最終更新日:2022/8/19
YouTuberは会社設立すべき?法人化のメリット・デメリットと手続きの流れ
この記事でわかること
- YouTuberとして活動する人が会社を設立すべきかがわかる
- YouTuberが会社を設立するメリットとデメリットがわかる
- YouTuberが会社を設立する手続きの流れを知ることができる
YouTuberとして活動する人は、広告収入が発生するとその収入を申告し、納税しなければなりません。
また、動画作成の依頼を受けてクライアントの要望に沿った動画を作成し、収入を得ることもあります。
このような収入金額が大きくなってくると、法人化した方がいいのではないかと考える方もいるのではないでしょうか。
YouTuberが会社を設立するメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
目次
YouTuberが会社設立をするメリット
YouTuberが会社設立を検討する場合のメリットには、以下のようなものがあげられます。
このメリットはYouTuberに限らず、個人事業主が法人化する際にメリットとなるものばかりです。
税負担が軽減できる
YouTuberが個人として活動している場合は、YouTuberとして得た所得に対して所得税が課されます。
所得税の税率は、所得金額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税方式が採用されています。
そのため、YouTuberとしての所得が大きくなると、個人事業主としてではなく法人として税金の計算を行う方が、税負担が少なく済みます。
費用となる金額が増える
個人事業を行っている場合に経費に計上できるのは、事業収入を計上するために直接必要な経費に限定されます。
事業との関わりが明らかでない支出については、必要経費とすることができず、節税を行うことが難しいということです。
これに対して法人化した場合は、その法人の支出は基本的にすべて会社の経費となります。
法人として行った支払いについては、代表者に対する個人的なものなど、ごく一部を除いて経費となるため、その分税負担は少なくなります。
社会的信用が得られる
法人として事業活動をしている場合、個人事業として活動している場合に比べて、信用を得やすいといえます。
個人事業の場合、事業への取り組みがどの程度で、事業の規模がどの程度か、まったく想像がつきません。
これに対し法人化している場合は、その事業への取り組みが真摯で、なおかつある程度の規模で運営していることが想像できます。
また、会社の事業に継続性があり、長期的な取引や契約にも支障がないと考えられます。
その結果、新たな仕事を獲得することや金融機関から融資を受けやすくなります。
YouTuberが会社設立をするデメリット
YouTuberが会社を設立するメリットを確認しましたが、会社を設立することによるデメリットもあります。
実際にどういったデメリットが考えられるのか、その中身を確認していきましょう。
業績に合わせて報酬を変更できない
動画の再生回数が大きく増えた場合など、売上高がそれまでに比べて大きく増加することがあります。
売上高が増えれば会社の利益も増えるため、利益が増えすぎて税額が大きくならないような対策が必要です。
そこで、役員に対する報酬は会社にとっての経費となるため、業績がいい時に役員報酬を増やしたいと考えるでしょう。
しかし、役員報酬を年度の途中で増額しても、増額した分は会社の経費とすることができません。
そのため、会社の業績に合わせて役員に対する報酬を増額することができないのです。
会社に社会保険の負担が発生する
会社を設立し、会社から役員報酬や給料を支払うこととした場合、会社に社会保険料の負担が発生します。
社会保険料には、健康保険料・厚生年金保険料・年齢によっては介護保険料・雇用保険料・労災保険料があり、その負担は決して少なくありません。
支払う人件費に連動して社会保険料の負担も大きくなるため、注意が必要です。
また会社だけでなく、報酬や給料を受け取った人も社会保険料の負担が発生することから、大きな負担となります。
会計処理や税務手続きが複雑になる
会社を設立すると、その会社でどれだけの利益が発生したのかを計算しなければなりません。
ただし会社についての会計処理は、個人事業主の確定申告とは異なります。
また、会社が税金計算を行い作成する法人税申告書は、個人が作成する確定申告書より複雑で手間のかかるものです。
そのため、自身で作成することは極めて難しく、専門家に頼まざるを得なくなるでしょう。
また人件費を支払う場合には、年末調整を行い、税務署や市区町村への届出を行う必要があります。
このように、会社を設立すると多くの手続きが必要となるため、すべてを自身で行うことは難しいでしょう。
YouTuberが会社設立をする流れ
YouTuberが会社を設立するメリットとデメリットがわかりました。
これをふまえて、実際に会社の設立を検討し始める方もいるのではないでしょうか。
そこで、会社の設立の流れを手順に沿ってご紹介します。
①会社のおおよその内容決定
