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最終更新日:2022/6/7

起業のやり方をイチから解説│法人・個人事業主の各種手続きと起業準備のポイント

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

サラリーマンとして働いている人の中には、いつか起業を実現させたいと考えている人も少なくないでしょう。

しかし、実際にはどのような方法で起業ができるのか、具体的にはどのような手続きが必要になるのか、起業までに何をしなければならないのか、などやり方がわからない方も多いものです。

この記事ではこれから起業を志すにあたって、個人事業主と法人という2つの起業スタイル、それぞれの起業のやり方、起業準備のポイントについて詳しく解説いたします。

自分に合った起業の形を考えるために参考にしてください。

起業には2つの方法がある

自分で事業を起こすことを起業するといい、この起業のやり方は大きく分けて2つ存在します。

  • ①個人事業主として起業する
  • ②法人を設立して起業する

の2つです。

自分が思い描く事業の形を実現するためには、どちらを選択するのがよいのか、それぞれの特徴を把握して検討してみましょう。

個人事業主とは

会社員が会社と雇用の契約を交わしている関係なのに対して、雇用関係がなく個人で事業を行う人のことを個人事業主といいます。

必ずしも1人で事業を行う場合を指すわけではなく、従業員を雇用することもでき、法人でない限りは個人事業主ということになります。

個人事業主のメリット

個人事業主のメリットを確認してみましょう。

起業手続きが容易であること

法人に対して起業手続きが非常に簡便であるといえるでしょう。

「個人事業主の開業・廃業等届出書」を税務署に提出するだけで完了となります。

一方で、法人の設立手続きは、複数のステップを踏む必要があり煩雑です。

詳しい方法については後述いたします。

税金の算出が容易であること

個人事業主として起業すると、年に一回、一年間の収支を自分で計算して所得税を算出する確定申告が必要になりますが、法人に比べるとこの計算も非常に楽に済ませることが可能です。

