 |
実業家 | 生産・流通・販売に関わる事業を行う人 |
経営者 | 会社経営をしている人 |
表からわかるとおり、「起業家」はゼロから新しい事業を生み出すことに重点がある言葉です。一方「企業家」や「事業家」などは経営のほうに重みがあります。
起業に向いている人・向いていない人
続いて、起業家としての資質についてです。起業に向いている人の特徴をまとめると、以下のようになります。
- 考え込みすぎず、すぐに行動できる
- お金の管理ができる
- 論理的思考力がある
- 他者との関係構築がうまい
- 既存の商品やサービスなどに疑問を持つことが多い
- 責任感がある
- 忍耐力や継続力がある
- 物事をポジティブに考えられる
すぐに動き出す行動力、物事を論理的・批判的に考えられる思考力、他者を巻き込んでいけるコミュニケーション能力は、起業家としてとくに重要な資質だといえます。
反対に、起業に向いていない人の特徴は以下のとおりです。
- 不安やトラブルについて考え込むことが多い
- お金の管理が苦手
- 複雑な課題よりも単純作業が好き
- 他者とのコミュニケーションが苦手
- 情報を疑うことが少ない
- 物事に粘り強く取り組んだ経験が少ない
- 物事をネガティブに考えることが多い
基本的には、起業に向いている人とは反対の特徴が並んでいます。起業する場合、事業を起こしたあとの管理・運営にも力を注がなければなりません。行動力や思考力はもちろん、管理能力、継続力、忍耐力なども重要になってきます。
成功する起業家の特徴
ここまで、起業に向いている人・向いていない人の特徴を見てきました。
ここでは、もう一歩踏み込んで「成功する起業家の特徴」をまとめていきます。具体的には、次の3点です。
- すべてのエネルギーを会社運営に注ぐ
- 資金管理に厳しい
- チャンスやタイミングを逃さない
以下、それぞれの特徴を詳しく解説します。
すべてのエネルギーを会社運営に注ぐ
成功する起業家は、すべてのエネルギーを会社運営に注ぎます。会社設立はもちろん、その後の「売上をあげること」に全力を注ぐのが起業を成功に導くポイントです。
たとえば、会社を辞めて起業するケースでは、勤務時間の縛りから解放されたことで一時的にのんびり過ごしてしまう人もいます。そのような人が成功することは極めてまれです。
逆に、一生に一度の正念場として会社運営に全エネルギーを注げる人は、間違いなくその後の成功確率が高まります。
資金管理に厳しい
事業が軌道に乗るまでは、資金が持続する間が勝負です。よって「資金管理に厳しい」というのも、成功する起業家の特徴だといえます。
たとえば、起業したての段階で事務所の内装やエントランスを豪華にするのはあまりおすすめできません。
どのような人でも、資金が減っていくと焦りを感じるようになります。焦りが生じると、ハイリスクなビジネスに手を出したり、借入れをして常に返済のことを考えたりといった事態に陥りかねません。
「資金がなくなったらビジネスは終わり」という意識を持ち、シビアな資金管理を徹底するのが起業成功の秘訣です。
チャンスやタイミングを逃さない
成功する起業家の3つ目の特徴は「チャンスやタイミングを逃さない」です。先述の「起業に向いている人」の特徴のなかにも、すぐに動き出すことができる行動力がありました。
やはり成功する起業家の多くは「今だ!」と思ったらすぐに行動します。いい話が聞けるチャンスや会社を辞めるタイミングなど、好機を逃さずに即行動できる人は起業家として成功しやすいです。
実情として、「お金もある」「知識もある」「得意先もある」のようにあらゆる要素がそろったうえで起業するケースはほとんどありません。「今だ!」と思ったら起業し、軌道に乗るまで全エネルギーを注ぐのが成功への近道です。
起業に必要な知識やスキル
ここまで、起業の種類や成功する起業家の特徴などを紹介してきました。起業を考えている人は、起業のイメージや自身の向き不向きが明確になってきたのではないでしょうか。
ここからは、起業に必要な知識やスキルについて解説します。これらを身につけてから起業するというよりは、身につけていると大きな武器になるというようなイメージで参考にしてみてください。
起業に必要な知識
まずは、起業に必要な知識についてです。とくに重要なのは、以下の2点になります。
- 専門分野に関する知識
- お金に関する知識
専門分野に関する知識
まったく知識や経験のない分野で起業するのは、非常に困難です。一方、起業したい分野の専門知識や業界知識が豊富にあると、起業を有利に進めることができます。
