7割超が、老後の財産管理について家族や親族と「話し合ったことがない」と回答。「介護」をめぐる家族間トラブルを懸念する声も
ベンチャーサポート相続税理士法人(本社:東京都中央区、代表税理士:古尾谷裕昭)(https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/)は、「老後の不安」に関する調査を実施しましたので、お知らせいたします。
<老後の不安に関する調査結果トピックス>
- 6割以上の人が、終活として「身辺整理」したいと回答
- 老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人が7割を超える
- 老後の財産管理について「家族や親族との仲は良いが、財産の話はしづらい」の声が4割近くに
- 今後、老後の財産管理について家族や親族と「話し合いたい」と回答した人は約半数
- 8割以上の人が、認知症に備えて、家族信託や任意後見制度を「検討したことがない」
- 老後、最も懸念する家族間のトラブルとして「介護」「亡くなった後の手続き」「認知症」の声
- 老後の収入源は「公的年金」が8割で最多。次いで「自身の金融資産」「私的年金」
- 老後の財産管理の準備として「財産整理」「相続に関する知識を身につける」「遺言書の作成」
- 遺産相続では「家族や親族とのトラブル」「相続手続きの難しさ」「相続税の税額」に不安の声
<調査概要>
- 1. 調査方法:ゼネラルリサーチ株式会社のモニターを利用したWEBアンケート方式で実施
- 2. 調査の対象:ゼネラルリサーチ社登録モニターのうち、全国50代~70代の男女を対象に実施
- 3. 有効回答数:1,024人
- 4. 調査実施期間:2024年4月26日(金)~2024年4月27日(土)
6割以上の人が、終活として「身辺整理」したいと回答
全国50代~70代の男女に調査を実施。
「終活において、準備しておきたいことを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、「身辺整理(61.4%)」と回答した人が最も多く、次いで「特にない(30.1%)」「相続税対策(21.4%)」「お墓や葬儀の手配(19.7%)」「エンディングノートの作成(18.9%)」「遺言書の作成(16.7%)」「その他(0.5%)」と続いた。
6割以上の人が、終活として「身辺整理」したいと回答した。預貯金や不動産などの財産関係の整理だけでなく、身の回りの不用品などの整理や人間関係の整理などを行う身辺整理は、遺された家族が困らないようにするためにも重要であると考えている人が多いことが分かった。「エンディングノートの作成」や「遺言書の作成」も遺される家族のためには重要なものであるが、検討している人はいずれも2割弱にとどまった。
老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人が7割を超える
「老後の財産管理について、家族や親族と話し合ったことはありますか?」と質問したところ、「話し合ったことはない(71.8%)」と回答した人が最も多く、次いで「何度か話し合ったことがある(19.2%)」「1度だけ話し合ったことがある(5.1%)」「定期的に話し合っている(3.9%)」と続いた。
老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人は7割を超えた。年代別では、50代:75.1%、60代:72.9%、70代:63.2%の人が、家族や親族と「話し合ったことがない」と回答し、70代でも老後の財産管理について話し合ったことがない人は6割を超えることが明らかとなった。
老後の財産管理について「家族や親族との仲は良いが、財産の話はしづらい」の声が4割近くに
老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人に、「老後の財産管理について、家族や親族と話し合ったことがない理由を教えてください」と質問したところ、「家族や親族との仲は良いが、財産の話はしづらいため(38.5%)」と回答した人が最も多く、次いで「どのように財産管理すればよいか分からないため(32.1%)」「家族や親族との仲が悪いため(8.0%)」と続いた。
「その他」と回答した人は21.4%に上り、具体的には「財産がない」「(話し合うには)まだ早い」「家族がいない」などの理由が多く挙がった。「家族や親族との仲は良いが、財産の話はしづらい」と回答した人は4割近くに上り、たとえ家族や親族であっても老後の財産管理についての話し合いは難しいことが浮き彫りとなった。
今後、老後の財産管理について家族や親族と「話し合いたい」と回答した人は約半数
引き続き、老後の財産管理について、家族や親族と「話し合ったことはない」と回答した人に、「今後、老後の財産管理について、家族や親族と話し合いたいと思いますか?」と質問したところ、「はい(53.9%)」「いいえ(46.1%)」という回答結果になった。