確定申告の方法には「青色申告」と「白色申告」の二種類が存在し、青色申告であれば65万円の所得控除を狙えるため、非常に節税効果が高くなります。

フリーランスとの違い

フリーランスと個人事業主は似ているようで、少し違います。

フリーランスは、一つずつ単発での委託で仕事の契約を結んで、その案件ごとに仕事をする働き方のことを指します。

一方で、個人事業主は前述のように税務署に開業の届けを提出した人のことで、税務上の所得区分で法人を設立しないで個人で事業を営む人を指します。

法人であれば法人の所得として売上を申告し、個人事業主であれば個人の事業所得として売上を申告することになります。

働き方を指す言葉、税務上の所得区分を指す言葉、というのがフリーランスと個人事業主の違いということになります。

法人とは

一定の社会的活動を営む組織体のことを法人といいます。

法律によって権利能力が認められたもののことを指し、会社・労働組合・私立学校・神社などは法人ということになります。

個人事業主との違いは、会社という組織体であるという点に要約されるでしょう。

法人のメリット

個人事業主のメリットで挙げた点は裏を返すと、設立の手続きや税金算出のステップが煩雑になるなどの点で、そのまま法人のデメリットにあたります。

その一方で、法人のメリットも多数あります。

社会的信用が大きいこと

個人事業主と比較すると、法人は社会的信用度が高いといえるでしょう。

企業の中には、企業同士でしか取引に応じないところも少なくありません。

一個人事業主と一法人が同じ土俵に立った時は、取引先の選定や銀行からの借入等において法人が優遇されることが珍しくないのも、社会的な信用度が影響しているといえます。

赤字を最長で9年繰り越せること

個人事業主が赤字を最長で3年しか繰り越しできないのに対して、法人では最長で9年繰り越すことができます。

個人事業主に比べて、非常に節税効果が高いといえます。

株式発行で資金調達が可能であること

事業の運営において資金調達は欠かせませんが、個人事業主と違って法人では株式を発行することでの資金調達が可能です。

自己資金や銀行融資等に限らず、株式での調達という選択肢が増えることはメリットであるといえるでしょう。

個人事業主から法人になるという選択肢

個人事業主と法人のそれぞれの特徴を理解した上で、どちらにもこだわる理由が特にない場合は、個人事業主から事業を開始することがおすすめです。

手続き面・経理面で圧倒的にかかる手間が少ない分、事業の施策に十分な時間を費やすことが可能です。

事業が軌道に乗ってくると、法人に変更するという方法もあります。

これを「法人成り」といいます。

対外的な信用が増すことでビジネスチャンスが増えたり、節税の面でのメリットを多数享受できるようになります。

まず個人事業主から事業を始めて、成果を上げられたら法人成りを目指すという段取りを検討してみてください。

個人事業主の起業のやり方

個人事業主として起業をする際には、開業から一ヵ月以内に、その事業の拠点となる住所を管轄する税務署に「個人事業主の開業・廃業等変更届出書」を提出して手続き完了となります。

法人設立に比べると、非常に簡便な手続きであるといえるでしょう。

65万円の所得控除が受けられる青色申告の手続きもこの段階で済ませておくのがおすすめです。

「青色申告承認申請書」も税務署に提出するようにしましょう。

従業員を雇用する予定がある場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」も税務署に提出しておくことになりますので、忘れないように注意しましょう。

また、都道府県や市町村によっては、「事業開始等申告書」の提出が必要な場合がありますので、各自治体の制度や取り決めについて事前にご確認ください。

個人事業主が開業前にやっておくべき準備

下記では、個人事業主を目指している人が事前にやっておくべき準備を紹介します。

業種を決めておく

開業届では、自分の業種を記入しなければいけません。

下記のような業種の中から、自分に該当するものを選択します。

  • ・農業/林業
  • ・漁業
  • ・建設業
  • ・情報通信業
  • ・卸売業/小売業
  • ・不動産業
  • ・学術研究/技術サービス
  • ・生活関連サービス業/娯楽業
  • ・医療/福祉
  • ・サービス業 など