競合がほとんどいないブルーオーシャンは、そう簡単には見つかりません。基本、どのような分野にも競合が存在します。専門分野に特化した知識がなければ、商品やサービスの差別化は難しくなるでしょう。
業界を知り尽くし、独自性の高いアイデアで起業することができれば成功確率も高くなります。
お金に関する知識
起業するうえで何より重要なのは「お金」です。起業するときはもちろん、起業後の経営においてもお金に関する知識は重要です。
たとえば、融資や補助金・助成金の知識があれば、会社の設立や運営にかかる費用負担を軽減できるかもしれません。さらに「助成金はいつごろ入ってくるのか」などもしっかり押さえておけば、資金計画が立てやすくなります。
また、とくに起業後は「管理会計」や「決算書」の知識も重要です。管理会計とは社内の経営管理のための会計のことで、経営判断のカギになります。また、決算書の読み方がわからないと、会社の財務状況が把握できません。
起業家のなかには、お金の知識が足りずに苦労したと語る人が多いです。お金に関する知識をしっかり身につければ、起業をスマートに進めることができるでしょう。
起業に必要なスキル
続いて、起業に必要なスキルについて解説します。起業に活かせるスキルはさまざま考えられますが、代表的なものは以下の2点です。
- マーケティングスキル
- 営業スキル
マーケティングスキル
起業を成功させるには、顧客のニーズをうまくつかんで商品やサービスを展開させる必要があります。その準備段階で大きな武器になるのがマーケティングスキルです。
多様なサービスがあふれる昨今、自社のポジションの明確化や適切なターゲット層の設定は、最も重要な課題の1つでしょう。マーケティングスキルが備わっていれば、利益を最大化する価値提供が可能です。
アイデア出しや市場分析には多くの手法がありますが、何より「顧客のニーズを満たして利益を最大化する」ために、マーケティングスキルは大いに役立ちます。
営業スキル
起業に必要なスキルの2つ目は「営業スキル」です。コミュニケーションスキルや論理的思考力、プレゼンテーションスキルなど、営業スキルには多くの要素が含まれます。
たとえば、起業にあたって投資家から出資を募る場合、事業計画を明確かつ魅力的に伝えなければなりません。自身のアイデアを上手にアピールすることができればスムーズな資金調達につながります。
もちろん、起業後に自社の商品・サービスを顧客や取引先に売り込むときにも営業スキルは有用です。
その他のスキル
マーケティングスキルや営業スキル以外にも、起業に役立つスキルはさまざま存在します。代表的なものは、以下のとおりです。
- 問題解決スキル
- マネジメントスキル
- 業務遂行スキル
- トラブル対応力
- 人に好かれるスキル など
全体的に、難しい課題に対処したり人間関係を円滑に進めたりするスキルであるとまとめられます。
起業に役立つ知識やスキルを身につける方法
続いては、起業に役立つ知識やスキルを身につける方法を簡単に紹介します。人生経験や職務経験を除くと、次の3つの方法が王道です。
- 本やインターネットなどで情報収集する
- 起業経験者の話を聞く
- セミナーや講座に参加する
本やインターネットなどで情報収集する
専門知識や起業のノウハウ、成功者のマインドセットなど、すでに本やインターネットなどで情報を集めている人も多いでしょう。最近は動画での発信も活発に行われており、低コストで学習動画や講演動画を視聴できます。
うまく情報を取捨選択しながら、本やインターネットを存分に利用して自分に必要な知識やスキルを吸収していきましょう。
起業経験者の話を聞く
本や動画も有効ですが、起業経験者の話を直接聞くことができれば、より貴重な経験談が得られます。
最前線で動いているからこその成功談や失敗談、業界知識は、何物にも代えがたい財産です。また、起業家と直接やり取りをすることで人脈も広がり、さらなる学びの機会に恵まれる可能性もあります。
各自治体や商工会議所など、創業支援の一環として起業家との交流会を実施しているところも多いです。起業の意志が固い人は、ぜひリサーチしてみてください。
セミナーや講座に参加する
起業に特化したノウハウを得たいなら、多くの団体が開催しているセミナーや講座に参加するのも手です。
さきほど触れた各自治体や商工会議所などの「創業支援」では、事業計画の立て方や決算書の読み方など、さまざまなテーマでセミナーや講座が開講されています。
