最終更新日:2026/2/19
起業するには何をすればいい?手続きの流れと起業準備について解説

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

- 起業するために最初にすること
- 会社設立と個人事業主の違い
- 起業の手続きや資金調達の注意点
起業するには、計画性が大切です。「やりたいことがある」といった勢いやノリだけで進めると、資金不足や手続きの遅れ、ビジネスの停滞につながることもあります。
起業は極めて現実的なものであるため、まずは目的を明確にし、事業計画と資金計画を作り、必要な手続きを順番に進めることが重要です。
起業の形は大きく分けて、会社設立と個人事業主の2つがあります。また、会社設立をする場合は会社の形態や出資についても判断する必要があります。
この記事では、起業する際に最初にやること、起業形態の選び方、資金調達の基本、手続きの流れ、起業前に知っておきたい注意点などをわかりやすく解説します。


目次
起業するには何から始めればいい?
起業するには準備が欠かせません。いきなり会社設立や開業届から始めるのではなく、先に「情報収集」や「計画立案」を行うのがポイントです。
特に最初は、理想と現実の差が大きくなりやすいため、経験者の話を聞き、実際の数字を見て現実的な見通しを作ることが重要になります。
まずは同業者の経験者から話を聞く
起業準備の第一歩は、同業の経験者から具体的な話を聞くことです。
ネットの情報は幅が広く、自分のビジネスに当てはまるとは限りません。経験者の話は「何に困ったか」「どこでお金が出ていったか」が具体的で有益です。
話を聞く際は、以下の項目リストを参考にうまく情報収集をしましょう。
- 起業のきっかけ、目的
- 初年度の売上や利益の見込みの組み立て方
- 起業時の資金の目安
- 固定費
- 集客の方法と効果
- 失敗談
- 起こったトラブル
- 税理士や司法書士などに相談するタイミング
- 個人情報や契約書の管理
- 起業前にやっておけばよかったこと
リアルな情報を集めることで、起業の際の優先順位が見えてきます。
起業の目的をはっきりさせる
起業する際には目的がはっきりしている必要があります。
もちろん大きな目的は「利益を上げること」ですが、どのような事業でどれほどの利益を上げるのか、売上が伸びたときに人を雇うのか自分で対応するのかといった点も、ビジネスモデルに影響するポイントです。
目的を整理する際は、次の3点を言葉にするとよいでしょう。
- どのようなニーズに応えるビジネスか
- どのような顧客をターゲットにするか
- いつまでにどれくらい売上を伸ばしたいか
明確な目的が定まると、必要な資金や起業形態、集客方法が見えやすくなります。
事業計画書・資金計画
起業するにあたっては、事業計画書と資金計画をセットで作ることが重要です。
売上の見込みだけを書いても、それはあくまで試算であるため資金繰りには直結しません。また、ビジネスが成功して利益が出ていても、その売上を支えるための人手やしくみがなければビジネスは成立しなくなってしまいます。
事業計画と資金計画は常にリンクして、整合性がとれるものでなければなりません。まずは「具体的な数字で考える」ことが大切です。
起業するときに選べる主な形態
起業の形態には、主に法人(会社)設立と個人事業主の2つがあります。ここでは、会社設立と個人事業主の違いを解説し、起業時の選択に役立つようにしくみを整理します。
会社設立
会社設立は、会社(法人)を作って事業を行うという起業方法です。
設立後は、個人ではなく法人の名義で契約し、資金の管理も行います。会社であれば対外的な信用を得やすいため、資金調達や雇用を視野に入れる人に向いています。
会社設立をするためには、定款の作成や登記などの手続きが必要です。
株式会社・合同会社の違い
現在、設立できる会社の形態は以下の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
もっとも、新しく設立される会社のほとんどは株式会社と合同会社です。
株式会社は、株式の発行ができ、会社の所有と経営を分離できるというのが特徴です。合同会社は出資者が会社の経営を行うスタイルの会社であり、設立時の手間を抑えられるというメリットがあります。
会社設立のメリット・デメリット
会社設立には、取引や資金調達の面でメリットがあります。
法人は法律で認められた組織であるため、取引先からの信用を得やすい傾向があります。また、会社専用の口座と厳格な会計ルールによって資金を管理するため、会社の資産と個人の資産を分けやすく、お金の流れが明確になります。
ただし、会社設立には手続き面の大きな負担があります。設立登記や各種届出など、起業時に必要な作業が多いため、準備期間と事務負担は個人事業主より増大します。
また、費用面も会社設立のほうが負担が大きいです。一般に、株式会社では約24万円、合同会社では約11万円かかります。
個人事業主
個人事業主は、会社を作らずに個人名義で事業を始める起業方法です。
