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最終更新日:2022/11/8

資本金は増やさなくてもよい?その理由と増資するメリット・デメリット

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

資本金は増やさなくてもよい?その理由と増資するメリット・デメリット

この記事でわかること

  • 会社の資本金とはどのようなものかを知ることができる
  • 資本金の額が多い場合のメリットとデメリットがわかる
  • 資本金を増やさなくてもよい理由がわかる

会社を設立するにあたって、資本金の額をいくらにするかは、かなり基本的な事項です。

資本金の額を増やした方がいいのか、あるいは必要以上に増やすことにデメリットはないのかは事前に知っておきたいことです。

また、資本金の額を決定する際にはどのような点に注意すべきなのかも確認しておきましょう。

これから起業しようとしている人にとって、適正な資本金額を知ることはスムーズな事業運営につながるはずです。

資本金とは

資本金とは、会社を設立した際に株主が出資した金額のことです。

事業を始めるためにも、設備投資を行うためにもある程度のまとまった資金が必要になります。

このような資金を金融機関からの融資で調達することもできますが、株主からの出資を利用するのが一般的です。

特に、開業したばかりの会社では融資を受けることは難しいため、運転資金を資本金で確保しておくことが重要になります。

なお、以前は最低資本金制度により株式会社の場合は1000万円、有限会社の場合は300万円以上の資本金が必要でしたが、2006年の会社法の制定により最低資本金制度は廃止され、現在は資本金の額は1円以上とされています