起業志望者へ向けた参加無料のイベントは各所で頻繁に実施されているため、自身の状況に合ったものを調べ、参加してみるとよいでしょう。
起業の流れや手続きの方法
ここまで、起業に向いている人の特徴や起業に必要な知識などを解説してきました。起業するうえで自分に何が必要なのか、少しずつ見えてきた人もいるかもしれません。
ここからは、実際に起業するときの流れや手続きの方法を解説します。今後やるべきことの大枠を把握しておけば、よりスムーズに起業を進められるでしょう。
具体的な起業の流れは、次のとおりです。
- 起業の目的や形態を考える
- 事業計画書を作成する
- 資金計画を立てる
- 起業のための手続きをする
- 事業をスタートさせる
以下、それぞれのステップについて詳しく解説します。
1.起業の目的や形態を考える
まずは、起業したい理由や目的をはっきりさせることから始めましょう。
「職務経験や知識を活かして社会貢献したい」や「自分の技術やアイデアを事業化したい」など、人によって起業する目的はさまざまです。起業の軸を明確にしておけば、あとで困難にぶつかったとしても踏ん張ることができます。
また、先述の起業スタイルごとのメリット・デメリットも参考に、立ち上げたい事業が「副業・兼業」「個人事業主」「会社設立」のどれに適しているのかも熟考しましょう。必要なものやリスクを吟味し、状況に合った選択をしなければなりません。
以下では、「会社設立」での起業を想定して各ステップを解説していきます。
2.事業計画書を作成する
起業の目的や形態が決まったら、事業計画書を作成して事業の全体像を可視化します。
事業計画書は、これから事業をどのように展開させるのかをまとめた書類です。頭の中のアイデアを整理したり、資金調達のための参考資料にしたりできます。事業計画書に記載するおもな項目は、次のとおりです。
- 創業の動機(ビジョンや理念)
- 代表者の経歴や資格
- 商品やサービスの内容
- セールスポイントや販売戦略、市場規模
- 販売先や仕入先、外注先
- 借入状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
なお、飲食業や不動産業など、業種によっては国や自治体からの許認可が必要な事業もあります。会社設立の手続きにも大きく関わってくるため、事業計画を立てるときには許認可申請の必要性についても確認しておきましょう。
3.資金計画を立てる
事業計画をまとめ上げるには、事業に必要な資金とその調達方法(=資金計画)についても考える必要があります。
一般に、開業資金の目安は「設立費用+設備資金+運転資金6カ月分ほど」です。開業資金の額は業種によって異なり、必要な資金が多くなるほど自己資金(自分で負担する資金)の割合は小さくなる傾向があります。
とくに「起業に関心はあるが実行に移せていない」という場合、自己資金の不足が障壁になっていることが多いです。
参考:日本政策金融公庫「2023年度起業と起業意識に関する調査」
資金調達の方法には、家族や友人、知人などから借りる手もあります。それ以外にも、次のような方法で資金を集めることが可能です。
- 金融機関などからの融資を受ける
- 補助金や助成金を活用する
- 投資家やベンチャーキャピタルに出資してもらう
- クラウドファンディングを利用する
以下、これらの資金調達方法を詳しく解説します。
金融機関などからの融資を受ける
銀行や日本政策金融公庫といった金融機関は、起業家を対象とした創業融資を行なっています。もちろん審査や返済が必要になりますが、開業資金が不足しているなら検討してみましょう。
たとえば、日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人に向けた融資制度です。とくに女性や若者などは通常より低めの利率で融資を受けることができます。
なお、金融機関だけでなく、各自治体でも創業融資が実施されていることがあります。支援内容は自治体によって異なるため、それぞれのWebサイトで確認してみましょう。
補助金や助成金を活用する
補助金・助成金は、国(厚生労働省、中小企業庁など)や地方自治体による支援制度です。融資とは異なり、返済不要であるというメリットがあります。
たとえば、東京都中小企業振興公社の「創業助成金」は、都内で創業予定の人が利用できる助成金制度です。一定の要件を満たす人を対象に、賃借料や人件費、広告費など、創業初期に必要な経費の一部を助成しています。