手続きがシンプルで、開業届などを提出するだけでスタートできます。まずは個人事業主として起業し、ビジネスが軌道に乗ったタイミングで法人化する流れも一般的です。
個人事業主のメリット・デメリット
個人事業主のメリットは、開業までの手続きがシンプルである点です。ただし、対外的な信用面で法人に劣る面があるというデメリットもあります。
また、会社ではなく個人ですべての責任を負うためプレッシャーがかかるという点もデメリットといえるでしょう。
会社設立か個人事業主か迷ったときの考え方
会社設立か個人事業主かで迷ったら「ビジネスの見通し」や「事業規模」を考えてみましょう。
必要な資金や取引先の規模、従業員を雇用する予定の有無などを考慮したうえでどちらを選ぶか判断するといいでしょう。
起業するにはいくら必要?資金調達の基本
起業に必要な資金は、業種や規模で大きく変わります。
起業する場合は、雇用の有無、取得する不動産の価格、設備資金などを洗い出し、「固定費」「初期費用」「運転資金」を見極めることが大切です。
自己資金でまかなう場合
自己資金は、最も自由度が高い資金です。自分自身の財産であるため返済も必要ありません。
ただし、起業するための自己資金は一般に少額ではないため、場合によっては年単位で貯蓄をして計画的に資金を貯める必要もあります。また、退職後に起業する場合、退職金を起業資金に充てるケースもあります。
また、自己資金に余裕がない場合は、生活が不安定になりやすい点に注意が必要です。自己資金をメインにして起業するなら「生活費」と「運転資金」を分けることも大切です。
融資
自己資金のみでは資金が足りない場合は、融資という方法があります。
日本政策金融公庫や信用保証協会を通した融資は起業の際にもよく利用されます。当然ですが、融資を受ける場合は、返済計画が最重要になります。
融資の準備では、次の点を整えておくと説明がしやすいです。
- 事業計画書
- 資金使途
- 月次の資金繰り表
融資を受ける場合は、いくら必要なのかや審査を通過できるのかだけでなく、無理なく返済できるのかも考えて計画を立てましょう。
補助金・助成金のチェック
起業の際に利用できる補助金や助成金は必ずチェックしましょう。条件に合えば資金負担を減らせます。補助金や助成金は、制度により対象経費や申請時期が異なるため、事業計画と合わせて確認が必要です。
補助金や助成金は必ずもらえるとも限りませんが、審査を通過した場合は返済不要のものが多いため、利用できる制度は見逃さないようにしましょう。
補助金はスタート時の資金調達には向いていない
補助金や助成金は、原則、後払いです(制度によって概算払いが認められる場合もあります)。
つまり、基本的には先に支出が発生し、あとから精算されるという形になります。そのため、起業直後の資金繰りの柱にはできないのが現状です。
また、補助金は会計・税務上の「収入(課税対象)」になり得るため、利用の際には税理士等に確認することも大切になってきます。
補助金や助成金は、あとで上乗せできる可能性のある追加要素として位置づけ、運転資金とは切り離して考えておくと安全です。
起業するために必要な手続きの流れ
起業の手続きは、会社設立か個人事業主かで流れが変わります。ここでは、それぞれの起業形態の手続きを簡単にまとめていきます。
会社を設立する場合
会社を設立して起業する場合は、会社の定款作成や登記などの手続きが必要です。
この一連の手続きは専門家に依頼することも自分で進めることも可能です。自分で進める場合は、必要書類や手続きの流れを把握してから進めることをおすすめします。
定款作成・認証
会社を設立する場合は、定款を作成しなければなりません。また、株式会社の場合は、設立登記の前に公証役場で定款認証を受けます。
定款は会社の基本ルールであり、すべての会社が必ず作成するものです。記載事項にはルールもあるためしっかり確認しましょう。
設立登記の準備と手続き
定款の作成や認証を終えたら、資本金の払込みを行います。そして必要書類を作成して法務局で設立登記申請をします。
法務局での設立登記が完了すると法人が成立し、法人名義で契約や口座開設ができるようになります。
設立後に必要な税務署・年金事務所などへの届出
設立登記が完了したら、税務署などへの届出を行います。ちなみに法人は社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きが必須です。
提出先は税務署や都道府県税事務所、市町村役場、年金事務所などです。届出には期限があるものもあるため(たとえば税務署への法人設立届出書の提出は設立から2カ月以内)、設立直後のタスクとして事前に整理しておきましょう。
個人事業主の場合
個人事業主として起業する場合、会社設立よりも手続きはシンプルです。個人事業主の開業にあたっては、登記費用などは必要ありません。
開業届の提出
個人事業主として事業を始めるときには、税務署へ開業届を提出します。
開業届の提出期限は、開業時期により異なります。2026年1月1日以後の開業であれば、開業した年分の確定申告期限までです。
青色申告を希望する場合は、青色申告承認申請書の提出も行います。青色申告を選択すると、帳簿作成や資金管理の手間は増えますが、税務上のメリットを得られるため早い段階で検討しましょう。