複数の事業を行う場合は、業種の税率に着目しましょう。

業種によって税率が異なるため、メイン事業が複数ある場合は、なるべく税率の低いものを選んでください。

それだけで節税に繋がるため、最初の業種選びは重要です。

不安な人は、税理士などの専門家に相談してみましょう。

事前にチャレンジしてみる

未経験の状態で、いきなり開業して事業を始めるのは危険です。

なぜならどれぐらい準備をしても、実際にビジネスを始めなければ、成功するか分からないからです。

リスクをなるべく抑えるために、開業前に事業を小さく試してみて、うまくいきそうかの検証をするのがおすすめです。

実際にやってみると「これはうまくいくぞ!」とか「思っていたよりも難しいもの」といった答えが出てくるはずです。

その結果を元に、事業を大きくしたり他の仕事に切り替えたりする方がリスクもありません。

できれば開業前に事業を試してみて、うまくいけば開業する形が安全でしょう。

クレジットカードを作っておく

個人事業主として仕事を始めると、社会的な信用がないため、クレジットカードが作れなかったりローンが組めなかったりします。

「個人事業主になってカードが作れない」というのは、よくある話です。

もし会社員から個人事業主として独立しようと思っているなら、会社員のうちにクレジットカードを作っておきましょう。

一度カードを作っておけば、個人事業主になったとしても、問題なく利用できます。

クレジットカードは会社の支払いなどでも利用できるため、複数枚持っておいて損はありません。

年金・税金・保険の確認

個人事業主は、年金・税金・健康保険の支払いをすべて自分で行う必要があります。

そのため個人事業主として開業するなら、それらの支払いについて事前に確認しておきましょう。

できれば金額も確認して、税金支払い用のお金を準備しておくと、より安全ですね。

特に会社員から個人事業主になった場合には、会社員時代の税金支払いが残っていることが多く、思った以上に税金を払うケースもあります。

不安な場合は、税理士などの専門家に相談して、事前に準備しておきましょう。

法人の起業のやり方

法人設立は個人事業主の起業と違って煩雑です。

まず大きなポイントを4つ押さえておく必要があります。

  • ①定款の認証を受ける
  • ②法務局で登記する
  • ③税務署へ届出する
  • ④社会保険の手続きをする

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

定款の認証

まず、定款を作成することから始まります。

定款とは、会社の基本となる規則のことで、組織のつくりや事業運営における全ての基盤となるものです。

定款の作成にあたって押さえておくべきポイントを確認しましょう。

社名を決める

会社名が決まっていない場合でも、この段階で決める必要があります。

人に覚えてもらいやすいか、ホームページを作成する際にドメインを取得できるものか、などあらゆる要素を考慮して決めるようにしましょう。

印鑑を作成する

定款には押印をする必要があるため、法人の印鑑作成も必要です。

実印・銀行届出印・角印の3つは少なくとも準備するようにしましょう。

出資金を用意する

出資金をいくらに設定し、誰がどのような形で準備をするのかを決めましょう。

その決定に応じて払い込みをする必要があります。

このようなポイントを押さえながら定款を作成したら、公証役場において公証人による認証を受ける必要があります。

定款の認証にかかる費用

公証人による認証には、5万円の手数料がかかります。

また、印刷した定款の原本には4万円の収入印紙が必要になります。

電子定款という形式をとればこの印紙税を省くことができますが、その電子定款の作成が容易ではないので、司法書士や行政書士などのプロに依頼するのが一般的といえるでしょう。

定款の認証にあたっては、発生する費用についても十分考慮しておく必要があります。

法務局で登記

定款の認証が終わったら、法務局で登記をすることになります。

設立登記を申請し、国が管理している登記簿に会社の情報を登録することで、会社の詳細な情報や取引の信頼性の高さを公示できるようになります。

登記の際には主に以下のものが必要です。

  • ・設立登記申請書
  • ・「登記すべき事項」を収録した記録媒体
  • ・公証役場の認証を受けた定款
  • ・印鑑届書
  • ・登録免許税の支払い
  • ・出資金の払い込みを証明する書類

印鑑届書の提出時には、会社印の登録が必要になりますので必ず持参しましょう。

登録免許税は資本金の0.7%がその額となります。

ただし、最低額は15万円となるので注意しましょう。

税務署へ届出

定款に記載した本店所在地を管轄している税務署に、「法人設立届出書」を提出する必要があります。

提出の際には以下の準備も必要です。

  • ・定款の写し
  • ・会社設立時の貸借対照表
  • ・登記事項証明書
  • ・設立趣意書
  • ・株主名簿

この届出の手続きが終わることで、税金関係の書類やお知らせ等が会社に届くようになりますが、各都道府県税事務所の法人事業税・住民税、各市町村の法人住民税についてはそれぞれの窓口へ別途申請が必要になります。

必要な手続きの内容は自治体によって異なりますので、個別に確認するようにしましょう。

社会保険の手続き

従業員を雇う予定があれば、労働基準監督署で労働保険加入の手続きをしなければなりません。

1人でも従業員がいれば加入が必須になりますので、忘れないように手続きしましょう。

また、法人は健康保険と厚生年金保険への加入義務があり、年金事務所で一括して加入手続きをすることになります。

経営者一人しかいない場合でも、加入の義務がありますので注意しましょう。

起業準備のポイント

個人事業主として起業すること、法人として起業すること、それぞれに必要な手続きを解説してきましたが、どちらにしても起業に至るまでには、万全の体制で準備を整えていかねばなりません。

その中でも、事業計画書を作成することが起業準備の核となるでしょう。

これから事業が目指すべき姿を一つの計画書の中に落とし込んでいきます。

実際の事業においては、事業計画書が無くても運営を始めることは可能です。

ただし、この事業がうまくいっているかどうか、進捗が思わしくないときに次にどんな手を打つべきか、それらの判断基準になるものが無いと、適切な経営判断を下していくことはできません。

起業する前にしっかりとした事業計画を立てておくことは、事業を軌道に乗せていくためにも欠かせません。

事業計画書の作成をはじめとした、起業準備で押さえておきたいポイントを解説していきます。

事業計画を立てる

優れた事業運営をしていくには、事業計画書の作成は欠かせません。

それでは事業計画書とはどのようなものなのでしょうか。

これからの事業がどのような内容・進み方になるのか、その計画を示した書類のことを事業計画書といいます。

融資を受ける際に金融機関に提出したり、対外的に見せる機会も出てきます。

指定のフォーマットなどがあるわけではないので、事業の形態に合わせた様々なフォーマットで作成をすることができます。

ただし、以下のようなポイントが簡潔にまとめられていることが条件です。

  • ・実現の可能性が高いこと
  • ・採算が取れる見込みがあること
  • ・安全に経営をしていけること
  • ・成長していける事業であること
  • ・事業の進め方が明確であること
  • ・内容に客観性があること