投資家やベンチャーキャピタルに出資してもらう
起業時の資金調達方法として、個人の投資家やベンチャーキャピタルに出資してもらう方法もあります。ベンチャーキャピタルとは、成長が期待されるスタートアップ企業やベンチャー企業への投資を専門とする会社のことです。
ピッチコンテスト(事業計画をプレゼンするイベント)に参加したり、起業家と投資家のマッチングサイトに登録したりすることで、投資家やベンチャーキャピタルに出会うことができます。
とくに革新性の高い事業にチャレンジする場合は、検討してみるとよいでしょう。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングとは、インターネット上に事業内容を登録し、不特定多数の人に出資や寄付などを求める資金調達方法です。
クラウドファンディングを利用すれば、自己資金や融資などがなくても起業できる可能性があります。魅力的なアイデアや事業計画を持っているなら、ぜひ検討してみましょう。
4.起業のための手続きをする
事業計画や資金計画がまとまったら、起業(会社設立)の手続きを行いましょう。
会社を設立するには、会社の情報を法務局に登録する「登記(商業・法人登記)」の手続きが必要です。全体的な流れは、以下のようになります。
- 会社の基本事項を決める
商号(会社名)や設立日、事業年度など - 会社の印鑑を作成する
- 定款の作成・認証を行う
- 資本金を払い込む
- 法務局に登記申請をする
登記の前には、会社の基本ルールを定めた「定款」を作成しなければなりません。株式会社を設立する場合、この定款は公証役場で認証を受ける必要もあります(合同会社の場合、認証は不要です)。
会社の基本事項の決定から設立登記の完了までには2〜3週間ほどかかります。手続きにかかる費用は、株式会社の場合だと約24万円、合同会社の場合では約11万円が目安です。
登記が完了すれば、晴れて新会社の誕生です。ただし、登記完了後には税務署や年金事務所などにさまざまな届出をしなければなりません。
5.事業をスタートさせる
起業の手続きがすべて終わったら、いよいよ事業のスタートとなります。
ここまで解説してきたプロセスは、あくまで事業の準備段階です。これからはいっそうのエネルギーを注いで会社運営に勤しむことになります。
起業1年目のリアルは「日々、お金と時間との戦い」です。必要に応じて税理士などの専門家と連携しながら、一生に一度の正念場を乗り越えていきましょう。
起業にともなうリスク
ここまで、起業に至るまでの流れを解説してきました。事業を始める前の段階で多くの山場があることがわかったのではないでしょうか。
ここからは、事業を始める前から起業の後まで、起業にともなうリスクやよくある後悔、失敗例などをまとめていきます。また、起業失敗を回避する方法も紹介します。
よくある後悔・失敗例
まずは、起業でよくある後悔や失敗についてです。以下3点にしぼって解説します。
- 準備に時間をかけすぎた
- 資金繰りの見通しが甘かった
- 社会保険料などの負担が想像以上に重い
準備に時間をかけすぎた
準備に時間をかけすぎてしまう人は、起業で成功しにくい傾向があります。
たとえば「会社の経理をじっくり勉強してから起業する」「必要な設備を一式そろえてから起業する」といった考え方は危険信号です。
「成功する起業家の特徴」でも触れたとおり、チャンスやタイミングを逃すことなくすぐに行動する人のほうが、起業では成功しやすいです。
資金繰りの見通しが甘かった
ここまで、起業における「お金」の大切さは随所で解説してきました。実際、資金繰りに対する認識の甘さは、起業で失敗する人の共通項ともいえます。
また、事業を軌道に乗せた起業家のなかにも、資金繰りの面で後悔が残った人は多いです。イメージ通りにお金が入ってこなかったり、助成金の交付時期を考慮し忘れたり、資金にまつわる後悔はさまざまです。
起業を成功させるには、徹底的な資金管理が重要になります。
社会保険料などの負担が想像以上に重い
同じく「お金」に関する後悔として、社会保険料などの負担が予想以上に重いというものもよく語られます。とくに個人事業主が法人化するケースで多い後悔です。
会社設立をしたら、社会保険料や法人住民税(均等割)など、たとえ赤字でも支払わなければならない費用が発生します。