今後、老後の財産管理について、家族や親族と「話し合いたい」と回答した人は約半数にとどまった。年代別では、50代:49.0%、60代:52.8%、70代:67.4%の人が、家族や親族と「話し合いたい」と回答し、年代が上がるほど老後の財産管理の話し合いを考えていることが明らかとなった。
8割以上の人が、認知症に備えて、家族信託や任意後見制度を「検討したことがない」
「ご自身が認知症になったときに備えて、検討したことがある対策はありますか?」と質問したところ、「家族信託(9.9%)」「任意後見制度(7.5%)」「特にない(84.1%)」という回答結果になった。
認知症に備えて、家族信託や任意後見制度を「検討したことがない」と回答した人は8割を超えた。家族信託や任意後見制度を検討したことがある人は、いずれも1割を下回った。高齢化に伴い、認知症患者数も増加傾向にあるが、認知症への備えを検討している人はまだまだ少ないことが明らかとなった。
老後、最も懸念する家族間のトラブルとして「介護」「亡くなった後の手続き」「認知症」の声
「老後、最も懸念する家族間でのトラブルを教えてください」と質問したところ、「特にない(36.1)」と回答した人が最も多く、次いで「介護(23.6%)」「亡くなった後の手続き(14.8%)」「認知症(13.0%)」「遺産相続(5.6%)」「財産管理(3.9%)」「住居(3.0%)」と続いた。
日常的に介護が必要となった場合、誰が介護するか、介護サービスや介護施設などの費用はどうするかなど、さまざまな問題が生じる。特に自宅で介護する場合は、介護する家族に大きな負担がのしかかるため、誰かに介護負担が偏ると不公平感から家族間トラブルに繋がりやすい。元気なうちに家族とよく話し合って備えておく必要がある。
老後の収入源は「公的年金」が8割で最多。次いで「自身の金融資産」「私的年金」
「老後の収入源を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、「公的年金(84.2%)」が最も多く、次いで「自身の金融資産(33.2%)」「私的年金(24.2%)」「投資などの不労所得(17.5%)」「就労による収入(16.9%)」「親など家族の遺産(5.0%)」「生活保護(3.0%)」「子どもなどからの仕送り(0.4%)」と続いた。なお、「特にない(10.0%)」と回答した人は1割であった。
令和元年に金融庁の金融審議会が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」にて、平均的な高齢夫婦無職世帯では「老後の生活において30年で約2,000万円が不足する」との試算が出されたことから、「老後2,000万円問題」が話題となったが、老後の収入源として「公的年金」が8割を超え、「自身の金融資産」や「私的年金」による資産準備をしている人は、それぞれ3割前後にとどまることが明らかとなった。
老後、トラブルが発生したときに頼りたい人は「家族」「弁護士」「友人・知人」
「老後、トラブルが発生したときに頼りたい人は誰ですか(複数回答可)」と質問したところ、「家族(29.7%)」と回答した人が最も多く、次いで「弁護士(11.8%)」「友人・知人(7.4%)」「司法書士(3.4%)」「税理士(3.0%)」「行政書士(2.8%)」「その他(1.4%)」と続いた。「特にいない(29.7%)」と回答した人は約3割であった。
老後、トラブルが発生したときに「家族」に頼りたいと回答した人は約3割に上り、あらためて家族の重要性が明らかとなった。ただし、家族だけで解決できない場合には、弁護士などの専門家に頼るとよいだろう。
老後の財産管理の準備として「財産整理」「相続に関する知識を身につける」「エンディングノートの作成」
「老後の財産管理の準備として、どのような準備をしたいですか?(複数回答可)」と質問したところ、「財産整理(30.1%)」と回答した人が最も多く、次いで「相続に関する知識を身につける(19.2%)」「エンディングノートの作成(16.9%)」「遺言書の作成(14.8%)」「生前贈与(14.0%)」と続いた。「特にない(42.5%)」と回答した人は4割に上った。
老後の財産管理の準備として「財産管理」「相続に関する知識を身につける」「エンディングノートの作成」を挙げる人が多かった。近年、約1割の人に相続税がかかっているため、相続に関する知識を身につけたり、エンディングノートの作成を検討したりする人も増えつつある。
遺産相続では「家族や親族とのトラブル」「相続手続きの難しさ」「相続税の税額」に不安の声
「ご自身の遺産相続で、最も不安に感じることを教えてください」と質問したところ、「家族や親族とのトラブル(14.4%)」と回答した人が最も多く、次いで「相続手続きの難しさ(14.3%)」「相続税の税額(8.0%)」「遺産の分割方法(6.3%)」「相続税申告書の作成(3.3%)」と続いた。なお、半数の人が「特にない(53.7%)」と回答した。