これらすべてを網羅する計画を立てることは容易ではありません。

しかし、これらを意識しながら計画を立てていくことで、十分に検討できていると思っていた計画も、問題点や矛盾点が新たに浮かび上がってきたり、詰め切れていない部分が浮き彫りになってくるものです。

もしも、事業を開始してからこれらの問題点に初めて気づいたとしたら、事業運営を脅かす材料となってしまうでしょう。

事前にしっかりと検討を重ね、可能な限りの準備を整えてから事業に乗り出すためにも、じっくりと手間暇をかけて作成していきましょう。

それでは、具体的な記載内容について解説していきます。

起業の動機を明確にする

起業の動機は必ず記載をしましょう。

  • ・なぜこの事業に取り組みたいと思ったのか
  • ・なぜそれは脱サラ、起業することで為し得る必要があったのか
  • ・どれだけの熱意で事業に取り組んでいくのか

などを言葉で明確に表していきます。

経営者の事業にかける思いが一番に表現される部分になり、融資の際に金融機関の担当者が注目するポイントにもなります。

目指す経営理念・ビジョンを言葉にする

事業を運営していくことで、どのような未来の姿を作っていきたいのかを言葉に表しましょう。

経営理念・ビジョン・ミッション・社訓・社是など、様々な形で表現をすることができます。

有名な大企業には必ずと言っていいほど、経営理念・ビジョンを表現した言葉が存在します。

下記はその一例です。

「日本ハムの企業理念」
1. わが社は、「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する。

2. わが社は、従業員が真の幸せと生きがいを求める場として存続する
(引用元:日本ハム「企業理念」)

「JALグループの企業理念」
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、 お客様に最高のサービスを提供します。

一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

(引用元:JALグループ「企業理念」)

「アサヒグループ理念」
・Our Vision
高付加価値ブランドを核として成長する“グローカルな価値創造企業”を目指す
・Our Values
挑戦と革新 最高の品質 感動の共有
・Our Principles
すべてのステークホルダーとの共創による企業価値向上
顧客:期待を超える商品・サービスによるお客様満足の追求
社員:会社と個人の成長を両立する企業風土の醸成
社会:事業を通じた持続可能な社会への貢献
取引先:双方の価値向上に繋がる共創関係の構築
株主:持続的利益成長と株主還元による株式価値の向上
(引用元:グループ理念「Asahi Group Philosophy」)

後に優秀な人材を集めて活躍してもらうためにも、このように経営理念・ビジョンを明確に築いておくことが大切です。

有益なビジネスモデルを作る

ビジネスモデルの策定は、まさに事業の根幹となる部分です。

ここで有益なモデルを作ることができなければ、事業の全てが成り立たなくなります。

ビジネスモデルを策定するときのコツは、SWOT分析を盛り込むことです。

SWOT分析とは、

  • ・強み:Strength
  • ・弱み:Weakness
  • ・機会:Opportunity
  • ・脅威:Threat

の頭文字から命名されたフレームワークのことです。

ビジネスモデルの策定をする際には、自社事業の属する市場を把握し、その中での自社の位置づけを正しく把握すること、つまりマーケティングの視点が欠かせません。

そのマーケティング戦略を効果的に立てるために、この4つの視点で分析をすることになります。

SWOT分析のポイント

SWOTの各要素は以下の図のように位置付けられます。

プラス要因マイナス要因
内的環境強み(Strength)弱み(Weakness)
外的環境機会(Opportunity)脅威(Threat)