資金が減っていくと誰でも焦りを感じてしまうものです。そのような状況でも論理的に思考・行動し、事業を軌道に乗せることが起業家には求められます。
起業失敗のリスクを軽減する方法
起業経験者に多くの後悔があるということは、それだけ失敗のリスクも大きいということです。しかし、あらかじめそのリスクを軽減する方法を知っていれば、わずかでも不安は小さくなるでしょう。
ここでは、起業失敗のリスクを軽減する方法を紹介します。ポイントは、次の5点です。
- 小さく起業する
- 経費をかけすぎない
- 商品・サービスのニーズを調査する
- 変化に柔軟に対応する
- 信頼できる相談相手を見つける
以下、それぞれ詳しく解説します。
小さく起業する
「せっかく起業するからには大きなことをしたい」という強い思いがある人も多いかもしれません。ただ、失敗のリスクを減らしたいなら「小さく起業する」ことも検討しましょう。
たとえば、自身のアイデアや経験を詰め込んだ学習教材を日本中に広めたいというケースを考えます。
この場合の「小さな起業」は、いきなり会社設立に入るのではなく、まずは副業としてWebサイトやSNSを運営し、十分な集客が見込めるようになってから法人化に踏み込むようなイメージです。
顧客に価値を提供できる最小限の製品・サービスから事業を始めれば、起業失敗のリスクも最小限にできます。
経費をかけすぎない
開業から間もないころは日々お金と時間との戦いです。余計な経費をかけず、売上をあげることだけに全力を尽くさなければなりません。
業種によっては、店舗の設備やホームページなどに多くの資金を投じるべきケースもあるでしょう。ただ、その必要性がないなら、体裁面に多くの経費をかけるのは避けたほうが無難です。
起業失敗のリスクを軽減するには、どこまでも「お金」にシビアになる意識が大切になります。
商品・サービスのニーズを調査する
どれだけ画期的なアイデアがあっても、そこから生まれる商品・サービスに需要がなければ事業としての成功は厳しくなります。
起業して売上をあげていくには「その商品・サービスが誰かのためになること」が必須条件です。
事業計画を立てるときなどに、あらかじめ顧客からのニーズを徹底的にリサーチしておけば、起業の成功確率は高まります。
変化に柔軟に対応する
テクノロジーの発展で消費者行動が変わったり、災害や疫病などにより生活環境が変わったり、世の中には「変化」が付き物です。
場合によっては、そのような変化に対応して本来の計画の修正が迫られることもあるでしょう。
固定観念にとらわれず、状況に合わせて柔軟に軌道修正することができれば、時流に乗り遅れるというような失敗は避けられます。
信頼できる相談相手を見つける
起業失敗のリスクを軽減するには、信頼できる相談相手の存在も大切です。
実体験をもとにアドバイスをくれる起業家の先輩、会社運営のサポートをしてくれる専門家など、よきメンターやビジネスパートナーの存在は起業成功の推進力になります。
信頼できる相談相手を探したいなら、まずは公的機関の相談窓口などを訪ねてみるのもよいでしょう。
起業における業種の人気ランキング
最後に、起業において人気の高い業種をランキング形式で発表します。ラインナップは次の3点です。それぞれ5種類ずつ紹介します。
- 在宅ワーク希望者に人気の業種
- 女性に人気の業種
- 腰を据えて事業に取り組みたい人におすすめの業種
在宅ワーク希望者に人気の業種
起業といっても、その事業のためにすべての時間を使う必要はありません。
さきほど「小さな起業」の話があったように、なかにはわずかなスキマ時間を使って事業を始めようと考えている人もいるでしょう。
それを踏まえ、ここでは「在宅ワーク希望者に人気の業種」をご紹介します。
1位 ネットショップ
ネットショップは実店舗とは違って、店舗を借りたり多くの在庫を抱えたりする必要がありません。1人での開業もできるため、比較的手軽にスタートできる業種です。
ショップ運営のノウハウがない人でも、レンタルショッピングカートと呼ばれるサービスを利用すればWebサイトの作成も可能です。
決済手段の導入や集客に関するサポートなども充実しており、これらを活用すれば問題なく開業できるでしょう。
ただし、ライバルも多い業種であるため、どのように自分の色を出せるかが成否の別れ目となります。
2位 コピーライティング
コピーライティングは、商品・サービスを売るための記事やキャッチコピーを執筆する仕事です。おもに企業をクライアントとして仕事を受注します。