なお、会社設立にしろ個人事業主の開業にしろ、取引先が法人中心(BtoB)ならインボイス登録の要否も実務上重要になります。
参考:D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁
起業するために必要な知識や資格
起業するには、提供する商品やサービスだけでなく、ビジネスとして運営していくための知識が必要です。特にお金、集客、人を雇う際のルールは起業するのであれば知っておくべきでしょう。
お金の基礎
起業で重要なのは、単に利益を上げることだけでなくお金の流れを把握することです。
たとえば、売上があっても入金が遅れて資金不足になるケースもあります。そのため、いつどこからどのくらいのお金が入ってくるのか、支払いはいつなのかなど、キャッシュフローを正確に把握することが重要です。
また、利益が出ると税金が発生するため、納税資金も念頭に置いておく必要があります。
マーケティング・集客の基本
起業後の集客は、経営を大きく左右します。どのような方法で誰をターゲットに広告を打ち出すのかはとても大切です。
SNSやWebサイトなどの運用についても、ターゲットに合わせて検討しましょう。
労務管理や労働保険の基礎
人を雇う場合は、雇用契約や労働時間の管理、労働保険(雇用保険・労災保険)の加入義務が発生します(雇用保険については、労働時間等の要件によって例外あり)。
人件費は固定費になりやすく、資金繰りにも大きく影響します。採用を予定している場合は、売上計画と合わせて人件費を織り込む必要があります。
また、労働基準法を遵守して違法行為がないようにしましょう。
起業に資格は必要ない
起業するために絶対に必要な資格はありません。会社設立だろうと個人事業主だろうと、定められた手続きをすれば誰でも起業できます。
資格や許認可が必要な業種もある
起業そのものには資格は不要ですが、業種によっては有資格者がいなければ営業できないものや、許認可が必要になるケースがあります。
| 業種 | 主な許認可・登録 |
|---|---|
| 宅建業務 | 宅地建物取引業免許 |
| 酒類販売 | 酒類販売業免許(小売・通販・業務用等) |
| 建設 | 建設業許可 |
| 運輸 | 一般貨物自動車運送事業等 |
| 介護 | 介護保険事業者の指定 |
| 人材派遣 | 労働者派遣事業許可 |
| 産業廃棄物処理 | 収集運搬・処分の各許可 |
| 旅行 | 旅行業登録(第1種〜地域限定) |
| 一次産業 | 農地転用・漁業権等 |
起業するためにあるとよい知識や資格
起業にあたって、持っていると役に立つ資格もあります。以下は、その一例です。
| ファイナンシャルプランナー | 資金計画、保険、税制、投資などの幅広い知識を持つお金の資格 |
|---|---|
| 日商簿記 | 企業経営の基礎的な知識を網羅した会計の資格 |
| ビジネス実務法務検定 | 契約や知的財産、コンプライアンスなど、企業法務に関する基礎知識を問う資格試験 |
| 中小企業診断士 | 経営コンサルティングの国家資格 |
| TOEIC | 英語のリスニングとリーディング、スピーキングとライティング能力を数値化する資格試験 |
上記以外にも、業種によってあれば便利な資格もあります。自身の業種に合った資格の取得を検討してもいいでしょう。
起業する前に知っておきたい注意点
起業は、準備不足のまま進めてしまうと「資金が尽きる」「生活が崩れる」「手続きが遅れる」といった問題が起きやすいです。
トラブルを回避するために、起業前に最低限押さえたい注意点を整理します。
生活費と事業資金は明確に分けて考える
起業する場合は、生活費と事業資金をはっきりと区別する必要があります。
会社設立をした場合は、自分の会社であっても会社のお金と自分の資産はしっかり区別しなければなりません。個人事業主も、経費に関してはできるだけ区別するようにしてください。
勢いだけの起業はリスクが大きい
勢いやその場のノリで起業すると失敗のリスクが高くなる傾向があります。
もちろん勢いで起業して成功する例もありますが、起業する前にイメージを膨らませて、しっかりと準備するのが王道です。
起業は「あたればラッキー」というギャンブルではなく、入念に準備をしながら着実に進めていくものです。
起業するには入念な計画が大切
起業するには、目的を明確にし、事業計画と資金計画を作成し、手続きの流れまで押さえて準備を進めることが重要です。
特に起業の初期は理想と現実の差が出やすいため、経験者の体験談を参考にしながら現実的な見通しを立てましょう。
起業の形態は、会社設立と個人事業主の2つが中心です。どちらを選ぶかで、起業の際の手続きや手間、起業後の運営が変わります。
また、資金面では、固定費・初期費用・運転資金の計画、生活費と事業資金を混同しないようにするための管理が必要です。
起業するにあたっての手続きや税務上の判断に不安がある場合は、税理士や司法書士など専門家に相談することをおすすめします。