「プラス要因」「マイナス要因」、はその名の通り、自社事業にとってプラスになりうるものとマイナスになりうるものです。

マイナス要因をいかに明確に把握できるか、が客観性を高める上では欠かせないポイントでしょう。

そして、「内的環境」「外的環境」は、自分たちがその要素を構成する内的な部分と、自社事業を取り巻く環境がその要素を構成する外的な部分という視点で分類されます。

SWOT分析は、具体的には以下の手順で行いましょう。

外部環境の分析から始める

  • ・市場は近年どんな動きを見せているか
  • ・自社を取り巻く環境はどのように変化しているか
  • ・同業他社はそれらの変化にどのような対応をしているか

このような点から要素を書き出します。

それらがプラス要因といえるか、マイナス要因といえるかで、機会(Opportunity)と脅威(Threat)に分類します。

内部環境の分析をする

これらの外部環境の分析ができたら、

  • ・外部環境は自社にどのような影響を与えるか
  • ・外部環境に対して自社はどのような影響を与えることができるか

それらがプラス要因といえるか、マイナス要因といえるかで、強み(Strength)と弱み(Weakness)に分類します。

このようにしてSWOT分析の表を埋めて、客観性のある有益なビジネスモデルを検討しましょう。

営業戦略を立てる

ビジネスモデルが策定できたら、それらを実際に顧客に向けて展開していくための営業戦略を立てます。

営業戦略を立てる際のカギとなる考え方は、「ヒト・モノ・カネ・時間」という限りある経営資源をどれだけ有効に活用して結果に繋げるか、という点になります。

具体的には、このような点を意識して作っていきましょう。

選択と集中

自社の得意とするポイントを明確にして、そこに集中的に経営資源を注ぎ込むという考え方です。

そのためには、前項でのSWOT分析が欠かせません。

不得意分野をはじめから排除し、得意分野で勝負を仕掛けていく方向に舵を切りましょう。

シンプルな事実で表現

ひと言で言いきれるようなシンプルな事実で戦略を表現しましょう。

「新規取引先を20社獲得する」のように、数字を盛り込んだ目標だとよりよいでしょう。

関わるスタッフの間でその目的を明確に統一するために、目標を見失わずに行動していけるように、わかりやすいシンプルな事実で表現します。

KPIとモニタリング

KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標のことを指します。

たとえば営業活動においては

  • ・新規獲得顧客数
  • ・既存顧客リピート率
  • ・売上達成率

などが代表的なものとして挙げられます。

これらの指標を把握できれば、営業戦略で立てた目標に対して今どれぐらいの進捗できているのかを正確に確認することができます。

そしてこのKPIを定期的に、そしてリアルタイムで追いかけていくことをモニタリングといいます。

モニタリングをきっちりと実施していくことで、現状に応じた次の戦略を的確に実行していくことが可能になります。

このような流れで営業戦略を立てて、有限な経営資源である「ヒト・モノ・カネ・時間」を最大限に活かせる体制を作りましょう。

要員計画を立てる

要員計画とは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・時間」の内、「ヒト」をいかにして最大限に活かすかを策定した計画のことです。

具体的にはこのような観点で作ります。

  • ・人材配置
  • ・人材採用
  • ・能力開発

具体的な内容を見てみましょう。

人材配置

人材をどこに何人配置するかということです。
これを策定するには、まず長期的な事業計画の大筋が定まっていることが欠かせません。

その事業を実現させるのに必要な人員の配置、という視点で決めていきます。

人材採用

必要な人数や配置の予定が定まったら、採用に向けての計画を組みます。

  • ・どのような採用スケジュールを想定するか
  • ・どの程度のスキルを求めるか
  • ・どのような待遇を用意するか

これらの面をひとつずつクリアにしていきましょう。

能力開発

採用した人材をどのようにしてスキルアップさせていくかを考えます。

この能力開発の施策を策定できていない企業は少なくありません。

長期的な経営を支えていけるだけの人材に育てていけなければ、経営の屋台骨となる人材がいない事業では、行き詰ってしまう可能性が高いでしょう。

  • ・どのような方向性でのスキルアップの望むのか
  • ・どのような研修制度を検討するのか
  • ・実務経験のためにどのような配置や異動を計画するのか

これらの視点で策定していきましょう。

財務計画を立てる

事業計画を立てていく上で必須となるのは、全ての計画が財務計画に落とし込まれているということです。

つまり、全てが数字という結果につながることが事業運営では欠かせないのです。

財務計画とは、どのような計画なのでしょうか。

具体的には以下の3つで構成されます。

  • ・損益計算書(収支)
  • ・貸借対照表
  • ・資金繰り表

この3つの諸表を使用して、財務計画を立てていくことになります。

損益計算書(収支)