遺産相続では「家族や親族とのトラブル」「相続手続きの難しさ」「相続税の税額」に不安を感じている人が多いことが明らかとなった。家族や親族との相続トラブルを避けるためには「遺言書の作成」が効果的である。いきなり遺言書を作成するのはハードルが高いと感じる場合は、エンディングノートの作成から始めてみるのもよい。
専門家からのアドバイス「専門家が教える老後の財産管理のための重要ポイント」
アンケートによると、6割以上の人が、終活として「身辺整理」したいと回答しています。
ここでは、老後の財産管理の準備として、以下の5つ
- 財産整理
- 生前贈与
- 遺言書の作成
- エンディングノートの作成
- 相続に関する知識を身につける
について、押さえておきたいポイントを専門家がくわしく解説します。
財産整理で押さえておきたいポイント
財産整理は老後の財産管理の準備として、もっとも重要かつ最優先で行う作業と言えます。
なぜなら、財産の多寡や内容によって、必要な準備が変わってくるからです。
財産整理では、財産目録を作成するとよいでしょう。
財産目録には決まった形式はなく、エクセルなどで作成します。
財産目録を作成するときのポイントは、以下の2点です。
・住宅ローンなどの借入金も含めて、漏れなくすべての財産を書く
・誰が見てもわかるように銀行通帳なら銀行名・支店名・口座種別・口座番号など、不動産なら所在・地番・地目・地積・床面積などまで正確に書く
まずは分かりやすい預貯金や借入金から書き、その後に不動産や株式などを書きましょう。
財産目録作成が、財産整理の重要な第一歩となります。
生前贈与で押さえておきたいポイント
生前贈与では暦年課税と相続時精算課税制度の2つの制度から選択でき、上手に使うと相続税の節税が可能です。
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計金額のうち、110万円まで非課税になる制度です。
相続時精算課税制度は、18歳以上の子や孫などが60歳以上の父母や祖父母などから生前贈与を受けた場合に累計2,500万円まで非課税になる制度です。
更に、令和6年以降の贈与については、2,500万円とは別に年間110万円の基礎控除が設定されたため、年間110万円までの贈与であれば贈与税はかからず申告も不要となります。
非課税枠を使った生前贈与は、相続税の節税、特定の子どもへの不動産や株式の贈与、といった争族対策も含めた財産整理の大きな助けになるでしょう。
遺言書の作成で押さえておきたいポイント
遺言書には公正証書遺言と自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
公正証書遺言は、裁判官などの経験を有した正確な法律知識がある公証人に公証役場で作成してもらう遺言で、方式の不備で遺言が無効になる恐れもありません。
一方、自筆証書遺言は紙とペンがあれば気軽に作成できます。
自筆証書遺言は、遺言書の文章をすべて自筆で書く必要があり、遺言者が亡くなったら家庭裁判所において検認の手続きを行わなければなりません。
また、自宅で保管していると、改ざん・偽造の恐れや、遺族が遺言書の存在に気付かないリスクがあります。
令和2年から法務局における「自筆証書遺言書保管制度」が始まり、自筆証書遺言の原本に加え、画像データとしても法務局で保管できるようになりました。
制度を使うと検認が不要になる上、遺言書の紛失、盗難、偽造や改ざんも防げます。
遺言者が希望すれば、あらかじめ指定した人に遺言書の存在が通知されるため、自筆証書遺言のデメリットの多くを解消できるでしょう。
エンディングノートの作成で押さえておきたいポイント
エンディングノートを作成するためには、遺言書との違いを知っておく必要があります。
エンディングノートは法的効力がなく、形式が自由、そして費用がほとんどかかりません。
これに対して、遺言書は法的効力や書き方の決まりがあり、信頼性が高い公正証書遺言を作成する場合には数万円~十数万円の費用がかかります。
違いを踏まえた上で、エンディングノートの作成で押さえておきたいポイントは2点です。
・エンディングノートと遺言書の両方を作成して一緒に保管しておく
・遺言書に書ききれない日常の事や感謝の言葉なども書く
遺言書には遺産分割などの法的な内容、エンディングノートにはそれ以外を記載して作成しておけば、残された遺族は混乱せず遺産分割できます。
亡くなった方の思いを受け取りやすくなるでしょう。
相続に関する知識を身につける際に押さえておきたいポイント
相続に関する知識は不動産、税金、年金など多岐にわたります。
書籍やインターネットなどから情報を得ることもできますが、家族構成や財産内容などによって相続において注意すべきポイントが異なり、思わぬ落とし穴もあります。
相続トラブルを回避するためにも、専門家への相談は大切です。
さいごに
老後の財産管理の準備を始めたものの、税金、遺言、相続など気になる点が多く、何から手をつけて良いかわからなくなるかもしれません。
老後の財産管理に悩んだら、正確な知識を持つ税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。