会社を設立する際には、いきなり銀行や役所に行っても意味がありません。
設立する会社の内容を決める必要があり、そのすべてを決めるにはかなりの時間がかかります。
ここでは、会社の設立の際に必ず決めなければならないものをいくつかご紹介します。
商号
会社の名称です。
株式会社か合同会社かわかるように、必ずその名称に含めなければなりません。
目的
会社がどのような業務を行うのかを記載します。
目的は1つだけでなくいくつか定めることができますが、YouTuberの場合は「動画配信業」を含めなければなりません。
本店所在地
会社の本店の場所を定めます。
自宅を会社の本店とすることもできるため、本店事務所を別に用意する予定がない場合は、自宅にしておきましょう。
資本金の額
資本金の額については、以前は最低資本金の制度がありましたが、現在は廃止され、資本金はいくらでも構いません。
ただ、会社の設立にかかる費用は自己資金で調達しなければならないため、あまり少ない金額にしても資金は不足してしまいます。
そのため、最低でも設立に必要な金額は、手元に準備しておきましょう。
発起人
発起人は会社の設立を行うとともに、会社の出資者となります。
また、会社設立後は株主として、会社の運営に関わることとなります。
資本金の額として決定した金額を発起人が支払いますが、発起人は1人でも複数人でも構いません。
発行可能株式総数と発行株式数
会社として発行することができる株数を、あらかじめ決めておきます。
ただ、実際に発行する株数は、この発行可能株式総数以内であれば何株でも構いません。
事業年度
個人事業主の場合は、毎年1月~12月の所得を計算して、確定申告を行います。
これに対して会社の場合は、会社が好きな決算期を決定することができます。
会社の閑散期にあわせて事業年度を定めるのも1つの考え方となります。
②定款の作成
定款とは、会社の基本ルールです。
①で決定した会社の内容を、文書にまとめる必要があります。
定款に記載しなければならない事項がいくつもあるため、漏れのないようにしなければなりません。
定款を作成したら、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款の認証を受けなければ、会社を設立することはできません。
③資本金の払い込み
会社の設立資金となる資本金を発起人や出資者が払い込みます。
設立の方法や発起人・出資者の人数によって、細かい手続きの方法は変わります。
銀行口座への払い込みを行う必要があるため、その手順を間違えないようにしましょう。
④登記申請書類の作成
会社の設立登記を行うために、書類を作成します。
設立登記には、法務局の書式である登記申請書の他、定款、資本金の払込証明書、役員の就任承諾書などが必要です。
どれか1つでも不足すれば、会社の設立はできないため注意しましょう。
⑤設立登記
すべての書類を準備したら、法務局で設立登記を行います。
会社の本店所在地を管轄する法務局で手続きを行う必要があるため、間違えないようにしましょう。
なお、資本金の払込後2週間以内に申請しなければなりません。
YouTuberが会社設立を専門家に依頼するメリット
会社の設立は、事業主自身で行うことも可能です。
しかし、そのような手続きを自身で行うより、専門家に依頼する方が大きなメリットがあると考えられます。
具体的にどのようなメリットがあるのか、解説していきます。
事務手続きを依頼して本業に集中できる
会社を設立する際に大事なことは、会社の商号や事業目的などの内容をどうするか決定することです。
一方、具体的な会社の内容を決定してしまえば、その後の手続きは事務的なものばかりとなります。
そこで、事務手続きは専門家に依頼して簡潔に済ませてしまいましょう。
公証役場や法務局へ出かける必要がなくなるため、その分本業に集中することができます。
会社を設立すべきかどうか判断してもらえる
YouTuberの活動を個人事業として行っている人が会社の設立を考える場合、メリットがあるかどうかの判断が難しい場合があります。
そこで、専門家に会社の設立を依頼して、会社の設立にメリットがあるかどうかを判断してもらいましょう。
もしメリットがないのであれば、一度会社の設立を見送るという判断をすることもできます。
補助金や助成金を活用できる
会社を設立すると、新規事業の創出ということで、自治体から補助金や助成金を受けられることがあります。
その条件に該当するかを相談し、補助金などを受けるための手続きを代行してもらうことができます。
新しい会社の設立でお金が必要な時ですから、このような制度を有効に活用しましょう。
まとめ
YouTuberの収入が大きくなってきて税金の負担が増えてくると、法人化を考える方がいます。
法人化すれば税負担を軽減できる他、信用が増すなどのメリットが大きいため、結果的にプラスになることが多いといえるでしょう。
ただし、所得金額がそれほど大きくなければかえって税負担が増えてしまいますし、経理処理や申告手続きなどの負担も大きくなります。
会社設立にはデメリットもあることを理解したうえで、個人事業のままでいくのか法人化するのかの判断をするようにしましょう。