毎月の収支を算出しましょう。

事業が軌道に乗るまでは、赤字が続く見込みを立てる必要も出てきます。

貸借対照表

毎月の収支を出して年間の収支計画ができたら、期末での貸借対照表を作成します。

この貸借対照表がどのようなバランスのものに仕上がっているか、貸借対照表を意識した経営が目指せているかどうかで、経営者の良し悪しが判断できると言われています。

銀行融資を受ける際にも必ずチェックされるポイントになります。

資金繰り表

これが事業運営においての最重要項目となります。

資金を回せる限りは、いくら赤字が出ようとも事業運営を続けることができます。

逆に、いくら黒字が出ていても、資金が尽きてしまえば会社は倒産してしまうのです。

事業が軌道に乗るまでに、赤字をどれだけの期間耐えうるかも、この資金繰りの計画によって判断することになります。

起業前に発生する費用

前述した財務計画の内容では、起業後の部分を注目しがちですが、実際は起業前にもかなりの費用が発生します。

  • ・会社設立費用
  • ・名刺
  • ・ホームページ
  • ・挨拶状
  • ・会社案内パンフレット

などはまず予算に組みこんでおく必要があるでしょう。

また、オフィスは賃貸をするのか、自宅に構えるのかなどのオフィス事情によっても、初期費用が変わってきます。

起業資金の準備

財務計画まで立て終わって、事業計画書の全体像が出来上がったら、今度は必要な資金を準備する段階になります。

いくらの資金を用意する必要があるのか。

財務計画をしっかり立てていなければ、その額を正確に算出することはできません。

大体これぐらい準備しておけばいいか、という大まかな予測で事業を始める人も少なくありませんが、見込みの甘い予測では資金不足で事業が行き詰る可能性が高くなります。

必要なもの、必要な時期を見極めて、必要な資金の額を導き出しましょう。

金額が明らかになったら、それをどのようにして準備するかを検討します。

具体的にはどのような調達方法があるのか確認していきましょう。

自己資金

経営者自身が出資をする、自己資金をまずは検討する必要があるでしょう。

自ら出資することで、会社の経営権を持ち続けることもできます。

いくらまでなら出資が可能なのかをまず算出してみましょう。

サラリーマン時代に、できる限りの貯蓄をしておくことは欠かせません。

ただし、業態による違いはあるものの、一般的には開業に必要な資金をすべて自己資金で賄うことは困難です。

その他の調達手段と併用しての全額調達を目指すことになるでしょう。

融資を受ける

融資を受けて資金調達をするのが一番多いパターンだといえます。

その代表的なものは以下の2つです。

金融機関

融資で真っ先に思いつくのは銀行などの金融機関でしょう。

事業運営において、最も重要な取引先の一つになることは間違いありません。

ただし、大手の銀行などは、まず創業時の融資を期待するのは厳しいものです。

地方の銀行や信用金庫や信用組合など、独自の創業融資制度を設けているところは少なくないので、情報を集めるようにしましょう。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫が実施している「新創業融資制度」は金融機関の融資に比べて、融資実行までのスペードも早く、新規事業者に向けてより広く門戸が開かれている制度だといえます。