副業から始める場合、クラウドソーシングサイトなどのコンペに応募するのが王道です。文章作成のセンスだけでなく、商品・サービスの理解やクライアント企業との連携も大事になってきます。
文章力を活かしたクリエイティブな事業をしたいという人に最適な業種です。
3位 プログラミング
プログラミングは、事業として始めるにはある程度の学習を積む必要がある業種です。
プログラミングを学んでいくと、Webサイトの作成やゲーム・アプリの開発などが可能になります。
プログラマーの需要は伸びていますが、まだまだ人材不足なのが現状です。オンラインで気軽に学習をスタートさせ、そこから起業に至るケースも少なくありません。
4位 動画編集・配信
最近では、YouTubeなどの動画投稿サイトに動画をアップし、再生回数に応じた収入を得るというビジネスモデルが広く認知されるようになりました。
なかには「動画編集・配信はすでに飽和状態で、これから動画配信ビジネスを始めても儲からないだろう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、5Gの通信サービスも始まり、最近は動画コンテンツのダウンロードさえ高速でできる時代です。移動中などにもスマホで手軽に動画を見れる現在、まだまだ動画編集・配信の需要がなくなることはないでしょう。
5位 アフィリエイト
アフィリエイトとは、自分のサイトやブログ記事をとおして広告収入を得るビジネスのことです。サイト内に設置した広告から売上が発生すると、広告主から紹介料が支払われます。
アフィリエイトを専門に行う人は「アフィリエイター」と呼ばれることもあります。コピーライターやWebライターとの違いは、自身でWebサイトやブログの運営を行っているという点です。
記事を書くたびに報酬がもらえるわけではありませんが、軌道に乗れば1つの記事で何年にもわたって報酬が発生し続けることも珍しくありません。
女性に人気の業種
続いては、女性に人気で、比較的簡単に開業できる業種をランキング形式で紹介します。
1位 家事代行
家事代行は、人との接触の多い業種が売上を落としていたコロナ禍でさえ、成長産業として知られていました。
初めから自分で家事代行業を始める手もありますが、代行を求める人とのマッチングサイトに登録したり、フランチャイズに加盟したりする方法もあります。
フランチャイズのオーナーになる場合、既存のビジネス基盤を活用して仕事やノウハウを得られる点がメリットです。ただ、加盟費用や手数料などがかかります。開業にあたって多額の資金は必要ないため、ゼロから始めることも十分可能です。
2位 ネイルサロン
ネイルサロンは、従来、店舗を開いて集客するのが当たり前でした。しかし、SNSなどを使って広く集客できるようになり、店舗の形態にも変化が出ています。
たとえば、自宅で開業したり出張サービスを展開したりすれば、店舗なしでも事業を行うことが可能です。
自宅で開業すれば開業資金はかなり抑えられ、出張サービスであれば道具を準備するだけで済みます。
ネイリストとしての技術を磨くためにスクールへ通う必要はありますが、その時間や費用も無駄にはならないでしょう。
3位 オンライン教室
料理や語学、楽器演奏などのスキルを持つ人であれば、オンライン教室を始めるという選択肢もあります。
教室を借りる場合とは違って自宅で開講できるため、オンライン教室だと開業にかかる経費を最小限にすることが可能です。また、事業主にとっても顧客にとっても、教室へ移動する手間や時間がかからないのは大きなメリットでしょう。
スキルを活かして教室を開きたい場合、ぜひオンラインでの開講も検討してみてください。
4位 事務代行
事務職といえば、一般的に派遣社員やパートなどとして会社に勤務することをイメージするかもしれません。
しかし、インターネットで事業を展開する企業のなかには、在宅でできる事務的な仕事を外部に依頼するところもあります。商品の出品登録や案内文などのテキスト作成、データ入力など、その内容はさまざまです。
また、SNS運営や画像の作成・加工など、初めての人でも取り組みやすい仕事もあります。
仕事内容にバリエーションがあるため、自分に合った業種を探してみるとよいです。
5位 Webライティング
Webライティングは、企業のオウンドメディアや個人ブログなど、Web上の記事を執筆する仕事です。
パソコンとインターネット環境があれば始められるため、実質的に開業費用はかかりません。また、忙しさに合わせて仕事量を調節しやすいというメリットもあります。