なぜ?資本金を増やさなくてもよい理由

資本金は返済する必要のないお金であるため、会社の安定につながるものと言えます。

それでは、資本金の額は多ければ多いほど会社にとってメリットがあるのでしょうか。

資本金の額は多すぎても少なすぎてもダメ

資本金の額を増やすと返済しなくても良い現金・預金が多くなり、メリットばかりあるかのように思えます。

実際、融資を受ける際に金融機関に決算書を提出するため、資本金額を大きくした方が金融機関の評価も高くなります。

しかし、資本金の額を必要以上に増やしてしまうと経営の足かせになってデメリットとなる可能性もあります

一方で資本金の額が少なすぎる場合は、現実的に運転資金を確保することができないという問題があります。

足りない分の運転資金は、代表者などからの借入金で調達することとなりますが、資本金の額が極端に少なく借入金が多い会社の評価は高くありません。

その結果、金融機関から思いどおりに融資を受けることができなくなってしまう可能性もあります。

開業後の運転資金の目安は300万円

それでは、開業時の資本金はいくらにするといいのでしょうか。

目安となるのは、開業後売上が順調に計上されるまでの期間の運転資金です。

毎月発生する家賃や給料の支払いなどを、売上がなくても数か月支払うことができるくらいの金額を資本金として確保すべきです。

業種や事業規模によってその金額は異なりますが、1つの目安となるのは300万円です。

300万円あれば、仮に売上がまったく発生しなくても、数か月間の費用を支払うことはできるでしょう。

企業の価値は、資本金の額だけで測られるわけではありません。

大事なのは、その企業に合った適切な資本金を設定することなのです。

資本金が多いメリット

資本金を増やすメリット

資本金の額が多い場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

会社の信用が高くなる

会社の資本金の額が大きい場合、それだけ会社に資金力があることや資金調達能力が高いことの証明になります。

言い換えれば、それだけ支払い能力が高いということになり、取引先や金融機関からの信用を得ることができるのです。

融資を受けやすくなる

融資を受けるためには、金融機関からの信用を得る必要があります。

しかし、資本金が少ない場合は会社の資産が少ないということですから、特に事業開始直後は債務超過になりやすいです。

この段階で債務超過になってしまうと、金融機関からの融資を受けることは極めて難しくなってしまいます。

資本金の額が多いほど金融機関からの信用は高まり、資産もあるので債務超過になる可能性も低いため、融資を受けることができます。

事業を拡大しやすい

事業を開始して順調に売上が計上できるようになると、従業員を増やしたり店舗を増やすなど、事業を拡大したいと考えるようになります。

しかし、売上が増えたからと言って運転資金が急激に増えるとは限りません。

資本金の額が大きければ、その分運転資金として使える資金が大きいため、スムーズに次のステップに進むことができます。

資本金が多いデメリット

資本金を増やすデメリット

一方で、資本金の額が多くなるとその分負担が増える可能性があります。

資本金の額が多い場合のデメリットについても、確認しておきましょう。

会社設立の費用がかかる

会社を設立する際は、法務局で登記を行う必要があります。

登記をするためには、法務局に登録免許税を納めなければなりません。

株式会社を設立する際にかかる登録免許税の額は、15万円か資本金の額×0.7%のいずれか小さい方の金額となります。

したがって、株式会社の場合は資本金の額が約2,140万円を超えると、登録免許税の額が高くなってしまいます

また、合同会社の登録免許税の額は、6万円か資本金の額×0.7%のいずれか小さい方の金額となります。

そのため、資本金の額が約860万円を超えると、登録免許税の額が高くなります。

登録免許税を多く払うことにメリットはないため、少しでも負担を少なくするためには、資本金が少ない方がいいのです。

法人税や消費税などの税負担が増える

法人税の税率は、資本金の額が1億円以下の場合、中小法人に対する軽減税率が適用されます

資本金の額が1億円を超えると軽減税率の適用はなく、すべて原則通りの税率が適用されます。

また、会社の設立1期目と2期目については、資本金の額が1,000万円未満であれば消費税の納税義務が免除される可能性があります。

一方、資本金の額が1,000万円以上の場合には、消費税の課税事業者となるため、最初から消費税を納税しなければなりません。

このほか、会社が納める地方税についても、資本金の額により税率・税額が変わるため、資本金の額が少ない方が税負担は少なくなります。

資本金の金額を決定するときの注意点

資本金の額を決定する際に、運転資金だけを考えていてはダメな場合があります。

なぜなら事業の内容によって、あるいは融資を受けることを前提とする場合、設立当初から一定額以上の資本金が必要なケースがあるからです。

このことを知らずに会社を設立して、後から慌てて増資するということのないようにしておきましょう。

許認可を受けるために資本金が必要なケースがある

現在の会社法では、会社の資本金は1円以上となっているため、資本金の額が少なくても特に気にする必要はありません。

しかし、業種によっては資本金の額の最低金額が決められているケースがあります。

たとえば、一般建設業許可を取得する際には、財産的基礎要件として500万円以上が必要とされています。

つまり、会社設立時に建設業許可を同時に取得する予定であれば、資本金を500万円以上としておく必要があるのです。

また、一般労働者派遣業の許可を得る際には、基準資産額が2,000万円以上でなければなりません。

基準資産額は、基本的には資産から負債を差し引いた金額であるため、資本金の額に近い金額となります。

会社の設立時に許可を得るためには、資本金が2,000万円以上なければならないのです。

融資を受ける際に資本金が必要なケースがある

金融機関から融資を受ける際には、必ず審査を受けることとなります。

この審査においては、資本金の額が大きいほど信用が高くなることは既に紹介しました。

ただ、政府系金融機関である日本政策金融公庫を利用する場合には、もっと厳格に資本金が求められる場合があります。

たとえば、新創業融資を利用する際には、全体として必要な資金の10分の1程度は自己資金から出資できることが要件となっています

つまり、必要な資金の9割程度は融資を受けることができても、1割程度は自己資金、つまり資本金で準備する必要があるのです。

後から増資するメリット・デメリット

開業直後の資本金の額は最小限にしておいて、その後事業の展開にあわせて増資するという方法もあります。

最初は会社の規模が小さくても、資本金を増やすことでその規模を拡大することが可能です。

その結果、会社の経営が安定しているから安心して取引できるとか、融資できるという印象を与えることができます。

しかし、増資をすると既存の株主の1株当たりの価値が減少してしまい、不利益が生じる可能性があります

また、増資をするためには新たに出資を受ける必要がありますが、これまでの株主以外の人が出資する場合もあります。

この場合、増資後の各株主の持株割合については、事前に計算しておく必要があります。

もし、持株割合を意識せずに出資した場合、第三者が筆頭株主になってしまう可能性があります。

最悪の場合、代表取締役の解任・選任ができる議決権を握ってしまうこととなるため、そうならないように気を付けましょう。

まとめ

これから起業して、会社を設立しようと考えている人にとって、資本金をいくらにするかを決めることは、実はそれほど大きな問題ではありません。

ただ、設立の段階で適正な金額にしておかないと、後から資本金の額を変えるのは手間も費用もかかってしまいます

資本金の額をいくらにするか悩んでいる場合には、会社が毎月いくら程度の運転資金が必要になるかを考えてみましょう。

そして、運転資金を最低2か月分、できれば3か月分くらいの額を資本金として会社に残しておけば、事業に集中できるはずです。

適正な資本金を準備して、開業後に頭を悩ませることのないようにしましょう。

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