借入に際しての上限額や返済条件などを細かく確認しておく必要はありますが、利用してみる価値は十分にあります。

出資を募る

借入ではなく、出資を募るという方法もあります。

  • ・他企業から出資
  • ・ベンチャーキャピタルからの出資
  • ・クラウドファンディング

など、その出資元も多岐に渡ります。

近年登場した新しい手段であるクラウドファンディングは、一個人からも出資を募りやすい魅力な方法です。

利用できるプラットフォームも増えてきているので、各サイトを見比べてみると良いでしょう。

出資による資金調達は、出資比率によっては経営判断を独自で下せなくなったり、経営権を譲るようなリスクも含んでいたりするので、計画的に実施することが欠かせません。

周りの理解を得る

事業計画を立て、資金調達方法を検討し、開業の準備が整っていく中で決して疎かにするべきではないのが、周りの理解を得ておくということです。

実際に起業家が直面した課題の中に、「資金調達」や「経営知識」などの項目に並んで、「家族の理解・協力」が並んでいるのです。

仕事と生活は切っても切り離せません。

起業することが、家計を共にする家族へなんらかの影響を及ぼすことも珍しくありません。

ましてや、家族の中に反対する人がいれば、その後の経営のモチベーションにも大きく関わる懸念があります。

作成した事業計画書にも記載した、起業の動機・目指すビジョン・これからの事業展望について、しっかりと伝えて、家族の理解を得る機会を作りましょう。

継続可能な生活スタイルを確立していくためにも、疎かにできないとても大事なポイントになります。

個人事業主での起業が向いている人

「起業を検討しているけど、個人事業主・法人のどちらがいいか悩んでいる」という人もいるでしょう。

そこで下記では、個人事業主での起業が向いている人の特徴を紹介します。

事業規模が小さい

事業規模が小さいのであれば、個人事業主がおすすめです。

なぜなら事業規模が小さければ、売上や利益もそこまで多くなく、個人事業主としてスタートしても問題ないからです。

個人事業主は法人に比べて手続きが楽だったり、支払うべき税金の種類が少なかったりします。

最初の起業として法人からスタートするのは難易度が高いため、事業規模が小さく個人事業主でもビジネスに問題なさそうであれば、個人事業主からのスタートがおすすめです。

事業規模がどんどん大きくなっていけば、その時点で個人から法人化すればいいだけです。

専門的な資格が必要ない事業に取り組む

取り組む事業によっては「会社であることが当たり前」というパターンもあります。

専門的な資格が必要な事業・社会的な信用が事業に影響する場合など、法人でないとそもそもスタートラインに立てないケースもあります。

反対に専門的な資格が必要ない事業・個人や法人関係なくビジネスできる場合であれば、まずは手間や費用のかからない個人事業主からスタートするのがいいでしょう。

リスクを取りたくない人

個人事業主と法人を比べたときに、法人は費用がかかったり固定費が高くなったりする可能性があります。

そのため「なるべくリスクを取らずに固定費を下げて起業したい」という人は個人事業主がおすすめです。

個人事業主の開業であれば、費用もかからずに、自分だけで手続きもできます。

対して法人の場合は、設立に費用がかかったり、手続きがかなり複雑になります。

起業はビジネスが始まってからが本番になるため、素早くスタートを切るには、個人事業主を選ぶのが有効でしょう。

法人での起業が向いている人

上記では個人事業主の起業が向いている人が紹介しましたが、反対に法人の起業が向いているパターンもあります。

ここからは法人での起業が向いている人を紹介します。

事業規模が大きい

最初から事業規模が大きい場合は、法人での起業がおすすめです。

法人の方が金融機関からの融資を受けやすかったり、人を採用しやすかったりします。

ある程度の設備投資・採用がすでに見込まれている場合は、法人でのスタートがいいでしょう。

法人であることが必須条件の仕事

業界や企業によっては「法人ではないと取引できない」というケースもあるでしょう。

例えば国・県の公共機関であれば、個人事業主よりも法人の方が取引に応じてくれます。

なぜなら個人事業主よりも法人の方が社会的信用が高いからです。

自分が仕事を依頼するときに信用のない個人事業主よりも、信用のある会社に依頼した方が安心できると思います。

自分の業界は「法人であることが当たり前」という状況なら、無理に個人事業主からスタートせず、最初から法人設立した方がいいでしょう。

まとめ

これから起業に臨む人は、そのほとんどが起業初心者であるといって間違いありません。

起業に必要な手続き・起業準備に必要なものは、そのほとんどを知らない・やったことがないもので占められているということです。

事前に知識・情報を不足なく収集しておき、可能な限りの準備を済ませ、起業後は事業を伸ばしていくことに注力できるよう、万全の態勢を築いていきましょう。

まとめ

これから起業に臨む人は、そのほとんどが起業初心者であるといって間違いありません。

起業に必要な手続き・起業準備に必要なものは、そのほとんどを知らない・やったことがないもので占められているということです。

事前に知識・情報を不足なく収集しておき、可能な限りの準備を済ませ、起業後は事業を伸ばしていくことに注力できるよう、万全の態勢を築いていきましょう。

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