もちろん、文章を書くことが好きでなければ継続は難しいです。ただ、飛び抜けた文章力がなくても、特定の分野に関する深い知識がある人は重宝されます。
芸能やコスメ、ファッションなど、多様な分野にニーズがあるため、比較的始めやすい業種だともいえます。
腰を据えて事業に取り組みたい人におすすめの業種
起業するからには、しっかり稼げる事業をしたいという人も多いでしょう。
最後のランキングは、腰を据えて取り組むことができる業種ランキングです。
1位 移動販売
移動販売の代表例として、キッチンカーがあげられます。
移動に使う車両を購入したりキッチンなどの設備を導入したりするため、開業にはある程度の資金が必要です。
また、飲食物の移動販売では、保健所の営業許可と食品衛生責任者の資格も必要です。誰でもすぐに始められるというわけではありません。
ただ、飲食店を始める場合に比べて、開業費用は少なく済み、固定費もそれほどかかりません。
場所に大きく縛られず、変化に柔軟に対応できる飲食店の経営形態として、移動販売は注目されています。
2位 買取サービス
買取サービスは、自宅に眠っているあらゆるものを買い取る事業です。古くから、貴金属や本などの買取りは事業として成り立っていましたが、最近ではそれ以外の日用品も買い取る事業者がいます。
ただ、買い取るだけでは事業は成り立ちません。買い取った商品は、買取価格より高い金額で売る必要があります。
金額の設定などを考えると素人では難しそうですが、家事代行と同様、フランチャイズを利用するのも1つの方法です。
フランチャイズに加盟すれば、開業や事業運営のサポートを受けられます。さらに値決めなどのノウハウも学べます。
環境問題への意識の高まりやフリマアプリの普及により、今後さらに買取サービスの需要は高まることでしょう。
3位 代行サービス
代行サービスも、古くから行われている事業の1つです。なかでも最近は輸入代行や配達代行が人気となっています。
輸入代行とは、小売店や工場などの代わりに海外製品を購入し、輸入する仕事のことです。SNSやオンラインショップの発達により、海外製品を個人的に輸入したいという需要も生まれています。
一方、配達代行とは、これまで配達を行っていなかった事業者の依頼を受けて配達を行う事業です。とくに飲食店の配達代行は、コロナ禍に大きく注目されました。代行サービスは、顧客を取り巻く環境が変化していくなかで必然的に需要が高まる業種だといえます。
4位 高齢者向けサービス
超高齢社会である日本では、高齢者向けのサービスに大きな需要があります。
高齢者のなかには、デイサービスに通ったり介護施設に入所したりする人も多いです。ただ、とくに介護施設に入所しようとする場合、経済的な負担が大きく、かつ定員などの問題もあって望みどおりに入所できるとは限りません。
そのため、自宅で無理なく過ごせるよう、家事やお墓参りなどを代行業者に依頼する必要性も出てきます。
社会が抱える問題に向き合い、かつ人のためになるサービスは、時代を問わず常に求められる業種です。
5位 パン屋・カフェ
最後に紹介するのは、店舗形態のパン屋やカフェです。
人気の理由としては、親しみやすい業種であることやリピーターを得やすいことがあげられます。
これらの事業を成功させるには、特色のあるメニューを開発して新しい顧客を獲得しつつ、常連客を放さない経営戦略も必要です。
また、開業にあたってはまとまった資金が必要となります。
起業に関する不安や迷いは専門家に相談しよう
起業の種類には「副業・兼業」「個人事業主」「会社設立」の3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
起業を成功させるには、すぐに動き出す行動力や論理的思考力、人を巻き込んでいく高いコミュニケーション能力が重要です。さらに、専門分野の知識やお金の知識も身につけていると起業を有利に進められます。
とくに会社設立の場合、多くの手続きや失敗のリスクがあることを覚悟しなければなりません。少しでも失敗のリスクを軽減するには、信頼できる相談相手を見つけることが大切です。起業に関する不安や悩みは、専門家を頼って解決するのもよいでしょう。
ベンチャーサポート税理士法人では、親身でわかりやすい説明を心がけ、会社設立に関する無料相談を実施しています。税理士だけでなく行政書士や司法書士も在籍しているため、ワンストップで相談することが可能です。初めて相談する方も、お気軽にご活用ください。